世界が終わりなんて間違っている 第14話 |
バスから出てきた男は雪乃に銃口を当ててニヤケ顔でこちらを振り返った。雪乃は後ろ手に縛られており抵抗できない状況みたいだ。
雪乃も俺たちが帰ってきたことに気付き
雪 乃「……比企谷君……」
いつもの毅然とした口調はなく弱弱しい声を出すだけだ。
???「……比企谷? あぁなんだヒキガエルじゃねえか! なんだこいつの知り合いかぁ?」
昔呼ばれていたあだ名を聞き男の顔をみると、中学時代嫌っていて先ほど折本が休憩室で起きた暴行事件の犯人と思っていた人物……元同じクラスのサッカー部永山だった。
八 幡「……永山か?」
永 山「呼び捨てにすんじゃねぇよ。ゴミが! あと近づくんじゃねぇぞこの女がどうなってもいいのか?」
俺に怒鳴り声をあげると、銃を雪乃に向けながら威嚇してくる。雪乃に危険が迫る可能性があり俺たちはその指示に従い下がるしかできない。
永 山「ん……なんだ。こんなところにいたのか折本ぉ」
そして俺の後ろにいた折本に気付いたらしく声をかけてくる。折本は雪乃に銃口を向けている永山に対していつもの緩んだ表情を強張らせながら
かおり「永山……なにやってんのさ。こんなことして少しもウケないから」
永 山「キャハハ! お前がウケないってことあるんだな。おまえがよぉあそこから居なくなるからつまんなくてよぉ。せっかく最後俺とお前だけにして楽しくやろうって考えてたのにさぁ」
折本の問いに永山がニヤケ顔を折本の全身見ながら答えてくる。
こいつ今『最後俺とお前だけ』っていったか? つまりこいつは自分と折本以外どうするつもりだったんだ。
かおり「ふざけないでよ。あんたといて楽しいわけないでしょ!」
永 山「つれないこと言うんじゃねぇよ。折本ぉ。そんなヒキガエルといるよりずっと楽しいだろぉが!」
かおり「比企谷の方があんたよりずっといいに決まってんでしょ。それにあんた今『最後俺とお前だけ』って言ったでしょ。他の皆はどうするつもりだったの? もしかしてトイレの近くにいたあの女のひとみたいに……」
永 山「……なんだあの女のこと見てたのかよ。少し遊んでやっただけなのに勝手にくたばりやがってさぁ。ったくつまんねぇ女だったぜ」
かおり「最低! やっぱりあんただったのね!」
永 山「まぁあんな女でも囮くらいには使わせてもらったがな……」
かおり「……何をしたのあんた?」
永 山「簡単なことだろ……あの女をあの変な奴らに見つかるよう俺の進行方向とは違うところに転がしてやつらの注意を向けさせて、その間に俺は悠々とここまで来たのさ。お前らがいなくなって女がいなくてつまらなかったぜ。そしたら休憩室から昨日までなかったバスがあって女が乗ってるって見えたら行くに決まってんだろ?」
かおり「……あんた最低ね」
永 山「最低上等だね。お前もテレビで見ただろ? これは世界中で起きてんだよ。この世界はもう終わっちまってんだよ! だからさぁ死ぬまでやりたいようにやればいいじゃん」
かおり「本当にクズね……休憩室にいた他の人はどうしたのよ」
永 山「あぁ? あの爺とガキたちか……どうせ使えねえんだから生かしとく必要あるか? いるだけで食料浪費するんだから。昨日お前らがいなくなった後、みんなで逃げるって言って休憩室出てやつらの餌にしたに決まってんじゃん。ざまぁなかったぜ。俺が囮になるって言って変な奴らのいない方に逃げて、あいつらには俺と違う方向に逃げろって指さして言ったらホントそのままいっちゃってさぁ。指さした方に変な奴らがいるのにさぁ。変な奴らにやられてやんのwwww」
かおり「狂ってる……なんでそんなことできんのよ」
永 山「いいじゃねぇか。あんなやつらでも役たってくれたんだから……それよりよぉ折本、お前も来いよ。この女と一緒に可愛がってやるよ」
折本と永山のやり取りは激しくなっていく。どうやら永山は折本との会話に注意が向いているようだ。それに気付き永山に気付かれないよう葉山たちに合図を出しやつの死角になる位置に少しずつ移動する。
かおり「行くわけないでしょ! 今までそんなことやっている人と一緒にいれるわけないじゃん!」
永 山「……そうかよ……まぁいいかこいつがいるしなっ」
永山が雪乃の胸をつかみながら折本に興味が無くなったようにつぶやく。
雪 乃「や……やめなさい」
永 山「動くんじゃねぇよ!」
抵抗しようとした雪乃の顔をはたき怒声を上げる。その時
葉 山「雪ノ下さんを離すんだ!」
俺と折本を挟んで反対側にいた葉山が声をあげ永山の注意が向く。
永 山「これはこれは総武高のエース様じゃないですか。女にいいとこ見せようと必死ですかぁ?」
戸 部「あ……隼人君、思い出した。こいつ○○高校の永山だ」
他校とはいえ同じサッカー部ということで知っていたのか葉山に語り掛けると戸部が補足を入れた。そのことで思い出したのか
葉 山「……なるほど。一年の時からレギュラーとして出ていたが問題起こして退部させられたっていうあの永山か……」
永 山「覚えてくれてうれしいぜ! だけどこの状況じゃいくらサッカー部のエース様でもどうにもできないだろ? この女が撃たれたくなかったらそこの道を開けな!」
折本と葉山の間をさしデパートまでの道を開けるよう要求してくる……が
八 幡「雪乃を離しやがれ! クズ野郎!」
葉山が注意を向けていたこともあり気配を消して近づいた俺はクズ野郎に向けて体当たりに成功する。突然の体当たりによってよろけた永山の足を払うと俺と永山は地面に巻き込むように倒れたが、それによって雪乃が解放され葉山が保護する。
永山は幸い腰から倒れたらしくまだ無事のようだ。その様子を見た俺は永山からマウントを取ると顔に一撃いれる。その行為に切れてしまったのかいきなり永山が俺に頭突きをする。その衝撃にひるんでしまった俺はうかつにもマウントを解いてしまった。よろけた俺を永山は退かし腹部を蹴って反撃をしてきた。倒れた俺に
永 山「ヒキガエル風情が調子に乗るんじゃねぇ!!!!」
銃口を向けてきた。
永 山「お前は中学の時から気に食わなかったんだ。ちょうどいいここで死にやがれ!」
かおり「いやぁああッ!! やめて!! だれか! 比企谷を助けて!!」
バン!
乾いた音が辺りに響き渡る。
撃たれたのかとあきらめかけていると……
玉縄ゾンビ「うぅー。がぁー」
いつの間にか近づいていた玉縄ゾンビが俺と永山の間に入り銃口の向きを俺から自分に変えて自分自身で受け止めている。
永 山「なんだ! こいつ! いつの間にきやがった」
永山は銃口を玉縄ゾンビに向けて撃とうとしている。しかしもともと一発しか入ってなかった銃から弾が出ることはなかった。
永 山「来るな! 来るんじゃねぇ!」
遠巻きにしかゾンビと対応してなかった永山にとってこの至近距離でゾンビと遭遇したのは初めてだ。そして頼りにしていた銃も弾が入っておらず引き金を引く音がむなしく響く。
かおり「会長! そんなやつやっちゃえ!」
折本が今までの怒りからかそう叫ぶと玉縄ゾンビは永山を襲いだした。
永 山「やめろ! やめろぉぉお!」
銃も使えずナイフも倒れた時に手放している。抵抗むなしく玉縄ゾンビに喉元を噛みつかれ声にもならない叫びをあげると動かなくなってしまった。
俺たちは玉縄ゾンビの行動に驚きを隠せなかった。たしかにデパート内でも折本の言葉に反応していたが……もしかしたら知能があり俺たちの言葉を理解しているのかと思って
八 幡「えっと……玉縄……もうやつは動かなくなったんでそのくらいで」
恐る恐る声をかけてみるがやめようとしない。折本のみ反応するのかと思い折本の方を向くと理解したみたいで
かおり「えっと……会長そのくらいで」
折本がそういうと折本の方を見つめその場に立ち上がると前に見たろくろ回しを始める。
八 幡「もしかして、折本の言葉だけ反応しているのか?」
葉 山「まさかこんなことがあるなんて……信じられない……」
雪乃を介抱していた葉山が俺の言葉に驚いている。しかしそれもここまで銃声や永山の叫びに呼び寄せられたのだろう。デパートの中からゾンビ達が出てくる。
八 幡「マズイ! ゾンビ達がデパートから出てきてる。早くバスに乗って逃げよう」
かおり「でも……会長どうしよう?」
八 幡「……ダメもとだ。折本。玉縄におとなしくしているようお願いしてみろ」
永山がとった銃を回収しながら玉縄ゾンビの可能性を信じて折本に頼んでみる。そしてその頼みを聞いたように手の動きを止め立ち竦んでいる。恐る恐る持ってきていたガムテープで腕を体に固定した後、口の部分にもガムテープを巻きつけた。その間折本が頼んだようにおとなしくしていた。そして皆がバスに乗った後、バスの中から折本がバスに乗るように話しかけた。するとバスの中に入り入口の段差の所で立ち止まる。折本が座るように話すとその場で座った。
どういう原理かわからないが折本の言葉を聞きその言葉の行動を実行しているようだ。
八 幡「えっと……先生。取り敢えずバス出しませんか?」
バスの外には近づいてきたゾンビが永山に群がっている。
注意が永山に向いている間にデパートから脱出することに成功できた。
玉縄ゾンビという謎が分からないまま……
〜
バスを走らせているとふと隣に雪乃が座ってきた。
少しの間会話がなく気まずい雰囲気であったが、意を決したのか
雪 乃「えっと、比企谷君。さっきは助けてくれてありがとう」
八 幡「……まぁ仲間だからな……当然だろ?」
雪 乃「……仲間……」
雪乃とは思えない素直な礼に驚き、照れながら答えた。その後雪乃が何かつぶやいていたみたいだが
八 幡「話はそれだけか?」
雪 乃「いえ……まだあるのだけどここでは……ねぇ帰ったら時間貰えないかしら?」
雪乃は話しづらそうに上目づかいで見つめてくる。
その可愛さに照れながら
八 幡「……あぁいいぞ」
とぶっきらぼうに返すことしかできなかった。
その回答に満足したのか雪乃は結衣たちがいる後ろの方の座席に移動した。
後部座席では結衣が騒いでいるもののいつもの雪乃の様子に戻ったみたいで百合百合している。
それから持ってきていた食料でみんな昼食をとり、デパートで回収した肉類をクーラーボックスに収納した。
帰り道の途中見つけたドラッグストア・スーパー・コンビニなどに立ち寄り物資を調達した。ドラッグストアでは結衣が女性用品も必要だからと無理矢理についてきたり、コンビニではまたも一か所で動きを止め周囲を確認しながら何かを回収していたが見なかったことにしておこう……
スーパーではデパートと一緒で肉類を冷凍したり、米やまだ大丈夫そうな野菜・果物などを回収して立ち去った。
時間も夕方に近づき最後に朝寄った釣具屋に寄るとロッドや疑似餌・氷・保冷材など回収した。懸念していたゾンビの数もそこまで多くなかったし、玉縄ゾンビが折本のお願いを聞き他のゾンビの足止め・誘導など活躍してくれていたため楽に行動することができた。
そして学校に帰ろうとバスを走らせていると、スマホにメールが来ていることに気付いた。差出人はいろはだったが内容は……見た瞬間「はぁ?」と声を出してしまった。
〜
学校に着き、昨日と同じように校内の仲間に連絡を入れるとエレベーターが動き出す。エレベーターと共に戸塚が降りてきた。それから物資や女性陣・身動きできなくした玉縄ゾンビを先に乗せて、これまた昨日のようにエレベーターを隠し保健室の防衛を施すと男子四人で四階を目指す。
戸塚と材木座が待っている間にバリケードを校舎棟三階のところと渡り廊下に広げていたみたいだった。戸塚に感謝しつつ四階の防火扉を開けるとそこには
???「はぁい。比企谷君お姉さん一人じゃつまらなかったから来ちゃった(ハート)」
いろはにメールで伝えられていた人物がいて雪乃に抱き着きながら立ちはだかっていた。
【ただいまの生存確認人数21人と2匹・ゾンビ1匹?】
説明 | ||
第十四話 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1347 | 1334 | 0 |
タグ | ||
台本形式 ゾンビ やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 | ||
showtさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |