恋姫外史医伝・華陀と一刀 五斗米道の光と影 第26話
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卑弥呼の予想は的中し、三人は道中で幾度も襲撃を受けた。

 

こんな中で別行動を取る事はあまりにも危険であると考えた華陀と卑弥呼は、まずは男を目的地まで連れて行き、それから改めて一刀のもとへ赴く事にした。

 

「あれだ。あの山中に俺達の拠点がある」

 

そう言いながら、件の山を指差す。

 

「世話になったな。後は一人で大丈夫だ。お前達は一刀の所へ行ってくれ」

 

「いや、ここまできたのなら念の為に最後まで送らせてください」

 

「ワシもそのほうが良いと思う」

 

「そうか?なら頼むとするか」

 

一行は足早に山へと向かった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

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山登りを終えて拠点へと辿り着いた一行が見た物は、地獄絵図だった。

 

拠点の所々に医師たちが血を流して倒れ臥している。

 

「これは・・・・・・いったい・・・・・・」

 

目の前の光景に思考が停止したのか、目を見開いたまま立ち尽くす男。

 

そんな男とは対照的に、華陀と卑弥呼はすぐさま倒れている医師たちの元へ駆け寄った。

 

「おい!しっかりしろ!」

 

「しっかりせんか!」

 

「・・・・・・あ」

 

二人の声を聞いて正気に返った男も、医師たちの元へ向かう。

 

それから拠点内をくまなく回る三人だったが、生存者は誰一人として見つからず・・・・・・

 

「総帥・・・・・・」

 

最後に、建物の中にあった大広間のほぼ中央に、他の医師たちに囲まれる形で息絶えた血まみれの総帥を発見したのだった。

 

「う・・・・・・うああ・・・・・・」

 

膝から崩れ落ち、両手を地に着け絶望の嗚咽を漏らす男。

 

「・・・・・・」

 

華陀は体を震わせながら、無言で爪が皮膚に食い込むほど手を握り締めている。

 

その横で目を閉じ、黙祷を行っている卑弥呼。

 

そんな時だった。

 

三人の後ろからゆっくりと足音が近付いてくる。

 

「何奴!」

 

閉じていた目を開き、振り返る卑弥呼。

 

次いで華陀、最後に卑弥呼の声に我に返った男も自らの背後に視線を向ける。

 

三人の視線の先には、殺気を身に纏い、ゆっくりと歩を進める盲目の男の姿があった・・・・・・

 

 

 

 

 

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「貴様がこの惨状を引き起こした張本人か!?」

 

「・・・・・・ああ。正確には私達がやったというべきか。もっとも、今は私以外にここには誰も居ないが」

 

卑弥呼の怒気を孕んだ質問に淡々と答える盲目の男。

 

「自己紹介をさせてもらおう。私は霊亀。天師道の幹部だ」

 

「天師道だと?」

 

「すでにその男からある程度は聞いているはずだろう。この国を影から変えていくための組織。それが天師道だ」

 

「その志とここの医師たちの皆殺しといったい何の関係がある!?」

 

「医師たちに我らの傘下に入るよう説得に来たのだ。しかし、ここの医師たちは首を縦に振らなかった。となれば、いずれ我らの邪魔になるだろう。故に処理させてもらった」

 

ここまでの殺戮を行っておきながら、霊亀は感情のこもっていない口調でただ淡々と言葉を紡いでいく。

 

「さて・・・・・・仕事を済ませるとするか」

 

そう言って構えを取る霊亀。

 

「お前達がここに来る事は分かっていた。私がここに残っていた理由。それはお前達の始末だ」

 

「二人共下がっておれい」

 

卑弥呼は二人にそう促し、霊亀の前に立ちはだかった。

 

呼吸を整え、構えを取る卑弥呼。

 

「「・・・・・・・」」

 

静寂が辺りを包む。

 

先に動いたのは霊亀。

 

一瞬で間を詰め、卑弥呼の喉元へ突きを繰り出す。

 

「甘いわ!」

 

霊亀の一撃を避けるのとほぼ同時に、卑弥呼は右拳を霊亀の腹部めがけて打ち込んだ。

 

「ごふっ!」

 

卑弥呼のカウンターをもらった霊亀は派手に吹き飛び、床をバウンドしながらようやく止まった。

 

「ほう・・・・・・後ろに跳んでダメージを逃がしたか。あの体勢からたいした反射神経だ」

 

「・・・・・・」

 

無言で立ち上がる霊亀。

 

しかし、直撃ではなかったにしろダメージはかなりのものらしく、腹部を押さえ、息を荒げている。

 

「さて、お主には色々と聞きたい事がある。まずは拘束させてもらうぞ」

 

「・・・・・・もう勝った気でいるのか?甘いな」

 

そう言うと、霊亀は腕に巻いている包帯に手をやり、その隙間から針を二本取り出した。

 

そしてそのままその針を両肩に刺す。

 

その行為を遠目に見ていた華陀は卑弥呼に告げる。

 

「気をつけろ卑弥呼!奴が突いたのは肉体強化のツボの一つだ!短時間だが飛躍的に身体能力が増大するぞ!!」

 

華陀の言うとおり、霊亀の筋肉が見るからに隆起していく。

 

「これからが本番だ」

 

「よかろう。かかってくるがいい」

 

第二ラウンドの始まりだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

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パワーで勝る卑弥呼とスピードで勝る身体強化後の霊亀。

 

だがスピードで劣っていても、卑弥呼には長年の経験における先読みとリーチの長さがあり、霊亀は今一歩決定打の放てる場所まで踏み込む事が出来なかった。

 

互いに決め手を欠いたまま時間が過ぎていたが、今の動きを維持できる時間に制約がある霊亀の方が分が悪い。

 

戦いの最中そう悟った霊亀は、何を思ったか一直線に卑弥呼に突っ込んでいく。

 

「来るか!?」

 

身構える卑弥呼。

 

しかしその瞬間、霊亀は大きく跳躍し、卑弥呼を飛び越えていく。

 

その先には、華陀と男の姿が。

 

「しまった!」

 

振り返った卑弥呼は華陀たちの元へ向かおうとするが時既に遅く、天井まで跳躍した霊亀はすぐさま天井を蹴り、矢のような速度で華陀たちを襲撃した。

 

「退け華陀!」

 

危険を察知した男が華陀を突き飛ばす。

 

華陀が倒れこんだ瞬間、男は高速で飛んできた霊亀によってその心臓を掴み出されていた。

 

「・・・・・・二人共仕留めるつもりだったんだがな」

 

掴み出した心臓を無表情で握りつぶす霊亀。

 

男は幾度か痙攣した後、そのまま動かなくなった。

 

「先・・・・・・輩・・・・・・」

 

「貴様ァ!!」

 

怒り狂った卑弥呼の一撃を避けると、霊亀は背を向けて走り出した。

 

見ると、隆起した霊亀の筋肉が徐々に収縮している。

 

 

 

 

「時間だ。次の機会までその命、預けておくとしよう」

 

 

 

 

「逃がさん!!」

 

 

 

 

卑弥呼は全力で追いかけたが、未だスピードに勝る霊亀を捕らえる事は叶わなかった・・・・・・

 

 

 

 

 

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先輩の死んだ直後こそ放心してしまった華陀だったが、短い時間でどうにか動ける程度に気持ちを立て直し、卑弥呼と共に医師たちの亡骸を埋め、墓碑を建てて埋葬していた。

 

「大丈夫か?だーりん」

 

「・・・・・・ああ」

 

そう答えはしたものの、華陀の表情は冴えない。

 

「それにしてもここまでの事をやるとは・・・・・・天師道。放っておく訳にはいかんな。だーりん、これからどうする?」

 

「・・・・・・まずは一刀の所へ行こう。五斗米道の本部にも行きたいが、ここからなら一刀の所の方が距離が近い」

 

「うむ、心得た。しかし急がねばならんな」

 

「ああ」

 

 

 

 

卑弥呼の言葉に頷く華陀。

 

 

 

 

こうして埋葬を終えた華陀たちは、急いで一刀の元へと向かったのである・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

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どうも、アキナスです。

 

個人的にオリキャラは極力出したくないのですが、話の展開によっては出さざるをえないんでしょうかね・・・・・・

 

ではまた次回・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
三人の行く先に待ち受けていたものとは・・・・・・
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コメント
未奈兎さん:その可能性はありますな(アキナス)
mokiti1976-2010さん:どのような戦いになっていくのでしょうか・・・・・・(アキナス)
こういう奴らって大抵最期は自滅しそう(未奈兎)
一刀の身にも危険が迫ってくるのは必至ですね。(mokiti1976-2010)
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