英雄伝説〜菫の軌跡〜 |
〜古戦場〜
「フウ……見つからないわね。結構奥まで来たのにまだ一人も見つからないなんて、一体どこまで迷い込んだのかしら?」
観光客の捜索をしていたレンだったが、一人も未だ見つからない事に若干いらつき、不満げな表情で頬を膨らませていた。
「向こうの方はお兄様たちが捜索しているけど未だ連絡が来ないという事はまだ見つかっていないという事………となると考えられるケースとしては興味本位、もしくは魔獣達から逃げながら遺跡に入り込んでしまったかもしれないわね。そうなると最悪遺跡内の探索も考慮に入れなければならないわね。ハア……もし遺跡内の探索もするとなると相当時間がかかってしまうわね。」
観光客の行方を推測していたレンは遠目に見える遺跡に視線を向けて疲れた表情で溜息を吐いたが
「……ま、今回に限っては時間がかかってくれた方が、ロイドお兄さん達がレンより早く終わらせてくれているかもしれないからそっちの方がいいかもしれないわね。」
やがて複雑そうな表情になって呟いた。
「さてと。そうなると遺跡へと続くこの扉をどうやって開けるかね……周囲には仕掛けらしきものはないし、面倒だけどお兄様達が捜索している方面から回り込んで遺跡へと続く道を探した方がいいかも――――」
そして遺跡へと続く道を阻む扉を見つめていたレンが考え込んでいたその時
「お〜い!」
「今の声はお兄様……?―――!どうしたの、お兄様!」
上から声が聞こえ、声に気づいたレンは周囲を見回し、壁の上にある通路にいるルーク達に気づくと声をあげてルークに訊ねた。
「その扉の開閉装置と思うレバーがこっちにあるから、今開けるから一旦合流して情報交換をしようぜ!」
「わかったわ!」
その後ルーク達がレバーを操作した事によって先を阻む扉が開き、レンはルーク達と合流して情報を交換した。
「そっか……そっちも見つからなかったのか……」
「ええ。後探していないのはあの遺跡くらいね。」
残念そうな表情で呟いたルークの言葉に頷いたレンは遺跡に視線を向けて呟いた。
「そうなると……遺跡内に迷い込んでいる可能性も出てきたわね。」
「さすがに遺跡内になるとエニグマやアークスの通信も圏外になるだろうから、とりあえず遺跡に行ってみて、遺跡の周囲にいなかったら全員で固まって遺跡内を探索して、観光客達を捜索すべきだと思うぜ。」
「みんなが一緒なら恐くありませんの!」
レンの推測を聞いたティアは考え込み、ガイとミュウはそれぞれルークとレンに今後は全員で行動すべきだと進言した。
「……そうだな。そんじゃあここからは全員で遺跡に向かうか!」
「うふふ、このメンツならどんな強敵が現れても撃退できるからへっちゃらね♪」
ルークの言葉に続くようにレンは小悪魔な笑みを浮かべて呟いた。レンがルーク達と合流して遺跡へと向かっている一方、ロイドはユウナを追って支援課のビルに戻った。
〜特務支援課〜
「あ………」
「……………………」
支援課のビルに戻ったロイドは素早い指捌きで端末を操作しているユウナに近づいた。
「………ひょっとして導力ネットワークから車両の情報を探しているのか?」
「ええ、そうよ。今から1時間以内に港湾区の南東に停車していた可能性のある車両について………クロスベルの全ネット端末にアクセスをかけて検索しているの。IBCのメイン端末とソバカス君のデータベースも利用させてもらおうかしら。」
「…………やっぱり”仔猫(キティ)”は君だったのか。となると君が出入りしている工房―――”ローゼンベルク工房”も結社が関係している施設なのか……?」
ユウナがハッキングしている事やユウナの口からヨナの話も出た事でユウナが”仔猫”である事に気づいたロイドは真剣な表情でユウナに訊ねた。
「うふふ……おじいさんはユウナの協力者というだけよ。”パパとママ(パテル=マテル)”を直してくれる、ユウナの味方の一人……”博士”はちょっと信用できないから内緒で頼らせてもらっているの。」
「は、博士……?それに”パパとママ”ってまさか……!」
「ふふっ、”影の国”でユウナの事を知ったロイドお兄さんなら大体の見当はついたでしょう?―――心配しなくてもユウナはクロスベルでは何もするつもりはないわ。だって、このクロスベルにおいてユウナはただの観察者にすぎないもの。”仔猫(キティ)”という名前の、ね。」
「………………」
「うふふ、昨日の追いかけっこはスリルがあってドキドキしちゃった。ソバカス君も結構やるけどあのお姉さんも相当みたいね?ふふっ、ちょっと面白い裏技を使われた気もするけど。」
「そこまでわかるのか………」
ユウナの話にロイドが驚いているとエリィ達が戻って来て二人に近づいた。
「ただいま、ロイド。言われた通り戻ってきたけど………あら………?」
「ユウナさん………?」
「たしか………人形工房で出会った娘だったか?」
「ああ………ちょっと事情があってさ。」
「―――見つけた。”ライムス運送会社”の運搬車が30分前に駐車しているみたいね。次の運搬先はベルガード門………運搬車の通信番号は………うん、これでいいみたいね。」
ユウナの存在に不思議そうな表情で首を傾げているエリィ達にロイドが答えたその時、端末を操作したユウナは目的の情報を見つけてメモに番号をかいて、ロイドに渡した。
「この通信番号に連絡を入れてみて。多分、あの子の行方がわかるはずよ。」
「………お見事。」
「あの………どうなってるの?」
「さっきから何やってんのか完璧に付いていけねぇんだが………」
ユウナの行動にロイドは苦笑し、エリィとランディは戸惑い
「―――なるほど。あなたが”仔猫(キティ)”なんですね。」
ユウナが”仔猫(キティ)”である事に気づいたティオはユウナの行動を察し、真剣な表情でユウナを見つめた。
「ええっ!?」
「おいおい………マジでどうなってるんだよ!?」
「うふふ、お姉さんも昨日は遊んでくれてありがとう。でも今は、それは後回しにした方がいいんじゃないかしら?」
「……まあ、確かに。」
「よし………さっそく連絡してみよう。」
ロイドはユウナから受け取った連絡番号に通信をした。
「もしもし!どちらさま!?」
するとすぐに慌てた様子の青年の声が聞こえて来た。
「あ………えっと、クロスベル警察、特務支援課の者ですが………」
「!!よ、よかった!ギルドか警察あたりに連絡しようと思ってたんだ!でもオレ、どっちの番号も知らなくてそれで親父に連絡して………っ!」
「お、落ち着いてください。慌てているみたいですけど………いったい何があったんですか?」
「そ、それが………お、お、男の子がどこかに行っちゃったんだ!」
「え………」
「いまオレ、西クロスベル街道の途中で停車してるんだけど………!物音がすると思って荷台を確かめたら小さい男の子がいて………!なんか忍び込んだらしくてこのままベルガード門に行くのもアレだし、会社に相談しようとしたんだけど………!そしたら通信してる間にその子、どっかに行っちゃってさ!!」
「!!!」
「ど、どうしたの?」
青年と会話をし息を呑んだロイドの様子が気になったエリィがロイドに声をかけた。
「ああ………ちょっとまずい事になった。」
そしてロイドは手短に状況を説明した。
「え…………」
「………そんな………」
「マズイな、そいつは………!」
状況を聞いたユウナは呆け、ティオとランディは真剣な表情で呟いた。
「ああ、すぐに街道に出よう。………大至急、そちらに向かいます。あなたは下手に動かないでその場で待機しててください。その子が戻ってくるかもしれません。」
「よ、よろしく頼む!とにかく急いでくれ………!」
「急いで西口に出よう。それとユウナ、協力してくれてありがとう。君は………」
通信を終えたロイドはユウナに支援課のビルに残るように指示をしようとしたが
「………ついていくわ。足手まといにはならないからユウナも同行させてちょうだい。」
「で、でも………」
「ここで待ってくれた方が安全だと思いますが………」
ユウナは同行を申し出、ユウナの申し出を聞いたエリィとティオは戸惑った。
「あの子の行方を突き止めたのはユウナよ。だからユウナは最後まで見届ける必要がある。ふふっ………たとえどんな運命があの子に降りかかったとしても。」
「あなた………」
戸惑っている二人にユウナは不敵な笑みを浮かべて答え、ユウナが探している迷子が危険な目に遭う事に対して何とも思っていないどころか、むしろその場面を見たいかのような発言ともとれる言葉を口にしたユウナをエリィは厳しい表情で睨んだ。
「よくわからんが妙に拘ってるみたいだな。時間が惜しい。ロイド、連れて行こうぜ。」
「ああ。―――ユウナ。君がただの女の子じゃない事は知っているけど、無茶はしないこと。それだけは守ってくれ。」
「わかったわ。」
「―――よし、それじゃあすぐにでも西口に向かおう。西クロスベル街道に出てコリン君を捜すんだ。」
「ええ………!」
「了解です………!」
「………………………」
そしてロイド達はコリンを見つけ、保護する為に西クロスベル街道へと向かった―――――
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第26話 | ||
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