台無し屋の名を借る男
[全1ページ]

……俺がアイツのダチになったのは、アイツが一人で留守にしてる時の事だ。

いつものよーに腐れ縁のハックルがため込んでるコーラを求めて侵入したら、バッタリ出会っちまった。

アイツはワンコインでお得な事で定番なチョコチップスナックを食っててな、俺を見た途端真っ先に通報しよーとしたんだ。

 

「待って待って!俺だよ俺!ハックル!鍵忘れちまって……」

「嘘だ、お前ハックルじゃない」

「やだなー忘れちゃったのかい?俺の顔をよく見てる筈だろ〜?」

「ハックルはそんなテンション高くないし明るくない。それに何か……消えそうなのに何時までも激しく燃える蝋燭みたいな感じがする。」

「なっ……!?」

 

驚いたよ……目の前の無害そーな少年が気配察知するなんてな。

宝石とかの原石を偶然見つけた時ってこんな感じだろーかな……まーアレだ、磨いてみたくなった。

そんな訳で奴の腐れ縁……知り合いだと言い、就活で帰りが遅い奴が帰るまでの間、ちょろっと言いくるめて日帰り賞金稼ぎの旅に同行させた。

俺も連れ出しながら色んな所を観てちょっとした旅行気分を味わっていた。

しかしちょっと見せるだけで覚えちまうなんて、ホントに呑み込みはえーわはえーわ。

「辛いけど、色んな事を覚えられて楽しい」とアイツは言った……どーやらマジでほんのちょっと前まではほぼまっさらだったよーだ。

精神的な若さ故か突っ走りすぎな所があんだよな〜……俺のやり方を覚えてればそらそーなるが、このままだとアイツ、神風特攻よろしく命を捨てかねん。

そこで俺は、自分の武勇伝を交えながら色々と知恵を授けることにした……流石にまんま言っちまうと教育上よろしくねーからぼかしたり変換したりしたがな。

占いの出来る酒乱教皇の暴走に付き合った事とか、腕脚が歪な人造神の相手をしたりとか、触手っぽいのを生やす人型((人食種|マンイーター))と遊んだ事とか、歪すぎる位に本気な平和主義者との遭遇とか……

 

「そーさなー……今度は世界をぶち壊した話をしよう」

「世界を!?」

「ああ。ループが出来ちまって、大元が変わらず悲劇になっちまう、こことは違う世界の話だ」

「もしかしてこの世界も……「ナイナイ、だってそこまで弄りたいとこねーぐれーのふつーワールドだからさ」世界に普通とかあるの?」

「あるよ〜ん。割と穏やかでいつもどーりな感じのとこってのはさ。俺が壊してきたのは、その世界の中に気に入ったとこがあってそこを弄くり過ぎてやっちまったとこが殆どさ」

「それ……ひどくない?良く分からないけど酷い事したのは分かった。」

「心配すんな、((後片付け|アフターケアー))は万全だ。立ち去る時、何かに弄られる前の状態にちゃーんと戻すから問題ねーよ……俺の裏技に掛かりゃーほぼ取り返しが付けられるからな」

「……良いのかそれ?「取り返しが付けられるんならそれで良いんだよグリーンダヨ!」と言うか怒られないの?」

「へーきへーき……なんせ俺以外にも世界滅茶苦茶にして、俺とは違って散らかしっぱなしな奴なんざわんさかいんだから、俺が裁かれないって事はそーゆー事だろ?ってかそいつらの分までお片付けする俺なんか寧ろ良心的な方だぜ♪」

 

「無茶苦茶だ」と言いたげなアイツの顔に「まーそーなるわな」と思いながら苦笑いしつつ、話を進めた。

急な世界の終わりって言うのは、大体がバタフライエフェクトで起きる。

小さな歪みがどんどんどんどん大きくなって、それに耐え切れなくなって崩壊するって感じだ。

あの頃は俺も若かった……本能のままに犯し壊し侵し崩し、流石に悲劇ループはどーにかならんのかと奔走するも、結局破滅以外でしかループ脱却は不可能だった。

一人でどーにも出来ないとヤケになった俺は、飽きるまで世界をぶち壊しまくった……と言っても、俺の場合はその原因を作りまくったわけで直接やったわけじゃないが。

ただそれによってループ要因が運命の改変を諦めてあの世界から去り、結果的にループは止んだわけだ……ループを終えた世界から立ち去って、偶然ループ要因を見つけて弄るよーになったのは内緒だ。

 

「……結局、一人で出来る事なんざ小っちゃいもんさ。規模のでかいもんを救うのも守るのも正すのも、力がいくらあっても手に余る……だが良いか?お前とやりたい事がぴったり合うのはお前だけだ。」

色んな世界を見て来たが、目標が同じかと思っていた二人でも細かな所は違っていた。そんな些細な事で喧嘩する事がある例も見て来た。

瓜二つの双子だろーとクローンだろーと、考えてることは違うしな。

「だから皆でやる事も結局一人でバラバラにやる事になるんだ。」

戦いにおいても作戦を考える者、突撃する者、狙う者、探る者、見る者と、役割はそれぞれだったりする。

だから皆と全く同じ事をやろうとすると、かえって邪魔になる事がある。

「辺りを観ろ、アテを探せ、使えるもんは友でも恋人でも使え。」

自分で言いながらも、これは非情過ぎるのではないかと思った。ただ、友達や恋人が金とかで裏切ったり、初めから騙すつもりで取り繕いに来たりすることがあるから言って置く必要があった。

……何か騙されそーな感じするしおすし。

「こいびと?」

「あー知らんのか……まーいっか。兎に角だ、やりたい事を諦めろとは言わん、立ち止まれとも動き続けろとも言わん、手段を選べともなりふりかまうなとも言わん」

あくまでどーするかは本人次第だ、俺にはどーする事も出来ん。だがアドバイスはさせてもらう……これからの為にな。

「ただ落ち着いて周りを観て、自分以外への信頼は3割ぐれーに抑えて使えるもんを使うんだ……そーすりゃ何かしたい時、何をすべきかが自ずとわかるさ。」

……まーそれでも信じたいもんはあると思うし、実を言うと自分の心のままに生きて上手くいくのが一番だ……けどやっぱ、コイツには上手く生きてて欲しいと思ったんだ……何となくな。

それからアイツは走りながら考えるようになったからか、無謀な事はしなくなった……出来るかどうかがギリギリな賭けはやるけどな。

これからも無関係な奴さえヒヤヒヤさせるよーな事をするんだろーな……

ん?「そういえばお前は誰なんだ」って?そーだなーそろそろシメだし、このセリフを以って終わりとしよう。

 

 

――――俺の事は……ディスペルとでも呼んでくれ。

説明
何となく投稿
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
380 378 0
タグ
予行演習

ヒノさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com