千夜「ずっと一緒?」
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私とシャロちゃんは小さい頃からの幼馴染み。

シャロちゃんの両親はほとんど出稼ぎに出ていて、遊ぶにしても、ご飯を食べるにしても、お風呂に入るにしても、寝る時もずっと一緒だった。

 

中学校に入学してからはたまにしか一緒に寝ることもなくてちょっと寂しかったけど…

それでもこんな私の傍を離れずにどんな時も一緒にいてくれた。

 

シャロちゃんといるのはいつも楽しい。

誰かの前で「シャロちゃんったらね〜」ってからかうと恥ずかしそうに「そんなこと人の前で言うなバカ〜!!」って焦ったり、怖い話をするとブルブル震えたり…

からかうと面白いし怖がりだったりするし、さらには誉めたりすると「ふん…」って言ってホントは嬉しいのに素直じゃない所もあるけど、いつもそんな私に「しょうがないわね、千夜は」って言ったりして笑顔を見せてくれた。

 

そんなシャロちゃんを見ると、私も嬉しくなる。

 

ずっと幼馴染みとして一緒にいたいって思う。

 

だから…

 

シャロ「千夜」

 

千夜「どうしたの?シャロちゃん」

 

シャロ「ちょっと…話があるんだけど…私の家に来てもらっていい?」

 

だから、シャロちゃんに中学校を卒業する前に…あんなことを告げられると思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも来ているシャロちゃんの家、シャロちゃんの部屋で私たちは向かい合って座る。

 

いつものような楽しい雰囲気じゃなくて…ちょっと空気が重い。

 

千夜「それで…話って何?」

 

シャロ「あ、あのね…」モジモジ

 

見るからに何か言いたそうにうつむいてモジモジしているシャロちゃん。

 

何かあったのか不安になる私。

 

千夜「シャロちゃん、落ち着いて。ゆっくりでいいから…ね?」

 

シャロ「うん…」モジモジ

 

今日に限ってどうしたのだろう?

 

いつもなら学校で何かあってもここで言いたいことははっきり言うのに…いつものシャロちゃんじゃないみたい。

 

千夜「…コーヒーでも飲む?」

 

シャロちゃんはコーヒーを飲むと何故かカフェイン酔いをするという大人が飲むお酒のようにアルコール酔いに似た状態になる。

 

シャロちゃんの場合は普段とは全然違う明るくて素直な感じになって色んな人に絡むのだけど…それで本音を引き出そう。

 

でも…シャロちゃんはそれを断った。

 

シャロ「そ、それだけはダメ!!これは本来の自分の姿で、自分の口で言いたいの!!そうじゃなきゃダメなの!!」

 

千夜「シャロちゃん…」

 

シャロ「自分の口で言うから…ちゃんと言うから…だから…聞いて?千夜…」

 

千夜「う…うん」

 

シャロ「あのね…私…千夜のことが…好き…なの…///」

 

千夜「…え?」

 

意外だった。いつも私に対して素直になれずにツンツンしちゃうシャロちゃんから『好き』って面と言われたことが。

 

いや、それよりも私に『好き』と言ったその言葉が…

シャロちゃんの表情から察するに幼馴染みの好きなんかじゃないことに、私は気付いていた。

 

それはきっと恋人としての…『好き』

 

シャロちゃんのことなら、分かっているつもり。

 

シャロちゃんのことだから…相当思い悩んで告白したのだなって分かる。

 

だって、今にも泣きそうで…心臓の音が聞こえそうなほど顔を真っ赤にして俯いてるんだもの。

 

シャロ「だから…!!///」

 

でもごめんね…シャロちゃん。

 

その次の言葉は…聞けない。

 

千夜「うん、知ってるわ。だって…幼馴染みなんだもの。」

 

『私と付き合って』

 

そう言おうとしたであろう、シャロちゃんの言葉を制して…恋人になることを断った。

 

シャロちゃんと…幼馴染みで、小さい頃からずっと一緒にいて、私は毎日シャロちゃんとこうやって何も変わらずに過ごしたかった。

 

それ以上の関係になって…今の関係が壊れてしまいそうになるのが怖くて、シャロちゃんが遠くに行ってしまいそうな気がして…耐えられなかった。

 

シャロ「う、うん…そうよね…はは、改めて言うことじゃないわよね…」

 

ごめんね…シャロちゃん。

 

私のために辛い思いをさせて。

 

でも大丈夫よ。

 

私なんかより、シャロちゃんに合ういい人なんていっぱいいるんだから。

 

それでも、こんな私のために『好き』って言ってくれてありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一緒にいた中学校を卒業して、高校に入学する一週間くらい前に「記念にシャロちゃんと一緒に写真を撮りましょ」ってお母さんが言うから写真を撮ることになった。

 

シャロちゃんを呼んで二人で並んで…シャロちゃんは「高校にもなると何だか恥ずかしいわね…」って言ってたけど。

 

千夜母「じゃあ、撮るわよ?はい、チーズ!!」

 

パシャ!!

 

千夜母「うーん…千夜の表情が何だか固いわね…どうしたの?」

 

シャロ「あ、ホントだ。何かあった?」

 

そう言って顔を除きこむシャロちゃんの表情は何だか心配そう。

 

千夜「えっと…シャロちゃんと高校が違うから友達が出来るか不安になっちゃって…」

 

シャロ「ふふ、何言ってるのよもう…中学の時も自分から友達を作って仲良く出来てたじゃない。きっと千夜なら大丈夫よ。」

 

千夜「うん…」

 

シャロ「私もがんばるから…千夜もがんばりなさいよね。」

 

千夜「うん、ごめんねシャロちゃん」

 

シャロちゃん「別にいいわよ、気にしないで」

 

 

友達が出来るかどうかよりも…シャロちゃんのことが心配だった。

 

シャロちゃんの家は高校に入学するほどの学費は残っていなくて、だから高校は特待生で入ると学費が免除出来る私とは別の高校を受験して、猛勉強して見事合格した。

 

私はもちろん嬉しかったけど、シャロちゃんの行く学校はエリートのお嬢様ばっかりで…シャロちゃん自身が潰れないかとても不安だった。

 

シャロちゃんは大丈夫だって強がってたけど…やっぱり不安に見えた。でも、今さらどうすることも出来ない。

 

シャロちゃんのことが心配だったし、私自身も…正直寂しかった。

 

小さい頃からお揃いの前髪とか、二人で一緒に買ったアクセサリーとかつけたり、服を交換したりして楽しかったのに…

シャロちゃんの家庭の事情とはいえいつも一緒だったシャロちゃんとは違う学校に進んで…楽しかった思い出がなくなりそうに感じてしまい…

悲しくて…

 

そして、シャロちゃんのあの時の告白が頭をよぎって…

それを断ってシャロちゃんを傷つけてしまったことが…

 

さらに悲しくて…

 

だから…

 

千夜母「ねえ千夜、シャロちゃん、せっかくだしもう一枚撮りなおす?」

 

シャロ「私はいいですけど…千夜は?」

 

千夜「私は…」

 

この悲しみを…悲しかった思い出を今さっき撮った写真に残したくて、こうはっきりと告げた。

 

千夜「私は…この写真を残したいから、だからやめておくわ。」

 

だってこの悲しみも…シャロちゃんとの立派な思い出なんだもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、高校に入学する前日に私はココアちゃんと出会い、ココアちゃんと同じクラスになった。

 

最初に出会った時は入学式の日を1日勘違いしたりして面白い子だなって思ったけど、同じクラスになってさらに彼女のことを知ることが出来た。

 

ココアちゃんは素直で明るくて言いたいことははっきりというような優しい女の子。

 

私にはないものをいっぱい持っていて…シャロちゃんとはまた違うけど、すぐに仲良くなれた。

 

シャロちゃんの言っていた通り、すぐ友達が出来て、少し嬉しくなる。

 

そして、シャロちゃんも帰り道に通行の邪魔をしている不良野良うさぎを目の前にして、怖くて通れなかった所を偶然同じ学校の先輩のリゼちゃんが通りかかって追い払ってくれた時に知り合い、交流を深めていた。

 

昔から私のペットのあんこによく襲われて、うさぎが苦手なシャロちゃんにとってはリゼちゃんは格好良かったのかよくリゼちゃんの話をしてくれた。特に「家のことはリゼ先輩には絶対に内緒よ!!」って言ってたけど。

 

私はリゼちゃんならバレても大丈夫だと思うけどなって考えてたんだけど…私はシャロちゃんの言うようにリゼちゃんにもココアちゃん達にも黙っていた。

 

シャロちゃんもリゼちゃんと出会って毎日楽しそうで私も安心していた。

 

あと、シャロちゃんの家にはほとんどお金がないからバイトをするって言ってたけど、

私が働いている甘兎庵を勧めたら「いやよ!!あんたの所にはあいつがいるでしょ!!何回襲われたことか…」

って言って断って…

そのあとに「それにお金のことでまであんたに迷惑かけたくないし…」と付け加えて。

 

結局シャロちゃんは自分でバイト先を見つけて今もフルール・ド・ラパンで働いていて…最初はいかがわしい店だと思って勘違いして大騒ぎしてしまったけど。

 

 

 

 

 

そして今も、こうして図書館に来てお互いに勉強しながら話をしている。

 

それは今でも変わらない光景。

 

ココアちゃんとチノちゃんも私たちと一緒に図書館に来て勉強してたけど、ココアちゃんが「私たちチノちゃんの本探しに行ってくるね」と言ってチノちゃんと一緒に探しに行ったあと、シャロちゃんが口を開いた。

 

 

シャロ「最近、学校はどう?」

 

千夜「毎日楽しくやっていけてるわ。ココアちゃんもいるし。」

 

シャロ「そう。入学する前は友達出来るか不安だって泣き言言ってたのにね。」

 

千夜「そ、それは…///そういうシャロちゃんだってお嬢様っぽくないからって髪を切ってイメージ変えて…ホントは不安だったんじゃないの?」クスクス

 

シャロ「う、うるさいわね…///」

 

千夜「それにカフェイン酔いも相変わらずだし…他の人にまで絡んで…あれ?」

 

シャロ「ん?どうしたのよ?」

 

千夜「う、ううん…何でもない。」

 

シャロ「全く…変な千夜。」

 

 

 

そういえば…シャロちゃんのカフェイン酔いは中学まではよく私に絡んできたけど、高校に入ってからはココアちゃんに絡んだりチノちゃんに抱きついたりしていたけど…私には全く絡まなくなっていた。

 

いや、もしかしたらあのシャロちゃんの告白のあとから?

 

シャロちゃん自身が、髪を切ったり、絡まなくなったり、ちょっとずつ変わろうとしているのかしら…?

 

それに、最近のシャロちゃんはほとんどバイトばかりで…会うことも少なくなって、仕方ないとはいえ…

 

千夜(ちょっと…寂しい。)

 

シャロ「…私が千夜達と同じ学校だったら、どうなってたんだろ」

 

と、シャロちゃんの呟きで我に返る。

 

え?声に出てたかしら?

 

いや、シャロちゃんには聞こえていないようでホッとする。

 

千夜「今の学校後悔してるの?」

 

シャロちゃんもひょっとして…寂しい?

 

シャロ「せめて…せめてリゼ先輩と同じ学年だったら…」

 

千夜(ほんとにしてた…)

 

やっぱり、今のシャロちゃんにとって…リゼちゃんはかけがえのない先輩よね…

 

千夜「んー…正直窮屈よね。学費免除が理由でエリート学校に入れても、私だったら周りがお嬢様だらけで気を遣って疲れちゃう」

 

私も…ココアちゃんがいないと、今の学校でも疲れていたかもしれない。

 

シャロちゃんの学校のほうが勉強も難しくて、その上でバイトもがんばって…やっぱりシャロちゃんは私なんかよりもすごい女の子だわ。

 

千夜「でも待って…もしシャロちゃんが私達と同じ学校だったら…」

 

シャロ「だったら…?」

 

千夜「人数合わせ的に私とココアちゃんが違うクラスになっちゃってたかも!!そんなの困るわー!!」

 

シャロ「ぐさっ!!」

 

千夜「なんて冗談」

 

シャロ「いっ、いいかげんからかうのやめてよ!!」

 

シャロちゃんとこういうやり取りが出来るのはやっぱり楽しくて…幸せ。

 

でもシャロちゃんにはリゼちゃんがいるから…シャロちゃんのことを考えるなら…やっぱりダメよね?

 

 

 

 

千夜「シャロちゃんだってほんとは分かってるんでしょ?」

 

 

 

そんなことない…

 

 

 

そんな未来は訪れない…

 

 

 

 

 

千夜「学校以外でだってこうして会えるんだもの」

 

 

 

 

シャロちゃんの幸せを考えるなら…

 

 

 

 

 

 

こんなこと言ってはいけないのに…

 

 

 

 

 

 

千夜「私たち大人になっても」

 

 

 

 

 

今言うことじゃないのに…

 

 

 

 

 

千夜「ずっと一緒」

 

 

 

 

 

 

言葉は、止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図書館での勉強会も終わったあと、私は自分の部屋にいた。

 

 

 

『私たち大人になってもずっと一緒』

 

 

 

千夜(どうしてあんな言葉が出たのだろう…)

 

千夜(あんなこと言うつもりじゃなかったのに…)

 

千夜(私は…シャロちゃんが幸せならそれで…)

 

千夜(…あら?あれは何かしら?」

 

 

ふと、机の上にあるものが目に映ってしまい、手に取る。

 

 

 

千夜(これは…私とシャロちゃんが映っている…アルバム?)

 

千夜(そういえばお母さんが写真が多くなったから私たちが二人で映ってるのは別のアルバムに挟むって言って…これはしまい忘れかしら?)

 

 

そこには、私たちが出会ってから今までの思い出が映っていた。

 

千夜(シャロちゃんと出会ったのは…これは、赤ちゃんの時からかしら?何だか懐かしい…)

 

 

幼稚園の頃や小学生の頃、シャロちゃんが泣いてる写真や私がそれを見て慰めてる写真、クリスマスパーティーや誕生日パーティー…一緒にプールに行った写真や花火を見に行った写真も…シャロちゃんとの思い出がいっぱいだった。

 

ふと、1枚の写真に目が止まる。

 

 

 

 

 

千夜(これは…あの時の?)

 

 

 

 

そういえば…あの時、シャロちゃんは…

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

千夜「ちょっと…どうしたのシャロちゃん?」

 

シャロ「えへへ〜、千夜ぁ〜前髪パッツンお揃い〜」スリスリ

 

千夜「それはずっと前から一緒でしょ?くすぐったい…///」

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

前髪を同じにしたのは二人で決めて、一緒の髪型がいいって言って…お揃いなのが嬉しくて…

それで結局成長しても変えなくて…じゃなくて

 

シャロちゃんは何でこの時はこんなに絡んだりしてたんだっけ?

 

えっと…思い出せない。

 

でも…何か大切なことを言っていた気がするわ…何だっけ?

 

 

 

ーーーーー

 

 

千夜「ホントに、どうしちゃったの?シャロちゃん」

 

シャロ「え〜、何が〜、えへへ〜」スリスリ

 

千夜「今日はやけに素直というか…」

 

シャロ「…こんな私、千夜はキライ?」ギュッ

 

千夜「そ、そんなことないわ…どんなシャロちゃんだって私は大好きよ。ただ…びっくりしただけ。」

 

シャロ「えへへ〜、良かった〜…ねぇ、千夜〜…」

 

千夜「…何?シャロちゃん」

 

 

 

 

 

シャロ「私たち大人になってもずっと一緒だよ〜!!」

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

千夜「…思い出した。」

 

 

 

『私たち大人になってもずっと一緒』

 

 

 

千夜「最初にあの言葉を言ったのは…シャロちゃんなんだ…」ジワッ

 

 

 

 

いつの間にか私は、涙が溢れて…頬をつたって泣いていた。

 

 

 

千夜「なのに…私はそれを忘れて…あの時、あんな断り方をして…何て酷いことを…」ポロポロ

 

 

 

 

シャロちゃんにあの時の記憶があるかはどうか分からない。

 

 

 

でもあの時、シャロちゃんの望みを、あの時真っ直ぐに言ったシャロちゃんの『ずっと一緒』にいたいという願いをないがしろにして…

 

それに、シャロちゃんがどれだけ勇気を振り絞って告白したか…きっとホントに相当悩んで、悩み抜いて告白したのに…次の言葉も言わせないで幼馴染みだなんて…最低だ私…

 

 

『私たち大人になってもずっと一緒』

 

 

千夜「そうよ、その言葉が嬉しくて私もずっと離れたくないって思ったんだ」ポロポロ

 

 

だから、私もシャロちゃんに『ずっと一緒』だって言って…

 

 

 

千夜「私はシャロちゃんのことでいっぱいで…」

 

 

 

 

 

もう、離れたくない。

 

 

 

 

 

 

いや、離したくない。

 

 

 

 

 

千夜「シャロちゃんのこと…大好き。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日…学校の授業も集中出来ずいつの間にか授業が終わり、ココアちゃんと一緒に帰ってる途中…

 

 

 

ココア「千夜ちゃん、今日はずっと元気ないよね?」

 

千夜「え…どうして?」

 

ココア「分かるよ。だって千夜ちゃんと私は親友なんだもん」

 

千夜「親…友?」

 

 

 

幼馴染みの気持ちをないがしろにして…自分のことしか考えてなかった私が…?

 

 

 

千夜「そんなわけない…私、ココアちゃんと親友でいる資格なんてないもの…私なんて…」

 

ココア「……シャロちゃんのことで、何かあったの」

 

千夜「……どうして」

 

ココア「分かるよ。だって親友のことだもん。」

 

千夜「ココアちゃん…」ジワッ

 

ココア「それに千夜ちゃんが悩んでることってだいたいシャロちゃんのことだし、シャロちゃんはこんな良い幼馴染みがいて…幸せものだね」ナデナデ

 

千夜「でも…どうしようもないの…」グスッ

 

ココア「どうして…そう思うの?」

 

千夜「だってシャロちゃんには好きな人がいて…毎日楽しそうにしてて…今さら何をしたって…」ポロポロ

 

 

 

自分の想いに気付いた所でどうすることも出来ない。

 

今のシャロちゃんはリゼちゃんのことに夢中で…きっと今さらシャロちゃんに告白したって…

 

 

 

ココア「そんなの分からないでしょ!?」

 

千夜「ココアちゃん…?」ポロポロ

 

ココア「千夜ちゃんはシャロちゃんには好きな人がいるから今さらダメだって言い訳してるよ!!もっと自信を持って、もっと自分に素直になって!!」

 

 

 

ココアちゃんの言葉が胸に突き刺さる。

 

やっぱりココアちゃんは出会った時と同じで…ホントに眩しい。

 

 

 

千夜「でも…もし、自分に素直になって、この想いを打ち明けて…シャロちゃんが離れてしまったら…」ポロポロ

 

 

 

それこそ…耐えられない…

 

想いを打ち明けるのが…怖い…

 

 

 

 

ココア「千夜ちゃん、シャロちゃんはそんな子じゃないでしょ?一番それを知ってるのは…千夜ちゃんでしょ?」

 

千夜「ココアちゃん…」ポロポロ

 

ココア「だから、シャロちゃんのこと…信じてあげて?」ニコッ

 

 

 

そうだ…

 

私はシャロちゃんのことじゃなくて自分のことしか考えてなかった…

 

ホントはすごく怖かった…

 

自分が今さら告白して…シャロちゃんに嫌われたらどうしようって…

 

でも…今度こそ…自分が変わらなくちゃいけないんだ…

 

シャロちゃんと手を繋いでずっと一緒に歩けるように…

 

 

 

千夜「ココアちゃん…ありがとう」ニコッ

 

ココア「うん、やっぱり千夜ちゃんには笑顔が似合うよ。だから、がんばって?」ニコッ

 

千夜「うん!!」

 

 

 

やっぱり、ココアちゃんの明るさや素直さは私の憧れ。

 

私もココアちゃんみたいにシャロちゃんにもっと素直になれたらいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ココアちゃんと別れて今、シャロちゃんの家の前にいる。

 

シャロちゃん…帰ってるかしら?

今日はバイトも休みだって言ってたけど…

 

 

 

コンコン

 

千夜「シャロちゃん…いる?」

 

ガチャ

 

シャロ「あ、千夜…どうしたの?」

 

千夜「うん…ちょっと話があって…いいかしら?」

 

シャロ「うん…入って?」

 

 

シャロちゃんに促されて、シャロちゃんの部屋に入る。

 

シャロちゃんの部屋、何回も入っているはずなのに…ドキドキして、緊張してしまう…

 

でも今度は私からちゃんと言わなきゃ…

 

シャロ「ちょうど良かった。私も千夜に話があったから…」

 

千夜「…え?」

 

 

 

一体何の話なんだろう?…まさか、もうリゼちゃんと?

 

嫌な予感がして…

 

体が動かなくて…

 

胸がズキズキして痛い…

 

 

 

 

千夜「ひょっとして、リゼちゃんとのこと?」

 

 

勇気を出して振り絞って出た言葉は…それだけ。

 

聞くのが…怖い…

 

 

 

シャロ「うん、そうなの。あのね、学校帰りにリゼ先輩と話をしてね…」

 

 

 

 

嫌…

 

 

 

 

シャロ「実は…」

 

 

 

 

 

嫌…聞きたくない…

 

 

 

 

シャロ「…千夜?どうしたの?」

 

千夜「……え?」ポロポロ

 

シャロ「き、急に泣いて…どうしたの?何かあった?」オロオロ

 

千夜「………」ポロポロ

 

 

 

自然と涙が出て…言葉が出ない。

 

 

 

私はやっぱり…弱虫で…何も出来ない。

 

 

 

告白なんて…シャロちゃんの想いをねじ曲げてまで…

 

 

 

やっぱり…シャロちゃんにはリゼちゃんが…

 

 

 

 

ギュッ

 

 

 

え?シャロちゃん?

 

 

 

 

気がついたら…シャロちゃんが抱き締めていた。

 

 

 

シャロちゃんのあたたさが…シャロちゃんの香りが…私を包み込む。

 

 

 

 

シャロ「……どうしたの?」

 

千夜「…………」ポロポロ

 

シャロ「………ひょっとして、寂しかった?」

 

千夜「…………うん」ポロポロ

 

シャロ「……そっか」

 

千夜「シャロちゃんがどこか遠くに行くような気がして…リゼちゃんにとられるような気がして…」

 

シャロ「うん…」

 

千夜「それでつい最近気付いたの。私シャロちゃんのこと…好きだって…恋人として…もう離したくないって」ポロポロ

 

シャロ「そっか…ごめんね千夜。千夜の気持ちに全然気付かなくて…」ギュッ

 

千夜「いいの…でもシャロちゃんには…リゼちゃんが…そう思ったらもっと悲しくなって…」

 

シャロ「うん…そのことなんだけどね…聞いて?千夜」

 

千夜「うん…」ポロポロ

 

シャロ「私、リゼ先輩のことは憧れなだけなんだって…気付いたの」

 

千夜「…え?どういうこと?」ポロポロ

 

シャロ「私、リゼ先輩に告白しようと思ったけど…やっぱりリゼ先輩の好きな気持ちは恋じゃなくて憧れなんだなって…リゼ先輩ともう一人の女の子の言葉に気付かされたの」

 

千夜「もう一人の女の子…って?」

 

シャロ「『私たち大人になってもずっと一緒』って言ってくれた…目の前にいる私の自慢の幼馴染みよ。」

 

千夜「シャロちゃん…」

 

シャロ「さっき千夜が私のこと恋人として好きって言ってくれたけど、私も言うわね?」

 

 

 

 

 

シャロ「私も千夜のことが…恋人として好きです。だから…付き合って下さい。」

 

千夜「シャロちゃん…」ジワッ

 

シャロ「やっと…ちゃんと言えた…」ニコッ

 

千夜「シャロちゃん…今までごめんね…ホントにごめんなさい…」ポロポロ

 

シャロ「私のほうこそ…ごめんね?あの時はいきなりで…びっくりしたでしょ?」

 

千夜「でも、シャロちゃんあの時も勇気を出して…告白してくれたのに…私…私…」ポロポロ

 

シャロ「もう気にしないの…そんなに泣いたら私も…泣いちゃうじゃない…」ジワッ

 

千夜「…シャロちゃん大好き」ギュッ

 

シャロ「私もよ…千夜。それと、こんな私のこと好きになってくれて…ありがとう。」ポロポロ

 

千夜「私のほうこそ…いつまでもずっと一緒にいてね?」ポロポロ

 

シャロ「もちろんよ…」ポロポロ

 

 

 

 

しばらく…私たちは抱き合って…お互いの想いを確認して…謝って…嬉しくて…泣いて…それからお互いに笑いあった。

 

 

 

 

 

 

 

シャロ「…落ち着いた?」

 

千夜「うん…ふふっ」

 

シャロ「何よ?」

 

千夜「シャロちゃん…ひどい顔」クスクス

 

シャロ「なっ!?先に泣いたあんたに言われたくないわよ!!///」

 

千夜「ふふっそれに…ずっと泣いてたら思い出したことがあるの?」

 

シャロ「…何を?」

 

 

千夜「シャロちゃん…

初めて酔った日のこと憶えてる?自分の家でキャンプファイヤーしようとしてたわよね」

 

 

シャロ「え?…///」

 

千夜「確かあの時は…シャロちゃんの誕生日で…」

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

千夜「誕生日おめでとう、シャロちゃん」

 

シャロ「ふん…あ、ありがとう…///」

 

千夜「私はコーヒー飲むけど…シャロちゃんはオレンジジュースでいい?」

 

シャロ「なっ!?子供扱いするんじゃないわよ!!私もコーヒー飲めるもん!!」

 

 

 

 

この時は私も予想していなかった。

 

まさかシャロちゃんがコーヒーで酔うなんて…

 

しかも…

 

 

 

シャロ「えへへ〜、千夜〜!!せっかくだしキャンプファイヤーしよー〜!!」

 

千夜「ってここ自分の家よシャロちゃん!!そんなことしたら火事になるし、シャロちゃんの家お金がないのに住むとこなくなるわ!!ほら、蝋燭置いて!!」アセアセ

 

シャロ「え〜…分かった〜…」

 

千夜「ちょっと…どうしたのシャロちゃん?」

 

シャロ「えへへ〜、千夜ぁ〜前髪パッツンお揃い〜」スリスリ

 

千夜「それはずっと前から一緒でしょ?くすぐったい…///」

 

 

この時のシャロちゃんはよく私に甘えて、抱きしめていつものシャロちゃんじゃなかったけど…

いつもツンツンしてて素直じゃないから…本心では甘えたいのかと思ってシャロちゃんのなすがままになっていた。

正直こんなシャロちゃんも悪くないわねって、そう思った。

 

 

千夜「ホントに、どうしちゃったの?シャロちゃん」

 

シャロ「え〜、何が〜、えへへ〜」スリスリ

 

千夜「今日はやけに素直というか…」

 

シャロ「…こんな私、千夜はキライ?」ギュッ

 

千夜「そ、そんなことないわ…どんなシャロちゃんだって私は大好きよ。ただ…びっくりしただけ。」

 

シャロ「えへへ〜、良かった〜…ねぇ、千夜〜…」

 

千夜「…何?シャロちゃん」

 

 

 

 

シャロ「私たち大人になってもずっと一緒だよ〜!!」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

千夜「…って」クスクス

 

シャロ「………///」

 

千夜「あの時、シャロちゃんがずっと一緒だって言ってくれたから…私は自分の想いに気付けたんだって…そう思うの。だから、ありがとうシャロちゃん」

 

シャロ「べ、別にお礼なんていいわよ…///それに、私も…そのことはよく憶えてる」

 

千夜「え?…ホントに?」

 

シャロ「うん、あの最初に酔った時の記憶だけは…何故か憶えてて…何でなんだろ?よく分からなくて…やっぱり千夜との思い出があの時が一番大きいからかな…とか?///」

 

千夜「もう…シャロちゃんったら…///」

 

 

 

でも、確かにそうかもしれない。

 

 

きっとシャロちゃんにとって、あの時が記憶に残るほど一番の思い出で、カフェイン酔いとはいえ、初めて私に素直になれた日だから。

 

 

私も…そのおかげでシャロちゃんとこうして…付き合うことが出来たし。

 

 

 

 

ピロピロピロ、ピロピロピロ

 

 

 

千夜「あら、ココアちゃんからメールだわ」

 

シャロ「え?何なの?」

 

千夜「えっと…千夜ちゃんとシャロちゃんの仲直り記念に…今日の夜にお祝いしたいって」

 

シャロ「いやいや…別にケンカしたわけじゃないし…」

 

千夜「…行く?」

 

シャロ「まあ、せっかくだし…ね。」

 

シャロ「ホントはもう少し二人きりでいたかったけど…///」ゴニョゴニョ

 

千夜「えー?何か言った?」クスクス

 

シャロ「な、何でもないわよ!!///」

 

千夜「ふふっ…それじゃ行きましょうか?」ギュッ

 

シャロ「ちょっと…いきなり手を…///」

 

千夜「やっぱり…嫌?」

 

シャロ「そ、そんなわけないでしょ…でも、ラビットハウスの前までなんだからね///」

 

千夜「はいはい」

 

シャロ「それと…出掛ける前に…せっかく恋人同士になれたんだから…///」モジモジ

 

千夜「あ…///」カァ

 

シャロ「キス…しよ?///」

 

千夜「うん…ふふっ…///」

 

シャロ「な、何よ…///」

 

千夜「シャロちゃん、緊張してる?///」ドキドキ

 

シャロ「そういう千夜もでしょ?///」ドキドキ

 

 

 

シャロ「もう…いい?行くわよ?///」ドキドキ

 

千夜「うん…きて?///」ドキドキ

 

 

 

 

 

 

千夜「シャロちゃん、これからもずっと一緒よ?///」

 

シャロ「もちろんよ…千夜///」

 

 

 

 

千夜シャロ「「大好き」」ニコッ

 

 

 

チュッ

 

 

 

 

いつまでも…

 

 

 

 

どんなことがあっても…

 

 

 

 

 

 

 

 

『私たち大人になってもずっと一緒』

説明
過去にpixivで上げた千夜シャロSSの再投稿です。千夜視点です。あとがきは当時書いてて残してる(はず)だけどあとがきはなしですすみません。

このSSのシャロ視点もありますよー。よろしければどうぞー。
http://www.tinami.com/view/863960
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