ポケットモンスター トライメモリーズ 第56話
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第56話:海底洞窟に生まれる絆

 

「こっちに行ったよねあいつら・・・」  

 

今ラカイがいるのは海底にて発見した洞窟。

アクア団がカイナシティから奪い取った潜水艇を使いここまで来ていることを知った彼女はその跡を追っていたのだ。

そこまではよかったのだが、この洞窟に入るところで見失ってしまった。

 

「いくわよ」

「ラグァ」

ラグジーと共に進むたび洞窟内に地響きがし、奥へ進むにつれてその音や震度がだんだん大きくなっていく。

 

「並大抵のポケモンじゃないわね」

 

おくりびやまで二つの軍と戦った際に聞いたホウエンに眠る2体の神と呼ばれる超古代ポケモンの一匹・・・海の化身カイオーガがここにいるという証拠なのだろうか。

 

「本当にカイオーガがいるということ?」

 

小さい頃、ホウエンを離れジョウトにいた頃のいつの日か絵本か何かで見たような気がするあの伝説が・・・。

 

「・・・急ごう」

「サニーゴ、ミサイルばり!!」

「きゃっ!?」

 

突如奇襲を受けるラカイ。

 

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「誰よっ!?」

 

ミサイルばりは咄嗟に自らの意思でボールから出たアブソルのアルが全て打ち落としたが、その攻撃の正体はつかめない。

ラカイは2匹に静かに、そして確かな声で指示を出す。

 

「アル、かまいたちで次の攻撃に備えて!

ラグジーは敵の気配を察してマッドショット!」

 

アルのかまいたちが旋風を巻き起こしラグジーのマッドショットで敵を捕らえる。

 

「・・・!?」

 

姿を現したのは目に光の宿ってない・・・少年だった。

 

「あなたは・・・まさか、シグレ?!」

「・・・・くくくくくく」

「どうして・・・!

どうなってるのよこれは!」

「カイオーガさまの・・・アオギリさまの・・・邪魔するものは消す・・・」

「まさか操られている・・・!?」

 

言葉が棒読みのように抑揚がなく口元にはうっすら笑みを浮かべてるが目は死んでいる。

一目見ればみたらぞっとするような姿だ。

 

「サニーゴ、がんせきふうじ」

「っアル、シャドーボール!!」

 

岩を影球で打ち砕くと別の方向からアメモースのバブルこうせんが飛んでくる。

そちらはラグジーのれいとうビームで相殺したがそのせいでアルにサニーゴのミサイルばりが命中するのを許してしまった。

すぐきりさくで反撃に出るもじこさいせいで回復される。

 

「へぇ・・・結構やるじゃない。

意外とバトルの才能、あるのかもね?」

「・・・」

「でもそんな心も感情もないまま戦っても・・・いい結果なんて出せないのよ!

アル、ラグジー!構えて!」

 

ラカイがスッ・・・と両腕を上げるとアルとラグジーは技の構えに入る。

 

「ふぅ・・・っ」

 

シグレはアメモースとサニーゴで隙を狙い攻撃に入るがそれよりはやくラカイは両腕を下ろし技の指揮を出す。

 

「10万ボルトからのうずしお!!」

「・・・!?」

「さらに・・・かまいたち!」

 

ラグジーの放つうずしおはアルの10万ボルトの強力な電撃を巻き込みサニーゴとアメモースを巻き込み大きく荒れ狂う。

そこにかまいたちによる竜巻が襲いかかり風の刃とみずのはどうが2匹をおそう。

 

「これでおわりよ」

 

ようやく渦が治まった頃には既に2匹とも戦闘不能になっていた。

それと同時にシグレの様子がおかしくなる。

 

「・・・・っうぅああっ・・・あ・・・うぁっ!

・・・うぅ・・・ぐ、ぁぁああぁぁっ・・・・」

「・・・シグレ・・・」

 

ラカイはシグレに歩み寄る。

混乱し必死に頭を抱える彼はラカイに気づくとそこら辺に落ちてた石をラカイに投げつける。

その事に怒れたアルは主を傷つけた彼に牙をむこうとするが 「だめ」と静止される。  

ラグジーは彼女の指示に従いその場にとどまり納得していない様子のアルをひきとめる。

 

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「うぅぅ」

「シグレくん」

 

彼女は未だ戸惑う少年と向き合うとそっと自分のほうに抱き寄せた。

 

「もう大丈夫だよ。 

誰もあなたを束縛し洗脳したりなんかしない。

だって、あなたはシグレくんという一人の男の子。

かわりなんていない世界にただひとつの存在なのよ」

「・・・・」

「心配しないで・・・もう悩まなくていいの。

わたしが全力であなたの父さん、助けて見せるわ」

 

こん、とラカイのペンダントがシグレの額に当たる。

光がシグレの瞳に宿り、涙しながら目を閉じる。

 

「ら・・・かい・・・・さ・・・・

おと・・・さん・・・とめ、て」

 

と言い残して。 

 

「・・・まかせてね!

ラグジーはこのコをお願い、アル行くわよ!」

 

ラカイはアルだけをつれて洞窟のおくまで行った。

途中何人かアクア団が襲ってきたが全て彼女の前に倒れた。

 

「悪いけど、今はあんた達にかまってられないわよ!」

 

そうして奥へ奥へ進んでいくと最深部にたどり着く。

 

「・・・!」

 

最深部の内装に思わず息を呑む。

 

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ところどころに藍色に輝く水晶が埋め込まれ 澄んだ泉が静かに揺れている・・・・・おまけに空気も澄んでいる。

本当なら美しく見とれてしまうこの大広間もとある人物の存在によりそう感じる余裕がなかった。

 

「・・・アオギリッ!」

「カイナシティやキナギタウン、おくりびやまに続き・・・貴様は何度我々の邪魔をしにくるつもりだ、小娘が」

 

その態度にラカイは己を奮い立たせ彼に向かって叫ぶ。

「いい加減にしなさいよあんた!

自分がこれからなにをしようとしてるのか・・・またあんた達がいままで何をしてきたのかわかってんの!?」

「ここにあのカイオーガが眠っている・・・ そいつの力さえあれば、海で世界を包み全てを支配できる!!」

 

彼は大きく笑うが迷わず引き続き彼を責め立てる。

 

「そんなことはやめなさい!

シグレくんのこと、考えなさいよ!」

「シグレか・・・

ちょっとこの珠に触らせたら一瞬で人形となりおって。

だがまぁ・・・くくく、今まで以上に扱いやすかったぞ」

「な・・・なんですって!?」

 

アオギリは自らの手中にある宝玉をみてにやりとほくそえむ。

シグレは父にだまされてあの藍色の珠に触れ、その力に負けてただアオギリの意のままに動く操り人形にされてしまっていたのだ。

 

「許して・・・おくもんですか」

 

その事実を知ったラカイは憤怒しアルにかまいたちを指揮する。 

―が、その技はアオギリの放ったサメハダーによって彼にその刃が届くことはなかった。

 

「ちっ・・・!!」

 

その間にアオギリは藍色の珠を頭上に掲げ叫ぶ。

ラカイがとめようとしたときには既に、遅かった。

 

「目覚めよカイオーガ!

そしてその力を私のために使え!!」

「しまった・・・!」

 

アオギリの言葉に答えるかのように藍色の珠は輝きだし岩にくっついているいくつもの水晶も同様に光を放ち一線の光線を放つ。

その光線は泉の中央部に集まり、泉は渦を巻く。

 

「キュアアアアアアアアア!!!!」

 

一瞬、そこから姿を現した存在は大波を引き起こし アオギリと共にその場から姿をくらました。

 

「くっ」

  

残されたラカイとアルは大波とその余波に巻き込まれそうになる。

 

「・・・・っ」

「ラカイ、こっちだ!早く腕を伸ばせ!!」

「えっ・・・!?」

 

男の声がして、戸惑いつつもアルを戻し右腕を伸ばす。

不意に腕をつかまれ、なにか凄いスピードで上昇していく。

 

「ーーー!!」

 

そのスピードはとてつもなく速く、ラカイは目を開けられず声も出ない。

 

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「はぁ・・・!!」

 

ようやく目が開けたのは、海底遺跡を出た後だった。

自分は何か硬質な体の鳥ポケモンに乗っていた。

そこには、自分の肉親の姿もあった。

 

「お、お父さん!」

「ラカイ。

大丈夫そうだな・・・よかった。」

「危なかったね?」

「・・・に、ダイゴさんっ!?」

「安心しろ、彼は私達の秘密を知っている」

「これでもホウエンリーグのチャンピオンだからね。」

 

ダイゴの一言でラカイはそういえばそうか、と納得する。

「・・・さてラカイちゃん。

海底洞窟で何があったか話してくれないか」

「わかりました・・・あっ」

 

ラカイは思い出した。

海底遺跡はああなってしまったがラグジーと彼に任せた少年はどうなったのか。

 

「ラグジーとシグレくんはっ!?」

「安心しろ・・・ほら」

 

センリはふっと微笑むとある一点を指差す。

 

「よかったぁ・・・」 

 

海の荒波に負けず泳ぐラグジー。

その背にはちゃんとシグレの姿もあった。

 

「ラカイ、説明頼む」

「・・・はい」

 

彼らの無事を確認できたラカイは真剣にさっきまでの出来事を話す。

 

「・・・そうか・・・アオギリめ、

とうとうやってしまったのか・・!!」

「ごめんなさい・・・」

「いや、お前は悪くないさラカイ。

むしろ・・・よくここまで頑張ったな。

私のほうこそ今までまかせきりですまなかった。」

「お父さんは何も・・・。

・・・・」

 

何かを考え込む娘の姿をみてセンリは言う。

 

「・・・お前はアオギリを止めたいのだろうな」

「!うん!」

「ふふ、流石は親子。

自分の娘さんのことよくわかってますねセンリさん」

 

ラカイは父の言葉に強くうなずいた。

それをみたダイゴはルネの方を強く見つめる。

 

「よし、ルネシティの目覚めの祠へ向かおう!  

おそらくカイオーガたちはそこにいる・・・しっかり捕まってなよ!」

「はいっ!

ラグジーもわたし達についていって!」

 

そういいラカイとセンリもいるダイゴのエアームドはスピードアップしてルネシティへと飛んでいった。

視力のいいラグジーはそれを目でおい海を泳ぐ。

 

 

「・・・・ごめん・・・・」

 

その背で少年が後悔の涙を流してるのを知っているかは、また謎である。

 

 

 

説明
ラカイ視点の話。 主人公よりヒーローやってるヒロイン、大好きですw
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