九番目の熾天使・外伝 = 蒼の章 = 
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いつか誰かが言った

 

 

「宇宙は広大だな」と

 

 

誰かが答えた

 

 

「そんな世界のなかでは、僕らもちっぽけなものだな」と

 

 

 

 

 

 

なのに。

 

 

 

 

 

「戦いだけは終わらないね」と

 

燃え広がる戦火と落ちていくコロニーを見て((ひとり|・・・))の少年は呟いていた。

 

 

 

 

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―――――U.C 0097

 

 

無限ともいえる広大な宇宙。その中で、一隻の戦艦がある場所に向かい進路をとっていた。

スペースノア級万能母艦参番艦「クロガネ」。壱番艦シロガネ、弐番艦ハガネに続く参隻目の大型戦艦で、艦首には大型回転衝角を装備。対格闘戦を得意としている。

また、搭載している艦載機…機動兵器は大半が特機という特徴を持っている。

しかし、だからといってそれが主力というわけでもなく現在はかなりの大所帯となっており、その勢力は各所に散り散りになって隠れている。

DC、ノイエDC残党。旧ジオンシンパ。その他、現在では時空管理局に反対する勢力とも連携し、中にはそこからの志願者も居る。そのために、特機のほかにもMSやAMといった機体も多く格納されていた。

 

 

 

 

「―――まぁ、そんな訳で別にこの艦にMSがあるのは不思議でもないでしょう」

 

「いや…まぁ…」

 

「不思議じゃねぇんだけどよ……なんでアンタが居るんだよ。ラドム博士」

 

クロガネ格納庫。その一角では本来いる筈がない人物が立っており、何気ない顔で作業をしていた。

ご存じ、マ改造の大名手ことラドム博士が何故かクロガネに乗艦しており、別に変でもないだろうという顔でBlazたちの前に居た。

そして彼らの前には団長からの任務で駆り出されたキリヤとげんぶ、そしてBlazの三人が居て、博士が疑問そうに思っている顔に逆に疑問に思っていた。

 

「何故? 言ってませんでしたか。貴方たちにあの鉄砲玉カスタムを渡すついでに別口で製造していたパーツを受け取りに行ってたのです。で。今回はその帰り。お分かり?」

 

「あのガガ本気で作ったのかよ…」

 

「つかアレ一体何機作ったんだよ…」

 

楽園内に置かれた、博士の趣味っていうより狂気の塊。

火薬、爆薬、コジマ粒子、核エネルギーをこれでもかと詰め込んで、その重さに対応するためにまたもこれでもかという程の過給機やブースターやバーニアやらを満載にしてもはや頭以外原型のない超突撃兵器。それが

 

 

 

 

 

ガガ鉄砲玉かちこみカスタムである。

 

 

 

ちなみにこれ一機でコロニーが吹っ飛ぶ威力である。

 

 

 

 

 

 

「…それよりも。機体の方はあれでよくて?」

 

「…まぁお陰さまで間に合ったっていうことで有難くはあるけど」

 

「まさか開発者が博士だとはな…」

 

「不満ですか?」

 

「いや…実績があるから疑いはしないが…」

 

それ以上に自分の体が五体満足で戻ってこられるのかと不安ではあった。

彼女ことマリオン・ラドムは新西暦の世界である機動兵器開発計画の主任を務めていた。EOTと呼ばれる未知の技術を一切用いない新型強襲用機動兵器開発計画、通称「ATX計画」その主任であり主でもあるのが彼女なのだ。

未知の技術を使わず既存技術のみを使用するということで信頼性は高いが、それに反した高コストと機体性能。長所のみを限界まで引き延ばしたというコンセプトはガガほどではないが、彼女の性格などを示していた。

 

「贅沢は言わないで下さい。貴方たちが出撃すると聞いて、私も急ぎで作り上げた組み上げた機体なんですから」

 

「………俺、生きて帰れるのかな」

 

「不安になってきたな…」

 

「ハハハハハ、何を言うか。お前ら。こんなの序の口、序の口……」

 

「おーい、Blazの目が死んでるぞー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。今回、宇宙にまで上がった彼らが何の任務を与えられたかというと、クロガネ、ひいては旅団と協力関係のあるレジスタンス組織からの救援信号を受けたのだ。

レジスタンスは宇宙世紀の世界にある廃棄コロニーを再生させた大規模な組織で、そのための戦力として旅団から多くの武器や機動兵器を受け取っていた。そして、情報や物資補給などを行わせたりと、比較的協力的な組織で、特にげんぶやBlazたちとは顔なじみの組織だ。

しかし、その組織から今回、時空管理局なる組織からの襲撃を受けた、という報告を受け、クロガネがその応援のために急行していて、現在に至る。

 

いわばいつもの任務のようなものだったのだが、今回は彼らに三人にはある制約が存在していた。

それは、彼らが普段使う機動兵器、PT、MS、ACなどが一斉にオーバーホールを実施させられていたからだ。いつも万全な整備をと行っているのだが、最近、機動兵器がお蔵入り状態だったことから団長の指示で全ての機体が一斉整備に回されてしまったのだ。当然、クロガネ隊の機体も類に漏れず、実際艦内の格納庫には彼らの乗る三機しか搭載されていなかった(その分、戦闘機などは格納されていたが)

しかしBlazやげんぶたちといった元パイロットたちは機体があってのこと。なのにその機体がないとすれば、あとは肉弾戦だけしかない。

 

しかし。そんなときにある話が舞い込んでくる。

旅団中核メンバーの一人であるokakaから数機ほど機体を回せると、申し出て来たのだ。彼の部隊では現在機種転換が行われており、今まで使用していた機体を良ければ予備機としてどうか、と言われMS乗りである二人のほかに、戦力として回せたキリヤを加えた三人に合わせ、三機がクロガネに搬入された。

その内の一機、げんぶ機は自分が以前使用していたという機体に似せて改修され、Blazはokakaに注文して突貫工事での改修をしてもらった。

しかし、残る一人であるキリヤは突然の配備だったりと抜けた個所が多かったことで機体のコンセプトが定まらずそのままになると思われていた。

が。

 

 

 

「……それを偶然乗り合わせていたラドム博士の愉快な品々によって俺の乗る機体は彩られたと」

 

「贅沢な子ですこと。貴方に合わせてチューンされただけでも有難く思いなさい」

 

結果、彼の機体はラドム博士によって改修され、実質的専用機として生まれ変わったらしい。

完成した機体からキリヤの注文と彼の特性に合ったチューンになったので結果オーライと言えるだろう。

 

「まぁ…腕も確かだし、依頼通りの仕様にしてくれたから文句は言わねぇけどよ…」

 

「最近のパイロットは贅沢ですこと。もう少し、遠慮というのを…」

 

「いや…それよりも…」

 

「アンタだからどんなゲテモノが出来上がるか…」

 

なにせ計画で出来上がった最初の機体は圧倒的火力と防御力と加速力をもっているが、飛べず化け物みたいな加速で、しかもバランスが不安定という機体だ。

そこから更に空力カウルの装甲を持った完全遠距離だけで当たる前に避けろという機体。

そしてそこから更に最初の機体がやっと飛べるようになったがなんかイマイチ変わってない気がする機体と、完全に量産やら何やらを考えていないのが彼女の計画の現状と全貌だ。

 

「それが贅沢だと言ってるのです。それに、貴方たちのお陰で私と正規兵は更に高みと安全に上れるのですから」

 

「その過程で俺らを殺す気満々だよな」

 

「もはやこの人が人かすらも…」

 

 

 

その直後。格納庫に繋がる扉が開き、奥からミィナが入ってくる。宇宙空間だというのに相変わらず薄着なのは彼女のアイデンティティに関わることらしい。

 

「おーい。そこの三人―!」

 

「おう。ミィナ、どうかしたか?」

 

「レーツェルさんがそろそろ作戦室に集まれって。もう直ぐ作戦宙域だから」

 

一応、クロガネ隊のリーダーはレーツェルなので、彼と絶対の信頼を置く友であるゼンガーも今回艦に乗員している。機体は現在、レーツェルの機体は修理後の調整中で、ゼンガーの特機は武装の関係から再度オーバーホール中だ。

レーツェルのアウセンザイターは今回の作戦に間に合うかどうかだったらしいが、どうやら間にはあわなかったようだ。

斯くして、たった三機だけの無謀な作戦となって、今回は行われることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――今回の作戦は予定通り、君たちの三機のみで行ってもらう。だがそれだけではあまりに無謀ということで、今回このクロガネも及ばずながら参戦する」

 

と。ブリーフィングが始まり、Blaz一味とげんぶ、そしてキリヤとリリィたちが一線にレーツェルに目を向けて、今回の作戦についての説明を受ける。

第一声から出て来たのは、クロガネも戦線に加わるということ。

いくら熟練者であっても、三機のMSだけでの大規模艦隊を相手にするのは無謀だということで敵艦の牽制と囮、そして艦首にあるアルカンシェルへの対応ということで、クロガネも前線へ参加することとなった。

 

「クロガネの装備なら、敵艦の一隻か二隻は相手に出来る。その間に君たちにはコロニーを包囲する部隊を牽制・撃破して退路を確保してほしい」

 

「コロニーか…様子はどうなってる?」

 

「レジスタンスはデブリ帯の中にある廃棄コロニーを使用している。その中に現在、チベ級二隻、マゼラン級四隻。そしてクラップ級一隻の計七隻がある」

 

レジスタンスの保有する艦隊が予想以上なので、そこそこ大規模だなとげんぶは関心するようにデータに目を通していく。

戦艦としては前者二種は旧式もいいところだが、クラップ級というこの時代では最新型の艦を保有していることからそこまで侮れるものでもない。しかも、この艦隊全てが自前で鹵獲したり合流した者たちからのだというのだから猶更だ。

 

「保有してるMSは?」

 

「ジオン系と連邦系の混成部隊だな。旧式のザク改とゲルググ。ドムや後継機のドライセン。

 連邦系ではジムVを中心にジム・カスタムやキャノン。スナイパー仕様の機体があるらしい」

 

「寄り合い所帯の現実だな。レジスタンスつっても中身は寄せ集められた連中ってわけだ」

 

「ああ。だが、今の彼らの指導者によって実際に組織としては成り立っているらしい。特に、現状が連邦政府への反対と不満なら」

 

 

連邦の行いに何も反対ではないのはジオンやコロニーのみではない。連邦内部でもその行いや差別、貧富などで対立している組織も多く、彼らレジスタンスはその類に属している。

連邦政府の政策とそれによる貧富の差。そして軍や警察組織の対応と横行。それに反する声は未だ多く、更にそれが緩やかな崩壊に続いているというのは誰の目からも明らかだ。

それでも連邦の首脳陣は自分たちの保身に精一杯であることから、こういった組織が至るところに現れては活動をしている。

 

 

「―――了解。んじゃ、今の状況は?」

 

「うむ。その事だが」

 

 

 

 

その辺についてはかなりシンプルなものだ。

どうやらそのレジスタンスに武器や装備を提供する代わりにかくまってほしいと、言って来た転移来訪者がいるらしく、その人物が管理局ひいてはミッドなどの組織そのものにとって重要な存在か、情報を持っていたらしく、その捕獲命令で次元航行艦三隻が出撃。しかも、これを気に宇宙世紀に降伏勧告をしたというのだから随分と大きく出過ぎたことだ。

当然、連邦政府はこれを拒否。自分たちにもそれなりの戦力はあると言って返した。

 

だが問題はレジスタンスのほうで、無差別の降伏と武装解除。そして全員投降等々と完全に自分たちと戦うのは無駄と言い切ったもので、しかも捕虜などとして扱う気もゼロということからレジスタンスも当然反発。保有する戦力全てを出し切っての攻防戦となった。

 

 

 

「現在、管理局艦隊はコロニーを包囲するようにデブリ帯の中に配置されており、レジスタンス側も迂闊な攻撃ができないようになっている。一方でレジスタンス側は全戦力の艦隊を、コロニーを囲むように配置。敵貴艦に対し三隻。残り二隻の割り当てで配置しており、現在にらみ合いの状態だ」

 

「管理局の航行艦の装備は?」

 

「次元空間内でも発射可能な連装砲を上下に二門ずつ。一般的な戦闘用改修型だ。だが、敵貴艦はそれ以上に重武装でな。連装砲だけでなく魔力式の試験型対空砲群、同じエネルギーでの外付け型のミサイルランチャーを装備している」

 

「…そろそろ管理局も化けの皮を脱いできたか」

 

「かもしれないな」

 

やって本来の姿を堂々晒したか、と呆れるキリヤにサングラスのせいか表情が変わってないように見えるレーツェル。

しかし内心ではこの状況にどんな感情を抱いているか、それは近くで壁に寄りかかっているゼンガーぐらいしか分からないのだろう。

 

「なので、今回我らクロガネ隊は敵艦の一隻を撃破しつつ、進軍路を確保。レジスタンスとの合流後、速やかに残る二隻を撃破、ないし撃退する」

 

「撃破だけで十分だろ。今までもそうしてきたんだし」

 

「……ああ」

 

「………?」

 

キリヤの余裕げなセリフに変わらず無表情に返すが、その様子がどこかおかしいと見たBlazは無言ながら眉を寄せる。いつもの彼なら、その場で軽く笑うところだろう。だが、今回はそれとは違い何か思いつめたかのように考えているような感じなので、そのなにか明様に隠しているというような態度は、同じ隊に属しているBlazには一目で見抜けることだ。

 

 

ブリーフィング終了後、格納庫に行き出撃の用意を始めるのだが、ブリーフィングルームを出てからも表情を変えないレーツェルにBlazはやはり気になったので、人気かせ居なくなったのを見て、思い切って問い詰めた。

 

「オイ、レーツェルさん」

 

「なんだ、Blaz」

 

「なんだじゃねぇよ。アンタ、俺たちに何を隠してる」

 

「………。」

 

表情は変わらない。だが何か隠していると、彼の第六感がそう言っていた。ただそれだけだが、Blazにとって問い詰めるには十分な理由だ。援軍が望めない今、こういったなにか悪い予感は早々に潰しておいたほうが、万が一の時に余計なことを考えずに済む。

加えて、Blazの性分からこういった時に隠されるのはどうにも歯がゆいのだ。

 

「私が隠している…か。そうだな。あまり言う気になれんかったので言うに言えなかったのだ。すまない」

 

「…アンタが言う気になれないとは…珍しいね。なんかあったのか?」

 

「何か…というより、既にあったと言うのが正しいな。この場合は」

 

「………どういうこった」

 

「話しておこう。実はな―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「FCS起動。システムオールグリーン」

 

『了解。((006|キリヤ機))、カタパルトへどうぞ』

 

艦内のリフトが稼働し、カタパルトへと続く場に機体を持ちあげる。格納庫から続くリフトから上がって来たのは、それぞれげんふとキリヤの機体。どちらも同じジェガンタイプだというのに、外見からかなりの差がある。

 

「げんぶ機、いつでもいいぞ」

 

げんぶ機は装甲にガンダリウムεという合金素材を使用し、軽装ながら高い防御力を持つ。その他、かつてジオンに属していたことからか、ジオン系の武装も使用が可能で、今回は腰部にチェーンマインを装備しているなど、各組織の武器などをいいとこ取りしたような機体になっている。

 

「えっと…重量こんだけで推進剤がこんだけ…どんだけ積んでるんだよ。コレ」

 

一方、キリヤの機体コードネーム「ファントム」は遠距離支援などをメインに改修され、背部にはラドム博士お手製のバックパックが増設されている。そこには長身ビーム砲とミサイルポット、更にライフルを担架出来る場所も用意されている。重装備ということで機動性が低下するが、彼女が作ったということで強引にバーニアやらが増設されたものとなった。

今回は、背部に試作徹甲弾入りライフルとマガジン式ビームアサルトライフル。既存品のビームライフルは腰部に担架。手にはハイパーバズーカを装備している。

 

『カタパルト固定確認。((017|げんぶ機))、発進どうぞ』

 

「了解した。げんぶ、ジェガンD型改、出るぞ」

 

規格を調整されたカタパルトに足を固定し、固定確認と最終信号を出すと、げんぶのジェガンが勢いよく射出される。

弾丸のように飛んでいく機体は背部からバーニアを吹き出し、慣れた動きで体勢を安定させた。MSに乗り慣れたげんぶだからこと直ぐに出来る芸当だ。

そして、それに続き、キリヤのファントムが射出。重量が幾分か重くなっているが、それに対応するためにスラスターも増設されている。考えとしてはあながち間違ってもいないが、その分パイロットの技量も必要で、姿勢安定だけでもキリヤは四苦八苦する。

 

 

「ッ……流石に無理やりすぎるだろ、この機体……」

 

『大丈夫か。キリヤ』

 

「ああ…なんとか姿勢安定は出来るし、動きも悪くない。無理やり安定させてる分、色々気遣う必要あるけど、そこはあんま気にする話でもないか」

 

『ああ。俺とBlazが先行して敵を叩くから、キリヤは送られたデータを元に狙撃で援護してくれ』

 

「あいよ。手筈通りにってな」

 

 

『続いて、((020|Blaz機))、発進どうぞ』

 

「あいよっ……ジェガン、出るぜ……!!」

 

最後に遅れて射出されたBlazの機体は特殊部隊「エコーズ」仕様のジェガンにスタークジェガンのユニットなどを取り付けた機体で、いわばエコーズ版スタークジェガンと呼べる機体だ。そこに更に改修が加えられ、一部フレーム等をガンダリウム合金にすることで重量軽減と剛性維持を可能としており、基本性能はそのままに向上している。

装備はスタークジェガンとエコーズ機のをミックスしたもので、ビームハンドガンを脚部に。腰部にはハンドグレネードなどが装備されていたりとコンパクトに纏められているが、似合わず重武装になっている。

 

 

「…軽い。ウチのドムより軽いぞ」

 

比べるところが違うと言いたいが、そう言ってくれる人物は生憎と現状ではいない。加えて、推進剤も純度が高い物になっているので、なまじ一般的に使われているものよりも推力は高い。そんな高ステータス機というだけあって、動かして直ぐに乗り慣れたBlazだからこそ、その違い気付くことができたのだ。

 

 

「なんか敗北感感じるなぁオイ…」

 

コクピットで盛大なため息をつくBlazは、そう言いながらも感度のいい動きをする機体を動かし、先に射出された二機と合流した。

 

『よし。これで全員だな』

 

『えっと…一体どういう地形なんだ、コレ?』

 

「辺り一帯がデブリってだけだ。この辺、昔は……色々とあったからな」

 

 

 

 

サイド2と呼ばれるこの一帯はかつてジオンと連邦の戦いの渦に巻き込まれた。

ブリティッシュ作戦と呼ばれたその中で、コロニーの一つが大きな質量兵器として落とされ、多くの命が散っていった。

その後、中立宣言をしたコロニー群で現在は再生の道を歩んでいたが、未だ戦いの傷は癒されずかつての戦いの後である廃棄されたコロニーや機体、戦艦の跡が浮いている。

そんな場所だからこそ、レジスタンス組織としての拠点にはうってつけだ。

 

「早々には消えないものだ。それに、この世界はそれでなくても火種は多いからな」

 

「だな…」

 

そんなデブリ帯のなかで、レジスタンスたちは虎視眈々と反旗を翻す機会を窺っていた。

なのだが、今回予想もしていなかった事態に陥ったのだ。当然、決起までの準備をしていたので、警戒はしていたが次元を超えて現れた勢力など誰が予想しただろう。

 

 

「そこに入りました管理局…泣けるな」

 

『泣けるか…?』

 

「この世界の奴らにとってはそうだろうな。―――――デブリに入るぞ」

 

 

無駄話もここまでだ。げんぶの言葉に分かってると、返す二人はペダルを強く踏み、機体のバーニアを強く吹かせた。推力を強くした三機はそれぞれ散開し作戦開始として散らばっていく。Blazとげんぶは正面から。キリヤはそれを援護。

搭載機のない管理局の航行艦相手ならそこまで苦労することもない。

 

 

「んじゃ、二人とも背中は任せてくれ」

 

『下手して俺らの背中に撃つなよ』

 

「するかよ。ほら、さっさと行った行った」

 

キリヤに急かされ、デブリの中を飛んでいく二機。慣れた動きでスラスターを活用していく動きは、彼らが熟練者であることを決定づけている。

当然、キリヤも例にもれずだが、流石にデブリ帯を軽々とジャングルを飛び交うサルたちのように動く二機には驚いていた。

彼らにとって、まるでここがアスレチックか何かに見えているのかと錯覚してしまう。

 

「よくこのデブリ帯であんな動きするよな…」

 

といいつつも自分の仕事を忘れていないキリヤは、どこか狙撃のポイントとして良い場所はないかと辺りを探すしていた。宙間戦闘でも矢張り足場があると、彼的にもしっくりとくるものがあるようだ。

 

「……船首か」

 

見つけたのは一年戦争時に使用され、その後も使い続けられたサラミス級戦艦の艦首。その後ろはほぼ破壊されて無くなっているので、爆発したときに吹き飛ばされたのだろうと思いつつ、機体をゆっくりと近づけて足裏のクローで艦首にしっかりと張り付く。

そのせいか若干動いてしまったが、位置や射角は十分とれているので差ほど問題にもならない筈だ。

 

 

「クロガネの合流が二分後。それまでに…どうなるやら」

 

 

 

 

そして。戦端は再び開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

クロガネ隊が援軍に来る直前のこと。一度だけだが降伏勧告が拒否された直後、管理局とレジスタンスとの間で小競り合いがあった。鶴翼の陣を敷き、バリアフィールドとその中から撃てる連装砲を武器に攻撃する航行艦と、バリアはないがMS部隊と豊富な火力をもつレジスタンス。

戦況は管理局有利かと思われたが、レジスタンスのMS部隊の攻撃が予想以上の激しさで、しかもデブリを利用して戦う彼らに翻弄され、小破一隻、貴艦は無傷だがフィールドを破られかけるなど、絶対に自身がその場で崩れたことにより、一時後退と体勢の立て直し、援軍を待つ長期戦になった。

 

 

「敵部隊の様子は?」

 

「依然としてこちらに艦を向けたままの静観が続いています。残り二方向に配置されたのも同じく」

 

「ふむ…僚艦はどうだ」

 

「本艦から十時方向の「レッド」、一時の「ホワイト」ともに警戒ラインにてデブリ内に隠れています。ホワイトは小破ダメージを受けてましたが、現在応急修理が完了してフィールドを再展開しています」

 

よし、と味方部隊の状況を確認し体勢をある程度立て直せたと見た、指揮官であるジーベルは自軍の状態と戦況を聞き、口元を釣り上げた。彼はこのまま静観とにらみ合いの状況が続けば絶対に勝てる、という自信があったからだ。

今回の脱走者捕獲というあまりに出世に繋がらない任務だと悪態づいていた彼だが、任務の内容と脱走した人物、そして今回の戦いで自分の点数が上がる切っ掛けを見つけたのだ。

 

 

「ふん。まさか、脱走者が局の中でも最高権威の医者の女だとはな。ま、それくらい助ければ俺の出世の足しにはなるか…」

 

小声で今回の作戦が成功した暁に自分の評価がどうなるかと、嬉しそうに考えるジーベル。脱走した女性は、管理局の中でもトップの医療スキルを持つ人物で、しかもあの六課と関係を持っていたという。なんでも彼女だからこそできることがあったかららしく、多くの事件の後となった今でも関係を持っていたらしいが、ある日を境に突然逃げ出してしまったらしい。

 

「しかも六課の小娘どもと関係を持っているのであれば、奴らを下す良い材料になる。六課は目障りだからな。だがあの小娘たちを俺の部下にすれば…」

 

ジーベルの目的は六課のエースたちではない。その肩書と実力が本当の狙いで、それを指揮するものが自分であれば自然と地位向上につながると考えていたからだ。

他の高官たちは彼女たちの見た目などに気を取られていたが、ジーベルはそんなことで彼女たちを部下にはしないという確固たる理由があった。だが、結果として彼もまた出世のためという理由は他の者となんら変わりはない。

 

「それに加えて今回のレジスタンス風情はMSなんていう兵器を持ちだしている。これを鹵獲すれば、俺も貢献者だ」

 

そして。そのために今回援軍を要請し、次元航行艦三隻を合流させてもらうことになっている。合流すれば六方向からの一斉攻撃でレジスタンスを壊滅。降伏した者たちを捕まえ、更に兵器を鹵獲し脱走者も手に入ると、彼にとって一石二鳥どころの話ではない。

 

「クククククク……あと十分で援軍が到着する。そうすれば…」

 

 

 

 

 

だが。その時だ。

艦内に甲高い警報が鳴り響き、ブリッジにいたクルーたちに緊張感が走る。

ジーベルはその高い音を響かせる警報に五月蠅いと舌打ちしながらも何があったのか確かめる。

 

「なにがあった」

 

「レッドより入電。後方六時方向から敵の襲撃を受けているとのこと。現在、フィールド稼働率、二十パーセントダウン」

 

「…援軍だと? レジスタンスの?」

 

たかがレジスタンスだが、伏兵の可能性はあり得る。しかしだとしても今まで彼らの艦のレーダーに引っかからなかったのは何故なのだろうか。

疑問はあったが、ジーベルは自分の頭の中で考えられる可能性を弾きだし、結論を出した。

 

「どこかに工作でもしていた連中が戻って来たのか。数は」

 

「小型のMSが二機。いずれもカスタム機のようです」

 

「………なるほど」

 

大方、レジスタンスの厳しい台所事情からの改造機なのだろうと結論付けたジーベルは、レッドに対し指示を飛ばした。

 

「レッドは現在の配置位置から離脱。連中に道を開けてやれ。フィールドは維持してその場と警戒ラインから離れさせろ」

 

「は……よろしいので?」

 

異論を持つオペレーターにジーベルは小さく一笑すると、自分が考えていることを鼻高々にしゃべりだす。

 

「連中は逃げ込むのが目的だ。カスタム機というより、大方破損個所を縫い付けた急増品にすぎん。それに、援軍というより単に偶然のエンカウントだ。敵が合流しようというのなら防いでやるなということだ」

 

「…一網打尽…ですか?」

 

「そうだ。連中の目的が廃棄コロニー内の連中との合流なら、あえてそうしてやった方が駆除しやすいからな」

 

 

実際、本当に援軍でありカスタム機であることなど完全に読み違えているジーベル。だが、その言葉があまりに正論すぎた故にオペレーターもなるほど、と納得してしまいレッドにその場から離れて道を開けてやるように言ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「…敵艦が浮上していくな」

 

「道を開けるつもりか? どういうことだ」

 

レッドを後ろから攻めていたBlazとげんぶは、態々道を開けてくれたことに首をかしげる。後ろから攻めた直後は敵艦も必死にフィールドを展開し抵抗していたが、それが突如防御一択になるとまるで逃げるように浮上していったのだ。

 

『…どうやら。俺たちが来ることは意外だったらしいな』

 

「ああ。奇襲攻撃を受けたから戦力の目減りを防ぐために逃がしたんだろうに」

 

離れていく航行艦を見つつ、コロニーに向かいながらも警戒する二人は通信で相手の行動がどういう意味で、一体向こうがどう考えているかを容易に察した。

どうやら向こうには戦力を温存しておかなければならない理由があるようだ、と。

 

「ってことは…援軍待ちか…」

 

大方、援軍を呼んで物量か包囲網で潰す気なのだろうと、ジーベルの予想を見抜くBlaz。包囲網を態々崩したということはそれだけの対応策があるということだ。この場合だと向こうが援軍を待っているか、何かであることは確か。

それに加え、直ぐに明け渡したところを見ると向こうも色々と一人歩きした考えで策士を気取っているのだと。

自分が策士であると誤認して、本来は最大のチャンスを逃すタイプなのだろう。

 

 

 

「にしても、この機体軽いなぁ…」

 

結果、折角配置についていた陣を明け渡した艦を見つつ、二人は包囲網を突破。

デブリ帯の中を通って行き、目的地である廃棄コロニーへと向かって行った。

逃げていくカスタム機二機に指揮官からの報告と理由を聞かれたレッドのクルーたちは、二人の機体がレジスタンスの改造機だと考えてしまい、援軍がその二機だけだと思い込んでしまった。

 

 

「敵機二機、目標へと向かって行きます」

 

「よし。指揮官からの話だと、連中はコロニーに居る奴らと合流するハズだ。その後、我々は援軍部隊と合流し、敵を叩く。今のうちに用意を済ませておけと((ハンガー|・・・・))の奴らに言っておけ」

 

しかし、その後キリヤたちから後ろを狙われ、最悪クロガネの艦首装備に貫かれるということになるかもしれないと知らず、彼らは態々自分から元の位置に戻り軌道修正の手間を省けさせた。

さらに援軍である二人が向かったことによってレジスタンス側が旅団の援軍が来たということで反撃を開始するのだが、結果この通り慢心しきっているので、逃げることも出来ずむしろ自分たちから敗北へと走っていると、この時知る由もない。

援軍はレジスタンスの仲間。機体も所詮急増品。援軍が来れば容易に倒せる。

完全に勝利を確信しきっていたが、当然その所為で警戒を怠っていたのも事実。

ゆっくりと後ろから攻めてくるクロガネの姿に、レーダーに反応するまで気づけなかった。

 

 

その慢心のツケとばかりに彼らに向かい衝撃砲が後方から放たれ、並べられていた推進機の一つが破壊される。

ディストーションフィールドは発生させていたが、援軍が来るまでは大丈夫だと思い、出力を弱めていたので、フィールドでは耐えられないほどの攻撃を一度に受けたお陰で崩壊。そしてそこに更にダメ押しの狙撃が入り、一つが完全にお陀仏になった。

 

「ッ!? な、何事だ!!」

 

「後方からの攻撃です! 今ので右推進機が破壊されました!?」

 

「馬鹿な…ディストーションフィールドは!?」

 

「それが…今の攻撃で崩壊してしまい、ブレーカーが…」

 

「なっ………」

 

 

 

 

 

「慢心ダメってな。まずは一つ」

 

徹甲弾入りのライフルをボルトアクションで排莢する。装弾不慮になりにくい構造なのでジャムになることもなく、薬莢も直ぐに吐き出されて新しい弾が装填される。

弾数が六発だけというのがネックだが、その分威力や命中度は高いものになっている。

キリヤがチョイスした理由は、その数発でケリがつくと予想し万が一六発で敵軍を倒しきれなかった場合でもビームライフルなどで応戦が可能だと判断したからだ。

 

「006よりアイアン3。座標転送。あとは任せた」

 

『アイアン3、了解した』

 

後方からの狙撃で座標位置を特定したキリヤは、再度クロガネに狙わせるためデータを転送する。正確な座標が送られて、クロガネの砲撃の精度は高くなる。最初は殆ど観測と予想だが、そのデータを元に修正された砲撃に容赦はなかった。

 

「連装衝撃砲、射角修正。次で足を完全に止める」

 

「了解。射角修正ッ!」

 

 

 

「ッ!? 後方に熱源…これは、敵戦艦ですッ!!」

 

「なにっ!? レジスタンスのか!!」

 

「い、いえライブラリにデータがありました! 反抗勢力、旅団の戦艦…コードネーム「ブラックスピア」ッ!!?」

 

「あのドリル付きだと!?」

 

 

「―――黒い槍か。言い得て妙だな」

 

「上部連装衝撃砲、一斉射ッ!!」

 

クロガネの主砲である衝撃砲が唸りを上げて砲撃を撃つ。守りのフィールドが破られた今、彼らを守るものはもうなく、殆どをフィールドだけに頼っていた次元航行艦に耐久力はなかった。

 

「れ、レッド、轟沈ッ!!」

 

「な……!?」

 

「指揮官ッ、レッド轟沈位置に敵艦の反応ッ! ライブラリ照合結果、コードネーム「ブラックスピア」と判明しました!!」

 

「あの黒いドリル付きが…レジスタンスにだと!?」

 

未だ自分の考えが浅知恵であることに気付いていないジーベル。クロガネがレジスタンスに与したと思い込んでいるが、実際はレジスタンスが彼らの仲間で、与している組織なのだと気づいていない。

加えて、友軍艦がやられたことで焦りが見え始め自分の考えでしか頭が回らなくなってしまっていた。

 

「くっ……!」

 

「ブラックスピア。レッド轟沈場所から移動し、真っ直ぐコロニーへと向かっています!」

 

「目的は仲間との合流か…! ホワイトに打電ッ、アルカンシェル使用を万が一のための許可し、コロニーへの攻撃を開始せよ!!」

 

「よ、よろしいのですか!? 我らの総数では…」

 

「もう直ぐ、援軍が到着するッ! それに…我らにも手はある…!!」

 

 

 

 

 

 

 

「アイアン3より017と020。敵艦、エネミー2を撃破。これよりコロニーの部隊と合流する」

 

『017了解した』

 

『020、了解だ。』

 

爆散する航行艦を見て、通過できると判断したレーツェルはキリヤの方にも通信を飛ばし、クロガネに着艦するように指示する。ただ、艦内に入れというわけではなく、甲板の上から狙撃させようというのだ。

 

「006。本艦の甲板に付いて、以後はそこからの援護射撃を頼みたい」

 

『あいよ。006了解だ』

 

難なく敵艦を突破したクロガネは、キリヤの機体を甲板につけさせて前進する。廃棄コロニーに居た部隊と一足先に合流したBlazたちはクロガネが来る前に部隊を纏めて反撃の用意をする。

 

『020からアイアン3へ。レジスタンスと合流。これからどうする?』

 

「ん…我らもほどなくしてコロニーへと到着する。その間に残る二方への部隊を編成していてくれと頼んでくれ」

 

『分かった――――って?!』

 

刹那。突如通信の向こう側から聞こえてくる驚いた声に眉を寄せたレーツェルは、更にその直後に聞こえてくる声と音に、向こうでなにが起こっているのかと声を上げて聞くことしかできなかった。

 

『なっ……どうして!?』

 

「ッ…なにがあった!?」

 

『なんで――――こいつ等…!?』

 

「コロニーの方角……観測できるか?」

 

事態の把握を試みようとした次の瞬間。クロガネの艦内にも警報が鳴り響いた。

 

 

「レーダーに熱源ッ! 数は3!」

 

「ミサイルか…回避運動、対空―――」

 

「ッ!? いえ、これはミサイルではありませんッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「MSとAMですッ!?」

 

「何っ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-3ページ-

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。コロニー内では…

 

 

 

 

「……………。」

 

「……………」

 

 

 

「………あの……okakaさん。何か…言って下さい……せめて弁護的なもので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………そうか。またフラグを打ち立てたか」

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!!?」

 

 

 

 

 

続けたくないけど続く(愉悦)

 

説明
ロボの成分が足りないっつーことで出来た作品。前後編で終わる…ハズ。
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コメント
クロガネのみの出撃だと、ウチの艦隊は要らないか…(支配人)
グレイズの方はどっちかといえばドローン端末に近いからノーカン(okaka)
キリヤ:お前のは肘と膝にあるだろ(okaka)
あ。ありました、ありました(設定思い出して)(Blaz)
………(ついてたっけか……という顔)<<<okaka(キリヤ)
Blaz:ナイフ(okaka)
自爆装置?(Blaz)
俺の考案したMSに絶対に付いているもの、当然このスタークジェガンエコーズにも付いています。今回は元々持ってた物を流用したよ!(okaka)
さて、援軍のMSとAMは誰だ?(支配人)
旅)普段は高機動機だから狙撃機は新鮮だが.....艦に直衛がいないんじゃ話にならん。腕前を披露と行こう(ライフルを構える)残り5発....あと三隻はやる(キリヤ)
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シリアスとカオスのごっちゃ混ぜ 魔法少女リリカルなのはシリーズ OTAKU旅団 

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