マイ「艦これ」「みほちん」:第5話(改2.5)<私たちが護る> |
「私たちが護るから」
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マイ「艦これ」(みほちん)
:第5話(改2.5)<私たちが護る>
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何とか敵の攻撃を掻い潜(くぐ)った私たちは土埃(つちぼこり)でドロドロになりながらも、ようやく防空壕に、たどり着いた。
「はぁ」
壕の前で改めて息つぎをした。
(ここまで来れば安心か)
まだ爆音と地響きは響いている。だが敵機は丘の防空壕には構わずに列車への攻撃を執拗に続けていた。
「なんだか鬼気迫るな」
遠くの火柱を見つつ額の汗を拭った。もはや汗だくだ。
「参った、私も運動不足だなぁ」
自分で反省し呟いた。
壕の扉を叩くと覗き窓から、さっきの車掌が私を確認する。
「おぉ、ご無事でしたか?」
そう言いながら彼は閂(かんぬき)を外す。
「……」
振り向くと少女は無言だった。私は制帽を取って防空壕に入ろうとするが彼女はボーっと突っ立っていた。
「おい、入るぞ」
私が促すと、ようやく歩き出した。
(不思議な子だな。本当に女学生なのか?)
そう思いつつ入口でチラッと防空壕全体を見上げた。ここは小高い丘をくり貫いて造られていて比較的大きい型だ。
壕の中は薄暗く暑苦しい。しかし私と少女が入って行くと直ぐに拍手が起きた。
「大丈夫かね」
年配者の声だ。私は軽く手を上げて応えた。
「有り難う、お蔭様で」
その時、私が列車から助けた年配の男性がニコニコして、こちらを見ていることに気付いた。私は反射的に会釈をしたが不思議と癒された。
(なぜだろう?)
彼を助けたからだろうか。それとも、ああいう人は純粋な人が多いから?
そう思いつつ私は床に敷いてある茣蓙(ござ)の空いた場所に腰を下ろした。
「ヨイッショ!」
壕の、それまで張りつめていた雰囲気が急に和んだようだ。
だが例の少女は、この状況に慣れないのかキョロキョロしていた。
「大丈夫だ、座ろう」
私は隣の床を指差した。
「……」
軽く頷いた少女は無言で近くの茣蓙(ござ)の上に靴を脱いで座った。やはり普通の素朴な子だな。私は彼女を見ながら制帽を取った。
「これで、ひと安心だな」
「……」
少女は無言で相変わらず無表情だが少しだけ表情が明るくなった気がした。
防空壕の中は薄暗く非常用の懐中電灯が灯っていた。それが時おり地響きで揺れる。
海軍ながら私は避難訓練には積極的に参加してきた。だから、こういった状況には慣れている。軍人仲間から『暇だね』と揶揄されることも多いが……実はその通り。
江田島兵学校出ながら私は実戦での戦果はボロボロ。特に艦娘が混じるとダメだった。
呼び出され軍の適性検査を受けても異常なし。机上演習でも平均以上の成績で結局、軍令部も 『原因不明』 として匙(さじ)を投げた。
以後は地上勤務=地域の住民対応が増えたが私は腐らず黙々と任務をこなした。
学生時代に悩んで軍人を辞めようと思ったこともあるが、その後はブレずに軍人を続けていたワケだ。
空襲は止む気配が無い。時折、ズシンという地響きが伝わってくる。避難している人たちも不安そうだ。
普段から酒も煙草も女も買わない私は『マジメ君』の通り名もあった。それが僻地へ飛ばされなかった一因かも知れない。
(そんな私もついに年貢の納め時。山陰に飛ばされたか)
だが、ここは私の地元だから、そんな表現は使いたくない。
また地響き。頭を押さえる人もいる。
雰囲気を変えようとしたのか車掌が聞く。
「外は……どんな様子ですか」
「あぁ、列車や空軍基地以外も幅広く攻撃しているようだ」
防空壕の中の人たちに「ほうっ]といった感じで落ち着きが広がる。こういう状況では情報が一番だ。
だが私は黙って分析する。深海棲艦の連中が地上の軍事だけでなく、それ以外の施設以外を攻撃するのは珍しいことだ。なぜか?
その時、親子連れの女の子が母親に聞いた。
「ねぇママ、ずっとココに居るの?」
「悪い人たちが居なくなるまで我慢してね」
そのやり取りに気になった私は薄暗い中で聞いてみた。
「婦人、この辺りでも空襲は多いのか?」
女性が言葉に詰まったので近くの男性が答えた。
「えっと、鎮守府が出来てからは少し増えたような……」
決して棘(とげ)のある言葉では無かったが私は自分が原因に思えて申し訳なかった。
今度は別の老人が言う。
「今までは兵隊しか襲わんかったけんなぁ」
気を使ったか、それ以上は何も言わなかった。もともと山陰人はハッキリ、モノを言わない。その優しさが逆に心苦しい。
「失礼」
制帽を被り直した私は改めて外へ。情報収集は軍人の使命だ。この調子なら防空壕は恐らく直撃されないだろう
「酷いな」
外に出て反射的に呟く。
線路周辺は手当たり次第に攻撃され空軍基地の重火器類までが、ねじ伏せられていた。
陸軍同様。敵に対空砲や迎撃機で応戦しても歯が立たない。
「もうダメだな」
空軍基地の各所から火の手と黒煙が立ち上がっている。
敵は感情的……深海棲艦は沈着冷静な印象だったが今回は違う。
「何かに取り憑かれたか?」
急に目眩(めまい)がした。
「うっ」
足がふらついて動悸が早まる。
「またか……なぜ?」
さっきもそうだ。今まで経験したことがない状況……そもそも目の前に敵が来ているのに何という体たらくか?
ふと人の気配を感じて振り返ると、あの少女がいた。チョット慌てた。
「おい、外に出ると危ないぞ」
「……」
何を言っても少女は無言だ。
私はポケットから簡易双眼鏡を取り出して言った。
「空軍も、弾切れか?」
「……」
不思議と、その少女に反応を感じた。
普通、軍の知識が無い民間人に何を言っても暖簾(のれん)に腕押しだが。何となく私の意図を理解している。
(変わった子だな)
そういえば息切れしないし戦場を恐れない。それはまるで戦闘慣れしたゲリラみたいだ。
私は滑走路周辺の様子を見て呟く。
「空もダメか?」
空軍が、このまま攻撃力を失えば、この地域の守りが手薄になる。放置すれば遠からず弓ヶ浜への敵の上陸を許すことになる。
「くそ!」
双眼鏡から目を離した私は悪態をついた。だが現在の私には何も出来ない。ただ手をこまねいて見ているしかない。
そのとき私の隣にいた少女がまた呟いていることに気がついた。
「距離12500……小型機3」
彼女の顔を見ると澄んだ瞳で微笑んだ。日が差して彼女の栗毛交じりの長い髪の毛が風になびいてキラキラしていた。
「大丈夫」
「え?」
「私たちが護るから」
その言葉の直後、何かが滑空してくる気配がした。少し遅れて、かなり遠方からドドンという鈍い音が響き渡る。
(この威圧感は……)
直ぐに悟った。
「艦砲射撃か!」
それも通常の艦艇ではない。紛れも無く艦娘だ。反射的に空を見上げた直後、私たちの目の前に閃光がきらいて何かが敵機に命中した。
最初の一発目が寸分も違(たが)わず敵に直撃した。間髪を入れず残りの敵機にも次々と砲弾が打ち込まれる。
「弾着観測射撃……」
遥か遠くからは連続で発射音が響く。この砲撃音は恐らく大口径の砲塔から発射されているはずだ。
「美保鎮守府の艦娘か?」
すると目の前の少女が私に軽く頷く。
そのまま彼女は指示を続ける。
「修正、北東マイナス250から350。現地、風速5程度」
(ひょっとして、この子も艦娘なのか?)
その後、数発続いた砲撃によって敵機は完全に制圧された。私は直ぐに防空壕の扉を開けて中の乗客たちに声をかけた。
数名が様子を伺いながら外へ出てくる。数人に続いて出てきた親子が言う。
「ねえママ、もう大丈夫?」
「そうね……」
そして先に出た人たちの間から感嘆の声が上がった。
「おぉ」
「すごい」
私たちの眼前には攻撃を受けた惨状と合わせて敵機が撃墜された情景が広がっていた。それは軍人でなくとも溜飲が下がるだろう。
ところが、なおも遠くから砲声が響く。
「あれ?」
まさかと思う間もなく敵の居ない草原や空き地目がけて弾着が続く。
既に敵は完全に沈黙しているが今度は艦砲射撃が止まらない。
「お、おい!」
次第に関係ない場所……基地以外の畑とか雑木林にまで次々と着弾し始めた。
私は慌てて顔を出した乗客たちを壕へと戻した。
「皆さん、一度戻って下さい!」
振り返ると地響きと同時に飛び散る無数の破片。
「正気か?」
しかも最初は精度が高かった砲撃が気のせいか次第に投げやり的になって来た。まさか……と思ったが明らかに着弾がズレている。
(こっちも感情的だな……)
そんな印象を受けた。この感情的かつムラのある攻撃パターンは艦娘に違いないと確信した。
私は艦娘を指揮した経験があるから、それが分かる。
なにしろ艦砲射撃だ。身の丈は小さくても、れっきとした海軍の艦船なのだ。その辺の野戦砲とは破壊力が違う。
「このままじゃ基地周辺に被害が拡大するぞ」
下手すれば住民感情が悪化しかねない事態だ。
(おや?)
私の斜め後ろに例の少女が居た。
「……」
吹き付ける爆風や細かい破片をを受けながらも平然としている。
一計を案じた私は、とっさに言った。
「君! ……止めさせてくれ」
「……」
女の子は大きな瞳で私を見上げると直ぐに敬礼して何かを呟いた。ほどなく砲撃がやんだ。周りには立ち上る白や黒の煙に包まれている。
弓ヶ浜は、ようやく静寂を取り戻した。
「やれやれ……」
防空壕の乗客たちもホッとした表情で再び顔を出した。そして安堵のため息が上がる。
敵だけでなく着任早々に艦娘から手荒な挨拶を受けたような気持ちになった。恐らくは美保鎮守府だと思うが……どんな艦娘が居るのか?
私は肩をすくめた。よく分からないが先が思いやられる。
以下魔除け
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府:第一部」の略称です。
説明 | ||
私たちは防空壕に逃げ込む。少女が呟くと敵機が次々と……。 | ||
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