英雄伝説〜菫の軌跡〜 |
〜特務支援課〜
「……………………………へ。」
「ロイドのお兄さんに頼まれたって………」
「確かロイドの兄貴は亡くなっているんだったよな?」
「え、ええ……3年前に。まさかガイさんは生前いつか”特務支援課”ができる事を予想して、レンさんに頼んだのですか?」
レンの話を聞いたロイドは一瞬固まった後呆けた声を出し、エリィは戸惑い、ランディの疑問に困惑の表情で頷いたティオはレンに訊ねた。
「―――いえ、”今から約3ヵ月前に頼まれたわ。”」
「い、”今から約3ヵ月前に頼まれた”って……まさか……兄貴は今も生きているのか!?」
「うふふ、それどころかロイドお兄さんとも会って、兄弟で協力した事もあるわよ♪」
信じられない表情で自分を見つめるロイドの疑問にレンは笑顔を浮かべて答えた。
「なっ!?俺が一体いつ兄貴と会って、協力した事があるんだ!?」
「クスクス、”影の国”で会ってその人から色々と学んで、時には協力した事もあったでしょう?――――”元クロスベル警察の捜査一課に所属していた事があるトンファー使いの遊撃士協会の協力員と。”」
「へ……………」
レンの指摘を聞いて呆けたロイドだったが、すぐにある人物を思い出した。
東方で使われている武具やな。殺傷力より防御と制圧力に優れている話やけど……確かフレンさんの得物もトンファーでしたな?
ああ。犯人を捕える時とか剣や銃みたいな殺傷力がある武器より、こっちの方が重宝するんだぜ?
……?フレンさん、もしかして警察組織のような所に所属していた事があるんですか?
あ、ああ。事情があって辞めちまったが、遊撃士のサポートに転職する前はクロスベル警察の刑事として所属していたんだぜ?
ええっ!?そ、そうだったんですか……それじゃあ、フレンさんは俺にとって先輩にあたりますね。
「あああっ!?まさか……フレンさんが兄貴だったのか!?」
”影の国”で出会った自分と同じトンファーの使い手―――フレンを思い出したロイドは声を上げて驚きの表情でレンに訊ね
「大正解♪うふふ、これでロイドお兄さんも”影の国”に巻き込まれてもおかしくない人物―――つまり、あのメンツの中の一人であるフレンお兄さんと縁がある人物だってわかったでしょう♪」
「……………」
ロイドの反応を面白がっていたレンは笑顔で答え、ロイドは驚きのあまり口をパクパクしていた。
「ロイドさん……ガイさんのお墓が大聖堂の裏手の墓地にありますけど、あのお墓にガイさんの遺体は埋められていないのですか?」
「いや、実は兄貴の遺体は見つからなくてさ……出血していた量が致死量だったから、結局兄貴は殺害された後証拠隠滅の為に何者かに遺体を持ち去られて処分されたと判断されて、あの墓の下には現場に落ちていた兄貴の警察手帳とジャケットが入った棺桶しか埋められていないんだ。…………それにしてもまさか今も生きているなんて……生きているんだったら、連絡の一つくらいしろよな………」
ティオの疑問に我に返ってティオに答えたロイドは疲れた表情で溜息を吐いた。
「連絡したくてもできる訳がないでしょう?”自分の存在が邪魔で自分を殺した犯人がまだ捕まっていないのに”、もし自分が生きていると犯人にバレたら今度はロイドお兄さんやセシルお姉さんに犯人の魔の手が迫るかもしれないんだから。」
「!!!」
「なるほどな……その”犯人”が家族のロイドを人質にとって、再び自分を殺害する事は十分に考えられるな。……って、何でそこでセシルさんも出てくるんだ?」
レンの話を聞いたロイドは目を見開き、ランディは真剣な表情で頷いた後ある事が気になり、不思議そうな表情でロイドに訊ねた。
「……セシル姉は兄貴とは婚約者の間柄だったんだ。結婚式の日取りも決まっていて、もし兄貴が生きていたら兄貴が行方不明になった日の1週間後には兄貴はセシル姉と結婚していたんだ。」
「えっ、そうだったの!?」
「マジかよ!?クソ〜、あのセシルさんと結婚できるなんて、ロイドの兄貴だけはあるよな〜。」
「それに関しては同感ですね。」
ロイドの口から出た驚愕の事実にエリィは驚き、悔しそうな表情をしているランディの意見にティオは静かな表情で頷いた。
「どういう意味だよ!?それよりもレン。兄貴は一体どうやって一命を取り留めたんだ?」
「ふふっ、これがまた凄い偶然でね。3年前ガイお兄さんが犯人に殺されたあの雨の日にレンもルークお兄様と一緒にクロスベルを訪れていたのよ。―――借金を返し終えてまともな生活ができるようになったあの二人に一度会うべきだって、お兄様達に説得されてね。」
「あ…………」
ロイドの質問に答えたレンの話を聞いたエリィは瞬時にヘイワース夫妻を思い浮かべて辛そうな表情でレンを見つめた。
「それであの二人が住んでいる家の近くまで行って様子を窺っていたのだけど……そこで見た光景は今よりまだ幼いあの子と共に幸せそうに過ごしていたあの二人よ。それであの二人はあの子をかわいがりながら、こう言ったのよ。『前の子達はあんなことになってしまったけれど……でもよかった。女神様は私達をお見捨てにならなかったんだわ。』『おいおいの話はしない約束だろう?昔のことはもう忘れよう。』 『ええ……哀しいけれどその方があの子達のためよね………』……ってね。それをようやくあの二人に会う事を決めた直後に自分の耳でその会話を聞かされた当時のレンがどう思ったかは大体想像できるでしょう?」
「それは………」
「レンさん………」
「……ま、普通に考えたら自分達はあの二人にとって”いらなかった子供達”って思うわな。」
「………………それでその事と兄貴の件がどう関係するんだ?」
レンの過去の一部を知ったエリィとティオは辛そうな表情をし、ランディは疲れた表情で溜息を吐き、複雑そうな表情で黙り込んでいたロイドは話の続きを促した。
「あの後レンはあの二人を見る事が耐えられず思わず走り出したの。で、ようやく立ち止まった場所に瀕死の重傷を負って血だまりの中に倒れているロイドお兄さんのお兄さん―――ガイ・バニングスを見つけたのよ。そしてレンを心配してレンの後を追ってきたルークお兄様が追いついて、倒れているガイお兄さんにお兄様が持っていた最後の一本であるお兄様達が住んでいた世界―――”オールドラント”の秘薬――――”エリクシール”をガイお兄さんに飲ませて蘇らせたのよ。それで死の淵から甦ったガイお兄さんは自分が生きている事を知った犯人がロイドお兄さん達に危害を加える事を危惧して自分は死んだ事にして姿を消す為に血だまりの中に警察手帳とジャケットを置いたのよ。」
「………そうだったのか………ルークさんに今度会ったらお礼を言わないとな………それとレン……偶然でも兄貴を見つけて兄貴が助かる切っ掛けを作ってくれて本当にありがとう。」
「……ありがとうございます、レンさん………ガイさんが生きていてくれて……本当によかった………」
「瀕死の重傷を治して蘇らせる秘薬があるなんて、異世界の技術はどれだけ進んでいるのかしら……?」
「数百年以上生きている人間と全く変わらないように見える生物兵器に異世界の魔法が使えるようになる意志ある剣―――”ソーディアン”だったか?それらの事も考えれば、そんなとんでもない薬があってもおかしくないと思うぜ?……つーか、何でロイドの兄貴は自分の死を偽ってまでわざわざ姿を眩ましたんだ?殺されかけた本人なんだから、犯人を捕まえて自分で証言すればいいんじゃねぇのか?」
レンの話を聞いたロイドは安堵の溜息を吐いた後一筋の涙を流してロイドの兄の生存を喜んでいるティオと共にレンを見つめて頭を下げ、エリィの疑問に苦笑しながら答えたランディはある疑問に気づき、真剣な表情で疑問を口にした。
「そ、そう言えば…………」
「……レン、なぜ兄貴は未だ自分を殺害しかけた犯人を捕まえずに正体を偽り続けているんだ?」
ランディの疑問を聞いたエリィは目を丸くし、ロイドは真剣な表情で訊ねた。
「ガイお兄さんの話によると自分を殺しかけた”犯人”はクロスベルで何かとんでもない”計画”を企んでいて、それが何なのかを別方面から調べる為に……そしてその”計画”を未然に防ぐ為の方法を探る為にクロスベルから姿を消したのよ。」
「ロイドのお兄さんを殺害しかけた”犯人”がクロスベルでとんでもない”計画”を………」
「ま、少なくてもろくでもない”計画”なのは間違いないだろうな。」
「………ですね。」
「…………………それで兄貴を殺害しかけたという犯人は一体誰なんだ?」
レンの話を聞いたエリィは不安そうな表情をし、疲れた表情で呟いたランディの意見にティオは頷き、真剣な表情で考え込んでいたロイドは兄を殺害しかけた犯人が誰なのかを訊ねた。
「―――悪いけど、それは教えられないわ。ガイお兄さんからも自分の生存をロイドお兄さん達に教えてもいいけど、犯人は絶対に教えないでくれって念押しをされているもの。」
「へ………何でなんだ?」
しかしレンの口から語られた予想外の答えに一瞬呆けたロイドは戸惑いの表情で兄の真意を訊ねた。
「ガイお兄さんを殺しかけた犯人がクロスベルで一体何をするのか、未だ掴めていないもの。ガイお兄さんの話ではその”計画”には様々な人達も関わっているらしいしね。自分達の”計画”に邪魔な存在の口を封じる為に手段を問わない事をするぐらいなんだから”犯人”だけ捕まえても、決して口をわらない可能性が高いし、芋づる式に全員捕まえる為にはその”計画”の”証拠”を見つけて白日の下に晒さなければ意味がないでしょう?」
「それは………」
「…………その”犯人”を含めた人達はクロスベルで一体何をしようとしているのかしら……?」
レンの話を聞いたロイドは真剣な表情になり、エリィは不安そうな表情で呟いた。
「それにレンとしても世間では迷宮入りした事件の”ネタバレ”をするのは無粋だと思うもの♪」
笑顔を浮かべて語ったレンの本音を知ったロイド達は大量の冷や汗をかいて脱力し
「あ、あのなあ………」
「というかむしろガイさんの意志ではなく、レンさんの意志の割合の方が大きいような気がするのですが。」
我に返ったロイドは疲れた表情になり、ティオはジト目でレンを見つめて指摘した。
「うふふ、そう言う訳だから今の話は決して誰にも話しちゃダメよ?例えロイドお兄さん達が信用している知り合いの人達でもね。まあ、口が堅くかつ警察関係者――――例えばセルゲイおじさんとダドリーおじさんなら構わないわよ。ガイお兄さんもあの二人なら大丈夫だって言ってたし。」
「え………どうしてその二人はいいのかしら?」
「………………課長とダドリー捜査官や警察関係者以外の俺達の知り合いの中に兄貴を殺しかけた”犯人”や”犯人の仲間”がいる………―――そういう事か?」
レンの念押しの意味がわからないエリィが不思議そうな表情をしている中ロイドは厳しい表情でレンに訊ねた。
「うふふ、さすがロイドお兄さん。今のレンの話だけで迷宮入りになったガイお兄さんの殺害未遂事件の”容疑者”を絞るなんて正直驚いたわ♪」
「ええっ!?そ、それじゃあ………」
「わたし達が今まで知り合った人達の中にガイさんを殺害しかけ、クロスベルで何かとんでもない”計画”を実行しようとしている”犯人”やその仲間が………」
「そいつは……」
レンの答えによってロイドの推理が当たっている事を察したエリィとティオは不安そうな表情をし、ランディは目を細めた。
「今の内に言っておくけど今挙げた二人や警察関係者以外ではセシルお姉さんやセシルお姉さんの両親、それとマクダエル市長は確実に”容疑者”から外していいから安心していいわよ。――――最も、逆に言えばそれ以外の人達はみんな疑わしい事になるけどね?」
「………ちなみに兄貴の”死因”は何だったんだ?」
意味ありげな笑みを浮かべて自分を見つめるレンの助言に対して真剣な表情で考え込んでいたロイドはレンに質問をした。
「へえ?―――”背後から銃で心臓を撃たれた事”がガイお兄さんの”直接の死因”よ。」
ロイドの質問に感心したレンは静かな表情で答えた。
「背後から銃で撃たれたって事は、犯人がロイドの兄貴を呼び出して後ろからズドンが真っ先に考えられるが……」
「……恐らくそれはないと思う。兄貴は”犯罪者”に恨まれたり狙われたりする立場である刑事―――ましてや防諜等警察の中でもより危険な事に関わる捜査一課の刑事だ。当然周囲の警戒も怠っていないだろうから、背後からの銃撃も防ぐか回避する事はできると思う。」
ランディの推測に対してロイドは真剣な表情で否定し
「遠距離からの狙撃の可能性はどうかしら?」
「それもありえない。レンとルークさんが血だまりの中に倒れている瀕死の兄貴を見つけた場所は現在行政区で高層ビルを建設している工事現場だ。あの場所は長い坂を登った場所の上、あの周辺の建物にあの場所と同じ高さになる建物は存在していない。ましてや遠距離から狙撃で心臓―――しかも標的が背中を向けている状態で狙うなんて相当至難の業だ。」
「それじゃあ一体どんな方法でガイさんを背後から………」
エリィの推測も否定したロイドの説明を聞いたティオは不安そうな表情で考え込んでいた。
「………それについては今のレンの話だけで判断するのは早計すぎるから、これ以上考えるのは止めておこう。それとレン、さっき課長やダドリー捜査官以外の人達には兄貴の事を話すなって念押ししたけど……一人だけどうしても教えたい人がいるんだけど駄目か?その人はレンも言っていたように確実に兄貴を手に掛けた”犯人”ではないと言える人物だし………何より兄貴が行方不明になった時兄貴の生存を誰よりも信じ続け、兄貴の死を俺以上に悲しんでいた人だから。」
「その人ってもしかして………」
「セシルさんですか?」
複雑そうな表情でレンを見つめて訊ねるロイドの質問を聞いて誰であるかをすぐに察したエリィとティオは辛そうな表情でロイドを見つめた。
「………ああ。」
「ま、結婚も決まっていた間柄だったんだから、婚約者(フィアンセ)が生きていた事を教えるのは常識的に考えて”筋”なんじゃねぇか?」
ティオの推測にロイドは重々しい様子を纏って頷き、ランディはレンに答えを促した。
「あら、セシルお姉さんなら”ガイお兄さんの葬式の直後にガイお兄さんと会っているから”教える必要はないわよ?」
「ええっ!?」
「兄貴の葬式の直後に兄貴と会っているって……一体いつセシル姉は兄貴と会っていたんだ!?」
そしてレンの口から語られた驚愕の事実にエリィは驚き、ロイドは信じられない表情で訊ねた。
「うふふ、ロイドお兄さんはやっぱり忘れちゃったのかしら?レンとロイドお兄さんが初めて会ったのは”影の国”じゃなくて”ガイお兄さんの葬式が終わった後のクロスベル大聖堂へと続く階段”よ。」
「へ……………」
レンの指摘を聞いたロイドはかつての出来事を思い出した。
―――悪いけど、”今は”ロイドお兄さんに”依頼人”と会わせられないわ。
今の娘は一体……?俺の事を知っていたようだけど、俺は記憶にないぞ?
「あああああっ!?あの時すれ違った女の子は君だったのか!?」
兄の葬式の後クロスベルへと戻る為に大聖堂へと続く階段を下りて行く最中ですれ違った菫色の髪の少女―――レンを完全に思い出したロイドは驚きの表情で声を上げてレンを見つめた。
「クスクス、やっと思い出したみたいね♪」
「と言う事はもしかしてその時にガイさんに頼まれたレンさんがセシルさんをガイさんに会わせたのですか?」
ロイドの反応を面白がっているレンにティオが訊ねた。
「ええ。と言うかあれから二人は文通をして連絡を取り合っているし、セシルお姉さんなんか年に一〜二回、纏まった休みを取って、自分からガイお兄さんに会いに行ってデートをしたり、”それ以上”の事をしたりしているわよ?」
「つまりセシル姉は最初から兄貴が生きてる事を知っていたのか………俺のセシル姉への今までの心配は何だったんだ?ハア………」
レンの説明を聞いたロイドは疲れた表情で溜息を吐き
「つーか、姿をくらましている癖にわざわざセシルさんに休暇をとらせて自分の所を来させてまでちゃっかりセシルさんとデートするとかリア充過ぎだろ……!」
「……まあ、ロイドさんの兄なのである意味当然の流れかと。」
「フフッ、確かにそうよね。」
「ちょっ!?何でそこで俺が出てくるんだよ……!」
悔しそうな表情をしているランディのガイ・バニングスに対する恨み言に続くように呟いたティオの意見にエリィは苦笑しながら同意し、ロイドは疲れた表情で声を上げてティオとエリィに指摘した。
「ちなみにレンさん。さっき、セシルさんとガイさんが”デート以上の事をしたりしている”って言っていますけど、具体的にはどんな事なのですか?」
「ちょ、ちょっと、ティオちゃん。」
「そりゃあ、結婚まで約束している間柄なんだからティオすけや小嬢みたいなお子様には聞かせる事ができないうらやまけしからん事をやっているに決まっているだろう。」
「ランディ!」
ティオのレンへの質問を聞いたエリィは顔を赤らめ、からかいの表情で呟いたランディの推測を聞いたロイドは声を上げた。
「うふふ、ランディお兄さんの推測通りよ。二人とも性行為もしているわよ♪」
「レ、レンちゃん!」
「………………」
「うは〜、オブラートに包まずハッキリいうなんて、小嬢も中々度胸があるな………」
「今のどこに感心する部分があるんだよ!?というかレンは何でそんな事まで知っているんだよ!?」
レンの口から出たとんでもない話を聞いたエリィは顔を赤らめて声を上げ、ティオは頬を赤く染めて黙り込み、苦笑しながらレンに感心しているランディに指摘したロイドは疲れた表情でレンに訊ねた。
「だって、ガイお兄さんが借りているアパートの部屋の隣の部屋に住んでいる人はレンと同じ遊撃士のアーシアお姉さんだもの。アーシアお姉さん、『二人は結婚を約束した恋人だから、”そういう事”をするのもある意味当然の流れだけど、”する”んだったら”そういう事”をする為の専用施設を利用するか、もしくはもう少し声を抑えて欲しいわ。』って、レン達女性陣に愚痴を言っていた事があるもの♪」
「そ、それは………」
「……確かに隣の部屋で知り合いにそんな事をされていたら、誰かに愚痴を言いたくもなりますね。」
「その気持ちは俺もよくわかるぜ。ちょっとは周りの事を考えろ、リア充野郎共が!」
「いや、そこで俺を睨むとか意味不明なんだが。(ううっ、兄貴がいつもお世話になっているのに迷惑をかけまくってすみません、ルフィナさん………)」
レンの話を聞いたエリィは表情を引き攣らせ、ジト目で呟いたティオの意見に大きく頷いたランディは悔しそうな表情でロイドを睨み、睨まれたロイドは疲れた表情で答えながら心の中でアーシアに謝罪した。するとその時、玄関が開き、ある人物がビルに入って来た。
「ちわーす!ライムス運送会社です!」
「あなたは………」
「昨日の運送会社の………」
ビルに入って来た人物――――コリンが潜り込んだ運搬車の運転手を見たロイドとエリィは驚き、仲間達と共に近づいた。
「いや〜、昨日はお疲れ様!でもよかったよ!あの子が無事見つかって!親御さん、心配してただろう?」
「はは、それはもう。」
「アンタの方は会社にどやされなかったか?」
「ああ、配達が遅れたことは警備隊の人に文句言われたけどさ。親父―――社長の方からはそこまでお咎めはされなかったぜ。ま、ちゃんと車内をチェックしろって一発ゲンコはもらっちまったけどさ。」
「ふふ………」
「まあ、その程度済んで幸いだったかもしれませんね。」
青年の話を聞いたエリィは微笑み、ティオは静かな表情で頷いた。
「はは、違いない。―――おっと、昨日の確認をしに来たんじゃないんだ。あんた達にお届け物だよ。」
「え………」
「警察本部からですか?」
「いや、何でも朝一番で速達で入ったらしいけど………はいこれ、受け取って。」
そしてロイドは青年から小さな小包を受け取った。
「これは………?」
「ずいぶん小さなものだけど………」
「それじゃあ、確かに渡したぜ。配達があるんで俺はこれで失礼するよ。」
「おお、お疲れさん。」
「また迷子に忍び込まれないよう気を付けてください。」
「はは、肝に銘じとくよ。」
「………………………」
「へえ?(もしかして中身は”招待状”かしら?)」
青年が去った後ロイドは小包を見つめて黙り込み、レンは興味ありげな表情で小包を見つめていた。
「それで、結局誰からなんだ?」
「―――差出人の名前がある。”仔猫(キティ)”からみたいだ。」
「えっ……!?」
「ユウナさんから………」
ランディの疑問に答えたロイドの話を聞いたエリィとティオは驚いた。その後ロイドは仲間達と共に机に座って、小包を開いて入っていたもの―――メッセージカードと金の薔薇がついた漆黒のカードを取り出した。
『―――昨日のお礼にそのカードをプレゼントするわ。面白い出物があるみたいだから覗きに行こうと思って手に入れたんだけど、お兄さん達に譲ってあげる。うふふ、有効に使って頂戴ね。』
「”黒の競売会(シュバルツオークション)”の……!」
「ど、どうしてあの子がこんなものを………!?」
金の薔薇のカードを見たロイドとエリィは驚き
「確か、各国のVIPにしか贈られない招待カードだったよな?」
「それ以前に………どうして、わたしたちがこれに関心を持っているのを知っていたんでしょう………」
「まあ、あの娘ならそのくらいの事は気づくわよ。」
ランディとティオはそれぞれ考え込み、レンは静かな表情で答えた。
「………―――あの子に関しては深く考えても仕方なさそうだ。それより……このカード、本物だと思うか?」
「そうね……高級感のあるあつらえといい、本物である可能性は高いと思うわ。」
「金色の薔薇の刻印……本物の金箔が使われていますね。」
「本日夜7時、保養地ミシェラムのハルトマン議長邸にて開催、か。」
(うふふ、まさか一番低かった可能性――――”招待状”まで手に入れるなんてね。後であの二人に連絡する必要があるわね。)
ロイドの確認の言葉にエリィとティオはそれぞれ頷き、ランディは真剣な表情でカードを見つめ、レンは小悪魔な笑みを浮かべていた。
「………――なあ、みんな。課長にはあんな風に釘を刺されたばかりだけど……」
「みなまで言わないで、ロイド。」
「ここにいるみなさんはみんなロイドさんと同じ思いですよ。」
「ま、据え膳喰わぬは何とやらってヤツだな。」
「うふふ、レンもこんな面白すぎるイベントに参加できるとわかっていて、参加しない訳がないでしょう?」
「……課長が今日も本部に出ていて幸いでした。」
「みんな……いいのか?俺の我儘に付き合わせる形になると思うんだけど……」」
”黒の競売会(シュバルツオークション)”の件に関わる事を口にした仲間達全員にロイドは真剣な表情で見回して訊ねた。
「ふふ、勘違いしないで。私はある意味、あなた以上に”黒の競売会”に興味がある………私の属していた世界に近い人達が集まるみたいだし。」
「わたしは純粋にオークションへの好奇心ですね。ユウナさんが言っている『面白い出物』というのも気になります。」
「レンも同感。あのユウナが『面白い』って確信しているくらいなのだから、間違いなく面白いものが見れそうだもの♪」
「ま、俺はゴージャスでセレブなパーティそのものに興味があるな。美味いモンを飲み食いしてセレブで高めなお姉さんともお近づきになれるチャンス……見逃す手はねえだろうが?」
ロイドの確認に対して仲間達はそれぞれ自分達もロイドと”黒の競売会(シュバルツオークション)”に関わるつもりである事を口にした。
「……みんな………―――今日は最終日だ。昼までに一通り仕事を片付けて港湾区の水上バス乗り場に行こう。本当に競売会に潜入するか………”ミシェラム”に行って考えたい。」
「ええ、わかったわ。」
「うふふ、どんな事になるか今から楽しみね♪」
「そんじゃあ、残った仕事をとっとと片付けるとするか。」
「一応、新しい依頼がないか端末もチェックしましょう。」
その後ロイド達は手分けして支援要請を終わらせた後、ミシェラムに行く水上バスに乗る為に港湾区に向かった―――――
と言う訳で今回のレンの話でロイドがようやくフレンの正体に気づきましたww後焔の軌跡での序盤の伏線もついでに回収されました(オイッ!)なお、今回の話のBGMは零か零EVOの”揺るぎない強さ”だと思ってください♪
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第31話 | ||
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