真・恋姫無双〜薫る空〜9話(黄巾編)
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【薫】「あ゛〜…頭いてぇ……」

 

【穏】「大丈夫ですか〜?」

 

昨日、雪蓮にご飯の誘いを受けた辺りまでは記憶があるんだけど、なぜかその後からの事を覚えていない。

 

冥琳が複雑そうな顔をしてたから、あえて聞くのはやめたけど、おきてからずっと悪寒がとまらない。

 

しかも、目が覚めたらいきなり真名の交換なんてしてくるし…。

 

雪蓮曰く、「だってかわいいんだもん♪」…だそうだ。

 

一応、捕虜…なんだけどね。

 

そしたら、それに便乗して穏まで真名を教えてくるし、張り合って祭も名乗ってきた。

 

そんな空気に負けて、結局冥琳の真名も教えてもらった。

 

で、現状は、こんな状態でも部屋に閉じこもってるのはあたしの性分じゃないし、とりあえず部屋から出たいという事で、穏が同行しているところ。

 

一応見張りということなんだが…

 

【穏】「〜〜〜♪」

 

効果あるんだろうか…?

 

穏がどこいきますか〜?なんて聞くもんだから、部屋をでて、何処かに行きたいというわけでもないので、適当に「書庫へ行きたいんだけど…」なんて話しをしたら

 

【穏】「だ、だだだd、だめです〜〜!!書庫だけはだめなんです!!」

 

【薫】「え、でも…」

 

【穏】「だめなんです!!」

 

という具合におもいっきり拒否されてしまった。

 

聞いたのはそっちなのに…

 

結局そんな場所なんて思いつかなかったので、穏についていくことにした。

 

というか、昨日つれてこられたばかりで、行きたいところなんてあるはずないんだけどね。

 

 

 

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とことこと歩いて、行き着いたのは少し広い部屋。

 

広間…?っぽいところにでた。入った瞬間嫌な予感がしたが、確めるまもなく的中した。

 

【雪蓮】「薫〜〜〜〜♪」

 

【薫】「ひゃいっ!うぷ…」

 

待ち構えていたように雪蓮に抱きしめられ胸に顔をうずめられる。

 

【薫】「んんんん!!!」

 

【雪蓮】「あんっ…薫ったら、暴れちゃ駄目よ〜」

 

い、息ができない…。

 

【冥琳】「雪蓮…」

 

【雪蓮】「あら、冥琳。どうしたの?」

 

【薫】「んんん…っ…」

 

【冥琳】「薫が苦しんでいるから、その辺にしておけ」

 

【雪蓮】「え?」

 

【薫】「………。」

 

【雪蓮】「か、薫!!?ちょっと大丈夫!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――。

 

 

 

【薫】「……うぅ……死ぬかと思ったよ…」

 

【雪蓮】「ごめんね〜」

 

【冥琳】「しぇ・れ・ん?」

 

【雪蓮】「あぅ…ごめんなさぃ…」

 

語尾になるほど声が小さく、雪蓮が謝る。

 

すっかり馴染んでしまったように見えるだろうが、印象が強烈過ぎてむしろ、体が拒否反応起こしそうになっている。

 

それにあまりにも突発的なことだったので、気になっていたことが今になってようやく思い出し始めた。

 

【薫】「い、いいんだけどね…死ななかったし…。…あ、そういえば、あたし穏についてきたんだけど、ここで何するの?」

 

【冥琳】「あぁ、黄巾討伐の命が袁術にも下ったのでな、我々も動かねばならんということさ」

 

【薫】「??…袁術?なんで、袁術の任務を…って、あぁ、たしか今は客将になってるんだっけ」

 

【雪蓮】「む………まぁ、そうなんだけどね…」

 

 

急に雪蓮は不機嫌そうな顔になる。

 

やはり呉の王といっても、現状は袁術の客将。つまりは傘下に成り下がってしまっているわけだから、気分としていいものではないだろう。

 

【穏】「これから、その軍儀というわけなんですよ〜」

 

【薫】「あ、それじゃあたし、部屋に戻ったほうがいいよね」

 

あそこに戻るのはあまり好きではないが、さすがに捕虜の立場で軍儀を聞くのはまずいだろう。

 

【冥琳】「すまないな。そうしてもらえると助かる。」

 

【薫】「ううん〜」

 

そう言って、来た道を引き返して部屋へ戻る。

 

あぁ…何してんだろ、あたし。

 

 

【薫】「華琳、怒ってるかな…」

 

怖いな…。

 

 

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薫が広間を出た後、雪蓮達は軍議を始めていた。

 

 

【雪蓮】「それでどうする〜?」

 

【冥琳】「報告では、黄巾は隊を2つに分けているようだが…」

 

【雪蓮】「そっちじゃなくて、薫のことよ」

 

【穏】「薫さん、ですか?」

 

【祭】「まぁ、ずっとこのままというわけにもいかんじゃろうが…」

 

【冥琳】「はぁ……今はこちらが先決だ。」

 

雪蓮の言葉にそれぞれが反論する。

 

だが、それにむ〜〜と頬を膨らませ、雪蓮は言葉を続ける。

 

【雪蓮】「そんなのどうせ私達が本隊の相手させられるんでしょう?」

 

【冥琳】「だから、それをどうやって叩くかを話し合っているというんだ」

 

【雪蓮】「そんなの袁術ちゃんから兵でもなんでも借りれば済むじゃない。ほら、解決した♪」

 

【冥琳】「………………。」

 

【穏】「………………………。」

 

【祭】「………………………。」

 

そんな言葉に誰もが絶句し、あまりにも突拍子もない言葉に冥琳は「本気か?」などと声をあげてしまう。

 

【雪蓮】「もちろんよ。呉のためなら、それくらいしてやるわ。」

 

【冥琳】「………。わかった。なら、薫のことだが…あれは後々曹操との交渉で使えそうだから、それまではおいておくつもりだ。」

 

【祭】「ふむ…」

 

【穏】「それでいいんじゃないでしょうか〜」

 

それには皆、納得なようで、祭や穏もうなずいている。だが…

 

【雪蓮】「ん〜〜。うちに引き込んじゃだめかな?」

 

【一同】「は??」

 

雪蓮の言葉がまるで時間が止まったように、今度は思考ごとその場を凍りつかせてしまう。

 

 

【冥琳】「正気か?奴は曹操の軍師だぞ。自分から毒を食らうようなものだ」

 

【祭】「敵を引き込むなど、いくら策殿の意見でも賛成できんぞ」

 

【穏】「あまり私達に利があるようには思えませんが……理由でもあるんですか?」

 

【雪蓮】「理由?勘だけど?」

 

【穏】「あぁ〜〜。なるほど」

 

【冥琳】「穏も納得するな!…さすがに今回ばかりは雪蓮の勘でも無理だな。」

 

【雪蓮】「えぇ〜、そうかなぁ。結構きたんだけど…」

 

【冥琳】「とにかく、薫の件は保留だ。それでいいな」

 

【雪蓮】「はぁ〜い」

 

 

 

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部屋に戻った後、薫は部屋の中に置かれていた椅子に腰掛けていた。

 

【薫】「………あぁ…どうしよ…」

 

それはもちろん、自分のおかれた状況の話。

 

多少強引とはいえ、曹操軍の軍師をすることになり、初めて指揮することになった。

 

相手は指揮官もいない賊なのだから、特に心配する要素も無い。

 

そう思っていた。たぶん、華琳や桂花も。

 

実際、討伐自体は何も問題なく、できた。むしろ手ごたえが無さ過ぎたくらい。

 

だけど、それを帳消しにして尚且つ逆側へ振り切るほどの失態。

 

うっかりで国境を越えてしまったことだ。

 

兵への責任転嫁も、自己嫌悪も一通りやった上で、改めて冷静になり、これから先のことを考えると、頭が痛くなりそうだった。

 

【薫】「何気に真名なんか交換しちゃってどうすんだ、あたし〜〜〜…」

 

それも悩みの原因のひとつ。敵…とまでは行かないが、他勢力の武将と真名なんて交換してしまって、この先何かあったらどうするつもりなのか。

 

【薫】「………どうしよ、逃げる?…いやいや、たぶん無理でしょ。……あぁ。でも、どうしよ〜」

 

 

答えが出ず、椅子から立ち上がったり、座ったり、寝台の上でゴロゴロしたり。

 

【薫】「んぁぁぁぁぁぁああああ〜〜〜〜〜〜〜」

 

堂々巡りする思考に嫌気が差し、奇妙な声をあげる。

 

【穏】「楽しそうですね〜」

 

【薫】「ひゃぁっ!!」

 

突然の声に飛び上がる。

 

【薫】「…の、穏…?あぁ、びっくりしたぁ……」

 

【穏】「はい。薫さんにお伝えすることあるんです」

 

【薫】「な、なに…?」

 

自分がどうなるのか、という恐怖と好奇が入り混じって、複雑な感情が生まれる。

 

【穏】「ここにいる間は、侍女さんをしてください♪」

 

【薫】「………………はい?」

 

侍女?

 

ジジョ?

 

ジョジョ?

 

いやいや。

 

【薫】「はぁ!?侍女!?」

 

【穏】「はい〜。」

 

【薫】「なんで!」

 

納得いかず、穏に飛び掛りそうになるのを押さえながら聞き返す。

 

【穏】「薫さんは捕虜ですから、戦に関わらせるわけには行かないんですが、ただボンヤリさせておくのも癪なんだそうです〜」

 

【薫】「だからって……」

 

まだ、華琳のところのほうが待遇が良かった。と、思わず比べてしまう。

 

いや、華琳のところにいたから、この扱いか?

 

【薫】「………はぁ…わかりました。…司馬懿、しっかり働かせていただきます…」

 

【穏】「はい、おねがいしますね〜」

 

 

 

 

こうして、この日から、司馬懿・侍女になる日々が始まった。

 

 

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翌日。

 

 

 

【侍女】「じゃ、この部屋の掃除おねがいしますね」

 

【薫】「は〜い」

 

そういって案内されたのは、どこかも、誰が使っているのかも分からない一室。

 

部屋に入り、適当に手順を教わった後、じゃあ、あとよろしく。といった感じで侍女は部屋を後にし、薫は一人になった。

 

【薫】「じゃぁ、始めるか…」

 

ぼやくように呟いて、掃除を始める。

 

箒で床を掃いた後、はたきで壁のほこりを落とす。

 

【薫】「ていうか、ごみなんて全然ないじゃん」

 

ある程度掃除を進めてしまってから言うのもなんだが、この部屋はずいぶん綺麗だった。

 

ほこりはおろか、大きなものも綺麗に整頓されていて、掃除の必要性を感じないくらいだ。

 

【薫】「誰の部屋だろ」

 

あまりに綺麗に保存されていたその部屋をつい見渡してしまう。

 

【冥琳】「あまりじろじろ見られるのは好きではないな」

 

【薫】「へ?…あ、冥琳」

 

後ろから声が聞こえたので、振り返ってみれば、そこにいたのは冥琳だった。

 

どうやら、この部屋は冥琳の部屋だったようで、少し顔が赤くなっている。

 

【薫】「あぁ、ごめんなさい。掃除しろっていわれたんだけど、ごみなんて見当たらなかったから、つい」

 

【冥琳】「いや、物を動かさないだけさ。それより、すまないな。」

 

【薫】「え?」

 

【冥琳】「侍女にするように命じたのは私だ。」

 

そういうと、冥琳は申し訳なさそうに、表情を暗くした。

 

【薫】「ううん。部屋ですることなんて何も無いし、外に出られる分こっちのほうがいいよ」

 

【冥琳】「そうか」

 

冥琳はそれだけ答えて、机についた。どうやらこれから仕事を始めるようだ。

 

【薫】「あ、邪魔になるならでよっか?」

 

【冥琳】「いや、気にするな。そのまま続けてくれ」

 

【薫】「そう…?」

 

じゃあ、と薫はそのまま掃除を続けた。といってもやはり、ごみなどは無いので、拭き掃除へ変更した。

 

 

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しばらく静寂が続き、冥琳が筆記を続け、カリカリと音が響き、外からは鳥の声などが聞こえた。

 

気にするなとは言われたが、やはり邪魔するのは本意ではないので、できるだけ離れたところから掃除するようにした。

 

【冥琳】「ふ…」

 

壁やら柱やら、自分でも少ししつこいかな…と思うくらいに雑巾がけを続け、さすがに拭くところもなくなってくると、今度は少し移動し、窓枠へ。

 

その間も、ずっと冥琳は机に向かったままだ。

 

そして、ついには窓枠、寝台など、一通り済ませ、もう冥琳の周りしか残っていなかった。

 

冥琳の仕事はまだ終る気配を見せず、薫は少し立ち尽くす。

 

【冥琳】「ん、あぁ、終ったのか。」

 

【薫】「………………。」

 

冥琳の声にも反応を見せず、薫の視線は机の上に注がれていた。

 

【冥琳】「?………気になるのか?」

 

【薫】「え…あ………。ごめんなさいっ」

 

薫はすこし驚いたように謝り、顔をそらす。

 

【冥琳】「いや……………掃除はおわったのか?」

 

【薫】「あ、うん。あとその机だけなんだけど…」

 

【冥琳】「そうか。…ならこの部屋はもういい。別のところへ行ってくれ」

 

少し顔をこわばらせ、冥琳は薫に言い放つ。

 

【薫】「うん…」

 

気落ちしたように、薫は部屋から出て行った。

 

【冥琳】「………………………。」

 

冥琳は薫が出て行った後、閉じられたその扉を眺め、先ほど薫が覗いていた資料に目を向ける。

 

【冥琳】「………はぁ。よりによって軍部の人事資料か…」

 

「よくもまぁ、狙ったように…」と続け、冥琳はそのまま、再び机についた。

 

 

 

 

 

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薫がいなくなり、数日が経過した。

 

俺達は帝からの勅命により、現在の大将軍・何進を頂点に各地の黄巾党討伐に当たっていた。

 

桂花の指揮によって放たれた間諜は次々と賊の拠点を発見、報告する。

 

その中の一つを陥落させる際、三人の味方を得る事が出来た。

 

いつか、この陳留の街でも見かけた子達で、名を楽進・李典・于禁といった。

 

三人の配置は俺の部下という事で収まり、俺達は真名も預けあい―俺は名を教えただけだが―、俺達の軍はさらに勢いを増す。

 

だが、それほどの成果を挙げても敵の本陣までは見つけられず、どこか決めてに欠ける状態が続いていた。

 

【一刀】「凪、そっちは任せるから、よろしくね」

 

【凪】「は。隊長」

 

楽進こと真名を凪。あたらしく内に入った三人の一人で、三人の中で一番生真面目な子だ。

 

他の武将とは異色の武を持ち、氣というものを使うらしい。

 

基本的に武器は使わず、拳や足で戦う拳法スタイル。との事だ。

 

まじめですごくいい子なのだが、いかんせんまじめすぎるのが困りどころ。

 

融通の聞かない場面もちらほらあった。

 

そんな凪は、今は俺と共に警邏の最中であり、二人で一緒に回る事もないと作業を分担していたところだ。

 

黄巾党は、今は本陣の位置もつかめず八方塞がりなために、俺達にできる事なんて何も無く、結局いつもどおりの仕事をこなすしかなかった。

 

歯がゆさもあったが、華琳からの指示もあり、俺は耐える事しかできない。

 

凪とは一度分かれ、警邏が終了した後、もう一度合流することになっている。

 

軽く手を振った後、俺は凪とは反対方向へ歩を進める。

 

俺が向かった先は、主に食事処が立ち並ぶ区画となっていた。

 

そんな場所だから、集まる人間は決まっていたりいなかったり。

 

 

 

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【季衣】「♪」

 

ある程度、進んだところでやっぱりといった具合に、いつもどおりな人間を目にする。

 

こちらを回ったときはいつもこの子を見かける。そして、これもやはりといった様子でその両手には点心が抱えられていた。

 

【一刀】「よ、季衣。」

 

【季衣】「あ、にいちゃん。何してんの?」

 

本当に不思議そうな顔でこちらを伺ってくる。これが本当に分かっていないから少し頭が痛くなる。

 

【一刀】「何って、警邏だよ。いつもやってるだろ」

 

【季衣】「あ、そっか」

 

興味なさそうに呟いて、手に持っている点心に再び視線を落とす。

 

そっちから聞いてきたのに。

 

【一刀】「季衣も一緒にくるか?暇だろ?」

 

【季衣】「ん〜〜〜。どうしよっかな」

 

食べながら、困ったように考え出す。この子の場合、こういう顔をして考えて出した答えはいつも俺が望んだものとは反対になる。

 

【季衣】「やっぱいいや。」

 

ほら。

 

【一刀】「そっかぁ。なら仕方ないな」

 

無理に誘っても仕方ないので、俺は適当に切り上げる。いや、別に季衣が嫌いとかじゃなくてこの子の場合こうすると…

 

【季衣】「んんん〜〜〜…。やっぱりついてくよ!」

 

という具合になる。

 

こんな調子で大体こっちを回るときはいつも季衣と一緒に回っている。

 

手にぶら下げた点心を次々と口へ運び、片手が空くくらいの量になってから

 

【季衣】「んじゃ、いこ♪」

 

と、季衣は俺の隣に並ぶ。こういうところがほんとにかわいいんだよな。

 

【一刀】「おう、今日はどっちから回ろうか。」

 

季衣はこの街の裏道とかにはかなり詳しくて、ただ回っても仕方ないと、一緒になったときはほぼ毎回違う道順になっている。

 

【季衣】「ん〜〜、この時間だとあそこのラーメン屋が仕込み終わってるから、こっちから向こうへ抜けれるよ。」

 

【一刀】「お、そっか。じゃあ、そっちだな」

 

俺達は季衣が示した方向へ歩き出す。

 

 

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だけど、こんないつもどおりな事をしていても、俺の気持ちはどこか違う方向へ向いている。

 

それは黄巾が今もどこかで反乱を起こしているというのもあるが、なにより俺はあの張角と知り合ってしまったから。

 

彼女が何故こんな事を続けるのか。

 

その真意が気になって仕方なかった。

 

俺が知っている彼女は、歌が好きで、そのために大陸のあちこちを旅している女の子の天和だ。

 

一晩話しただけで、向こうはもう覚えていないかもしれない。だけど、俺にはやはり彼女の存在を無視できなかった。

 

【季衣】「にいちゃん!!」

 

【一刀】「あ、あぁ、季衣。どうした?」

 

【季衣】「どうしたじゃないよ。さっきから呼んでるけど全然気づかないから。そっちは行き止まりになってるからこっちへ曲がらないと駄目だよ」

 

【一刀】「あぁ、ごめんな」

 

どうしようもない疑問に思考をめぐらせても仕方がない。

 

今は警邏に集中しよう。……まぁ、これもいつも思うことなんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

季衣との警邏が続き、時間の経過も忘れ始めた頃、空が茜色に染まっている事に気づいた。

 

【一刀】「あ、もうこんな時間か」

 

【季衣】「ほんとだ。どうりでお腹すくはずだよ〜」

 

【一刀】「ははは。そういえば俺もすこし腹減ったな」

 

さすがに一日動き回ったあとだと、お腹も減る。

 

だけど、この後凪と合流する約束があるため、俺達は一度もとの場所へ戻る事にした。

 

その途中で、街の人々も一仕事終えた頃だろうか、皆が同じような話題で帰路についていた。

 

つまり、誰もが夕食を期待していた。

 

そんな中を歩きながら、俺達は先ほど凪と分かれた場所へ近づき、次第にそこに立っている人影があることに気づいた。

 

【一刀】「おーい、凪〜」

 

【凪】「ん、あ、隊長!」

 

俺の声に気づき、凪がこちらへ駆け寄ってくる。

 

【凪】「お疲れ様です、隊長。この後はどうしますか?」

 

【一刀】「あぁ、今季衣とも話していてさ。お腹も減ったし、どこかでご飯でも食べてから帰ろうかって思ってるんだけど、凪もどう?」

 

俺の言葉に凪は、それほど考える事も無く。

 

【凪】「はい。お供させていただきます。」

 

そういった。

 

それならと、俺達はどこか近くの飲食店…ではなく、季衣が薦める店に入った。

 

季衣がオススメする店なら間違いは無いんだろうが、正直先に言っておいて欲しかった。

 

 

 

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店に入る際、すれ違った人の話が偶然耳に入ってきた。それは特に気にする事もない話。

 

働いた後の飯はうまいなど、そういったものだ。

 

別に普通の会話。

 

だけど………

 

 

【一刀】「皆、働けば疲れるよな…」

 

【凪】「え?あ、はい。もちろん」

 

【季衣】「そりゃそうだよ〜」

 

俺の当たり前な言葉に席についている二人は首をかしげる。

 

【一刀】「誰でも……腹は減るんだよな」

 

【凪】「隊長?」

 

やはり、突っ立ったままの俺に凪は疑問の色を浮かべる。

 

その俺は…さっきの言葉がひっかかっている。

 

誰でも、腹は減る。

 

それはあの黄巾党だって同じなんだ。

 

腹が減ったら何をする…?飯を食べるだろう。当たり前だ。

 

【一刀】「それが……なかったら…」

 

それだけ呟いて、気づいたとき、俺は机を両手で叩いていた。

 

昼間からの疑問が解けていくように、一つの可能性を生み出して。

 

【凪】「隊長、どうしたんですか?」

 

【一刀】「あぁ…凪、悪い。ここ払っとくから、俺先に戻るわ」

 

【凪】「え、隊長!?」

 

【季衣】「にいちゃん!」

 

二人の声が聞こえたが、俺はそれを受け止める余裕すらなく

 

既に頼んであった注文の分の料金を支払い、俺は店をでて、走った。

 

どうして気づかなかったのか。

 

当然ながら、反乱を起こすのだから、相手は人間だ。

 

だったら、補給が必要なのは当たり前。

 

なら……

 

【一刀】「それを絶ってやればいいんじゃないか…!」

 

それが、答え。

 

彼女へ近づくための。

 

城へ入り、広間へと続く通路を抜け、その扉を開ける。

 

【一刀】「華琳!!!」

 

【華琳】「一刀?」

 

【桂花】「あ、あなた、突然何を――」

 

華琳に話に来たのだが、その前には桂花がいた。何をしていたかはこの際気にしていられない。

 

俺は話し、考えていた案を華琳へと説明する。

 

欠けていた決め手。

 

それが見つかったのだから。

 

 

 

説明
カヲルソラ9話

呉に行ってしまった薫のその後とその頃の一刀達の動きです。自分でもまさか薫がこんな方向へいくとは思ってなかった(´・ω・`)


小説書いてたらまたこんな時間になってしまいました。すみませんorz
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コメント
薫が・・・侍女・・・・薫が侍女・・・・・GJ!(Poussiere)
「お手柄お手柄♪」(ブックマン)
三好八人衆 様:誤字報告ありです。修正しました!(和兎)
これから、一刀君は何をしてくれるのかー・・・・・次回期待!(いずむ)
誤字報告です。7P2行目の『可進』は『何進』です(三好八人衆)
メイド薫だ〜w メイド服着てくれ〜〜〜www 一刀は本編より活躍しそうな予感(*>∀<)(フィル)
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