Triangle Goddess! 第28話「風のリシア」 |
少年から情報を教えてもらった三女神とトールは、風のリシアを探すため西のセフィードに行きました。
「それにしても、あの子はなんで風のリシアの事を知っていたのでしょうか?」
「さあな。でもあいつが嘘をついてるとは思えねぇ。とりあえず行ってみようぜ」
「はい」
三女神とトールは、念のため人々から情報を聞く事にしました。
「風のリシア? う〜ん、噂で聞いた事はあるけど、姿は見てないわね」
「でも、彼女は用心暗殺を得意としているからね。どこかに紛れ込んでいるかもしれないよ」
「どこかに、ねぇ」
「忍者みたいだよな」
この世界での忍者は、一般人になりすまして彼らに紛れ込んでいる事が多いのです。
そのため、見分けるのは非常に難しいのです。
「でも、忍者って裏をかくのが得意なんだよね? だったら、わざと不利な状況になれば……」
「風のリシアをあぶりだせる、って事だな」
「よし、決めました」
誰かに変装していると思われる風のリシアを探すため、三女神はわざと不利な行動をとっていました。
これは、倭国の旅人が使う心理術で、相手に行動を深読みさせる事で忍者を欺くものです。
「さあさあ! こちら旅芸人のジーンです!」
「わ、私は、えと、その妹、ゲルダ、です……」
「ヴィアだよー!」
「おうおう! そしてオレが従者のマグナよ!」
ジャンヌ、ゲール、バイオレット、トールは、
風のリシアをおびき出すために堂々とした態度を取りました。
普通の人ならばチャンスだ、と思って突撃してくる事が多いのですが、
思慮深い相手には効果的なのです。
堂々と名乗りながら三女神とトールが歩いていると、
「とぉおっ!」
バイオレットに向かって、黒い服を着た女性が短剣を持って突っ込んできました。
「きゃあ!?」
「ウィンドカッター!」
しかし、それこそがジャンヌの狙いでした。
バイオレットを囮とし、彼女が狙われた隙に狙ったものを攻撃して正体を明かすのです。
ジャンヌの狙い通り、女性が纏っていた服は破れました。
「よ、よくもこのアタシの服を……!」
服の中から現れたのは、金髪をポニーテールにした女性でした。
「おっ、お前は!」
「……そうだよ。アタシはマザー教団の四使徒が一人、風のリシアさ!」
そう、彼女こそ、ジャンヌ達が探していた風のリシアだったのです。
「見つけたぜ、とっととお縄につきな!」
そう言うとトールは風のリシアを捕まえるために突っ込んでいきました。
しかし、風のリシアはそれをひらりとかわしました。
「待ちなさい!」
三女神とトールは風のリシアを追いかけましたが、風のリシアは猛スピードで逃げました。
「速い……!」
「私達でも、追いつけるかどうかは微妙です!」
ジャンヌ、ゲール、バイオレット、トールが風のリシアを追いかけると、
やがて、彼らは洞窟の中に辿り着きました。
そして10分後、ついに風のリシアを行き止まりまで追い詰めました。
「さあ、大人しく捕まりなさい」
「はっ? アタシが捕まるだって? ふん、そうはいかないよ! いけっ! アラクネ!」
風のリシアが謎の玉を地面に叩き付けると、
そこから人間の上半身と蜘蛛の下半身を持つ魔物、アラクネが現れました。
アラクネは、かつてトロイヤで女神アテナの呪いで蜘蛛に変えられた少女の子孫と言われています。
「キャーハハハハハハ!」
「アンタ達はそいつらを相手にしな!」
そう言うと、風のリシアは猛スピードで去っていきました。
「待ちなさい!」
ジャンヌは風のリシアを追いかけようとしましたが、アラクネが道を塞ぎました。
「くっ! 早く捕まえたいというのに……!」
「こいつを相手にするしかないようだな!」
トールはミョルニルを構えました。
ジャンヌ、ゲール、バイオレットも戦闘態勢を取りました。
「キャキャキャキャキャ!」
「ぐぅっ!」
アラクネはジャンヌに噛みついてダメージを与えました。
「お姉様! ドレインライフ!」
ゲールは生命を逆流させる能力によってアラクネにダメージを与えました。
アラクネも負けじと脚で攻撃しましたが、ゲールは攻撃をかわしました。
「いっくよぉー! シャドウエッジ!」
「ギャアアアアアアアア!」
「うわ!」
バイオレットは影を剣のような形にしてそれを手に持ち、アラクネに突っ込んで斬りつけました。
アラクネは大きな傷を負いましたが、バイオレットに噛みついた事によって彼女にも傷を負わせました。
「よくもバイオレットにやりやがったな! どぉりゃあああああああ!」
トールは捨て身の一撃でアラクネを攻撃しました。
アラクネの頭はミョルニルによって潰れましたが、
トールが負ったダメージも決して小さくはありませんでした。
「畜生……無傷なのはゲールだけかよ」
「そうみたいですね……」
「キャキャキャキャキャキャ!」
「……仕方ありません。回復、行きますよ! ヒールレイン!」
ゲールは精神を集中させ、全員に癒しの雨を降らせました。
「ああ、助か……うおっ!」
ジャンヌとバイオレットの傷は全快しましたが、トールは全快していませんでした。
「それほどまでにトールさんの負った傷が大きかったのですね……。
これは早めに決着をつけなければ! ウィンドカッター!」
「キャキャキャキャキャ!」
「きゃあぁ!」
ジャンヌは風の刃を放ちましたが、アラクネはそれを防ぎ、反撃しました。
「お姉様! うわっ!」
ゲールはジャンヌを助けるために走り出しましたが、アラクネが吐いた糸に捕まってしまいました。
「このっ! 放しなさい!」
「キャーハハハハハハハハッ!」
アラクネは徐々にゲールに迫ってきました。
そして、彼女を引っ掻いて攻撃しました。
「うあっ……」
「お姉ちゃんを放せぇ! シャドウエッジ!」
バイオレットは影の刃をアラクネに放ちましたが、
闇属性に耐性を持つアラクネにあまり効果はありませんでした。
それどころか、ゲールのところギリギリに向かってそれは飛んでいったのです。
「な、なんて卑怯な……!」
「……」
このままでは埒が明かないと判断したトールは、一か八か、ミョルニルに雷を纏わせました。
「何をするつもりです、トールさん!」
「ゲール……アンタはしっかりガードしていろよ!」
「え!? まさか……!」
「そのまさかだよぉ!!」
トールは必殺技「ミョルニルストライク」を、ゲールを巻き込む覚悟でアラクネに向かって放ちました。
「キャキャキャキャ」
しかし、その必殺技もアラクネに簡単に弾き返されてしまいます。
「……よし!」
ですが、トールは歯を見せて笑いました。
その時です。
―ブチィッ!
なんと、アラクネの吐いた糸がちぎれ、ゲールが解放されました。
「そうか! トールの狙いはそれだったんだね!」
「ああ、そうさ! さあ一気に決めな、ゲール!」
「はい! 生命の奔流よ、我が声に応え不浄なる者を滅したまえ!
リインカーネーション・ブレイズ!!」
「アアアアアアアアアアアア!!」
ゲールが呪文を唱えると、彼女の手から膨大なエネルギーが放たれ、アラクネを巻き込みました。
闇の生き物であるアラクネは、回避できずに大ダメージを受け続けました。
そして、膨大なエネルギーが消えた後は、アラクネも消えていました。
「これでアラクネは倒しましたね」
「だが……風のリシアは逃がしちまったな」
ふと、ゲールが足元を見ると、そこに人間の親指が落ちていました。
「ひっ……!」
「ま、また人間の体の一部がこんなところに!」
「ん? なんだこれは?」
トールはその親指を拾いました。
「そ、それ平気なんですか!?」
「ああ、平気だぜ? ……とりあえず、残留思念を調べてみるぞ」
トールは、親指に向かって精神を集中させました。
すると、トールの目の前に、人間の女性の顔が現れました。
「こ、これは……」
「ああ、神様……どうかわたしを助けてください……」
「ん? どうしたんだよ」
「わたし、金髪の女の人に追いかけられてここまで逃げたんですが……
アラクネを呼ばれて、ズタズタにされて……」
どうやらこの女性は、金髪の女性に追いかけられ、
逃げようとしましたがアラクネに襲われて死亡したそうです。
「そりゃあご愁傷様だな。……ん? 金髪の女の人? そいつは髪型をポニーテールにしてたか?」
「はい」
「ああ、そいつは恐らく風のリシアだな」
「風のリシア……?」
「オレ達が追いかけてる四使徒の一人だ。単刀直入に問うが、そいつはどこにいる?」
「最後に見たのは……ザラーム地下墓地です」
ザラーム地下墓地とは、セフィードの裏にある、死者を眠らせる墓です。
「それがどうかしたのか?」
「最近、そこで死体が突然目覚めるようになったんです。それで、その死体を蘇らせたのは……」
「蘇らせたのは?」
「ああ、もうすぐわたしは消える……消える……!」
女性の顔がそう言った途端、女性の顔は消えました。
「消えちまった、な」
「でも、新しい情報が手に入りましたよ。ザラーム地下墓地、ですって?」
「そうだ、情報によればアンデッドモンスターの住処みたいだぜ」
「アンデッドモンスター……」
「こういうのはゲールが得意じゃないですか?」
「あっ、はい」
ゲールは正の生命を司る見習い女神であり、負の生命で動くアンデッドモンスターには効果的なのです。
「さあ、早く行こうぜ!」
「はい!」
こうして、新しい情報を手に入れた三女神とトールは、
風のリシアを探すため、ザラーム地下墓地に行く事にしました。
説明 | ||
四使徒(四天王)唯一の女性が初登場します。 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
325 | 325 | 0 |
タグ | ||
オリキャラ オリジナル 長編 | ||
Nobuさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |