真・恋姫無双 新約・外史演義 第00話「乱世の奸雄」
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 繰り返される大陸の歴史。

 建国、腐敗、騒乱、滅亡、そして新たな国が成り立つ。

 夏、殷、周、長き春秋戦国時代を経て、秦、前漢、新、後漢。

 千年を超える時の中で多くの国が生まれ、死んで行く。

 千年を超える時の中で多くの人が生まれ、死んで逝く。

 繰り返される大陸の歴史が……新たな外史が血塗られた産声を上げる。

 

 真・恋姫無双 新約・外史演義 第00話「乱世の奸雄」

 

 少女は目を覚ます。

 朝の目覚めと呼ぶには薄暗い中で彼女は目を覚ました。

 「うっ……」

 思わずうめき声が漏れる。

 身体を動かそうとするもうつ伏せの身体の上から圧力が掛かって身動きが取れない。

 視界は相変わらず不良。

 いや、闇目に慣れてきて、やや不良。

 眼前に見えるは土、左右には炭化した木の柱。

 「……!? そういえば……ぐっ!」

 朦朧としていた意識が急激に覚醒する。

 思い出した。ここがどこなのか、なぜ「崩れた家」の中に生き埋めになっているのかを。

 そうだ、こうしてはいられない。早く外に出なければ。

 少女は五体に力を込めて、背中に掛かる圧力を――

 「ううっ……うあああああ!!」

 ――気合と共に吹き飛ばした。

 

 雨、雨、暗い夜空には雨雲がかかり地上を濡らす。

 雨に濡れた大地を少女は歩く。

 「……師父」

 少女の黒髪から雨粒が目に滴り落ちる。とても煩わしい。

 「……師叔」

 あたり一面に広がる焼け野原を少女は歩く。煙と雨と■■■の臭いが漂ってくる。とても臭い。

 「……??」

 少女はさまよう。探している人たちの名を呟きながら。

 そして――

 少女は血だまりの中に横たわる二つの■■■を見つけた。

 「……あ、師父????」

 

 彼は目を覚ました。

 当たり一面焼け野原と化した小さな村の片隅で目を覚ます。

 身体の節々が痛むが命に別状は無い。

 命に別状は無いのだ、自分だけは……兵士たちに襲われた村の中で。

 家は燃やされ、畑は荒らされ、人は殺され、犯され、攫われた。

 「……なんと、むごいことを」

 彼は、老人はこの村の長……いや、長だった男だ。

 降りしきる雨の中、凄惨な殺戮劇の舞台後を見つめながら老人は呟く。

 「すまぬ……すまぬ……」

 それは、自分だけが生き残ってしまった事に対しての贖罪だったのか?

 「……すまぬ」

 村長として村人たちを守れなかった懺悔だったのか?

 老人は謝罪の言葉を呟きながら何処へとも無く歩き出す。

 そして……村の入り口に一際大きな血の海を見つけ、さらに――

 「……■■か?」

 ――『何か』を抱きしめながら血の海の中に呆然と座り込むこの村の少女に出会った。

 

 「……■■か?」

 聞き覚えのある声がした。

 少女はその方向に顔を向け――

 「…………あ?…………村長さん」

 村長と呼ばれた老人は少女に駆け寄る。

 まさか生存者がいるとは思ってもいなかった。しかも年頃の娘が。

 「大丈夫かい?その……あやつらに何もされなかったのかい?」

 「……あ?……ああ、私なら大丈夫です。家の残骸に埋まっていたので……」

 「そうかい。それは不幸中の幸いだったね…………!?」

 血だらけの少女が兵士たちに乱暴をされたのではと心配をしたが、そうではないようだ。

 だが少女が抱き抱える『何か』を見て、村長の背筋が凍りついた。

 「■■、それは一体?」

 「…………え?……ああ、??ですよ。横にいるのは師父です」

 「あ……ああ……なんと、むごい事を……」

 少女は虚ろな表情で死体を大事そうに抱きかかえて『何か』を自分の父、そして師と呼んだ。

 それは確かに見覚えのある服だった。彼女の父は変わった服を好んでよく着ていた。だが、村長に判断できるのはそれだけ。

 「むごすぎる……こんな事が許されるのか?……これが…………乱世なのか?」

 「……乱世?」

 少女が??、師父と呼んだ死体は首から上に何も無かった。

 戦場で首を狩って戦果とする慣わしがある事は知っている。だが、こんな辺境の村の住人の首を持ち帰って何の戦果と言えようか。これはただの虐殺……名誉も誇りもない野蛮な行いだ。

 「……始皇帝よりはるか昔から続く英雄たちによる争いの繰り返しじゃよ」

 「繰り返し……それが……乱世?」

 少女は父の亡骸を抱きしめながら村長の言葉を聞く。

 「国が生まれ変わる節目の動乱の時期じゃよ」

 「生まれ変わる……節目……」

 「わしらは全てを奪うまで終わらん英雄たちの国の簒奪お遊戯につき合わされてるんじゃ」

 「英雄……お遊戯……お遊戯で??と師父が……」

 それっきり少女はなにも話さなかった。

 冷たくなった父の亡骸を強く抱きしめながら、また呆然と血の海に座り続ける。

 二つの影と二つの陰を雨が強く打ち付けていた。

 

 どれくらい時間が経ったのだろうか?すっかり雨は上がっていた。

 少女の周りの血の海はすっかり雨に流され今は何も無い。

 ??と師父の生きていた証が地に帰ってしまったのか?

 少女はまだ呆然として父の亡骸を胸に抱き、横たわっている師と並んで座り込んでいた。

 師父は厳しい人だった。何度、殺されかけたか分からない。

 『強くなれ■■!強くあれ■■!大切な人を守りたいときにその強さが無ければ死ぬより辛い思いをするんだ!さあ、立て!せめて、私に一太刀は入れられるようになれ!』

 私が弱音を吐いたり、逃げ出そうとした時にでるお決まりの台詞でしたね。

 師父……私は大切な人を……大切な人たちを守れなかったです。

 『この馬鹿弟子が!』っていつもみたいに怒っていますか?

 『???う〜ん……どんな人だったかって言ってもな……頭が良くて……器量が良くて……それでものすごく不器用な人だったかな』

 ??は今ごろ??に会ってるのかな?

 『寂しくないかって?そりゃあ寂しいさ……でも、俺はあいつから■■を守ってくれと頼まれた。俺が■■を守っている時は??と一緒に時でもあるんだ。家族みんなでね』

 ふふ……でも知っていたんですよ。一人でいるときに??の名前を呟いて涙ぐんでいたのを。

 ??……??は私を守ってくれましたよ。あちらで寂しがりやの??をよろしくお願いします。

 ??、どうか安らかにお眠り下さい。

 そして、師父……この不肖の馬鹿弟子に力をお貸し下さい。

 

 「もう行くのかい?」

 「はい、埋葬も終わりました。別れの言葉も告げました」

 村の入り口に少女は両の足で立つ。故郷の村を背に決意を胸に秘めながら。

 「本当に探しに行くのかい?その……■■の事を」

 「はい、私の最後の……たった一人の家族ですから」

 師父と??はこの村を……私たち家族を守るために戦って死んだ。

 「確かに死体は見つかって無いが……あいつらに連れて行かれて無事でいるとは……」

 「村長さん、■■は師父と同じぐらい強いんです。逃げるだけなら恐らくは無事に逃げられたはずです」

 私に残された最後の家族、師叔……私の姉弟子。会わなければ……会って師父の最期を伝えなければ。そして――

 「師父と??の仇を討つ」

 ――それが残された弟子としての最後の孝行。

 「……辞めたほうがいい。殺し殺され、殺され殺し……最期には何が残るんじゃ?」

 「村長さん、私はこれでも武に生きる者の端くれです。何も残らないとしても……やらなくてはならない事があるんです」

 ――繰り返される死と死の連鎖。

 「お前さんはアレを見てないからそんな事がいえるんじゃよ」

 ――国が死に、人が死に、また、人が死に……。

 「アレ……とは?」

 ――古より続く、英雄たちの時代の簒奪お遊戯。

 「女じゃった……金色の髪……全てを奪いつくす意思を宿した瞳……恐らくはアレこそがこの乱世の時代の英雄じゃろう」

 「……金色の髪の女」

 「村を襲った奴らの頭に間違いない。英雄と呼ばれる者は国を作り、さらに大きく強くなる……英雄を倒す道は険しく遠い物ぞ」

 少女は村長の言葉を最後まで聞いた。そして―

 「……やはり、行くのか?」

 「有益な情報、ありがとうございます」

 少女は故郷の村を背にして歩みを進める。荒れた道を……険しく遠い道を一歩一歩。

 「英雄ですか……弱者を一方的に踏み荒らすものは英雄なんて呼べませんよ」

 ――乱世に時代に綺羅星のごとく現るその者たち……祖は。

 「金色の女……乱世の奸雄!私はあなたを許しません」

 

 『ケ艾士載』全てを失った少女の名前。『ケ艾士載』英雄に相対する反英雄の名前。

 『ケ艾』は歩みを進める。父と師の仇を討つために。乱世の奸雄を討つために。

 ■■は求める。たったこの世界にたった一人の家族を。師の下で共に過ごした姉弟子を。

 目指すは先。目指すは遥か彼方。ケ艾は前だけを向いて進んでいく。そして――

 「……あ、流れ星」

 ――上空に輝く白い光を目にした。

 

 ― 正史の世界の始まりと終わりの場所

 

 ― 正史の世界と新たな可能性の場所

 

 ― 全てが無で全てが有の場所

 

 ― 望まれた物語と望まれぬ物語

 

 ― あなたの望む物語(世界)の名を

 

 さあ、あなたの新しい外史の始まりです。

 

 

 

 人物・用語

 

 師父【しーふ】― 師匠・先生

 

 師叔【すーす】― 兄弟弟子

 

 ??【ぱーぱ】― 父親・パパ

 

 ??【まーま】― 母親・ママ

 

 ケ艾士載【とうがいしさい】

 古代中国の実在の武将。

 蜀を滅ぼした人物として名を轟かせている。

 政治・戦など幅広い分野で満遍なく活躍し貧しい出自ながら最終的に魏の重鎮にまで上り詰めた。

 特に農業政策においては一から運河を作り魏の農作物の収穫量を倍増させたことでも有名。

 武将としては短〜中期での戦略面の先見性が高く作戦参謀タイプと言える。

 ケ艾のライバルとして有名なのが蜀の姜維(ライバルと言うよりもカモか?)

 正確は個人的に評価するならば冷静沈着で頭の回転が速いが心根は熱血自分大好きちゃんで周りに妬まれたり、人間関係で失敗することも(最期なんかモロにそのパターンだった)

 新・外史伝では自分大好きちゃんの性格は無しの方向でいこうかと考えております(いわいる恋パターンです)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
恋姫無双シリーズの二次創作です。
ループ要素やチートは無し。
オリジナルキャラ有り
主人公 北郷一刀 ケ艾士載(とうがいしさい)
所属勢力 曹魏
史実で蜀を事実上滅亡させた曹魏末期の名将ケ艾士載。
北郷一刀とケ艾士載が曹魏の初期にめぐり合う新たな外史の物語。
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コメント
コメントありがとうございます。01話の下書きは完成したので2日後ぐらいまで(10月07日)には投稿する予定です。(koiwaitomato)
全てを失った少女と一刀との出会い…これからどう展開していくのか楽しみにしております。(mokiti1976-2010)
次回、お待ちしております。(劉邦柾棟)
本当に華琳がやったのか? 少し気になりますね。 面白い外史の始まりにワクワクしております。(劉邦柾棟)
タグ
真・恋姫無双 北郷一刀 ケ艾 

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