真・恋姫無双〜魏・外史伝24〜修正版〜
[全7ページ]
-1ページ-

第十一章〜青き龍は正義の一刃に討たれん・後編〜

 

 

 

  樊城の攻防があった頃の白帝城・・・。

  「糜芳さん、糜竺さん。それではよろしくお願いしますね。」

  「はい、では行って参ります!」

  馬の上から軽く会釈すると、糜竺は妹の糜芳と兵数十名と共に白帝城を発った。

 その彼女達の姿が見えなくなるまで、朱里は城門前で見送っていた。

  「行ってしまったか?」

  そんな彼女の後ろから確認するように、訪ねて来る星。

  「はい、たった今。」

  「そうか。私も見送ってやろうと思って来たのだが、一足遅かったようだな。」

  そう言って、星は糜芳と糜竺が向かった方向に目を向ける。

 糜芳、糜竺はここ数日、定期連絡が絶たれている麦城・連絡拠点の様子を確認するべく、朱里の進言により

 麦城へと向かったのであった。

  「ところで軍師殿・・・、あなたに一つ尋ねたいのだがよろしいだろうか?」

  「はい。何でしょうか?」

  「こ度の戦・・・、正和党の反乱を軍師殿はどう見ておられるだろうか?」

  「・・・・・・。」

  星の問いに、朱里は顎を手の甲で支える様にして考え込む。

 考えがまとまったのか、朱里は口を開く。

  「元々・・・、正和党の存在はあまり良いものではありませんでした・・・。

  中には、彼等を潰そうという声も私の耳にも入ってきていましたし・・・。

  ひょっとしたら、そんな人達が裏で・・・とも考えていたのですが、わざわざ戦に発展させる理由は

  無いはずです。」

  「そもそも事の始まり・・・、いやそれは前々からあったが、こ度の戦のきっかけとなったのは

  先日の巴郡での大火災・・・。あの事件があったからこそ、戦が始まった。そしてあの事件の

  真相は今だ闇の中・・・。だからこそ、互いに疑心暗鬼が芽生えた。」

  「私達は正和党の仕業と・・・、そして正和党は私達の仕業と・・・指を指し合って、罪の擦り付け合い。

  話し合いの場も設ける事も無く、正和党は私達に宣戦布告をしてきました。」

  「たった一つの刺激があれば、それは戦へと咲き誇る・・・。桃香様が送った書状が気に喰わないもの

  だったのだろうか?」

  「そんな・・・、怒らせるような事は書いてはいなかったはずですが。私と雛里ちゃんでちゃんと見直し

  ましたし・・・。」

  朱里が困った顔をしながら星を見る。星は頭を抱えながら思わず溜息をつく。

  「・・・・・・。つまり、戦が起こる道理が見当たらないと。」

  「・・・申し訳ありません。」

  「まあよいさ。今はこの戦を早く終わらせる事が先、そうであろう。朱里よ?」

  「はい。」

-2ページ-

  

  堤防が決壊し、浸水した樊城の防衛拠点を捨て、撤退した愛紗達。

 後方から追撃してくる正和党から逃げる様に・・・。船での移動から、陸での移動に変えると

 急ぎ、麦城に向かう・・・。そこで彼女達が見たモノは、彼女達にとってはあまりに残酷なものであった。

  「こ、これは・・・!?」

  麦城連絡拠点は、もぬけの空であったのだ。

 ただし、それは兵達が逃亡したためでは無い。

 拠点内には、そこに駐在していたであろう兵士達が無残な姿で地面に転がっていた。

 拠点内に血の匂い、人間の臓器特有の臭さと死臭が立ち込めていた・・・。

 その異臭に、愛紗も思わず手で鼻をつまんでしまう・・・。

 その光景にやられ、嘔吐する者がいれば、気を失う者もいた・・・。

  「何と言う事だ・・・。すでに麦城が陥落していたとは・・・。」

  一人の兵士が呟く・・・。

  「しかも、拠点としての機能が完全に死んでいる・・・。これでは、篭城は無理です!」

  もう一人の兵士が続いて言う。

  「・・・・・・・・・。」

  愛紗は思わず、下に俯いてしまった・・・。彼女の自慢の黒髪も元気を失い、垂れ下がっている。

 そこに一人の兵士が近づいて来る。

  「関羽将軍!西の方面から砂塵を確認しました!旗は「糜」!」

  その言葉を聞いた愛紗は、その俯いた顔を上げる。

 その数、およそ五十程度の兵を率いてきた糜姉妹が馬から降りると、開ききった城門から麦城へと入って来る。

 その城内の惨劇に二人は思わず、口と鼻を手で塞ぎ、目を背けてしまった。

 そんな二人に愛紗が近づくと、糜芳と糜竺は愛紗に対して姿勢を正す。

  「糜竺達か・・・。」

  「関羽将軍!一体・・・これは?!」

  慌てた様子で、糜竺は愛紗にこの城内の惨状を尋ねる。

  「・・・済まない。我々も今しがた来たばかりで・・・。そういうお前達は何故ここに?」

  申し訳なさそうな顔で愛紗が糜竺の問いに答え、逆に二人に問い返す。すると、姉の後ろにいた

 妹・糜芳が代わって質問に答えた。

  「私達は諸葛亮様の命で、定期連絡が断たれた麦城の様子を確認するため、ここへと赴いた次第です。」

  糜芳の話を聞いていた愛紗の顔が心なしか、少し歪んでいるようにも見える・・・。

  「・・・そうか。樊城にも定期連絡が来ていなかったから、少し妙だとは思っていたが・・・。」

  愛紗が言い切る前に、兵士の声で遮られた。

  「関羽将軍!後方、約六里に砂塵を確認!恐らく、正和党かと・・・!」

  その報告に、他の兵達が動揺する。

  「馬鹿者!!うろたえるな!!!奴等が追撃して来ている事は分かっていた事のはずだ!!」

  動揺する兵達を一喝する愛紗。彼女の一言に糜竺は反応する。

  「関羽様、樊城に居られたはずのあなた方が何故ここにいると言う事は・・・?」

  「・・・・・・・・。」

  もしかしたらという思いから出た糜竺の質問に、愛紗は口を噤んでしまう・・・。

 彼女の反応に、糜竺は全てを理解した。

  「そう・・・ですか。よくご無事で。」

  「・・・うむ。」

  「関羽様・・・。」

  噤んだ愛紗の口がゆっくりと開かれる。

  「・・・・・・、お前達が連れて来た兵の数は?」

  「五十です。よもやこのような事態になっていようとは・・・、思いもしなかったため。」

  「そうか・・・。では、迎撃は無理だな。」

  「どうなさるおつもりですか?」

  糜芳が愛紗にこれからどうするかを聞く。愛紗は意を決した顔を示し、糜姉妹に言った。

  「我々はこれよりここ・・・麦城を破棄し、この領域より離脱する!!お前達には兵達の先頭に立ち、

  彼等を誘導して欲しい。」

  「関羽様は?」

  「私は・・・、お前達が逃げやすくなる様殿を務める。」

  「それは危険です!!」

  「承知の上だ。だが、やらなくてはいけない・・・。樊城での失態を雪がんがため、私が皆の逃げ道を守る!」

  「「関羽様・・・。」」

  愛紗のその強い決意を見せつけられ、姉妹の声が重なる。

  「頼んだぞ・・・。私の部下達を無事、桃香様の元へと・・・。」

  「・・・分かりました。では、急ぎ隊を編成します。完了次第、ここを離脱します!!!」

  そして糜竺は糜芳を連れ、隊の編成を兵達の元に駆け寄る。一方、愛紗は後方で立ち上がる砂塵を見つめていた。

-3ページ-

 

  「廖化さん!この先の蜀軍の拠点の城門が開いています!!」

  軍の先頭を駆けていた一人の党員が後方の廖化に報告する。

  「罠か・・・?」

  「分かりません。ただ、その城門の前に関羽と思われる人物が一人立っています!」

  「関羽殿が一人で・・・。他の兵達はどうした?どこかに隠れているという可能性は無いか?」

  「その可能性は否めないかと・・・。」

  「・・・よし!では、ある程度近づいたら弓隊を前に!!拠点の城壁、城内、森の中・・・。隠れられそうな

  場所に矢の雨を注いでやれ!!!」

  「「「応っ!!!」」」

  

  「急げぇ!!奴等は待ってはくれぬぞ!!」

  愛紗は城内で撤退の準備をする兵達を急がせる。兵達も急ぎ、城内から離脱していく。

 そこに、前方から近づいてくる正和党から放たれた大量の矢が麦城に降りかかる。

  「うぎゃ!!!」

  「んぎゃあ!!!」

  矢が兵達を刺し貫き、その場に倒れる・・・。

  「急げ!!急げ!!!早くこの城から出ていけ!!!」

  あの矢の雨を青龍偃月刀で切り抜けた愛紗は兵達を急がせる。

  

  「廖化さん!どうやら向こうは撤退の準備をしているようです!!」

  先行していた党員が廖化に報告する。そこから向こうが罠を張っていない事が判明した。

  「尻尾を巻いて逃げる気かよ!」

  廖化の隣りにいた姜維は怒りを露わにする。

  「撤退もまた戦略の一つだぞ、姜維。しかし・・・あの関羽殿が抵抗の一つも示さず、安々と

  拠点を破棄するとは・・・、少し解せないな。」

  廖化は姜維をなだめながらも、どこか納得がいかないという顔をする。

  「どうします!このまま連中を逃がすんですか?」

  「そんな事はせん。この勢いを殺す理由は無い・・・。ここで関羽を追い詰めておけば、今後の戦い

  でこちらに優位に進める事が出来るからな。」

  「・・・分かりました!俺、廖化さんの言葉を信じます!!」

  そう言うと、姜維は軍の先頭に馬を進めるのであった。

  正和党の先頭は、今まさに麦城の城門前に仁王立ちする愛紗と接敵しようとしていた。

-4ページ-

  

  同時刻、場所は成都・・・。

  

  パリンッ!

 

  「きゃっ!」

  「月!?どうしたの!」

  場内の厨房にて、メイド服を身に纏った二人の少女が食器を片づけていた時であった。

 月が手を滑らし、一個の湯呑を床に落としてしまったのであった。

  「ご、ごめん・・・詠ちゃん。」

  今にも泣きそうな顔をする月。

  「いいわよ、そんな事。それより怪我は?指は切っていない?」

  そう言いながら、詠は月の手を取り、何処か切っていないかを確認する。

 一方、床に落ちた湯呑は無残にもその原型をとどめておらず、破片と化していた。

 二人は気が付いていなかったようであるが、その湯呑は・・・愛紗が愛用していたものであった。

-5ページ-

   

  「はああああああああーーーーーー!!!」

  ザシュッ!!!

  「ぐわぁっ!!!」

  「くっ・・・、はぁ・・・、はぁ・・・。」

  次々とかかって来る正和党の党員達を青龍偃月刀で切り払っていく。

 すでに場内はもぬけのから・・・。兵達は糜姉妹の誘導によって、この領域から撤退していた。

 しかし、愛紗はその場から離れようとはしなかった。少しでも彼等を遠くへ逃がすため、

 正和党の侵攻を体一つで防いでいた・・・。

  「・・・全ては桃香様のため・・・この関羽雲長、ここで倒れる訳にはいかない!!!」

  「関羽、覚悟!!」

  「うおおおおっ!!」

  再び左右から正和党党員が襲いかかって来る。

  「でやああああっ!!」

  ザシュッ!!!ザシュッ!!

  「ぐはっ・・・!!」

  「ぐっ・・・!!」

  一人は足を、もう一人は肩を青龍偃月刀の刃先がかする。

  「桃香様のため・・・。悪く思うな!」

  「ぬうっ!?」

  愛紗は、足を切られ立てない党員に青龍偃月刀を突き立てようとした時・・・。

  「させるかよ!!」

  「っ!!!」

  ガキイィィィィンッ!!!

  横から襲いかかって来た斬撃を青龍偃月刀で受け止める。ぶつかった衝撃で愛紗は後ずさりする。

  「姜維!!!」

  止め刺されかけた党員は、自分を助けた仲間の名を呼ぶ。その名を聞いた愛紗は目の前の少年を見る。

  「姜維・・・。確かあの時の・・・。成程、まさかこのような形で再び会うことになろうとは。」

  「そうだな!・・・と言っても、別にこれと言って言葉を交わしたわけじゃなかったがな。」

  「確かに、あの時は目線を交わしたのみ・・・。そして今度は刃を交わしている!!

  はああああああああーーー!!!!」

  「姜維っ!気を付けろ!!」

  ガキイィイン!!!

  「ぐっ・・・!!」

  愛紗による青龍偃月刀の重い一撃を大剣で受け止めるが、その勢いに負け体は宙を舞いそのまま受け身を

 とれぬまま地面に落ちる。その衝撃がそのまま呼吸器に達し、姜維は一瞬、呼吸が出来なかった。

 ・・・実力は圧倒的であった。

  「く・・・、いかん!姜維一人で関羽に勝てるはずが・・・。」

  肩を切られた党員が二人の圧倒的な実力差を理解していた。痛みに耐えながらも、姜維は剣を杖にして立ち上がる。

  「くそ!流石軍神・・・。たった一人でこの強さかよ・・・!」

  「無論だ!私は桃香様の矛、例え民達から忌み嫌われようとも、貴様達逆賊を討ち倒すまで倒れる訳には

  いかんのだ!」

  愛紗の口から『桃香』という言葉を出た瞬間、彼の中で何かが切れる音がした・・・。

  「・・・そうやって、・・・建前作って・・・、都合の悪いものを全部葬るつもりかよ・・・。

  俺の村の様に・・・!!」

  再び剣を構え直す。彼の中の何かに火が付いたように、急に姜維の雰囲気が変わる。

  「村・・・だと?一体何を言って・・・!?」

  姜維はそんな愛紗にお構いなしと、再び立ち向かっていく。その時・・・彼の上着の内ポケットに

 入っていた・・・あの時、仲間から手渡された飴玉のような水晶玉がうっすらと輝き出す・・・。

  ガキイィィィィイン!!!

  「くっ・・・?!」

  突然、姜維の剣の速さが増す。突然の事ではあったが辛うじて偃月刀で受け流す。

 一体彼の何処にこれほどの力を隠していたのだろうか・・・。

 さっきよりも水晶玉が少しだけ輝きを増す・・・。

  ビュンッ!!!

  またさらに速くなった、彼の斬撃を体捌きで紙一重に避ける。

 そして水晶玉がまた一段と輝きを増す・・・。

  ビュンッ!!!

  「なっ!?」

  一度振り下されたはずの剣が有りえない軌道を描いて、愛紗に向かってくる。

  ガキイィィィィイン!!!

  彼の一撃を偃月刀の刃で受け止める。そこで二人の競り合いが始まる。

  「お前達はいつもそうだ!・・・何が理想だ!・・・何が大徳だ!何が民のためだ!!

  そんな綺麗事を並べやがって!お前等が言うと虫唾が走るんだ!!俺達の時は何もしなかったくせに!!」

  「さっきから好き勝手な事を・・・!お前は一体何様のつもりでそのような事を言うのだ!?

  先に仕掛けてきおったくせに!!」

  「お前達だって、昔は散々自分達から戦を仕掛けていたじゃないか!!俺達の事を批難するのは筋違いだろうが!

  お前等は!!」

  「っ!?あの時そうしなければ、守れるものも守れなかったのだ!!」

  「それが虫唾が走るんだよぉっ!!!」

  「ぐはっ!」

  隙を見せた愛紗の横腹に、姜維の蹴りがまとも入る。その衝撃に愛紗は後ろに後ずさる。苦痛に耐えながら

 何とか立ち続ける。すると、姜維は大剣の切先を愛紗に向ける。

  「その偽善者の仮面ごと、お前をぶったぎってやるっ!!!皆の・・・仇だぁぁぁあああ!!!」

  姜維は大剣を右肩に乗せる形で剣を振り上げると、その体勢から愛紗に突っ込んで行く。

 とても単純な動き・・・これなら、と思った瞬間であった。水晶玉の輝きは、ついに内ポケットの外にまで漏れる・・・。

  その瞬間であった。

  「な、なに・・・消えた?!」

  突然、彼の姿が消える。急ぎ彼の姿を探す。次に彼の姿を捉えたのは・・・。

  「死いぃぃぃねぇぇえええっ!!!」

  「な・・・!?」

  自分の間合いの内側であった。姜維は既に剣を振り落とす体勢に入っていた。

 今からでは反撃は間に合わない、そう判断した愛紗は偃月刀の柄の中央で、彼の一撃を受け止める態勢を取った。

  ブゥウンッ!!!

  そして、彼の大剣が愛紗の青龍偃月刀の柄の中央部分に振り落とされた。

  ザシュゥゥゥゥゥウウウッッッ!!!!!

  「がはっ・・・!?」

  この時、まさに蜀の青き龍が地に墜ちた瞬間であった・・・。

-6ページ-

 

  同時刻・・・、魏領・陳留。

 ここもまた2年という月日が過ぎ、街の姿は大きく変貌していた・・・。

 そんな街の姿に、久方振りに訪れた一刀は、思わず面喰ってしまった。

  「ここが・・・陳留?あの頃より、随分と栄えているな・・・。」

  そんな事を考えながら、一刀は陳留の街へと入って行く。見た事も無い建造物が乱立し、

 道は多くの人が行き交い、道端では出店風の商店や旅商人達が品を広げ、大きな声で通行人に宣伝していた。

 他に歌を歌う者達や大道芸を披露している者達もいた。楽しそう歌っている少女達の姿が、天和達と被った。

 所々にて、警備隊と思しき姿の者を何度か見かけたが、一刀には全く見覚えの無い者達であった・・・。

  「まぁ・・・、2年も経てば街も変わる・・・か。」

  嬉しい様な、寂しい様な・・・。心中複雑な思いの中、一刀は一軒の店の前で足を止める。

  「ここは・・・。」

  変わり切ってしまった街の中で、唯一見覚えがあるこの店。

 ここは、あの時・・・一刀が華琳達に尋問された時に使った料理屋だった。

  「変わらないものも・・・確かにあるか。」

  そろそろ昼時もあって、店の中は多くの客で賑わっていた。

 それを見て、一刀の腹の虫が鳴く・・・。

  「少し早いけど、飯にしようかな。」

  一刀は店の中に入っていった。

  「すいません!炒飯1人前!奥の机に!」

  「あいよ!」

  一刀は厨房に、食べたい料理を注文するとそのまま店の奥の空いている席に向かう。

 来ていた外套を隣の椅子にかけ、鞘に収まった刃を壁にかけると自分も席に着く。

  「ふう・・・。」

  一息を着いた一刀はおもむろに、尻ポケットから折りたたまれた紙を机に広げる。

 そこには、小さく簡易的ではあったが、洛陽までの道が描かれていた。

  「陳留が・・・、ここだから。洛陽はここだな。」

  人差し指で、陳留の位置を指し示すと、そのまま流すように左の移動させ、洛陽と書かれた場所で止まる。

  「あそこから陳留までで、だいたい4日だから、ここから洛陽はその半分の2日で着く計算になるな。」

  そう言い終えると、一刀は手元の金銭を数える。

  「・・・・・・微妙だな。ここで飯を食べたら、ぎりぎりだな。後は野宿したりして経費を削っていくしかない。」

  露仁が居なくなってからちょうど4日が過ぎていた。たった1人でここまで来たが、まさか1人旅がこれほど寂しい

 ものとは、思ってもいなかった・・・。1人でいると、嫌な事を思い出してしまったりして、自己険悪になる。

  あの時・・・何とか伏義を追い払う事は出来たが、結局の所・・・、奴が何者で、この力が何なのか、露仁が何を

 伝えようとしていたのかは・・・未だに分からない。1人で考えても、答えが出るはずも無く・・・。

 

  『いいか・・・。・・・北郷、・・・ここから先は、お前一人だ・・・。お前に・・・全てを託し・・・

  済まない。だが・・・、お前でなくてはいけなかっ・・・た。・・・その力で、守れ・・・この外史・・・を!

  人の・・・想念・・・を!』

  

  「外史・・・。そう言えば、前にもそんな単語を聞いたような・・・。確か俺がこの世界に来る前に会った。

  ・・・あの白装束の男(?)もそんな事を言っていた気がする・・・。そう考えると、あいつは一体

  何者だったんだろう・・・?この世界の事を知っていた感じはするけど・・・。」

 

  『頼む・・・、北郷!!わた・・・しの・・・、私の・・・過ちを・・・、た、たの・・・ん・・・。』

 

  「過ち・・・。露仁は一体・・・何を過ったんだろう?」

  考える事はいくらでも浮かんでくるが、どれ一つ解決の兆しが見えずにいたのであった。

 そんな事を考えていると、

  「お客様ー!ご注文の炒飯、お待ちどう様で〜す!」

  と元気のいい店員さんの声が聞こえた。

  「あ、はい!店員さん、こっち、こっ・・・ちぃ・・・・・・。」

  おもむろに顔を上げた一刀は、店員さんの方を向く。彼女の手には値段の割にさらに山盛りの炒飯が

 目に入る。そして、当然店員の顔も目に入る・・・。

-7ページ-

  「!!」

  その瞬間、一刀の体から一気に血の気が引き、一瞬にして固まる。彼の顔がみるみると青ざめていき、開いた口が

 塞がらず、金魚のようにパクパクとさせていた・・・。

  「・・・どうかなさいましたか?お・きゃ・く・さ・ま♪」

  店員は清々しいほどの笑顔で一刀に接待をする・・・が、その笑顔が逆に一刀を恐怖のどん底に落としたのであった・・・。

 

  この時、一刀はこの世との決別の覚悟を、複雑な心境の中で決めた・・・。

説明
 おひさしぶりです!アンドレカンドレです!
ようやく前期試験の日程をすべて終えました!!
やったーーー!!!僕はもう・・・自由だーーーーー!!!

 そんなわけで明日から夏休み♪これでゆっくりと作品を
書けます!!!これからバンバン投稿しますので皆さん
よろしくお願いします。

 そんなわけで、今日は第11章の後編の修正版を投稿します。ようやくこれで先が書けそうです。修正前と修正後
どちらがいいかは皆さんにお任せします。
 そういうわけで真・恋姫無双〜魏・外史伝〜第十一章
青き龍は正義の一刃に討たれん・後編の修正版をどうぞ!
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
7470 5983 41
コメント
華琳の笑顔がものすごく怖いっす(VVV計画の被験者)
なんかガンダム種運命の甘ちゃんな坊やを思い出すなぁ。(ぬこ)
なぜぇwwwww   一刀どうなるんだwww(キラ・リョウ)
ティリさん、またまた報告感謝します!!!(アンドレカンドレ)
ちょwwwwwwwwwwwww なんであなた様がここにwwwwwwwwwwww どどうなるんだwwww(Poussiere)
誤字…ではないか 愛紗は足を切られ、立てない党員に なんだか愛紗が足を切られてるように見えるので、句点を置くなら 愛紗は、足を〜 って感じにしたほうがいいカト (ティリ)
ティリさん、報告感謝します!!(アンドレカンドレ)
だっつじー 2p逃げやくなる様→逃げやすく、かと(ティリ)
なんでいるの!!!まじでなんで!!顔おもろい!!(motomaru)
タグ
真・恋姫無双 恋姫無双 二次制作 魏ルート 

アンドレカンドレさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com