リリカルなのはZ
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 使徒の姿が確認され、ガンレオンが出撃準備をしている間に研究所へと避難してきた人達の誘導が始まる。指定された避難所。学校やNERVが用意した施設に向かう人達の中に避難できなかった人達を匿うのがグランツ研究所なのだが、指定区域に向かう人よりもこちらに向かってくる人達が多い。

 それはエヴァよりもガンレオンの方が頼りになると思ってくれているのだろうか。だが、

 

 「すいませーん。研究所へ避難される皆さん、心苦しいのですがもうこちらの方はもう満員ですので国が指定した場所へと移動してくださーい」

 

 「まだ怪物は遠くにいますので慌てずに移動すれば十分に間に合いますので!」

 

 (((ビッビッ)))

 

 アミタとキリエ。チヴィット達が『満員御礼』『場内満席』という旗を振って、研究所へと向かおうとしている人達に向かって避難誘導を行っている。避難してくる人達の中には子供が多くグランツ研究所では原作『鋼鉄神ジーク』を元にして作られたアニメ『鋼鉄神ぎー君』を放映して子ども達に大うけしているのだがその影響もあってか家族連れが多い。確かに研究所はアトラクションがてんこ盛りのアミューズメントパークだが使徒のおかげでなかなか進まず、ブレイブデュエルが整備されたところ以外ではチヴィット達関連の商品と高志達が歌っているCD販売所ぐらいしか機能していなく、D・エクストラクター七号機安置所には一般人は入れない。

 ガンレオンで作った簡易的な避難所も避難指示が出て五分もしないうちに満員数以上。あぶれた人達はブレイブデュエルを行う広場でガンレオンが出撃するの映像に向かって応援していた。

 研究所に入れなかった人達の中には多くの不満があり、ガンレオンに会いたかったという子ども達も御所望のスーパーロボットがいない事に不安げであったが怪物を倒しに行ったと聞かされて目を輝かせた。正義の味方が怪物を倒しに行ったと聞かされば文句は無いようだ。

 

 「ふぅ、これで問題無く誘導が出来ればいいんだけど・・・」

 

 「ちょっ、アミタ、それはフラグに」

 

 避難誘導に一息つこうとした時にアミタが零した台詞にキリエは嫌な気配を覚えた。そして、その気配は現実になる。

 軽い地震が起こったかと思えば町のはずれから多種多様の妖鬼人が出現してきた。その数は約五十。それが一斉に町に攻め入って来たのだ。自衛隊が来るまでに三十分ほどかかる。だが、自分達が持っているD・エクストラクターには安全装置がかかっており戦闘は出来ない。戦闘行動に入るのは本当に最終手段だ。それを今、使うべきか、と悩んでいた。

 

 『安心しなさい。既に援軍は出向いているから』

 

 「パパ、援軍って」

 

 D・エクストラクター越しに聞こえた父の声を証明するかのように自分達の頭上を越える数本の光が見えた。

 

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 「私達がこの世界に出来る最後の大仕事や。あの野菜もどきたち一体残らず収穫。もとい、駆逐するで!」

 

 「あれって、食えるのか?」

 

 「どうなんでしょう?成分的には動物的タンパク質が多いから収穫というよりも狩猟になるんじゃ?」

 

 「一狩り行こうぜっ」

 

 「主、自重してください」

 

 バリア時ジャケットを纏った八神ファミリーがフローリアン姉妹の頭上を越えながら怪物たちに向かって自分達の獲物の矛先を突きつける。心なしか、妖鬼人達も一瞬足を止めたようにも見えた。

使徒の出現の所為で物資の流通に不備が出て食料不足も否めないこのご時世、憎いあんちくしょうと一緒に出てきたあいつ等自身に払わせる。

 そんな考えが口に出たはやてを押さえる様にザフィーラが言う。

 フェイトはなのは達の身柄の保護という名目でその関係者をいち早く地球で一番安心できる場所。魔法によるグランツ研究所への短距離転移である。それが終わり次第、研究所の最終防衛ラインに出るというものだ。

 

 「フェイトちゃん達はちゃんと研究所に向かっていればいいんだけど・・・」

 

 「大丈夫だろ、別世界とはいえ赤の他人のあたし等から見てもあいつ等はフェイトに構いまくりだからな」

 

一見身内びいきにも聞こえるが、管理局、つまりはアースラだが、そっちは応龍皇の攻撃に見舞われている。NERVは怪しくて頼れない。逆にグランツ研究所はフェイト本人に対してはフランクに付き合っている。三つのうち二つが駄目になっているからグランツ研究所ぐらいしかない。最終防衛ラインを担う代わりになのは達の保護もしてくれるだろう。なにしろそんなに量産できないD・エクストラクター八号機を貸し出してくれたのだから。

 

 「あの妖鬼人とかいう怪物の群れだけど正直に言って私達じゃ足止めが精いっぱいよ。あんな見た目しているけど物凄く硬いわ、それに微かだけど魔力を散らす気配。まるでAMFにも似た者を発生させているわ」

 

 「なんやそれ。まるで私達が来るのが分かっているみたいな対応は」

 

 「いえ、どちらかといえば学習しているとも言えます。現に質量的にも体積的にも有利にもかかわらず奴等は我々を迂回するように町に入りこもうとしています」

 

 「そんなことさせるかい。鳴り響け、終焉の笛!」

 

 獣の感性がいち早く妖鬼人の動きを感じ取る彼等は明らかにこちらを警戒して回り込みをし始めた。このままでは町の四方から妖鬼人達が侵入してきてしまう。そうはさせないとはやては広域魔法を放つ。これは今まで自分達が使っていた非殺傷設定を外した文字通り殺すための魔法だ。

 

 「ラグ、ナロクッ!!」

 

 はやての持つデバイスから人の頭一つ分の光球が三つ放たれ、妖鬼人が密集している場所まで飛んでいくと光りは炸裂し、辺り一帯に轟音と爆風が巻き起こる。だが、そのまき上がった粉塵の中から剣山を丸めたような物が転がってくる。その大きさはビル一つ分ほどの大きさであり思わず身動きが取れなくなってしまったはやてを守るように鉄槌の騎士が早くも自分の切り札を切る。

 

 「アイゼンッ!ギガントシュラァアアアアクッ!!」

 

 ゲートボールのステッキのようなハンマーの撃鉄は魔力という力を帯びて巨大化し、はやて達を襲ってきた剣山と相打つ。

剣山と巨大化したグラーフアイゼンの接触部分は激しい火花を散らしながら一進一退のせめぎ合いをしていた。

 本来ならたとえ巨大化させ強化させたとしても押しつぶされるだけだったはやて達だが、今打ちあっているのはヴィータの全力全開の一撃だ。そう簡単に負けるわけにはいかない。カートリッジシステムで出来る最大限のパワーアップを図っている。それは自身、自分の相棒のグラーフアイゼンを強化し、見た目に反した力を見せる。質量的には百倍近いだろう妖鬼人を殴り飛ばした。だが、その後ろから多数の妖鬼人の影がはやて達を覆いつくした。

 はやては数秒後には自分達が押しつぶされる。そう感じ取って思わず目を閉じる。だが、彼女が感じたのは巨大な物に押しつぶされる重圧ではなく、自分の隣を通り過ぎていく風だけだった。

 恐る恐る目を開けてみれば自分に襲い掛かる妖鬼人の気味の悪い顔が縦に横に、時には十字に割断され、その巨体の残骸が自分達の隣を通過していく風。その風の発生源は自分達の将。シグナムだった。

 

 「・・・風刃閃。さすが剣のみに特化した代物だ」

 

 自分達に襲い掛かる妖鬼の群れははやての前に立つシグナムに触れると同時に割断されていった。彼女の持つヴァイサーガ・レヴァンティンの剣先が触れるとまるで豆腐かプリンの様に切れていく。更にはその先に見えない刃先があるのかように割れていく怪物たちの姿にはやては夢を見ている様だった。

 

 「はやてちゃん、気を抜かないで敵はまだいるわ」

 

 「しかも一番やばそうなのがこっちを睨んでやがる」

 

 はやてが呆気にとられている間にも彼女の騎士達は妖鬼人が出現した場所を睨んでいた。そこにはあいつからいたのだろうか、赤茶の地毛に青刺青のような体毛を生やした巨大な大トラがいた。体長は十メートルかそこらで妖鬼人よりも一回りも二回りも小さい。そのはずなのにそのトラが放つ殺気は妖鬼人よりも明確な物でそれと目を合わせた瞬間に全身から汗が噴き出る。まるで既にそのトラの口の中にいるかのようにも感じ取れた。それはヴィータ。シャマル。ザフィーラにも感じ取ることが出来た。今はこの場にはいないリインフォース・ツヴァイがこのトラと相対したら良くても泣きだし、悪ければ失神するだろうその眼光を正面から対峙できるのはヴァイサーガを持つシグナムだけだった。

 後に窮奇王と呼ばれるそのトラは自分に怯えず、且つ、その剣先を向けているシグナムが気に喰わなかったのか音の砲弾とも思えるような咆哮を上げる。それはガンレオンのような自分達を背にして戦うものとは違い捕食者を思わせるものだった。

 

 「主はやて。お下がりください。ここは私一人で受け持ちます」

 

 「ちょ、待ちやシグナム。いくらなんでも一人で何て…」

 

 無茶だと言おうとしたがそれをヴィータに止められた。何も言わずに止めたヴィータの表情から自分達が太刀打ちできる相手じゃないと教えてくれた。

 

 「やれるのか、シグナム」

 

 「さてな。だが、あのトラは思った以上の化け物やもしれん。それこそあのガンレオンかエヴァを持ち出さなければならぬがな」

 

 ザフィーラの言葉に窮奇王から視線をそらさずに答えるシグナムの頬には冷や汗が流れているようにも見えたが、同時に彼女の表情には笑みが溢れていた。

 

 「だが、このヴァイサーガならやれると感じる」

 

 「其処はわかると言って欲しかったわ。はやてちゃん。ここはシグナムに任せましょう」

 

 「ちょ、シャマルまで…」

 

 「主はやて。あのトラは他の妖鬼人とは別格です。それこそ高町のスターライトブレイカー並の攻撃力が無ければ打ちぬくことは不可能です。さらにはAMFにも似た男装のような物も感じられます」

 

 「物理と魔法。そのどちらかで規格外の攻撃でなけりゃ通らねえ。もしくはその両方を兼ね備えた攻撃じゃないと無理だ」

 

 長年戦い続けた騎士だからわかる。圧倒的な戦力さ。それを覆すことは無理だ。

 自分達の将を除いて。

 

 「シグナム。無理だけはせんでよ」

 

 「無理を通さなければ御身をお守りすることも出来ません。さあ、お早く!」

 

 「シグナム。絶対に帰って来るやんで!これは命令やから!ガンレオンがこっちに向かうまで持たせるだけでいいんやからな!」

 

 絶対に死ぬなと自分達の主からの命令だ。

 とても優しくされど達成するには難しいその命令を叶える為にシグナムは放たれた矢の如く窮奇王に突撃していった。

 主はここには居ないガンレオンが持たせるだけでと言ったが不思議と今の自分ならやれると思った。窮奇王を足止めするだけではなく打ち倒せるとも感じていたから。

 

 「行くぞっ!主に害成す異形の物よ!」

 

 烈火の将シグナムは新たな剣。ヴァイサーガを手に窮奇王の爪と牙と打ち合い始めるのであった。

 

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 はやて達が地上で戦っている最中、海鳴市の上空。それは成層圏を突き抜けた宇宙空間でその機体の所々から火が上がっている時空航行艦アースラと、それに相対する青い龍の咆哮が鳴り響いていた。

 

 「応龍皇の砲撃きます!」

 

 「障壁を張りなさいっ、全開で!」

 

 もう何度目になるか分からない防御態勢にリンディは折れそうな心を何とか保ちながら指示を出す。

 突如宇宙空間に現れた巨大なアメーバを髣髴させる使徒。メガネのレンズを横に三枚並べたような幾何学的な使徒の全長は500メートルほどであり、その使徒の攻撃方法は自分の体の一部大気圏外から落下させ、その落下先の物を粉砕するというもの。

 ちょうど海鳴市の街とは地球の裏側に位置する場所に現れた使徒を迎撃する為アルカンシェルを撃ち込もうとした矢先に応龍皇が地球。アースラの真下から襲い掛かって来た。急遽アルカンシェルを撃ちこむのをやめて防御障壁を張るアースラに応龍王は口から吐き出す破壊光線を叩き続けた。使徒を迎撃しようとしたアースラを仇の様に執拗に攻め続ける。ここまで来たら使徒と応龍王は何かのつながりがあると感づくが、今は自分達がどうすれば生き残れるかを模索するのに精いっぱいだ。唯一の救いがあったすれば使徒がこちらに目もくれず海鳴のある地点へとゆっくり進んでいったことだろう。

 三度目を越える攻撃でアースラのあちこちから危険信号を放つ警報が鳴り響く。そして今、四度目になる攻撃を防御したことにより完全にアースラの航行機能はダウンした。次撃ち込まれた瞬間、アースラは木っ端みじんに打ち砕かれるだろう。

 もう駄目だ。と、リンディやエイミィ。アースラに乗艦している組員が思った時にそれは現れた。

 

 緑の光の粒子を放つ四つの銀の輪が応龍皇とアースラの前に現れる光景をリンディ達は確かに見たのだった。

 

説明
第二十七話 竜虎相打つ
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タグ
魔法少女リリカルなのは ガンレオン エヴァンゲリオン 

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