世界が終わりなんて間違っている 第1話
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第一話

 

 自分たちより一つ年上の先輩方の卒業を明日に控えた三月の初め、三年生の自由登校により校内は少し物足りない雰囲気でも知り合いの先輩も少ないボッチの俺には関係なくいつも通り部室に向かって今日も足を動かしている。

 

 

???「せんぱーい!」

 

 

 ふと背後から聞き覚えのあるあざとい声が聞こえてくる。

 聞こえてはいたのだが声の主にまた面倒ごとに巻き込まれる予感しかなく無視することを決め込み部室に向かおうと無視して進んでいたのだが、パタパタと走ってくる足音の後いきなり服をつかまれた。

 

 

???「せんぱい! なんで無視するんですか!!」

 

 

 俺は服をつかまれた以上逃げられないと諦めて声の主のほうに振ると最近見慣れた後輩の膨れ顔が目に入った。

 

 

八 幡「一色か……なんか用か?」

 

いろは「なんか用か? ……じゃないですよ! なんで声かけたのに無視して先に行こうとするんですか」

 

 

 少し怒ったように話してくる一色に対して誤魔化すように

 

 

八 幡「わるい。声かけてたのか気付かなかった」

 

 

 すると一色はジト目をしながら

 

 

いろは「嘘ですね。せんぱい一度足止めましたし、その頭のアホ毛が反応してましたよ」

 

 

八 幡(まずい。無視してたのきづかれていたか? 取り敢えず話題を変えないと余計面倒なことになりそうだな……)

 

 

八 幡「アホ毛が反応ってなんだよ。どんだけ俺のこと見てんの?」

 

 

 無視したことを誤魔化すように答えると突然一色は顔を真っ赤にして

 

 

いろは「何言ってるんですか!! せんぱいのこといつも見てるわけじゃないですし……もしかしていつも俺のこと見てるって勘違いしちゃいましたか? はっ! いつも俺のこと見てほしいというアピールですか? ちょっと気持ち悪いですいくらなんでもまずはお付き合いからですよね。まだ無理です。ごめんなさい」

 

八 幡「俺お前に一度も告白した事ないのにもう何敗目なんだよ……。で結局なんの用だったんだ?」

 

いろは「あ、せんぱいが無視するから話が脱線しちゃったじゃないですかぁ。今日奉仕部に顔出せないから挨拶だけでもしようとしてただけですよ〜」

 

八 幡「いやお前うちの部員じゃないから別に報告いらないだろ。まぁしょっちゅう部室来てるから半分部員みたいになっているけど……。部室に来れないって生徒会の仕事が忙しいのか? もしかしてまた手伝わされるのか?」

 

いろは「三年生の卒業式も明日ですから生徒会としては忙しいんですけど今日はめぐり先輩が卒業式の手伝いに来てくれるみたいなんでたぶん大丈夫です」

 

八 幡「城廻先輩も卒業なんだなぁ…」

 

 

 文化祭や体育祭などで世話になった数少ないというか唯一の知り合いの顔を思い浮かべた。

 

 

いろは「せんぱい。わたしを放置してにやけないでくださいよー気持ち悪いです」

 

八 幡「にやけてないし……じゃあ城廻先輩にお疲れさまって言っといてくれ」

 

いろは「了解でーす。ではではそろそろめぐり先輩も来る頃だと思うので生徒会室にいきますね」

 

八 幡「おぉ……じゃまたな」

 

いろは「それではまた明日です」

 

 

 すると一色はあざとく決め顔をつくり来た時のようにパタパタと音を立てながら生徒会室のほうに走っていく。

 思わぬところで時間をかけてしまったのですこし急いで部室に向かおうと歩き始めると今度は前のほうから見知った顔が見えることに気付いた。

 

 

???「あ!ヒッキーこんなとこにいたー」

 

 

 特徴的なピンク色のお団子頭を揺らしながら声をかけてきた。

 

 

八 幡「なんだ由比ヶ浜か……」

 

結 衣「ヒッキーおそーい! 何してたの?」

 

八 幡「あぁそこで一色につかまってたんだよ。ってかそんなに遅くなってないだろ」

 

結 衣「いろはちゃんとなにしてたの?」

 

八 幡「いや……ただ今日奉仕部のほうに行けそうにないから報告に来たみたいだ」

 

結 衣「それだけ?」

 

八 幡「あぁそれだけだ……なんでも明日の卒業式のことで忙しいらしい」

 

結 衣「ふぅーん。じゃあヒッキー生徒会の手伝い行くの?」

 

 

 そういうと由比ヶ浜は服の端をつかみながらうつむいてしまった。

 なんだか飼い主にかまってもらいたそうな犬みたいに見えてかわいいと思った俺ガイル。

 

八 幡「今日は城廻先輩が応援に行くみたいだから手伝いいらないらしい」

 

結 衣「そうなんだ! じゃあはやく部室行こうよ。小町ちゃんきてたよ!」

 

八 幡「え……マジでっ! 最愛の妹が来てるとなったら待たせるわけにはいかん早く行くぞ! 由比ヶ浜っ!」

 

 

 由比ヶ浜の手をつかんで足早に部室に向かって歩き出した。

 手をつかんでから由比ヶ浜かなんか言っていたみたいだが小町を待たせるよりはいいだろ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     〜     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八 幡「うっす!」

 

 

 部室のドアをスライドさせながら室内にいた二人に声をかけた。

 室内には妹の小町といつも通りの席に座って紅茶をのんでいる雪ノ下。

 二人の前には紅茶と雪ノ下が持ってきたらしいお菓子が並んでる。

 

 

小 町「お兄ちゃんおっそーい。っておやおやwww」

 

雪 乃「いいからその手を放しなさい。セクハラ谷くん」

 

 

 小町はにやにやしながら、雪ノ下はいつも以上に冷ややかな目で俺のほうを見ている。

 手を見るとまだ由比ヶ浜の手を握っていることに気付き慌てて手を放した。

 恐る恐る由比ヶ浜の顔を覗き込むと顔を真っ赤にしてそっぽ向いてしまった。

 

 

八 幡「由比ヶ浜わるい……手つかんだままだったな」

 

結 衣「えっ……いや……いいよ」

 

八 幡「そうか」

 

結 衣「むしろ嬉しかったし」

 

 

 俺は照れ隠しに頭をかきながら答えると由比ヶ浜が小さな声で返してきた。

 

 

八 幡「ん? なんか言ったか?」

 

結 衣「何でもないし……それよりみんな揃ったんだからそろそろ始めようよ」

 

八 幡「あぁそうだな……」

 

 

 そういいつつ雪ノ下と小町のほうを見ると来た時の目でこちらを見ている。

 タラーっと背中に嫌な汗が流れた気がした……

 

 

八 幡「気を取り直して準備ってもうできてるんだよな」

 

小 町「お兄ちゃんが遅いから準備終わっちゃった。あとは飲み物だけだよ」

 

結 衣「じゃあゆきのん」

 

雪 乃「そうね……じゃあ紅茶入れ直すわね」

 

 

 そういってみんなの紅茶を淹れ始める。

 しばらくするといつものパンさんの湯飲みが俺の前に置かれた。

 

 

結 衣「ではっ」

 

八雪結「「「小町(さん)(ちゃん)受験お疲れさま!」」」

 

小 町「いやいやありがとうございます」

 

八雪結「「「そして合格を祈願して」」」

 

全 員「「「「かんぱーい」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     〜     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小 町「そろそろお開きにしますか」

 

雪 乃「そうね。もうこんな時間だし片づけましょう」

 

結・小「「はーい」」

 

 

 そう言ってそれぞれ片づけを始めた。

 

 

八 幡「じゃあ小町帰るぞ」

 

小 町「あ、ちょっと雪乃さんと結衣さんに話あるから下に行ってて!」

 

八 幡「ん……話し終わるまでここで待ってるぞ」

 

小 町「はぁこれだからごみぃちゃんは二人に話があるんだから先に行っててよ」

 

 

 そういいつつ小町に入口のほうに追い込まれてしまった。

 

 

八 幡「わかった。わかった。じゃあ昇降口のとこで待ってるからな」

 

小 町「はいはい。それでいいから早く行って」

 

 

 妹に邪魔者扱いされ落ち込みつつ部室をでた。

 そして一階生徒玄関のところまで降りてくると部活が終わったらしい体操服姿の天使と会った。

 

 

彩 加「あ、八幡いま帰り?」

 

八 幡「おぉ戸塚! 小町が雪ノ下たちとしゃべってるからそれからだけどな」

 

彩 加「じゃあ一緒に帰ろうか?」

 

 

 

 部活終わりで上気した頬を赤く染めつつ天使の笑顔を浮かべてこちらを伺ってくる。

 思わず俺は戸塚の手を握りつつ

 

 

八 幡「あぁそうだな! なんならこれから毎日一緒の家に帰ろう」

 

彩 加「え……八幡それどういう意味?」

 

八 幡「いや何でもない。小町が来てからになるけど大丈夫か?」

 

彩 加「うん! 大丈夫だよ。僕も着替えてこないといけないし」

 

 

 またも天使の笑顔でこちらを見てくる。

 

八 幡「じゃあ俺たちはここにいるから着替え」

 

???「あっれーっ? そこにいるのヒキタニ君と戸塚じゃない?」

 

 

 俺の声は突如聞こえた乱入者によって途切れてしまった。

 戸塚との会話を邪魔され俺は不機嫌そうに乱入者を見ながら

 

 

八 幡「……なんだ戸部か」

 

戸 部「なんだとかひどくない。ねえ隼人君」

 

葉 山「ははは……ヒキタニ君らしいけどね」

 

 

 生徒玄関入口の方からクラス一のお調子者と学校一と名高いイケメンが制服姿でやってくるのがみえる。

 

 

八 幡「葉山もいたのか。というかいまから帰りなのか?」

 

葉 山「いや今部活終わって着替えてきたところなんだけど、優美子が部活終わってから話があるらしく今から教室いくところだよ」

 

八 幡「へぇ……」

 

 

 以前奉仕部に相談来ていた派手目の女生徒を思い浮かべながら、ついに告白するのかと思っていると

 

 

戸 部「ヒキタニく〜ん俺にはなんも聞かないの〜?」

 

八 幡「ハイハイ。戸部は今から帰……ってあれなんだ?」

 

 

 戸部の質問をおざなりに返事しようとした時に遠目で微妙にわかりづらいが校門の所にうちの生徒でも教師でもなさそうな人物……服装は乱れ足取りもおぼつかない様子で誰が見ても不審者に見える人が入ってきているのだ。

 

 

戸 部「やっべー。あれってどうみても不審者でしょーっ」

 

葉 山「あぁ先生に連絡したほうがいいだろうな」

 

 

 そういって葉山が職員室に向かおうとすると

 

 

彩 加「あっ待ってもう体育の厚木先生が行ったみたいだよ」

 

八 幡「ホントだなとりあえずあいつがどっか行くまで帰れんなぁ」

 

彩 加「でしょ。早く行ってほしいなぁ」

 

葉 山「ん……なんか様子おかしくないか?」

 

 

 結構遠くにいる俺らの目にも不審者と厚木先生が争っているように見えた。

 

 

戸 部「やっべーっ! ガチでやばくない? 応援行くか警察に電話したほうがよくない?」

 

 

 そう戸部が提案したその時

 

 

厚 木「うわぁぁ!」

 

生徒A「なんだこいつ厚木先生に噛みついたぞ」

 

生徒B「なにしてるんだ。みんなでこいつひきはがすぞ!」

 

 

 いきなり不審者が厚木先生を噛みつき近くにいた男子生徒数名が先生から不審者をはがそうとしているのが見える。

 だが不審者の力は強いらしく男子生徒がはがそうとしても未だに先生から離れる様子はない。

 俺たちはその様子に呆然として見入ってしまっている。

 ようやく男子生徒三人がかりで厚木先生から離せたようだが厚木先生が倒れて動いてない。

 近くにいた女子生徒が先生の様子を見ているだが、女子生徒は混乱しているのか泣きわめいているだけだった。

 

 

葉 山「……きゅ、救急車だ。救急車を呼ぶんだ!」

 

 

 いち早く復帰した葉山がそう叫んだ。

 俺は慌ててポケットの中にあるスマホに手を伸ばし救急車を呼ぼうとするが

 

 

彩 加「あれ……よかった。厚木先生立ち上がったよ!」

 

 

 と、戸塚の声を聞き先生のほうを見ると確かに立ち上がっている。

 しかし、ふらふらと看病していたらしい女子生徒に近づくと先ほどの不審者のように厚木先生も女子生徒の首筋に噛みついた。

 

 

生徒C「いやああぁぁぁっ!! 先生痛い痛いやめてぇぇぇぇ」

 

生徒D「厚木先生なにしているんですか! やめてください!」

 

生徒B「おい! お前ら先生をとめろ!!」

 

 

 不審者を抑えている男子生徒が周りに集まっていた野次馬に厚木先生を止めるように指示を出している。

 厚木先生の突然の行動に驚いたのか不審者を抑えていた生徒の力が緩んでしまったらしく、指示を出していた男生徒の腕に不審者が喰らいついたのだ。

 

 

生徒B「いってぇぇ! なんだこいつまた噛みついたぞ! 離れろ!離れやがれ!!」

 

 

 噛みつかれた男子生徒と周りの生徒が必死に離そうとするがだんだん噛む力が強くなっているらしく一向に離れようとしない。

 そして噛まれた男子生徒のわめき声が止まり力なくその場に倒れた。

 

 

生徒E「おい! 大丈夫か! ……やばいぞ! 一気にこいつはがすぞ!!」

 

 

 ようやく不審者をはがして取り押さえると倒れた男生徒の安否を近くにいた生徒が確かめていた。

 同じように先生を取り押さえ倒れた女子生徒の様子を見ている者もいた。

 

 

生徒F「おい! やばいぞ! こいつ息していない!! 救急車! 救急車を!!」

 

生徒G「こっちもです! こっちの子も息してないです}

 

生徒H「は、はい!」

 

 

 近くにいた生徒が救急車に連絡しているのが見える。

 

 

戸 部「なぁ……これやばくないか」

 

 

 あまりの光景に言葉もなく立ち竦んでいた俺たちだったが戸部のボツりと零した一言で現実に意識が戻ってきた。

 

 

彩 加「あぁ殺人事件なんて……なんでこんなことに……」

 

葉 山「教師が生徒を殺したなんてな……」

 

 

 戸塚が信じれないと声を振り絞るように、葉山が通常ありえないことに苦虫を噛み潰したよう呟いた言葉も俺にはまだ現実だと思いたくない感情が膨らんで理解できずに聞き流してしまっている。

 

 

葉 山「やっぱり応援にいこう! 少しでもなんかしてやりたい」

 

 

 葉山がそう決意して飛び出そうとしたその時校門のほうで再び叫び声が上がった。

 

 

生徒F「おい生徒Bが起き上がったぞ!!」

 

生徒G「こっちも目をあけた!」

 

 

 男子生徒・女子生徒ともに動き始めたことに死者が出なかったことに安堵と、頭の中に浮かんだ不安がよぎった。

 不安は的中したらしく二人は先ほどの厚木先生のように襲い始めた。

 

 

生徒F「生徒B! やめろ!」

 

生徒G「生徒Cさんもどうしたっていうだ!」

 

 

 再び始まった惨劇にまたも言葉を失っていた俺たちだが、葉山の一言で更なる悪夢の始まりでしかないことに気づいてしまった。

 

 

葉 山「なぁ校門の奥、たくさんの人が来てるけど不審者がやってきたときみたいじゃないか?」

 

 

 葉山の言葉が悪いほうに的中した。

 外から来た人達も校門付近にいた生徒たちを襲い始めたのだ。

 

 

モ ブ「あ、あぁ……や、やめろっ、やめろっ……」

 

モ ブ「いやああぁぁぁっ!!」

 

モ ブ「ぎゃあぁぁぁっ! 痛い、痛いぃーっ!」

 

 

 俺はそこら中から聞こえる悲鳴と今の状況に立ち竦んでしまっている。

 さっきまで部活動に励む学生の声が響いていたグランドも地獄と化してしまった。

 

 

八 幡「なんだ……何が起こっているんだ」

 

 

 本当は何が起きているのか理解し始めているのだが、信じたくない感情で気持ちに蓋をしまっている。

 目の前で無差別で残虐な大量殺戮が行われているなんて……

説明
ハーメルンに投稿していたものを再編集して投稿してます。
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ゾンビ やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 台本形式 

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