英雄伝説〜菫の軌跡〜 |
その後一端解散したロイドはフロアのガラス張りの巨大な窓の傍で外の景色を見つめているティオが気になって近付いた。
〜IBC〜
「…………………………」
「ティオ………?」
外の景色を見つめているティオに近づいたロイドは不思議そうな表情で話しかけ
「………ロイドさん。」
話しかけられたティオは振り向いてロイドを見つめた。
「どうしたんだ―――って、そうか。外の様子を伺っててくれたんだな?」
「………ええ、まあ。やっぱり気になりますし。でも、よくわかりましたね……?」
「そりゃ、ティオの力にはいつも助けられてるからな。それで………市内の方はどんな様子なんだ?」
「………散発的に銃撃戦が起きているようですね。多分、警官隊あたりと警備隊が衝突しているのではないかと思います。」
「そうか………せめて市民に被害が及んでいないといいんだけど。」
「…………………………」
ロイドの話を聞いたティオは何も語らず黙り込んでいた。
「………?ひょっとしてティオ、疲れてるんじゃないのか?街中を走り回ったばかりだし、キーアたちと一緒に休んだ方が……」
ティオの様子を見たロイドはティオを心配したが
「………ジロッ。」
「い、いや別に子供扱いしてるわけじゃ!」
ジト目のティオに見つめられて焦り出し
「ふふ………わかってます。ずっとロイドさんたちと一緒に行動していたおかげで体力もついてしまいましたし。それに、少し興奮気味みたいで眠れそうにないですから。」
「そっか……しかし本当にとんでもない事になったな。ティオは本来、警察官じゃないのにこんな状況に巻き込んじゃって………」
「ジロッ。」
「いや別に、関係ないとか言ってるわけじゃなくって!」
さらに墓穴を掘ったのか余計なことまで口にして再びティオに睨まれてより焦り出した。
「……まったく。」
一方ティオは呆れた表情で溜息を吐いた後、少しの間考え込んで話し始めた。
「……………で、でも………確かにこんな事態になったら今後どうなるかは心配ですね。わたしの出向についても財団がどう判断するか………」
「え。」
「魔導杖のテストに関してはクロスベル以外でもできますし。財団の方針しだいではわたしの出向も取りやめになることだって………」
「そ、そうか……………………」
「………その…………そうなったら少しは寂しく思ってくれますか?」
自分の話を聞いて真剣に考え込んでいるロイドの様子が気になったティオはロイドを見つめて尋ねたが
「う、うーん………それ以前に、ちょっと想像しにくいものがあるな。」
「え……」
ロイドの答えを聞いて呆けた。
「いや、ティオがいない支援課っていうのが何だか想像できなくって………あの端末だってティオの特等席みたいなものだったじゃないか。俺達や、他の人間が座って操作するのはピンと来なくてさ。」
「……………………………」
「でも、そうか………出向が取りやめになることもあり得るのか………参ったな。そんなこと考えもしなかった。」
そしてロイドが疲れた表情で溜息を吐いたその時
「―――あくまで可能性としてはです。財団は最先端の技術をクロスベルに投入していますし、かなりの投資もしています。こんな大事件が起こったとしても引き上げる可能性は低いと思います。そうである限り、魔導杖のテストもこの地で行うのがベストですから。」
ティオが静かな表情説明をしたが
「そ、そっか。―――うん、だったら何としてもこの事態を打開して事件を解決しないとな!ティオに支援課に居続けてもらうためにも!」
「…………………っ…………………」
ロイドに微笑まれて驚いた後、ロイドに背を向け
「って、また俺、無神経なことを言ったか!?」
ティオの様子を見て再び墓穴を掘ったと判断したロイドは焦り出した。
「………ええ。正直、言語道断ですね。やっぱりエリィさんの言う通りロイドさんは危険です………まさかそんな反応をされるとは思いませんでした。」
「そんな反応………?」
ティオの言葉を聞いたロイドが不思議そうな表情をしたその時
「っ……ロイドさんがダメダメで、にぶちんでヘタレ弟キャラということです!ある意味、その点においてはガイさんを超えていますね……!」
ティオはロイドに背を向けたまま、ロイドを責めた。
「いや、意味不明なんだけど………うーん、でも兄貴か。確かにニブいっていうか朴念仁なところはあるよな。長い間、セシル姉の気持ちに気付いてなかったみたいだし………何度、蹴っ飛ばして気付かせてやろうと思った事か。」
そしてティオの話を聞いたロイドが考え込みながら呟いたその時
「えい。」
ティオがロイドの足を蹴っ飛ばした!
「って、ティオさん………?」
「―――失礼、何となく。ですが今のは正直、自業自得ではないかと。」
「???」
ティオの答えの意味が理解できない一方ロイドは不思議そうな表情をした。
「……そろそろわたしは地下の端末室でお手伝いをしようと思います。ヨナあたりと連絡が取れれば色々選択肢も出てきますし。」
「そっか………よろしく頼んだよ。俺は補給や装備の確認をしてくるからさ。」
「よろしくお願いします。………」
ロイドの言葉を聞いたティオは考え込み
「………ティオ?(また怒らせちゃったのか………?)」」
ティオの様子をが気になったロイドは内心焦りながら不思議そうな表情をして尋ねた。
「………以前、ロイドさんがしてくれるといった”約束”………覚えていますか?」
「あ、ああ……兄貴との約束じゃなくて、俺自身の言葉でってやつか。ゴメン、あれから色々と考えてはいるんだけど良いのが思いつかなくてさ。」
「でしたら………わたしの方から希望があります。それでもいいですか?」
「あ、ああ……もちろん構わないけど。よし―――どんと来い!」
ティオの言葉に頷いたロイドは口元に笑みを浮かべてティオを見つめ
「……………………」
見つめられたティオはロイドを黙って見つめた後ロイドに背を向けて話し始めた。
「………ミシュラムのテーマパーク。この騒ぎが無事解決したらあそこに連れて行ってください。」
「へ……ええっ………そんなのでいいのか!?いや、でも………もうちょっとこうシリアスな約束の方がいいんじゃないか?ティオが困った時には何があっても助けに行くとか。」
「いえ、これで十分です。それに、この事態を解決しないとこの約束も果たされない……その意味では十分シリアスなのではないかと。」
「そうか……うん、確かにそうだな。よし―――約束だ。この事件が無事解決できたら一緒にテーマパークに遊びに行こう。あっと、他のみんなも一緒の方がいいかな?」
ティオの説明を聞いたロイドは頷いた後ある事を思い出して口にしたが
「ジロッ……」
「だ、だよな。ティオとの約束なんだし。うーん、できたらキーアも連れて行ってあげたかったけど………」
ジト目のティオに睨まれると内容を修正した。
「でしたら内容は修正です。まずは支援課のみんなで………その後、ロイドさんとわたしで。それでノープロブレムでは?」
「あ、ああ………それなら確かに問題ないか。」
「ふふっ……楽しみにしていますね。」
そしてロイドに微笑んだティオがロイドから離れてエレベーターに乗って下へと降りて少しすると再びエレベーターが起動し、エレベーターからランディが降りてきてロイドに近づいてきた。
「―――よう、相棒。お疲れさん。マジでとんでもない事になっちまったなぁ。」
「………………………」
軽く手を挙げて近づいてきたランディの言葉を聞いたロイドは呆けた表情でランディを見つめ
「ん、なんだ?何か変な事を言ったか?」
ロイドの様子を見たランディは不思議そうな表情で尋ねた。
「い、いや………でも、率直な所、ランディはどう思う?警備隊に本格的に攻められたらここがどこまで保つのか………」
「ま、正直厳しいだろうな。クロスベルの警備隊はれっきとした軍事組織だ。戦車や飛行船こそ持ってねぇが練度も高いし、個人レベルじゃ最高の武装が供給されている。いくら最新のビルとはいえ、要塞でもない民間施設がそうそう保つもんじゃねぇだろ。」
「やっぱりそうか………となると、何とかして警察本部や遊撃士達とも合流して連携する必要があるな………せめて通信が回復するまではこのビルを守りきらないと。」
「ま、そういうこった。………ったく、こんな事ならアレを持ってくるんだったな。」
「アレ?」
ランディの言葉を聞いたロイドが不思議そうな表情をしたその時
「……………………俺が2年前まで使っていた導力ライフルだ。とてつもない火力を持った、な。」
ランディは考え込んだ後ロイドに背を向けて説明した。
「そうか猟兵時代の…………”赤い星座”だったか。あれから少し調べたけどその筋ではかなり有名みたいだな?」
「ハハッ………”悪名高い”の間違いだろ。大陸西部最凶の猟兵団……戦場を蹂躙する赤き死神……ちょっと前には、共和国方面で”黒月”とやり合ってたらしい。それこそ正真正銘の殺し合いをな。」
「……そうなのか……………………………」
「………悪ぃ。引かせるつもりじゃなかった。ま、警備隊が本気を出したらかなりヤバイことになるだろう。しかも配備されたばかりって話の新型装甲車まで持ち出されたら―――」
自分の話を聞いて考え込んだロイドの様子に苦笑したランディは謝罪した後話を戻そうとしたが
「―――なあ、ランディ。前に言った事だけど………撤回させてもらってもいいかな?」
「へ………」
自分の話を中断し、予想外な事を口にしたロイドの言葉を聞くと呆けた。
「旧市街のレースの後の話さ。兄貴みたいな一人前になるまでランディの過去は聞かないっていう。」
「あ…………」
「―――前にも話したけど兄貴は俺にとってヒーローみたいな存在だった。課長やダドリーさん、アリオスさんも言ってたけど……そこにいるだけでどんな逆境も何とかしてくれるって思わせてくれるような人だった。」
「……らしいな。ったく、どんだけ化物じみたヤツだっつーの。」
ロイドの話に頷いたランディは溜息を吐いた。
「はは、別にそこまで腕っ節が強かったわけじゃないと思うけど。………最初はさ、そんな兄貴の代わりにならなきゃいけないと思ってたんだ。じゃないと、クロスベルに俺が戻ってくる資格はない…………死にものぐるいで捜査官資格を取って今まで頑張ってきたけど……やっぱり………どこか無理があったみたいだ。」
「………そうか…………しかし、その割にゃ妙にスッキリした顔をしてやがるな?」
「ハハ、まあね。……そこまで行くと逆に変な風に前向きになってさ。俺は兄貴みたいには凄くなれない……………―――だったら、俺は俺として凄くなれればいいんじゃないかと思ったんだ。」
「!」
ロイドの本音に驚いたランディは目を見開いてロイドを見つめた。
「まあ、どんな風に凄くなるのかはまだわからないけど………キーアも引き取ってみんなも一応引っ張ってる立場でウジウジ悩んでもいられないだろう?幸い、ランディ達も助けてくれるし、俺が凄くなくても何とかやれる………だったら今はその状況に甘えさせてもらおうと思ってさ。」
「はは………なんだよお前………もう十分、一人前のツラしてんじゃねーか。」
「ランディはさ、わかってたんだろう?兄貴の背中を追い続けてるだけじゃいずれ俺が行き詰まるって………」
「………まーな。だが、そうして挫折すんのもお前の糧になるんじゃねーかと思った。しかし、まさか挫折する前に自分で気付いちまうとはなぁ。」
「はは、俺一人だったら気付けなかったと思うけどね。―――だから、あの時、カッコ付けて聞かなかったことを聞いてみたいと思ったんだ。兄貴みたいに俺の成長を見守ってくれた誰かさんのことをもっと知りたいと思ったから。」
「………ハハ………………」
ロイドの言葉を聞いたランディは寂しげな笑みを浮かべた後ロイドに背を向けて黙り込んだ後、ロイドに背を向けた状態で話しかけた。
「―――なあ、ロイド。お前、俺が今までどれだけ戦場で敵を殺してきたと思う?」
「………想像も付かないな。多分、俺の生きていた世界とはかけ離れた所の話だろうから。」
「クク、正解だ。俺も正直覚えてねぇくらいだ。……物心付いた時から戦場という世界で生きてきた。4つの時にナイフを渡され、6つで拳銃の撃ち方を習った。……実戦は9歳だ。親父の部隊で斥候として働き、ふたりの敵兵を殺した。そして12で小隊を、14で中隊を任されて………5年間………犬のように戦場を駆け回った。」
「…………………………」
ランディの話を聞いて驚いたロイドは目を見開いて黙り込んでいた。
「………だが、俺は逃げた。ガルシアのオッサンみてぇに望まれて抜けたわけじゃねえ………クソみたいな殺し合いに嫌気が差したわけでもねぇ……ただ、何かを見失って戦場からさ迷い出てきただけだ。腐った死人(しびと)みてぇにな。」
「…………………………」
「その後、あちこちさ迷って、最後にクロスベルに流れ着いて………警備隊に潜り込んだはいいが、ライフル使うのを拒否ってたら阿保司令にクビにされかけて………そして課長に拾われて………何故かこんな場所に立っている。それが俺………ランドルフ・オルランドって男だ。」
「ランディ……ありがとう。話してくれて。」
「ったく………お前、Mっ気でもあるんじゃねえか?どうしてこんなクソみてぇな野郎の過去をわざわざ知りたがるんだか……引いてねぇとは言わさねぇぞ?」
自分の話を聞き、予想外の反応をしたロイドにランディは振り向いてロイドを見つめて溜息を吐いて複雑そうな表情をした後、真剣な表情で尋ねた。
「はは………引いたといえば引いたけど。それでもやっぱりどうしても知りたかったんだ。それに、俺の事情ばっかりランディに知られているのもシャクだったし………お互いをある程度知ってこその”相棒”なんじゃないか?」
「え………」
「だってランディが”相棒”って言ったんだろう?さっき俺に声をかけた時に。」
「いや、あれは挨拶代わりっつーか………え、あれ。俺、今までお前をそんな風に呼んだことなかったっけ………?」
「……多分。えっと、だからさっきはちょっと嬉しかったんだけど。」
「……………」
ロイドの答えを聞いたランディは黙ってロイドを見つめ続けた後
「ククッ…………はははははっ!」
腹を抱えて大声で笑った。
「そ、そんなに笑うことないだろ?自分でもちょっと気恥ずかしいんだからさ。」
「クク……それが理由でここまで引っ張ったのかよ……しかも先に自分曝け出して俺を追い込みやがるとは……いやいや、Mと思わせておいて実はSってパターンだったとはなぁ。」
「なんだそりゃ………」
「クク………さてと。俺は念の為1階のエントランスに降りておくことにするぜ。」
「わかった、俺の方は補給と装備の確認をしておくよ。」
「おお、任せたぜ。」
ロイドの言葉に頷いたランディは去りかけたが、ロイドに背を向けたまま立ち止まり
「―――警備隊が押し寄せたら最後まで動けるのは俺らや小嬢とルフィナさんだろう。お嬢やティオすけにはあんま無茶させたくないしな。」
真剣な表情でロイドに警告した。
「………ああ、わかってる。正直俺達より経験が豊富なレンとルフィナさんは最後の最後まで温存しておくべきだから、警備隊の相手は俺とランディの2人で何とか喰い止める必要があるな。」
「背中は任せたぜ―――相棒。」
「あ………―――了解!」
そしてランディの言葉にロイドは一瞬呆けた後力強く頷き、ランディがロイドから離れてエレベーターに乗って下へと降りて少しすると再びエレベーターが起動し、エレベーターからレンが降りてきてロイドに気付くとロイドに近づいてきた。
次回はまさかのレンとのオリジナル絆イベントですww
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