ポケットモンスター トライメモリーズ 第61話 |
第61話:レックウザ、目覚める
空の柱の頂上は厚い雲に覆われ、人の視界を奪うほどに真っ白な空間だった。
少年が何度も瞬く先には、なにか巨体がいるのがうっすらと浮かぶ影でギリギリわかる「なにか」がいた。
ここにいる「なにか」はひとつしかない、とクウヤはその「なにか」に問いかける。
「お前がレックウザなのか!?」
「・・・・・・」
「どうしても頼みたいことあるんだ・・・聞いてくれ!」
「・・・・・・」
「今ちょっとあれやこれがあってグラードンとカイオーガが目覚めて暴れちまってるんだ!
このままじゃこのホウエン地方はばらばらに壊れちゃうよ!
だからお願いだ、あの2匹の戦いをとめてくれ!」
「・・・・・・」
未だ微動だにせずましてや声が届いているのかも分からないがそれでもクウヤは話を続ける。
「そりゃーさ、あの2匹が戦う原因作ったのは人間だよ。
分かってたのにちゃんととめることができなかったオレももちろん悪い。
でもそのこと、あとでいっぱい謝る!
だから今だけで良い、オレに・・・オレ達に力を貸してくれ!!!」
「グ・・・グォォ・・・」
「!」
「グゥゥオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
空の化身は、少年に応え高く吼えた。
「うわぁ・・・!」
その咆哮により突風が巻き起こり雲を払う。
アーチに支えられたおかげでクウヤは吹っ飛ばされずに済んだ。
「シャモ」
「さんきゅーな、アーチ・・・レックウザ!」
雲が晴れ、そこに佇んでいたのは翠色の龍だった。
その姿を見、クウヤは目を丸くする。
「あの時の・・・!」
カナズミからムロへ行くとき上空に見かけたポケモン・・・
それが、今目の前にいるレックウザだったのだ。
「グゥオォォッ!」
「・・・うん、行こうぜ!」
クウヤはアーチを戻すとレックウザの頭に乗り振り下ろされないように角をしっかり持つ。
レックウザは凄いスピードでルネシティへ飛び去っていった。
ルネの街並みは跡形もなく崩壊しグラードンは日照りを利用してのソーラービーム、カイオーガはそれに対抗しれいとうビームを放ちぶつけ合う。
この2匹は自身をコントロールできずきりさこうとすれば守られ ハイドロポンプとだいもんじはお互いの技をかき消しあう。
「・・・ふぅ」
その戦いの最中、カナズミ方面の人やポケモンを救出してたジンキは
強い日照りで体中汗だくになり、時折火傷などの傷を負っていた。
「とりあえず結構な人やポケモンは助けたが・・・
油断はできないな。
大丈夫かボーマンダ、ハッサム?
途中何度もアクア団やマグマ団と連戦だったろう。
あとは他の仲間に任せてお前達は休むか?」
「ボゥ!」
「ハッサ、ハッサム!」
ジンキの言葉にボーマンダたちは首を横に振る。
仕方ないな、とジンキはハッサムとボーマンダを撫でる。
「・・・・もう誰も失いたくはないからな。
最後まで俺に協力してくれ」
「ハッサム!」
「ボマー!」
ボーマンダに再び乗り上空からハッサムとラプラスに指揮を出し人やポケモンがまだいないか確かめる。
「ジンキ!」
そのとき、硬質なポケモン、メタグロスに乗った青年がこちらに向かってきた。
「ジンキ、どうだいそっちは?」
「ダイゴか。
今ハッサムとラプラスに確かめてもらっている・・・てかお前、凄い有様だな・・・風邪引くぞ?」
「君こそあちこち火傷と怪我してるけど?」
ジンキの言うとおりダイゴは大雨に降られた為びしょぬれだ。
お互いの様子を見て、苦笑いする。
服の一部を絞りつつダイゴは話を続ける。
「ミナモ方面の人々はなんとか救済したし、四天王のみんながポケモンを助けている、心配しなくてもこっちは大丈夫だ」
「誰も心配はしてねぇよ。大丈夫という保障あるからな」
「それに、セイ君が言うにはクウヤ君達はレックウザを目覚めさせようとしてるようだね」
「ああ・・・リクガは目覚めの祠でマグマ団の首領と戦ってる」
「心配?」
「あたりめぇーだ」
「ふっ」
ジンキの返事にダイゴは思わず笑う。
「あとはジムリーダーや四天王に任せても大丈夫だろう。
ルネに戻ってみるか・・・!?」
「どうした?・・・・!!」
「まさかあれは・・・!」
チャンピオンと呼ばれる二人の男は驚きを隠せなかった。
遠目でも分かるレックウザの姿・・・。
その雄雄しい存在は多くの人々やポケモンに衝撃を与え圧倒した。
「見えたぜ、レックウザ!
あそこだ、あの2匹頼むぜ!」
「グゥオオ!」
「え、離れてろ?
分かった!アーチ!!」
なんとなくレックウザの言葉が分かりクウヤはアーチと共に岩山へ飛び降りそのポケモンから離れる。
クウヤを肩に乗せ持ち前の身体能力を生かして岩肌を飛び移るアーチ。
安全なトコに着くと、アーチはクウヤを降ろした。
「何が起こるんだ?」
「クウヤー!」
「リクガ!」
ジュカインと共に彼の元に現れたのはリクガ。
クウヤ同様パートナーに抱えられてきた彼は翠色の龍に目を向ける。
「あのポケモンは、キミが呼んだのか?」
「ああ、レックウザだ!」
「レレレレックウザ!?あれがっ!?」
初めて見るかの伝説のポケモンにリクガは驚く。
そんなやりとりをしてる間にレックウザはグラードンとカイオーガの間に降り立ち強く高く咆哮をする。
「グキュウウウァアアアアアアアアア!!!!!!」
その声はルネシティ内のみならずホウエン全土に響き渡った。
人々はただその咆哮を聞くことしかできず、それが収まった時にはみな、何があったのか分からなかった。
ただ分かることといえば、豪雨と日照りがとまったということ・・・。
「これがレックウザの・・・『空の化身』と伝えられた第3の超古代ポケモンの力なのか・・・・」
「あそこまで戦っていたグラードンとカイオーガが一瞬鎮まった・・・・」
「あ、兄さん!」
「ダイゴも!」
ジンキとダイゴが語るとおり2匹は争いをやめ グラードンは地底へ、カイオーガは海底へとそれぞれ姿をくらました。
ホウエン全体を揺るがす戦いはレックウザの咆哮により終わりを告げたのだ・・・
「そう、戦いは終わったのか・・・」
「・・・・」
「・・・・っ、サンキュー、レックウザーーーッ!
こんな戦いを起こしてごめんよぉーーー!」
「クウヤ君・・・」
「でもこれは約束するよ!
もう2度とあの2匹戦わせない!
お前に苦労かけさせねーからなぁ!!!」
「グォォォーーーーーー!!」
クウヤの言葉を聞きレックウザは高く吼えると天高く飛び立っていった。
クウヤたちは姿が見えなくなるまでその「空の化身」を見送った。
少年はへへへっと笑う。
「これで・・・これでいいんだよな!
大変だったけど良い思い出なんだよなこれも!」
空には大きな、虹がかかっていた・・・・。
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