恋姫無双SS魏√ 真・恋MIX 8話 |
俺は本陣の陣幕にて軍議を開いた。
「稟、敵の配置を説明してくれ。」
「はい、敵は官渡に集結しているようです。向かって右に袁術軍、左に袁紹軍。連携を取ろうとする様子は見えません。」
「詳しい配置と、伏兵の有無は?」
「袁紹軍は、顔良、文醜の二人を全面に押し出しているようです。その後ろに本陣として袁紹が居るようです。策という物は感じられません。」
「袁術軍は、主立った武将を左に配置して先鋒として使うようです。右隅に孫策軍。どうやら遊軍として使用するようですね。」
「伏兵として使われるような将は情報ではいません。孫策も大人しくしているようですし。」
「たぶん、大軍でバーンととか考えて居るんでしょうねぇ・・・これが王者の戦いだとか・・・。」
桂花が呆れたように口を挟む。
そんな桂花に俺は尋ねる。
「こちらの配置は済んでる?」
「はい、霞の部隊を左の側面にすでに配置してあります。正面がぶつかれば本陣を突ける位置です。」
「孫策を牽制出来る部隊が欲しいな。んーん、秋蘭はどうだい?」
「秋蘭には顔良の抑えをお願いしてありますが、誰かと交代しますか?」
「んーーーー、その部分は結構重要だねぇ・・・・・。」
俺はもちろんそんなことは解っているがこれ見よがしに困ってみせる。
「私ではどうですか?先日の失態の挽回をするチャンスを!」
春蘭が言うが、それは俺が制する。
「春蘭には袁術本陣を叩いて貰いたいし、牽制の役はちょっとね・・・」
「そうですか・・・・・。」
そこで俺はまるで今思いついたかのように発言する。
「仕方がないな、俺がやろう。」
「ダメです!」
しかし、桂花はすでに俺の考えは読んでいたのであろうあっさりと却下を入れた。
桂花に即断されるが俺は引き下がらなかった。
「稟、孫策は俺が対面したとして突撃してくると思うか?」
「・・・・いえ、この間とは状況が違いますから。周瑜も居ますし。多分警戒してくるのではないかと。」
「そうだな・・・・・そんなに桂花が心配なら恋も一緒に来て貰おう。」
「恋殿が一緒ならねねもご一緒します。」
「それなら・・・・でも前線には出ないようにお願いしますね。」
「ああ、もちろん。」
念を押して言う桂花に俺は笑顔で答える。
「あとは、秘密兵器の準備か・・・・・。」
この戦いに向けて俺は真桜にとある兵器を開発させていた。官渡の戦いと言えばこれだろう。
「真桜、準備は出来てる?」
「はいな、万端やで。」
そうして官渡の戦いは口火を切った。
袁紹の用意していた櫓を、我が軍の秘密兵器、回転式射石機で粉砕していく。
通常の投石機をバッティングマシーン風にアレンジしたからくりだ。
普通の投石機と違い連射が可能。これは予想以上に効果が高かった。
「とはいえ、的がでかくないとあまり効率的じゃないんだけどな。」
そう呟きながら俺は孫策と対峙する場所まで陣を移動した。
予想通り孫策はこちらの出方をうかがっている。
『さて、それではそろそろ行動するか。』
大将の俺がこんな端に布陣したのも、恋とねねを連れてきたのも策のウチだった。俺は恋とねねを呼んで言った。
「いいか、恋、ねね、今から君たちには別の場所を攻めて貰うよ。この地図に示してある場所だ。」
「ふむぅ、それは重要な場所なのでしょうか?」
ねねは訝しげに尋ねる。
「あぁ、勝負の肝を握ると言っても過言じゃないよ。」
「おお、恋殿の武はそう言う場所でこそ扱われるべきですな。」
「・・ご主人様・・・大丈夫?」
「あぁ、多分孫策は攻めてこないから大丈夫。恋こそ任せたよ。」
俺は恋を諭すように頭を撫でた。
「・・うん・・・恋、頑張る・・。」
赤く俯く恋を眺めつつ、飛び来るちんきゅーきっくを軽く片手で捕まえると音々音の頭も撫でる。
「ねねもよろしくな。恋を任せたよ。」
「お・お前に・・・・・頼まれなくても恋殿は・・・・ねねがいれば大丈夫・・・・ですな」
ねねも少し照れたのか語尾に力がなくなっていた。
『さて、孫策に・・・・いや、周瑜にこちらの意図は伝わっている筈なんだけどな。』
未だ動かない敵陣を見つめて俺は呟いた。
「すでに戦闘は始まっておるぞ。わしらはまだ動かんのか?」
痺れを切らしたように黄蓋は周瑜に詰め寄った。
「相対している軍のあの十文字の旗が気になるのだよ。」
周瑜は眼鏡を直しながら冷静に言う。
「わしらの相手に大将が来ているのならちょうど良いではないか。叩きつぶしてやれば決着が付く。」
黄蓋の戦いたくてうずうずしているのが解る。
「そうだねぇ、北郷と一度矛を交えてみたい気はするけどねぇ・・・・。」
「雪蓮、お前まで。」
「いえ、北郷の考えも、冥琳の考えも解るわ。だけどね、なぜ北郷は私たちに有利なようにしてくれているのかしら?」
「たぶん、私たちが不確定要素だからだろう。」
周瑜は冷静に分析する。
「不確定な存在なら例えその者に利が有ろうとも、確定的な物を与えてやればいい。そうすることで答えが出るのさ。」
「難しいことは解らないけど、一つだけ解ることがあるわ。私たちにとって、独立の絶好の機会だって事。」
「私たちはこのまま北郷軍と対峙したまま戦力を温存するわ。そして積年の本懐を果たすわよ。」
例え袁術から援護要請が来たところで敵本陣の牽制と言えばある程度は無視出来る。
それも北郷の考えなのだろうけど、ここはあえて乗らせて貰うわ。
周瑜は、敵ではあるが北郷の読みの深さを感じていた。
「で、君たちに攻めて貰いたい場所はここだよ。」
地図に示された場所は鳥巣だった。
「ここに袁家連合の食料が保管されて居るんだ。ここを落として食料を焼き払ってくれないか。」
「おお、それは重要な役目ですな。恋殿、頑張りましょう。」
「・・コクッ・・・」
そうして、出陣する恋達を見送った後、俺は戦況を確認した。
どうやら計画通り進んでいるようだ。
正面のぶつかり合いがなされ互角の戦況かと思われたときに霞の騎兵隊が袁紹の本陣に流れ込んだ。
兵の指揮のまともに出来ない袁紹は慌てふためき潰走した為、前線も崩れてあっけなく袁紹軍は崩壊した。
袁紹軍と袁術軍との間にぽっかり空いた穴を春蘭が突き、袁術軍の本陣を急襲したため袁術軍の本陣も瓦解の憂き目となった。
「さっきから袁術の伝令がひっきりなしに来てるわね。」
「ついに撤退だそうだ。殿を務めろと言ってきたぞ。」
「鎖の外れた虎に殿だって、正気かしら?」
「おそらくは、鎖が外れていることに気が付いて居ないのだろうな。」
「こんな願ってもない機会は後3年は無いわね。」
「そうなのだが、北郷軍がどう動くか・・・・。」
「無いわよ。」
「・・・・そうか、無いか・・・・。」
「雪蓮の勘と私の考えが一致したなら問題はないな。この機会に袁術に奪われた我らが土地を取り返すぞ。」
「ええ、我らが積年の恨み、晴らしてみせるわね。」
「美羽さまぁー、急いで逃げましょうよぉ。」
「こんなに北郷軍が強いだなんて聞いてなかったのじゃ。」
「撤退して陣形を立て直しましょう。まだまだ我が軍には余力がありますよぉ。」
「そうじゃな、我が軍は大国じゃ、この程度の敗戦など問題にならずじゃ。」
「いつも通り殿は孫策さんに務めて貰うようにしてありますからぁ。」
「おお、そうじゃな、あやつら今回の戦にはあまり働いてなかったからそのくらいはやって貰わんと。」
その時に伝令が張勲に届く。
「美羽様、悪い知らせがありますよぉ。」
「どうしたのじゃ?」
「食料を備蓄していた鳥巣が呂布さんに襲われちゃいましたぁ。」
「ええっ、どうするのじゃ?」
さらに伝令が届く。
「さらに悪い知らせがありますねぇ。」
「・・・・・・・。」
「孫策さんが裏切りました・・・。」
「なんと、妾の恩を仇で返すとはなんたることじゃぁ。」
「いつか裏切るとは思っていましたけどぉ。」
「おおっ、ななのは孫策の裏切りを読んでおったのか、当然対策も考えてあったのであろうなぁ?」
「ええ、裏切らないようにと毎晩祈ってましたですねぇ」
「それだけか?」
「それだけですよぉ。」
「ななのぉ〜、妾はどうすればいいのじゃぁ!」
「知りませんよぁ、まぁ逃げるしかないですねぇ。このままだとお城も落とされちゃうかもしれませんけど。」
「ななのぉ〜。」
袁術の叫び声がむなしく響いた。
撹乱された前線を二人で持ちこたえる袁紹軍のツートップ
「斗詩、もうここはダメっぽいぜ。」
「文ちゃん、そうだねぇ。」
「本陣も張遼に好きなようにやられちゃったみたいだしな・・・今頃麗羽様も・・・。」
「麗羽様、討ち取られちゃったかなぁ。」
「惜しい人を亡くしたなぁ。姫ぇ、化けて出てこないでくれよなぁ。」
「勝手に殺さないでくださる。」
「あ、麗羽様。よかったぁ生きてたんですね。」
「よかったぁ、じゃ、有りません。急いで撤退しますよ。」
「でも、さっき夏侯惇が南皮の方に向かいましたよ。あの分じゃぁ落とされてるね。」
「先ほど鳥巣も呂布さんに襲われて食料を焼き払われたって情報も入りましたぁ。」
「きぃ、なんと言うことでしょう。北郷軍ごときにこの袁紹が追いやられるなんて。」
「それより、逃げた方が良いぜ、姫。」
「え!?」
「どうやらこちらに夏侯淵さんが向かって来ている居るみたいです・・・・。来た!」
「袁紹、逃がすか。」
秋蘭が凪達を引き連れて袁紹を追撃に入る。
「姫、速く逃げて!・・・・ってもう居ない。」
「猪々子さん、斗詩さん、遅いですわよ。」
袁紹は遙か彼方に逃げていた。
「あぁ、まってください。麗羽様。」
脱兎の如く逃げ出す顔良と文醜。
「くっ、なんと逃げ足の速い。」
追いかけようとする秋蘭だったがすでに姿はなかった。
「袁紹が捕まらなかったのは仕方がないね。秋蘭、ご苦労様。」
俺は陣幕で秋蘭達をねぎらった。
すでに南皮を落としたと春蘭達からも報告は入っていた。
そして、孫策が袁術を追い落とし、江東を得たという報告も入った。
「しかし、なぜ一刀様は孫策にそこまでお優しいのですか?」
桂花が尋ねるが、端はしに嫉妬の色が見える。
「いや、まぁ今回はこの方が戦闘が楽だと思ったからね。」
孫策に仕事をさせないのも重要だと俺は言う。しかし、本心は別に有った。
『劉備にあれだけしたのだから孫策にもある程度塩を送っておかないと不公平かな。』
甘いとか甘くないとかは超越した思いだった。
北方攻略後、俺は内政でとても忙しかった。
春蘭達も未だくすぶっている反北郷勢力の掃討に忙しかったし。
そんな中、涼州攻略に行っていた秋蘭から報告が入った。
「そうか、馬騰さんは亡くなったか・・・・・。」
こちらとしては降伏勧告をしていたのだが、徹底抗戦を望んでいた馬騰は陣幕で病気に倒れたらしい。
その為総崩れになって、実子の馬超は行方不明との報告だ。
「出来れば降って欲しかったけれど仕方がない。やっぱり俺が行くべきだったかも・・・。」
そう呟く俺に桂花は話しかけた。
「仕方がありません。一刀様の身は一つしかないのですから。すべてを求めるのは無理なことですわ。」
「そうだね、桂花。でも出来るだけたくさんの人を救ってあげたいと思うのだよ。」
「はい、一刀様はそれが出来るお方です。でも、人には天命という物がありますから。今回も馬騰は死にましたが、そのお陰で兵の死ぬ数は減ったと思われます。」
「そう割り切れればいいけどね・・・・。」
浮かない顔をしている俺に桂花が尋ねる。
「ところで、これでほぼ残る勢力は3つとなった訳ですけど、どちらの国から攻めますか?」
確かに残ったのは我が魏国と劉備の蜀、孫策の呉となった。
「・・・・それはここで話すべき内容じゃないね。」
「あ、はい、済みません。」
「でもね、俺は少し迷っているのだよ。どちらの国も大国だ。攻めると成れば負けるとは思わないけどたくさんの血が流れる。」
「蜀も呉も良主が治めているとの情報も入っている。攻めることに価値はあるのかなって。」
「・・・・・もし、同盟を組めたと致しましても、それぞれ別の国です。いずれ衝突することもあるでしょう。」
「差し出がましいかもしれませんが、一度一つにまとめることも必要なのではないのでしょうか?」
桂花の言うことにも一理ある。上下関係がしっかりしていた方が同盟も長続きしやすい。
しかし、俺は迷っていた。
多くの血が流れることに・・・。
『天下三分の計ってのは実は一時凌ぎの策なんだよなぁ。』
そう思いながら眠りに就いた。
隣で寝ている桂花の寝息を聞きながら・・・・・
官渡の戦いから数日が経った。
やっと我が国の領土内のゴタゴタも一通り落ち着き、平和な時が訪れていた。
その間有ったことと言えば、袁紹と袁術が領土内で保護されたことぐらいだった。
「北郷さん、北郷さん、わたくし暇でしてよ。何か遊ぶ物はありませんか?」
「北郷のあにきぃ、次ぎに戦があったらアタイも参加させてくれよぉ。」
「姫、文ちゃん、我が儘言ってはダメですよ。一刀様はすべてを許して保護してくださってるんですから。」
「あぁ、良いなぁあにき。斗詩から一刀様なんて呼ばれちゃって。でも、斗詩はやらないよ。アタイんだもの。」
「一刀ぉ、ハチミツはもう食べてはダメかのぅ。」
「美羽様、私が内緒で手に入れておきました。存分に食べてください。」
「おお、ななの、偉いぞ。」
「・・・こうして魏軍のハチミツを食べ尽くして、屋台骨をへし折る策ですよ(小声)」
「・・・おお、やるな、ななの。褒めて使わすのじゃ。」
「いや、ハチミツぐらいで魏軍の屋台骨は折れないから・・・・・。」
色々突っ込みどころ満載な軍団が片隅にいることで大分にぎやかさを増してきた。
そんな中、我が軍の主なる武将で評定が開かれた。
皆を前にして俺が第一声を発する。
「魏国領内も大分安定してきた。今日議案とするのはこれからの方針だが・・・・皆の忌憚のない意見を聞かせて貰いたい。」
「私は、呉と蜀を取って天下を制するのが一番だと思います。」
最初に意見したのは春蘭だった。
その一直線な意見は、確かに春蘭らしい。
「私も賛成です。」
珍しく桂花も前置き無しで春蘭を肯定する。
「ですが・・・・・・一刀様はどうお考えなのでしょうか?」
「少し議案の題目が漠然としているように感じます。攻めるのか?攻めないのか?と問われればここにいる全員が攻めると答えるでしょう。」
「ですが、その時期、方法について問われるのであればそれについての答えを用意いたします。」
「ただ・・・・・一刀様が攻める御意志があるのかというのを最初に確認しなくては前提条件が潰れてしまいます。」
俺は桂花の意見を聞き、すこし目をつぶって考えた。
そして目を開けた後、口を開いた。
「俺は・・・・・この大陸を統一する。その為の方法、時期を論議して貰いたい。とりあえずどちらから攻める方が良いか意見を交わしてくれるか?」
そう言って周りを見回した後、無意識のうちに呟いた。
『それが、華琳の宿願でもあるから・・・・・』
それは、一瞬のうちに消えて、一刀の記憶にもメモリーされなかった。
しかし、確かにその言葉は有った。
一刀の目から迷いが消えていた。
説明 | ||
8話目となります 真・恋姫無双のSSではなくてあくまで恋姫無双の魏ルートSSです。 ただしキャラは真・恋のキャラ総出です。 無印恋姫無双は蜀ルートでした。 そして桃香の代わりが一刀でした。 このSSは魏ルートなので華琳の代わりが一刀です。 その代わり一刀は華琳の代わりが出来るほど強化してあります。 一刀が格好良いと思って頂ければ作者は嬉しいです ブログより少し改変、割り増ししてあります |
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コメント | ||
猪猪子の”あにき”はカタカナで、”ななの”は七乃と漢字だったと思います。(劉趙) >伏宮真華さん、 ブログと変えてる分若干?時間を要してます。誤字報告有り難うございました。早速変更しました^^;(とにー) >キラ・リョウさん、少しずつ上げていきたいと思ってます。最高のハーレムストーリーをご期待ください(とにー) >motomaruさん、ほとんどの作品にコメント有り難うございます。お読みになったとおりデレデレの魏軍に華琳テイストの一刀をご期待ください。(とにー) >悪来さん、こちらも少しずつ進めていきたいと思ってます。(とにー) 誤字報告 1p桂花はすでに俺の考えは【呼んで】いた→読んで、かな?(伏宮真華) おぉ、こっちでも公開ですか。TINAMIの方が読みやすいので感謝です。 ブログとの違いも楽しみにしてます。(伏宮真華) おぉ、続きが楽しみです!!(キラ・リョウ) これからが見ものだね。たのしみですわ〜(motomaru) 乙です!TINAMIに復帰ですかねwwこっちでも支援させて貰いますね!(悪来) |
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