恋姫英雄譚 鎮魂の修羅23
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麗羽達との同盟の締結を終えた一刀

 

様々な嬉しい誤算もあり、苦戦すると思われた冀州はかなりスムーズに行ったと言えよう

 

道中に華雄と太史慈という思いもしないお供を引き連れ、一刀が次に向かった先は徐州だった

 

黄巾党討伐の功により、徐州の刺史にまで成り上がった桃香が前代陶謙の跡を継ぐ形で治める事になった州である

 

冀州と徐州の間には青州が存在するが、一刀達はそこを素通りしていた

 

それにはちょっとした理由があるのだが、今は語らずにいよう

 

梨晏「へぇ〜〜〜、けっこう賑やかだね〜〜♪」

 

華雄「うむ、民達に活気がある」

 

徐州の首都である下?城の城下町に入る三人

 

前代陶謙もかなり優良な政を敷いていたが、仁徳を旨としている桃香が後釜に納まったこともありいい意味で活気付いているようだ

 

そして、街を歩いていくと幾つか見知った施設が現れる

 

一刀「(あれは公園、あそこにある建物は区役所だな)」

 

広く確保されたスペースに設置された遊具で遊ぶ子供達、ベンチに座り談話にしゃれこむカップル

 

区画ごとに設置された似たような建物で市民が大勢ごった返し、役人達が忙しく動き回っている

 

かつて幽州にて、桃香、愛紗、鈴々、美花と共に政をしていた時期があった為、一刀が行った政策をこちらでも実施しているようだ

 

まるで模倣犯のようであるが、こういった政策を国全域に広めようとしている一刀にとってはかえって都合が良かった

 

一刀「(ここでの同盟締結も滞りなく済むかな)」

 

元々桃香の思想は一刀と似通っているし、これまでの付き合いもあるのでスムーズに行くだろうと楽観視していた

 

そして、三人は下?城にまで掛かる石橋の前まで来た

 

梨晏「ふ〜〜ん、結構立派なお城だね」

 

華雄「袁紹の城ほどではないがな」

 

一刀「当たり前だろ、あんな贅沢な城がいくつもあってたまるか」

 

5m近い城壁に周りを水堀で囲われた下?城の威圧感はなかなかのものだった

 

城門は石橋の向こうにあり、三人はその石橋を悠々と渡っていく

 

梨晏「うん、これは攻めるに難し、守るに易しな城だね」

 

華雄「だな、この城を落とすのは骨が折れそうだ」

 

一刀「おいおい、これからそんな事が起らない様にしに行くんだろうが・・・・・さて、どうやって入るのかな?」

 

門前に辿り着くが、その門は完全に閉じられた状態である

 

見張りの兵もいないため、一刀は城門をノックでもしようかと近づく

 

すると

 

華雄「たのもーーーーーー!!!!!」

 

一刀「は、ええ!!??」

 

いきなり城門に向けて馬鹿うるさい声を張り上げる華雄

 

一刀「おおい!!?いきなりどうしたんだ!!?」

 

華雄「まどろっこしい事は嫌いだ、お主は同盟の申し込みに来たのであろう、ならば堂々としていればよいのだ!!」

 

一刀「だからってそんな喧嘩腰にならなくてもいいだろう!!」

 

まるで道場破りにでも来たかのような感覚の華雄に理解が及ばない一刀

 

その時

 

???「呼ばれて飛び出てデデデデ〜〜〜ン♪くせものくせもの、出会え出会え〜〜〜♪」

 

???「呼ばれて飛び出てデデデデ〜〜〜ン♪ここから先は通っちゃ駄目だよ、とーせんぼ♪」

 

いきなり城壁の上からオレンジ色の髪の二人の少女が顔を覘かせる

 

髪の短い活発でボーイッシュな子と、長く穏やかそうな子だ

 

しかし、場所が場所だけに仕方ないのであろうが、二人とも上から目線で、しかも思いっきりドヤ顔でふんぞり返っている

 

正直、物凄くエラそうだ

 

???「ここは劉備様のお城なるぞ〜♪」

 

???「知らない人は、入れちゃいけない決まりなんだよ〜♪」

 

華雄「我が名は華雄!!漢の栄誉を賜りし者なり!!今すぐ開門せよ!!」

 

???「華雄?それ誰だっけ?」

 

???「分かんないよ、お姉ちゃん」

 

華雄「なっ!!?貴様ら、音にも聞いたこの将軍華雄を知らないと申すのか!!?」

 

???「そんな事言われたって、知らないものは知らないよ〜だ♪」

 

???「うん、音にも聞いたって、音が聞こえるのは当たり前だよ〜、何を言ってるのかな〜この人♪」

 

華雄「貴様ら馬鹿にしよって!!降りてこい、その根性を叩き直してやる!!」

 

???「へへ〜〜んだ♪その手には乗らないよ〜だ♪」

 

???「悔しかったらそっちから来たらいいじゃ〜ん♪」

 

華雄「よくぞ言った!!そこで待っていろ、狼藉者!!!」

 

一刀「ちょ、ちょっと待て、華雄!!」

 

梨晏「そうだよ、あんな子供の挑発にいちいち乗ってちゃダメだって!!」

 

華雄「止めるな!!ここまで馬鹿にされて黙っているなど、我が誇りが許さん!!」

 

一刀「俺達はここに喧嘩をしに来たんじゃないだろう!!」

 

金剛爆斧を振り回し暴れる華雄を何とか二人掛かりで抑え込むが

 

???「や〜い、お尻ぺんぺん♪」

 

???「華雄は粥でも食べてればいいんだよ〜♪持って来て上げようか〜♪」

 

華雄「き・さ・ま・らーーーー!!!!今すぐ貴様らの腸を引き摺り出して長江に流してやるわーーーー!!!!」

 

一刀「だあああああ!!!挑発すんな、お前ら!!!」

 

梨晏「抑えているこっちの身にもなってよ〜!!!」

 

さらに暴れ出す華雄を抑えようと必死になる二人

 

反董卓連合で相手の挑発に乗りあっさり斬られたという歴史の通り、挑発される事に対してまったく免疫が無いようだ

 

相当に怒り心頭な用で、一刀と梨晏を引き摺りながら城門ににじり寄る

 

しかし、その時

 

鈴々「にゃにゃっ!?なにがあったのだ、雷々、電々!?」

 

雷々「あ、鈴々!」

 

電々「あ〜、鈴々ちゃんだ〜♪」

 

城の奥から今度は鈴々が顔を出す

 

一刀「よー、鈴々!!」

 

鈴々「にゃにゃにゃにゃっ!!?お兄ちゃんなのだ!!」

 

一刀「来て早々に悪いけど、とりあえずそこの二人を黙らせてくれ!!あと門を開けてくれると助かる!!」

 

鈴々「分かったのだ!!二人とも門を開けるのを手伝うのだ!!」

 

電々「って、え?ここ、とーせんぼしちゃダメな所だったの?てへっ♪間違えちゃった〜♪」

 

雷々「そうならそうと先に行ってよ〜」

 

そうして城門は解放され、一刀は事情を話した

 

鈴々「そうだったのか!・・・・・雷々、電々、謝るのだ!」

 

雷々「ご、ごめんなさい・・・・・」

 

電々「失礼な事しちゃって、ごめんなさい・・・・・」

 

華雄「むぅ、わ、私も子供相手に大人げなかったな・・・・・すまん・・・・・」

 

まるで子犬の様に縮こまってしまった二人に、華雄は毒気をあっさり抜かれてしまった

 

鈴々「雷々、電々!お姉ちゃん達に知らせるのだ、お兄ちゃんが来たって!」

 

雷々「分かったよ、お兄ちゃんが来たって知らせるんだね♪」

 

電々「お兄ちゃんが来た、お兄ちゃんが来たよ〜♪」

 

こんな調子で、二人は一目散に去って行った

 

一刀「・・・・・なぁ、大丈夫なのか?あれ」

 

鈴々「大丈夫なのだ、二人ともドジッ子だけど、やる時はやるのだ」

 

梨晏「いったい誰なの、あの可愛い子達〜♪」

 

鈴々「鈴々達が来る前の陶謙おばあちゃんに仕えていた、麋竺と麋芳なのだ」

 

華雄「そうか、陶謙殿は亡くなられたのだったな」

 

鈴々「そうなのだ、代わりに鈴々達が徐州を治めているのだ」

 

案内しがてら、鈴々は自分達がここに来た経緯を説明していた

 

そんな中で、一刀はまた史実とのギャップに悩んでいた

 

一刀「(あれが麋竺と麋芳・・・・・おまけに陶謙まで女性かよ・・・・・)」

 

あんな年端もいかない子達が三国志に名を馳せた将である事実

 

年齢という納得感はあるが、陶謙までも女性と化している事態に一刀は軽く混乱していた

 

出来れば陶謙とも色々と話をしたかったが、死んでしまっていてはどうしようもない

 

そして、一刀達は鈴々の案内で玉座の間に招かれる

 

桃香「一刀さん♪♪♪」

 

ガバッ!!

 

一刀「うおっ!!?」

 

と、玉座の間に入るなりいきなり一刀は桃香に抱き付かれる

 

華雄「な、なんだ!!?」

 

梨晏「わぁ〜〜〜お、大胆だね〜♪」

 

桃香「まさか一刀さんから来てくれるなんて思ってなかったよ〜♪♪♪」

 

むぎゅ〜〜〜〜〜

 

一刀「(おいいいいい、頼むから当てて来るな〜〜〜!!!2, 3, 5, 7, 11, 13!!)///////////」

 

これまでも自分達のご主人様になってくれと、何度もこういった事があった

 

桃香に限らず多くの娘達の間で何度かあった事だが、女性に対してこういった免疫が殆どない一刀は心の中で素数を数えなんとか平静を保とうとする

 

雷々「うわ〜、話には聞いてたけど、桃香様って本当に天の御遣いさんが好きなんだね〜♪」

 

電々「うん、電々もあの人と仲良くなれそうだよ〜♪」

 

愛紗「と、桃香様!!そのようなお姿を晒されては、桃香様の威厳が!!///////」

 

美花「うふふふ、愛紗様も一刀様が訪ねて来られて嬉しかったくせに♪」

 

鈴々「そうなのだ、お姉ちゃんと一緒にお兄ちゃんに抱き付けばいいのだ♪」

 

愛紗「んなっ!!?そのような事を人前で出来るか!!/////////」

 

朱里「はわわぁ〜〜/////////」

 

雛里「あわわ/////////」

 

周りの事などお構いなしに一刀に甘える桃香に、伏龍と鳳雛は卑猥な妄想をしていた

 

愛紗「お戯れもそこまでにして下さい、桃香様!!/////////」

 

桃香「ああ〜〜ん、愛紗ちゃんの意地悪〜〜!」

 

無理矢理一刀と引き剥がされ、桃香は膨れっ面を隠せなかった

 

一刀「ふぅ、相変わらずだな、かえって安心したよ・・・・・美花も元気そうだな」

 

美花「はい、一刀様もお変わりなさそうで安心しました♪」

 

一刀「どうだ、幽州を離れてから桃香の世話が忙しいんじゃないか?」

 

美花「そんなことはありませんよ、確かに桃香様は失敗が多いですけど、そこを補助するのが侍女たるものの役割です♪」

 

桃香「美花ちゃん、助け舟になってないよぉ〜・・・・・」

 

華雄「・・・・・どうやら、劉備という人物はそれほど優秀ではないようだな」

 

梨晏「でも、内の雪蓮も似たようなものだし、私はこういう雰囲気好きかな〜♪」

 

華雄「・・・・・確かに、月様と似ている所があるか」

 

其々の陣営にも似たような人物は少なからず居るものである

 

二人は、其々の判断基準を駆使して桃香の力量を押し測っていた

 

桃香「そういえば、この人達は?」

 

愛紗「ええ、前にまみえた事があるな」

 

華雄「申し遅れた、私は華雄、訳あって北郷と旅をしている」

 

梨晏「太史子義だよ、私も現在一刀と一緒に武者修行中だよ♪」

 

一刀「ああ、冀州で偶然会ってな、色々あって一緒に旅をする事になった」

 

桃香「そうなんだ、私は劉備玄徳、前の陶謙さんの後を引き継いで、この徐州の刺史を務めています」

 

愛紗「我は関羽、桃香様の右腕にして幽州の冷艶鋸・・・・・」

 

と、其々が自己紹介をしていき一刀はさっそく本題を切り出した

 

一刀「で、俺がここに来た理由なんだけど、俺は桃香達と同盟を結びに来たんだ」

 

桃香「あ、そうなの?一刀さんとなら喜んで結んじゃうよ♪」

 

一刀「ちょっと待て、いくらなんでもいきなり結んだら拙いっての!ここに同盟の内容を書いた資料があるから、これを読んでからにしてくれ!」

 

肩に担いだショルダーバッグから数冊の書物を差し出すが

 

桃香「そんなもの必要ないよ♪一刀さんとだったら・・・・・」

 

朱里「はわわわ!!?お待ちくだしゃい、桃香しゃま!!」

 

桃香「え、どうして?今すぐ結んじゃえばいいでしょ?」

 

雛里「こちらが不利になる条件が含まれている可能性がある以上、安易な締結は自滅を引き起こしましゅ」

 

桃香「大丈夫だよ、一刀さんはそんな事をしないよ!」

 

朱里「駄目なものは駄目でしゅ!内容の確認も無しに結ぶなど、刺史としての責務を放棄しているも同然でしゅ!」

 

いきなり同盟締結の承認をしだす我が主に、二人は相当テンパっているのか噛み噛みである

 

こういった反応を見せる時の二人は、相当に狼狽えていると言う事を知っている桃香は申し訳なさそうに一刀に視線を移す

 

桃香「・・・・・一刀さん」

 

一刀「当たり前だろ、二人の言う通り同盟の中身を精査しないまま結んでいたら、後で大変な事になるに決まっているだろ!!冀州の麗羽・・・・・袁紹も中身を全て読んだ上で締結に合意したんだぞ!!」

 

桃香「ええええ!!?袁紹さんと同盟を結んだの!!?」

 

一刀「ああ、主に貿易と不可侵に関してだけどな」

 

桃香「・・・・・凄いよ、一刀さん」

 

愛紗「はい、あの袁紹を説き伏せるなど、易々と出来る事ではありません・・・・・」

 

鈴々「流石お兄ちゃんなのだ♪」

 

美花「ああん、やっぱり一刀様素敵ですぅ??私、鞍替えしてしまいそうですぅ??////////」

 

朱里「・・・・・・・・・・」

 

雛里「・・・・・・・・・・」

 

伏龍と鳳雛も、あの高慢ちきで高飛車で上から目線で横柄で鼻っ柱が強い袁紹と同盟を結ぶにまで至った一刀の手腕に感嘆の意を隠せなく、開いた口が塞がらなかった

 

電々「ねえねえお姉ちゃん、あの人って凄い人なの〜?」

 

雷々「う〜〜〜ん・・・・・難しい事分かんないや♪」

 

どうやら、この二人にはまだ早い話のようだ

 

一刀「とにかく、同盟締結はこれを読んでからにしてくれ、ちゃんと頭に叩き込んでくれよ」

 

朱里「あ、はひ!」

 

雛里「大切にお預かりしましゅ!」

 

二人は、差し出された資料を恭しく受け取った

 

どうやら、あの袁紹と同盟を結んだという実績が二人の一刀に対する評価を上昇させたらしい

 

しかし、この後の一刀と桃香のやり取りでそれもすぐに霧散する事となる

 

桃香「・・・・・ねぇ一刀さん、この同盟を結んだら私達のご主人様になってくれないかな?」

 

一刀「なんだって?」

 

桃香「だってそうでしょ?一刀さんと私の考えって、やっぱり違わないんだもん、私も一刀さんと同じで平和な世の中を「違うな」・・・・・え?」

 

一刀「桃香、やっぱりお前は分かっていない、俺と桃香の思想には根本的に食い違う所がある」

 

桃香「そんな事ないよ!だって一刀さんはこの国を平和にする為に頑張っているんでしょ!?」

 

一刀「じゃあ、桃香はこの大陸を具体的にどうやって平和に導くつもりだ?」

 

桃香「それは・・・・・乱世で名声や風評や実績を積み重ねて、大陸の皆に評価してもらって・・・・・」

 

一刀「それだ、そこが俺と桃香の根本的に違う所だ」

 

桃香「え?」

 

一刀「桃香は、自分の力でこの大陸を統一したいと思っているんだろ、そしてその平和はこの国だけに限られる、俺は違う」

 

桃香「・・・・・ごめんなさい、一刀さんが何を言いたいか、私よく分かんない」

 

朱里「桃香様、この御方は今の腐敗した漢王朝を再興しようとしているんです・・・・・」

 

雛里「そして、復活した王朝の力を持ってして、この大陸を平和にしようと考えているんです」

 

桃香「でも、それって私のやり方とどこが違うの?」

 

朱里「桃香様は、あくまで乱世に乗じて、それを利用してこの大陸を平和にしようとしています、対してこのお方は、その乱世を来なくしようとしているんです」

 

雛里「そして、それはこの国だけに留まらない、他の異民族を含めた全ての国を平和に導こうとしているんです」

 

桃香「・・・・・それじゃあ、一刀さんが私達のご主人様にならなかったのは」

 

一刀「ああ、俺と桃香の思想の決定的に違う所が、これだからだ」

 

そう、一刀が桃香達の主にならなかった最大の要因がこれである

 

桃香達は、あくまで乱世に乗じてこの大陸に平和を齎そうとしている

 

対して一刀は、その乱世そのものを防ぎ、今ある平和を守ろうとしている

 

以前一刀が桃香達に課した『答えは、君達自身の中にある』それがこれなのだ

 

自分達と一刀の考え方の明確な違いに気付くこと、これが宿題の回答である

 

桃香「凄い・・・・・凄いよ一刀さん!!!」

 

一刀「な、なんだ!?どうした!?」

 

桃香「私、考えもしなかった・・・・・乱世を来なくしちゃえばいいんだ♪♪♪」

 

これまで及びもしなかった思想に触れ、桃香は喜びを爆発させる

 

桃香「そうだよね、この大陸には天子様が、空丹様が居るんだもん、漢王朝の力で平和な世の中を作ればいいんだ♪・・・・・分かったよ一刀さん、私も一刀さんに協力する、だから私達のご主人様になって♪」

 

一刀「確かに、桃香は俺の問いに正しい回答を出した・・・・・けど、いくらなんでも遅過ぎたな」

 

桃香「え?」

 

一刀「俺が白蓮に仕える前に出してくれれば、俺は桃香の要望に応えられたかもしれない、けど俺はもう幽州の宰相の位にまでなってしまっているんだ、その責務を放棄する事は出来ない・・・・・おまけに、空丹様から後任が決まったら洛陽に召還される事になっているんだ」

 

桃香「・・・・・そっか、空丹様の命令じゃ仕方ないね」

 

いくらなんでも相手が帝では分が悪過ぎるため、桃香も諦めざるを得なかった

 

一刀「安心してくれ、漢王朝を再興したら一緒に旅をしていた時みたいに仲良くやっていけるさ・・・・・それより、今はその資料を読んでくれよ」

 

朱里「あ、はい・・・・・分かりました・・・・・」

 

雛里「承りました・・・・・」

 

さっきと打って変わって、二人は少しだけ暗く一刀の問答に返事を返した

 

一刀「それじゃあ、今日は休ませてくれないか?」

 

梨晏「そうだね、冀州からずっと馬に揺らされっ放しだったからね」

 

華雄「ああ、美味い茶でも一杯貰いたいな」

 

美花「では、腕によりをかけて美味しいお茶を入れて差し上げましょう♪」

 

踵を返し玉座の間を出ようとする一刀達だったが

 

朱里「あ、お待ちくだしゃい!!」

 

一刀「?・・・・・何か分からない事があったか?」

 

朱里「いえ、分からない事があれば後で伺いますが・・・・・御遣い様は、どれ位の間ここに滞在なさるおつもりですか?」

 

一刀「う〜〜ん、しっかりと同盟の説明と精査をしたいけど、他の州にも足を運ばないといけないから・・・・・だいたい三日くらいかな」

 

朱里「三日ですか・・・・・それでは間に合いませんね」

 

桃香「?・・・・・どうしたの?何が間に合わないの?」

 

雛里「お忘れですか、桃香様・・・・・雫ちゃんの事を」

 

桃香「あ!?そう言えばそうだったね!」

 

一刀「?・・・・・誰だそれ?」

 

朱里「徐福元直といって、私達と同じ私塾に通っていたお友達です」

 

雛里「はい、今は私達と共に桃香様に仕えています」

 

桃香「うんうん、雫ちゃん、一刀さんとお話がしたいって、ずっと言っていたもんね♪」

 

一刀「(徐福・・・・・元直・・・・・それって、徐庶元直のことか!!?)」

 

庶と言うのは徐福が晩年に改名した名前であり、現代でも三国志の軍師の中で人気ランキング上位に食い込むかなりの有名な軍師である

 

徐福と言えば、秦の時代に日本に渡った説がある不老不死伝説の徐福が有名であるが、それとは全くの別人であることは言わなくとも分かるであろう

 

朱里「今は青州に商人達との仕事の交渉に行っていますので、戻ってくるのは5日後です」

 

雛里「雫ちゃんには、今回の仕事は全部請け負ってもらっちゃったから、それくらいは掛かっちゃうね」

 

桃香「雫ちゃんは私達が独立した時に、朱里ちゃんと雛里ちゃんと一緒に仲間になったんだよ♪」

 

愛紗「はい、洛陽でも共に行動していましたが、一刀様とは一度も邂逅する事は叶いませんでしたね・・・・・」

 

鈴々「でも仕方なかったのだ、あの時は黄巾党をやっつけるのに忙しかったし、雫には軍の編成を任せきりだったのだ・・・・・」

 

一刀「・・・・・そうか」

 

一刀としても徐庶がどんな人物かくらいは知っておきたいが、居ないものは仕方がない

 

一刀「まぁ、今後またここを訪ねるつもりだし、その時にでもゆっくり話すさ・・・・・それより、今は休みたいな」

 

美花「では、客間にご案内します、こちらです♪」

 

鈴々「鈴々も案内するのだ〜♪」

 

雷々「雷々も案内する〜、こっちだよ〜♪」

 

電々「おもてなししちゃうもんね〜♪」

 

一刀「あ、おいおい、鈴々!」

 

梨晏「や〜〜〜ん、可愛い可愛い〜?お持ち帰り〜〜?/////////」

 

華雄「むぅ、愛らしいとはこのことを言うのか/////////」

 

真っ先に一刀の手を取る鈴々

 

まるでワンちゃんのような雷々と電々に腕を引っ張られる梨晏と華雄

 

梨晏は雷々に抱き付き頬擦りをし、華雄は心癒されていたのだった

 

そして、玉座の間には桃香、朱里、雛里、愛紗が残された

 

愛紗「まったく鈴々の奴、まだ仕事は残っていると言うのに」

 

桃香「鈴々ちゃん、一刀さんが訪ねてきて本当に嬉しかったんだね〜♪」

 

愛紗「まぁ、その気持ちも分からなくはありませんが・・・・・」

 

桃香「愛紗ちゃんも、一刀さんが来たって知った時飛び上がって喜んでいたくせに〜♪」

 

愛紗「な!!?私はそのような事!!//////////」

 

桃香「そんな事ないよね〜、朱里ちゃん、雛里ちゃん♪」

 

愛紗「二人に振らないで下さい!!私は残りの仕事を片付けてきます!!//////////」

 

桃香「ああ〜〜〜ん、愛紗ちゃ〜〜〜ん!」

 

その場の空気に耐え切れず、愛紗は玉座の間を駆け足で恥ずかしそうに出て行った

 

桃香「も〜、素直じゃないんだから・・・・・朱里ちゃんと雛里ちゃんもそう思うよね〜♪」

 

朱里「・・・・・・・・・・」

 

雛里「・・・・・・・・・・」

 

桃香「?・・・・・どうしたの?」

 

主の呼び掛けに数瞬応じなかった二人

 

物凄く難しそうな顔をしている二人は、絞り出すように言葉を紡ぐ

 

朱里「・・・・・桃香様、本気であのお方と同盟を結ぶおつもりですか?」

 

桃香「え?うん、だって私達も一刀さんに協力して・・・・・」

 

雛里「桃香様、それだけは止めた方がよろしいです」

 

桃香「ええ!?なんで、どうして!?」

 

朱里「先ほどあのお方が仰ったように、桃香様とあのお方とでは、考え方に大きな隔たりがあります」

 

桃香「そんな事ないよ!私だって、乱世なんて元々・・・・・」

 

朱里「望んでいなかった・・・・・本当にそうなんですか?」

 

桃香「・・・・・・・・・・」

 

そう、桃香が一刀の考えを悟ったのはついさっきの話、元々桃香は乱世を利用し自身の仁徳でこの世を治めようと思っていた

 

つまり、今の腐敗した王朝の帝に成り代わりこの大陸の王になるつもりだったのである

 

それは同時に、数多くの犠牲の下に築かれる負の王国でもあるのだ

 

朱里「桃香様は、これまで桃香様のお考えに賛同して下さった多くの方達の信を無下にするのですか?」

 

桃香「大丈夫だよ、皆にもちゃんと説明すれば・・・・・」

 

雛里「たとえしっかり説明したとしても、それを理解出来ない人達にとって、桃香様は裏切り者でしかありません」

 

桃香「・・・・・・・・・・」

 

雛里「あのお方の同盟に調印をしてしまえば、私達は身動きが取れなくなってしまう可能性があります、仮に何処かの諸侯に侵攻された緊急事態に、私達は何もせずその侵略を許す事になってしまうんです」

 

桃香「でもでも!一刀さんが言うように、乱世を来なくしちゃえば・・・・・」

 

朱里「桃香様!乱世は必ず来ます!恒久の平和など、この世界の何処にも有りはしないのです!」

 

桃香「でも、一刀さんが漢王朝を正しい方向に導いてくれれば・・・・・」

 

雛里「それも無理な事です、桃香様はこれまで王朝から来た使者達のことをお忘れになられたのですか?」

 

桃香「・・・・・・・・・・」

 

そう、これまで徐州を訪れた漢王朝の使者達は、どいつもこいつも本来の王朝に納める税を大幅に超える多額の賄賂を要求してきた

 

その要求を断ろうものなら、この州や王朝に桃香に関する悪い噂を流し刺史の座から引きずり降ろそうとするのである

 

自分達の思い通りにならない者は、例え帝の信を得た者やその親戚であろうとも容赦しないのだ

 

前代の陶謙も王朝の使者の振る舞いには頭を痛めていたらしい

 

その死因は、使者達による気苦労だと言われるくらいの苛烈なものだったらしい

 

一刀の場合は、仕官した早い段階で文官武官、民達の信を得る事が出来たので王朝の使者達は悪い噂を流そうにも、先に良い噂ばかりが飛び交っていたので手を出せずにいたのだ

 

しかし、桃香達はこの地の刺史になって日が浅く、使者達の要求には黙って従う他なかった

 

朱里「ここまで腐敗してしまった王朝を立て直す事は、もはや不可能です、たとえあのお方であろうとも必ず根を上げるでしょう!」

 

雛里「その時こそ、あのお方は桃香様のお考えが正しかったと認めるでしょう」

 

桃香「・・・・・・・・・・」

 

朱里「この資料の精査はもちろんしますが、決して軽はずみに調印をしないで下さいね」

 

雛里「はい、機が来るまでは迂闊な事はしないで下さい」

 

桃香「・・・・・うん、分かったよ」

 

二人の言う事も理解出来なくもないので、桃香はその場は頷いたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、Seigouです

 

とうとう英雄譚123+PULSが発売されましたね、自分はクレジットを持っていないのでダウンロード版を購入することが出来ていなかったんです

 

おかげで新キャラの情報が入らずこれまで自分の想像だけで文章を作っていたのですが、そこも修正が効きそうです

 

先に鶸、蒼、梨晏、粋怜が登場する物語を進め、其々の呼称や不自然な所を見直すつもりですが、物語が長いので全ての修正が終わるのはもうちょっと先になりそうです

 

では、阿修羅伝焦らしタイムは始まったばかりです・・・・・待て!!!次回!!!

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コメント
一気にここまで読みましたが続きが気になる作品ですね。待ってます次回!(味野娯楽)
それがなぜ、断頭台に処されなければならなかったのか、きっと当時の民衆の不満を解消させるための贄にされたんでしょうね・・・・・(Seigou)
正確には小説ではなくルソーの自伝が有力な原典の一つとされています。なお彼女自身は飢饉の際、子供の宮廷費の一部を削って寄付したり、他の貴族から寄付金を集めたりと正反対の行動をしています。(h995)
h995さんへ、「パンが無ければお菓子」というのは、アントワネットが産まれる前の小説家が書いた文の一部でしかないんですよね(Seigou)
それにマリー・アントワネットについてもよくよく調べてみると、王妃としてはけして悪い人物ではなかったにも関わらず、悪意あるデマと誇張のせいで諸悪の権化扱いとまるで恋姫における某少女と重なる始末。いずれ訪れるであろう反董卓連合における一刀の言動が非常に楽しみです。(h995)
まぁ実際の所、この時代の乱世を回避するのはフランス革命を回避するのと同じくらいの無茶ぶりですからね。フランス革命については誰が王をやっていても回避不能だったと言われるくらいに、民衆の不満が王家だけでなく封建制度そのものに対して溜まっていたらしいですから。(h995)
それだけ更新を待っていたってことですよ。 seigouさん。(劉邦柾棟)
うそ!!!??王冠が付いちゃいました!!!いったいこの文章の何処に王冠が付く要素が!!!??(Seigou)
「恒久の平和など、この世界の何処にもない」ねえ〜。 ほお〜、ほんの少し前まで『水鏡塾』で勉学していただけの世間の厳しさや無常さを本当の意味で知らない八百一本を読みふけっていただけの小娘如きがそう簡単に言い切れるのかよ? 無いなら自分達の手で作っていくしかないだろうが!(劉邦柾棟)
朱里と雛里の判断が最悪な展開になっていく予感がしまくりですね。 確かに『乱世』が来るのは避けられないけど、だからと言って何もしないまま「漢王朝」が滅んでいくのを見ているのは逆に問題発言だろ。(劉邦柾棟)
とはいえ、その桃香がこんなんじゃなあ……一刀との関係は現段階においては桃香個人の利益にしかなっておらず、組織の利益には繋がらないのが問題。少なくとも、軍師二人はそういう認識なんですね。一刀の理念は劉備軍の利益にはならないし、それどころか一刀の理念云々は割と皆どうでも良い感じですよね。実際非現実的だし。(Jack Tlam)
二大軍師の言うことは尤も、乱世は来るし、漢王朝の立て直しは不可能に近い……でも、一刀は絶対に音を上げない。音を上げる前に死ぬ奴だから。そこは間違っていますね。立て直しを図るならそれこそ腐敗を一掃することをしなければならないが、殺しを否定する一刀ではそれも難しいでしょう。この場合、桃香のほうが現実的ということになりますか。(Jack Tlam)
桃香が何も考えてないw同盟は結べなそうだな^^;(nao)
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