マイ「艦これ」「みほちん」:第14話(改2.6)<司令の思い出と艦娘たち>
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「ねぇブラックって何ぃ?」

 

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マイ「艦これ」「みほちん」

:第14話(改2.6)<司令の思い出と艦娘たち>

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 私の挨拶は終わった。

ひな壇を降りると続けて祥高さんが指示を出す。

「司令の挨拶は以上です。各自、解散して下さい」

 

号令に合わせ食堂の艦娘たちは敬礼し食堂は再び賑わいを取り戻す。

 

(やれやれ)

大したこと話してないが肩の荷は下りた。

 

「司令、こちらへどうぞ」

祥高さんに声を掛けられた。

 

「あ」

私はハッとしたように振り返る。窓際に白い布に覆われたテーブルが準備されていた。

 

そんな些細な待遇を通して『鎮守府指揮官』の位置を改めて自覚する。

 

 私たちが座ると直ぐに鳳翔さんが来て軽く頭を下げた。

「お疲れ様でした。今直ぐに、お食事を、お持ちしますね」

 

いそいそと厨房へ戻っていく彼女。

すると秘書艦も立ち上がる。

「私も手伝って参ります」

 

「そうか」

制帽を取りながら私は答えた。軽く敬礼をした祥高さんは厨房へ向かう。

 

「彼女もよく働くなぁ」

思わず呟く。決して下っ端ではないのに、そこまでテキパキ働く艦娘も珍しい。

 

 鳳翔さんも忙しそうに動き回っているが基本的な所作に無駄が無い。

(さすが軽空母)

もちろん艦娘も千差万別だが。

 

 彼女を補佐するように駆逐艦娘たちも手伝っている。ちょこまかした動きが可愛らしい。そこに祥高さんも合流する。こういった作業は慣れているのだろう。鳳翔さんたちと違和感無く連携している。

 

 改めて見渡すと、この食堂は長机が順序良く並んていた。そこに女学生のような艦娘たちが並んで食事をしている。

 

誰が見ても学食(がくしょく)だ。つい、ここは軍隊だという事実を忘れてしまいそうになる。

 

(だが今は戦時下だ)

私は自分を現実に引き戻した。

 

 事実、軍服のような服装の子もいるし一部の艤装を装着したまま食事をしている子達もいる。

 

この子たちは艦娘という名の兵士だ。今日、隣に座っている友が明日には戻らないかも知れない。

 

そんな独特の緊張感が全体に薄っすらと漂っていた。

 

彼女たちを前にして指揮官である私が良心の呵責を感じないと言えばウソになる。

(だがこの体制下で私が足掻(あが)いて何か変えられるだろうか?)

 

 腕を組んだ私は過去を思い出す。

そういえば軍隊生活の中で『私は軍人向きの性格ではないな』と何度も思ったものだ。

 

その時、

「ねぇ、司令さん?」

 

いきなり声を掛けられた。

 

「あ?」

顔を上げるとウサギ……じゃない。

 

「えっと、島風か」

絞り出すように応えた。

 

何度見ても印象的な衣装だ。制服と言うには余りにも違和感がある。

辛うじてセーラー服っぽいデザインに肩や腰周りが過度に露出している。

 

そして大きなウサギ耳と青地に黄金色のラインとボタン。それは彼女自身の特殊性をいやが上にも印象付けていた。

 

(正直この出で立ちは正視できない)

私は顔が火照ったような感覚で、つい目を反らした。

 

 そんな私の思いを見透かしたように彼女はワザと私の視界に自分の顔が入るように移動して悪戯っぽく笑った。

「うふっ、覚えていたんだ」

 

その黄色く半分、鼻にかかった長い前髪と、その間から透き通るような瞳がこちらを見詰めている。

 

「まぁね」

私の返事に頷いた島風は臆すること無く私の向かいに座った。

 

「ねぇ、何? ボーッとしているの」

「昔のことを思い出していたのさ」

「へぇ、どんな?」

興味津々。彼女は腕に連装砲を抱っこしている。まるで愛玩動物だ。

 

「えっと兵学校に入って……」

さて正直に話して良いものか躊躇(ちゅうちょ)した。連装砲まで、こちらを見上げている。

 

その瞳を見ると急に、この子たちには何を語っても大丈夫な気がした。

(その理由は後に悟ることになる)

 

「私は軍隊に嫌気が差して途中で兵学校を退学しようと思った事があるんだ」

「へえ」

首を傾げる島風。まだ人形のような硬い表情だった。

 

彼女は連装砲を撫でながら言う。

「そこではサァ。皆が、そう思うの?」

「いや、そんなこと考えてる奴は少ない」

 

なかなか鋭い。島風は肘をついて口に手を当てていた。私は続ける。

 

「まぁ、仮に居たとしても大っぴらに公言できるもンじゃない」

思わず砕けた口調になってしまった。

 

「ふぅん」

彼女も少し興味が出たのか、さっきまでとは表情が変わった。それを見てホッとした。

 

私は自分を正当化するように言った。

「でも二年とか三年生とかナ、進級すりゃ幾らか落第したり、中には脱走して強制退学する者も出るんだ」

 

「それ興味ありますね!」

(うわっ、ビックリした)

ゆっくり振り返ると青い髪の艦娘が立っていた。

 

「あのぉ私、重巡の青葉と申しますぅ。お席、宜しいでしょうか?」

(やや長身で島風よりも骨太な印象だ)

 

私は応えた。

「あぁ、構わんよ」

 

「はい、では」

そう言いながらメモ片手に島風の横に座った。

 

 第一印象通り青葉は大柄だった。それもまた重巡たる所以(ゆえん)だろう。フワッとした髪の毛を後ろで結わえている。それは彼女の快活さを象徴しているようだ。

「どうぞ、続きを」

 

 私の前に二人の艦娘たち。突然、形成が逆転したような印象を受けた。

私は渋る。

「何だか話し難くなったな」

 

「あ、そうですよね」

と、彼女は意外にもメモ帳を閉じて微笑んだ。

 

「急に核心的なことは話し辛いでしょうから。もちろんオフレコにします」

そう言いながら青葉は島風を見た。

 

「うん、島風も聞きたいな!」

一緒に連装砲も頷いていた。

 

私は頭に手をやった。

「やれやれ。えっと、学校の話か」

 

何だろうな、この状況は。

「まぁ教官たちも、そんな停滞した学校の雰囲気は薄々感じていたようだ。だから高学年になると長い休暇が取り易くなった」

 

『へえ』

二人の艦娘は同時に反応する。

 

私は窓の外を見た。

「悶々としながら私は、ある夏休みに、ここ故郷の境港に帰ったんだ」

 

「故郷?」

新しい事実に手帳を開きかけた青葉さんはグッと堪えていた。

 

それを尻目に私は続けた。

「突然、帰省した私に驚いた両親だったけど。ま、何となく私の葛藤は悟ったようだ」

 

「葛藤?」

島風は確認するように相づちを入れた。

 

「ご両親」

これは青葉さんの復唱。自分の頭に新しい事実を刻んでいるのだろう。

 

 私は改めて二人を正面から見直した。どちらも真剣な表情だな。

 

(意外に話し易くなってきたか)

そう思いながら続けた。

 

「両親は何も言わなかった。結局、私は一週間ほど地元でブラブラしていたかな?」

「ここで、ですか?」

青葉さんが聞く。

 

「ああ。だが全てが停滞するこの時代だ。地元に戻っても何もないし。解決にならないから結局、時間を浪費して終わりだ」

『……』

二人とも互いに目を見合わせて肩をすくめた。何か期待していたのか?

 

私は再び美保湾を見る。

「両親に何も聞かれなかったことは正直、有難かったな」

 

ちょっと間が空く。人間の昔話なんて艦娘たちに理解できるのか?

「自分の悩みは自分で解決するしかない。そう考えた私は再び兵学校へ戻ったよ」

 

「なぁんだ。じゃあ良かったじゃん?」

島風は相づちを入れた。

 

「まあな」

「それから?」

興味津々といった表情の青葉さん。

 

頷きながら私は続けた。

「気分一新、戻った学校では山口出身の友人が出来た。彼の名は『H』としておこうか。割りとハンサムで一見プレイボーイっぽかった」

 

「プレイ?」

不思議そうな島風。彼女の『辞書』には無い単語か?

 

「カッコイイ感じかナ」

青葉さんが説明する。

ウンウンと頷く島風。

 

私は続ける。

「接してみると意外に真面目な奴だった。真逆の組合せだったと思うが彼とは、それからも何かと行動を共にしたナ」

 

「それって姉妹艦みたいな?」

「まぁ、そうだな」

妙に的確な表現をした島風。

 

メモを書きたくてウズウズしている青葉さんも言う。

「なるほど、軍隊もいろいろですよねぇ」

 

「ああ。だが実はもう一人、同じようなことを考えていた奴がいたんだ。彼は『H2』と呼んでおこう」

 

「『H2』?」

この記号めいた単語に再び手帳を取り出しかけた青葉さん。グッと堪える姿が微笑ましい。

 

「口数が少ない大人しいタイプだよ。彼とは喧嘩するほどでもなかったが微妙にウマが合わなかった。今、思えば私と似ていたのかもな」

「居る居る、そういうカタチ!」

島風は何度も頷いている。

 

「カタチ」とは聞き慣れないが彼女には思い当たる節でも、あるのか?

 

「で?」

二本指で唇を挟むような格好をしながら青葉さんが促して来る。

 

「それはぁ、反りが合わなかったのでしょうか?」

「彼は」

私は記憶を手繰った。

 

「計算づくで動く感じってのかナ。例えば艦娘は単なる兵器と割りきるような奴だ」

『……』

二人とも急に黙る。場が少し暗くなったようだ。私は少し焦った。

 

「もちろん、そうじゃない者もいる……私も違うから安心しろ」

この言葉に安堵した二人。

 

私は続ける。

「指揮官も千差万別だ。良心の欠片(かけら)もない奴だって居る。そんな連中が、いわゆる『ブラック鎮守府』を生むんだ」

 

「しっつもーん!」

長いウサギの耳を揺らしながら島風が手を上げる。

 

「ねぇブラックって何?」

これも『辞書』には無い単語か?

気のせいか、周りの艦娘たちも聞耳(ききみみ)を立ててるようだ。 

 

すると知恵袋みたいに青葉さんが応えた。

「それは、この世の地獄みたいな所ってとこかナ」

 

呟くように言いながら寂しそうな表情をする。私は『おやっ』と思った。

 

(彼女も過去に何かあったのだろうか?)

ちょっと返す言葉に詰まった。

 

「ま、軍隊の指揮官なんて精神破綻する者も居る。私だって危ないかもな」

訳の分からない誤魔化しになった。

 

 彼女たちと、そんなやり取りをしていたら祥高さんが戻ってきた。彼女は『失礼しました』と言いつつ青葉さんの向かい側に着席した。

 

「司令は、こちらの地方ご出身と伺いましたが」

祥高さんはテーブルに増えた二人の艦娘をチラ見しながらメモ帳を取り出して確認する。

 

「そうだね」

これは私。

 

「……」

青葉さんは黙ってモゴモゴと反復するような表情をしている。

 

祥高さんはチラチラと島風や青葉さんの顔を見ながら言った。

「では、この辺りの地理や気候風土、町の様子など、ある程度は、ご存知なのでしょうか?」

 

「最近の様子は分からないが気候風土は経験的に分かっているつもりだ」

私は、ちょっと姿勢を崩して続けた。

 

「着任前に軍から受けた鎮守府の資料は着任までにザッと目は通したけどね。今朝の砲撃のゴタゴタで全部、灰になったよ」

 

すると祥高さんは軽く頷いた。

「もう少し、お待ち頂ければ鎮守府の概要をまとめた資料をお渡し出来ます。当地の主要拠点は午後にでも実際に、ご案内致しましょう」

 

手際が良い。だてに提督代行を経験したわけではないな。

 

「頼む」

私は頷きながら返した。

 

「お待たせ……しました」

ちょうど鳳翔さんが駆逐艦娘と一緒に昼食を持ってきた。

 

彼女は私たちの席に二人も艦娘が増えているのを見て驚いていた。

「あらぁ? 貴女たちの食事までは……」

 

すると島風と青葉さんが反応する。

「別にぃ」

「お構い無く」

 

鳳翔さんは微笑んだ。

「うふふ、別に良いわよ。お茶くらいなら持ってきて上げるわ」

 

「サンキュ!」

明るい島風。軽く会釈をして鳳翔さんは厨房へ戻る。

 

私は祥高さんを見ながら手を合わせた。

「では、頂くとしようか」

「はい」

 

彼女も私と同じように手を合わせていた。少し意外な印象だ。やっぱり秘書艦は艦娘より人間に近い感じがした。

 

「……」

すると駆逐艦の寛代が静かに近寄って二人の、お茶を置いてくれた。

 

「ありがとう」

「……」

(無愛想な娘だと思っていたけど意外に気が利くんだな)

 

でもこの子は、そのままちゃっかりと私の隣に座ってしまった。結局、五人掛けになった。

 

「寛代ちゃん……」

直ぐに祥高さんが注意しようとしていた。

 

「良いよ、一緒に食べよう」

私は笑って制した。

 

「は?」

祥高さんは私の反応に少し驚いた様子だ。

 

私は続けた。

「皆で食べるのが楽しいだろう?」

 

「……」

寛代も静かに笑っていた。

 

もちろん島風と青葉さんも微笑んだ。

「そうそう、それが一番!」

「……ですよ」

 

その反応に祥高さんもヤレヤレといった表情になった。

「仕方ありませんね」

 

実際、駆逐艦クラスならば、あまり気に障ることもない。

どさくさに紛れてメモ帳を取り出した青葉さんは重巡だけど。

 

 私は改めて食堂の大きな窓から見える昼の美保湾を眺めた。

「この穏やかな海が、ずっと続いて欲しいものだな」

 

水面(みなも)は陽の光を反射してキラキラと輝いていた。

 

 

以下魔除け

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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PS:「みほちん」とは

「美保鎮守府:第一部」の略称です。

 

説明
私が食事を待っていると意外な艦娘たちが相席となる。
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艦これ 美穂鎮守府 みほちん 二次創作小説 オリキャラ 司令官 島風 青葉 

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