英雄伝説〜菫の軌跡〜
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4月12日――――

 

―――1週間が経った。キーアを保護したロイド達は彼女を特務支援課のビルに匿いながらマフィアからの報復を警戒することにした。警察本部に加え、ヨナやレンの情報網などにも頼りながら、マフィアとハルトマン議長の動向を注意深く伺う日々………一方、記憶が戻らないにも関わらず、キーアは不安を見せることなく、あっという間に支援課に馴染んでいった。そして―――

 

〜特務支援課〜

 

「―――手打ち、ですか?」

セルゲイから事情を聞いたロイドは不思議そうな表情をした。

「ああ、非公式だが警察本部宛てにルバーチェから打診があったそうだ。出品物にあの子が紛れ込んでいたのは完全な手違い――――というか、全く身に覚えがないということだ。”黒月”の工作とも主張していたが、ま、状況的に厳しいかもしれんな。」

「……そうですね。俺達が駆け付けた時、”銀(イン)”は丁度、部屋にいた手下を倒したばかりのタイミングでした。外からキーアを運んで中の人形を入れ替える暇は無かったと思います。」

「って事は、例のトランクが屋敷に運び込まれた時には既に入れ替わっていたって事か。そもそも、出品される筈だった人形の出所はどこだったんスか?」

「はっきりとした事はわからんがレミフェリア方面の裏ルートから手に入れたものだったらしい。記念祭最終日――――つまりオークション当日、屋敷に運び込まれたらしいが………その運び込んだ運送会社も架空のものだったと主張している。」

「そんな馬鹿な……つまり連中は、あくまで自分達は嵌められた側だと主張してるんですか?」

セルゲイの説明を聞いたロイドは信じられない表情をした後、悔しそうな表情で尋ねた。

 

「まあ、そういう事だな。真偽のほどはわからんが………連中が必死に弁解するのもわかる。―――下手したら『人身売買』の容疑がかけられちまう訳だからな。」

「……………………………………」

「武器の密輸、マネーロンダリング、盗品すら扱う闇のオークション………そんな犯罪を平気でやる連中も人身売買の疑いがかかるのだけは何としても避けたいってことか。」

「当然といえば当然だ。犯罪としてはおよそ最悪の部類……絶対に許されないたぐいの重罪だ。警察もさすがに黙っちゃいないし、何よりも遊撃士協会が聞きつけたら総力を挙げて叩き潰しに来るだろう。”支える籠手”の紋章との謳い文句に懸けてな。」

「そんなリスクを、議長はもちろん、ルバーチェも負うハズがない……―――理屈としてはわかるんですが正直、とても納得できませんね。」

セルゲイの話を聞いたロイドは真剣な表情で答えた。

「ああ、だからこその手打ちだ。お前達の潜入捜査―――向こうは不法侵入と言ってるが―――についても一切不問にする。”偶然”保護した少女の扱いもこちらに全て任せるそうだ。」

「その代わり、この件については自分達の主張を認めろ………間違っても遊撃士協会あたりにチクったりするなってか?やれやれ、確かに必死かもな。」

「……………………………………キーアのことを考えると曖昧にはしたくはないですけど………あの子がこれ以上、マフィアに狙われない事が確約されただけでも納得すべきかもしれませんね。」

セルゲイの説明を聞いたランディは溜息を吐いた苦笑し、ロイドは複雑そうな表情で溜息を吐いた後キーアがマフィア達に狙われない事が確約された事に明るい表情をした。

 

「ああ、俺もそう思う。………まあ問題なのは、肝心のあの子の素性なんだが。」

「ええ………」

「名前以外にはマジで何も覚えてねえみてぇだからなァ。―――しかしまあ、とんでもなく明るいというか人懐っこいガキンチョだよな。何かあっという間に俺達全員に懐いちまったし。」

「はは………確かに。ツァイトはもちろん、課長も懐かれましたよね。」

「まあ、な。俺は煙草を吸うから、あんまり子供には近寄られねぇんだが………全然気にしてなさそうだったしな。」

「お嬢やティオすけなんかももう夢中って感じみたいだし………今日なんか、デパートから服を山ほど買って来てたぜ。小嬢は小嬢でお嬢達みたいに夢中にはなっていないように見えて、さりげなくアクセサリーやぬいぐるみとか色々買って来てやっているものな。」

「はは、こういう時は女性陣がいてくれて助かるよ。俺達じゃどうしても行き届かない所もあるし………それにしても………本当に、どこの子なんだろう。」

ランディの話に苦笑しながら頷いたロイドは気を取り直してキーアの事を考え込んだ。

 

「あ、いた!ロイド、見て見て〜!」

するとその時キーアが部屋に入ってきて、ロイドに抱き付いた。

「わわっ………ちょっと、キーア!?」

「エリィとティオに服を選んでもらって、レンにはアクセサリーを選んでもらったの!どれもカワイかったけどコレが一番気に入っちゃった!ねえねえ、にあう!?」

「いや、抱き付かれたままだとどんな服かわからないんだけど………」

「あ、そーか。」

苦笑しながら指摘したロイドの言葉に頷いたキーアはロイドから離れ

「じゃーん!ねえねえ、にあうー!?」

嬉しそうな表情でその場で回転した後、ロイド達を見つめた。

 

「へえ………!」

「ほほう………」

「ふむ………」

キーアの可愛らしい容姿にピッタリな服やスカートを身に着け、更にはキーアが身につけている太陽の象徴が刻まれた振り子を象った装飾品や服に付けてある美しく光るエメラルドの宝石のブローチを付けた状態のキーアを見たロイド達は感心の声をあげた。

「どう!?」

「ああ………可愛いよ。凄くキーアに似合ってるぞ。」

「ほんとー!?ねえねえ、ランディとかちょーもかわいいと思う?」

ロイドの答えを聞いたキーアは嬉しそうな表情をした後、ランディとセルゲイに尋ねた。

「おー、かわいいかわいい。」

「うむ、悪くないな。」

「えへへ………」

ランディとセルゲイの褒め言葉にキーアが嬉しそうな表情をしたその時、エリィ達が部屋に入って来た。

 

「ふふっ、さっそくお披露目してるみたいね。」

「………まだ色々と着て欲しかったですけど。」

「エリィお姉さんもそうだけどティオも過保護ねぇ。あんまり過保護にするのはキーアの教育に悪いと思うのだけど。」

キーアの様子をエリィは微笑ましそうに見守り、残念そうな表情で呟いたティオにレンは呆れた表情で指摘し

「………ぬいぐるみはまだしも、デパートやイメルダさんの店で高価なアクセサリーを片っ端から買って来たレンさんにだけは言われる筋合いはないのですが。キーアが今身につけているアクセサリー……確か二つとも相当高価なものでしたよね?」

レンの指摘を聞いたティオはジト目で反論した。

「エリィ、ティオ、レン!ロイド達がかわいいって!」

「ふふ、良かったわね。」

「うふふ、むしろ可愛くないなんて思う人達なんていないわよ。」

「まあ、ロイドさんならキーアがどんな服やアクセサリーを見に着けても可愛いと言いそうですけど………」

嬉しそうにしているキーアの様子にエリィとレンは微笑み、ティオは静かな表情で呟いた。

 

「そんな事は………まあ、あるかもしれないけど。」

「ハハ、親バカ丸出しだな。うーん、しかしキー坊が来てまだ1週間しか経ってねぇのか。」

「ふふ………何だか信じられないわね。そういえば………警察本部からの連絡は結局どうだったんですか?」

「何でもルバーチェの方から打診があったとか………?」

「ああ、それなんだが………」

「……ランチの時にでもおいおい説明させてもらうよ。」

その後ロイド達は昼食を取りながら、エリィ達にルバーチェの”手打ち”を説明した。

 

「なるほど……一応、マフィアの心配は無くなったみたいですね。」

「ただ、根本的な問題は残ったままですが………」

「………………」

事情を聞いたエリィは明るい表情をし、ティオは複雑そうな表情で考え込み、レンは静かな表情で黙り込みながらキーアを見つめていた。

「ああ、完全にこっちに丸投げされた形になったな。」「とにかく肝心なのは記憶と素性についてだけど………―――なあキーア、やっぱり何も思い出せないか?」

「んー………ぜんぜん。ロイドが口をぽかんとあけて目をまんまるにしてたのならおぼえてるけどー。」

「ガクッ………それは一週間前、初めて会った時の話だろ。」

自分の質問とは見当違いの事を答えたキーアにロイドは脱力した後指摘した。

「だってその前のことはなんにも覚えてないんだモン。」

「………そっか。」

「ま、覚えてないってんなら仕方ねぇやな。」

「………各方面への問い合わせはどうなっているんでしょう?」

キーアの答えを聞いたロイドは溜息を吐き、ランディは苦笑し、ティオはセルゲイに視線を向けて尋ねた。

 

「ああ………それなんだが。駅や空港、門にも問い合わせたが今の所該当者はナシのようだ。少々、難航するかもしれん。」

「………そうですか………」

「???どうしたのロイド?おなかでも痛い?」

セルゲイの答えを聞いて考え込んでいるロイドに気付いたキーアは真剣な表情で尋ねた。

「はは、大丈夫だよ。――――課長、今日の午後からなんですけど………キーアを連れて外に出ても構わないでしょうか?」

「ふむ………」

「何か心当たりがあるのかしら?」

キーアの様子に苦笑した後提案したロイドの話を聞いたセルゲイは目を細め、レンはロイドに尋ねた。

「ああ………一度、遊撃士協会を頼ってみようかと思ってさ。」

「ええっ!?」

「本気ですか?」

そしてロイドの説明を聞いたエリィは仲間達と共に驚き、ティオは真剣な表情で尋ね

「ゆーげきし?」

「………なるほどな。連中は大陸各地にギルドの支部を持っている………その情報網をアテにしてみるか。」

キーアは可愛らしい動作で首を傾げている中事情を察したセルゲイは納得した様子で呟いた。

 

「ええ、頼れるものはこの際頼っておくべきかと。………駄目でしょうか?」

「ま、いいんじゃねえか?警察とギルドは別に対立してるわけじゃねえ。わだかまりがあるとしたらむしろ警察(コチラ)の方だからな。案件が案件だし、協力を要請すれば向こうも断ったりはしねぇだろ。」

「ええ、そう思います。」

「ま、エステルちゃんたちとはこの前、結構打ち解けられたしな。」

「確かに相談するには丁度いい機会かもしれませんね。でもロイド………キーアちゃんを連れていくってあなた一人で連れて行くつもり?」

「そのつもりだけど………全員で行くほどの事じゃないし、俺一人で十分かと思うんだけど。」

真剣な表情をしたエリィに訊ねられたロイドは頷いて答えた。

 

「………納得行かないわね。ただでさえキーアちゃんに一番懐かれてるのに更に独り占めしようだなんて。」

「へ………」

ジト目で自分を見つめるエリィの指摘にロイドが呆けたその時

「ロイドさんはズルイです。この子と接する機会は均等であるべきではないかと。」

「うふふ、もしかして今度はその娘の攻略をするのかしら♪あ、キーアの場合は既に攻略済みかしらね♪」

「ふえ〜?」

ティオもエリィに続くようにジト目でロイドを見つめ、レンはからかいの表情でロイドを見つめ、その様子を見ていたキーアは首を傾げた。

 

「えっと、何の話だ?」

「ハハ、オマエ恨まれてんだよ。何しろここ数日、寝る時はいつもキー坊と一緒みたいだし。」

「いや、それはキーアが勝手にベッドに入ってくるからで………―――なあ、キーア。ちゃんと部屋を用意したんだからそっちで寝ないとダメだろう?」

ランディの指摘を聞いたロイドは疲れた表情で溜息を吐いた後真剣な表情でキーアに問いかけた。

「だってロイドといっしょだとなんか落ち着くんだモン。めーわくだったらあきらめるけど………」

「い、いや………迷惑ってことはないけどさ。」

しかし悲しそうな表情になって呟いたキーアを見ると慌てはじめ

「ちょっとロイド………何を冷たくしているのよ。あんな事があったばかりなんだからまだ不安かもしれないじゃない。」

「一緒に寝てあげるくらいの甲斐性は欲しい所ですね。」

「レディを悲しませるのは男として失格よ♪」

「俺にどーしろと!?」

ジト目のエリィとティオ、悪乗りしたレンに突っ込まれると苦笑しながら叫んだ。

「クク………ま、当分は一緒にいてやれや。それから外出だが………念の為、もう一人連れて行け。ルバーチェからの打診はあったが一応、用心した方がいいだろ。」

「あ…………―――わかりました。気を付けておきます。」

そしてセルゲイの忠告と助言に頷いたロイドは同行者にレンを選んだ。

 

「さてと………それじゃあ出かけようか。」

「東通りの遊撃士協会支部ね。……寄り道はしない方がいいかしら?」

「いや、キーアの記憶が戻るきっかけになるかもしれない。用心は必要だけど………ギルドに行った帰りくらいなら寄り道もいいんじゃないかな?」

「それもそうね。それじゃあ準備はいいかしら、キーア。」

「うんっ!って、どこに行くのー?」

ロイドの提案に頷いたレンに尋ねられたキーアは元気よく頷いたがすぐに首を傾げて尋ねた。

「遊撃士協会だけど………名前以外覚えていないキーアにはわからないわね。」

「……ゆーげきし。………それってもしかして正義のミカタみたいな人たち?」

「なんだ、知ってるのか?そのくらいの一般常識は覚えてるってことなのかな。」

「そうね………少なくても一般常識から教え込む必要がない分、記憶喪失としてはマシな部類ね。」

名前以外記憶を失っているキーアが遊撃士を知っている様子にロイドは意外そうな表情をし、ロイドの推測にレンは頷いた。

 

「えへへ………なんで行くかは知らないけど。二人といっしょならキーア、別にどこでもいいよ!」

「うっ………」

「む……やるわね。レンでもあんな反則的な笑顔をするのは無理だわ。」

そしてキーアの輝くような笑顔を見たロイドは一歩下がり、レンは感心した様子でキーアを見つめた。

「それじゃあ、れっつごー!」

その後ロイドとレンはキーアを連れて市内を見て回りながら東通りにある遊撃士協会に向かった――――

 

 

説明
第41話
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レンが主人公 レン最強キャラ化 他テイルズキャラも登場 他作品技あり 軌跡シリーズ 

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