白い魔法
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「そろそろクリスマスだね、お兄ちゃん」

「そうだな」

 

俺とさくらはさくらの家のこたつで暖まりながらみかんを食べていた。

もちろん、うたまるも一緒だ。

外はとても寒く、コートなしでは出られないほどだ。

 

「そういえば、今年のクリスマスは今までのとちょっと違うんだな」

 

俺が思い出したように言った。

 

「なんで?」

「今までは桜が咲いていたから、雪と桜の花が一緒に見られたんだよ」

「ふ〜ん。風流だね」

「いや、絶対違うと思うぞ」

「もお、お兄ちゃん細かい事は言っこナッシングだよ」

 

さくらは少し頬を膨らませていった。

 

いや風流というか異常だったぞ、あれは………。

でも、確かに綺麗ではあったよな。

親父なんか雪見酒と花見酒が一緒に飲めるって喜んでたし。

あれは初音島でしか見られない景色だったんだろうな。

 

でも、今年からはもう見られない。

なぜならさくらが桜の木を枯らしてしまったからだ。

おかげで初音島の桜は普通の桜の木と同じく春にしか咲かなくなった。

 

「見てみたかったな〜、その景色」

「そうだな〜」

 

この時、俺はさくらにあの景色を何とかして見させてやりたいと思った。

でも、桜の木はもう枯れているのにどうやってあの景色を見せる?

俺は家に帰った後もそのことばかり考えていた。

 

 

「兄さん、ぼ〜っとしてないで早く食器を片づけるのを手伝って下さい」

「ああ、スマンスマン」

 

俺は頭をかきながら妹の音夢に謝った。

音夢は本島の看護学校に行っているので、普段はこの家にいない。

でも、冬休みという事で久々に我が家に帰ってきている。

 

「兄さん、どうしたの?何か悩み事でもあるの?」

 

心配そうに音夢が尋ねてきた。

 

「いやな、さくらが雪と桜の花を一緒に見たいって言ってたんだ。ほら、去年までそうだったじゃないか」

「確かにそうだったね。でも、桜はもう枯れちゃったんでしょ」

「そうなんだよ…。だから何か良い方法はないかって考えているんだ」

「う〜ん。兄さん、こんな方法はどう?」

 

音夢はこっそりと俺に耳打ちをした。

 

「それは良い考えだよ。ありがとう音夢」

「いいえ、どういたしまして。でも、さくらちゃんも幸せだよね」

「なんで?」

「だって、ずぼらで面倒くさがり屋でかったり〜が口癖の兄さんがあんなに真面目に考え込むなんて久しぶりに見ましたもの」

 

音夢が少しすねたように言った。

 

あ………、またやっちまった。

音夢とさくらは俺を巡ってのライバル同士だったことをすっかり忘れていた。

その件はなんとか俺がさくらの恋人になることで難を逃れたが、2人の間にはまだしこりが残ったままになっている。

 

「音夢、スマン」

 

俺は素直に謝った。

すると、音夢は首を振って。

 

「良いんだよ兄さん。私はいつまで経っても兄さんの妹だし、兄さんは私の兄さんだもの。私はそれだけで嬉しいんだから」

「音夢………」

「さあ、兄さん。クリスマスまであまり時間が無いよ。はやく準備しないと」

「そうだな。じゃあ、俺は非常にかったるいが杉並に電話してくるよ」

 

そう言って俺はリビングを出て行った。

その時、音夢が小さな声で

 

「…バカ」

 

と言ったのは俺の耳まで届かなかった。

 

 

 

 

そして、クリスマス当日。

俺はさくらを家まで迎えに来ていた。

 

 

「さくら〜、いるのか?」

「いるよ、お兄ちゃん。ちょっと待っててね」

 

少し待つと、

 

「ごめんね〜お兄ちゃん、お待たせして」

 

と、さくらが出てきた。

 

「今日、暇か?暇ならデートしようかと思っているんだが」

「もちろんOKに決まってるじゃない。でも、どうしたの急に?最近はなかなか遊んでくれなかったのに」

「いろいろと用事があってな。だから、その埋め合わせとして今日は俺のおごりだ」

「本当に?嘘じゃないよね」

「嘘じゃねえよ。本当だ」

「やったー!!ちょうど買ってほしい服とかあったんだよね〜」

「おいおい、あんまり高くないのにしてくれよ」

 

俺が苦笑まじりにいった。

すると、さくらは少しむっとした顔で、

 

「………甲斐性なし」

「ぐはっ。そりゃないだろ、こっちはしがない学生なんだぜ」

「あはは、冗談だよ」

「…はめたな」

「ほら、早く行こうよ。」

「分かったよ。ほら、手」

 

俺は手を差し出した。

さくらは、何も言わずに俺の手に自分の手を重ねてきた。

こうして俺たちは商店街へ向かって歩き始めた。

 

 

 

「あ〜楽しかった。お兄ちゃん、今日はありがとうね」

「おうよ。でも、あんまり買わなかったな。音夢や美春と比べると大違いだ」

 

俺の右手にはさくらの買った服の入った袋が握られていた。

俺は音夢と美春に付き合わされた買い物の事を思い出した。

2人ともこっちが金額の心配をするぐらい買っていた気がする。

おかげでこっちは2人の荷物のせいで前が見えなくなるほどだった。

 

「いいのいいの。お兄ちゃんに買ってもらったっていう事に意味があるんだから」

「そうか。ところで、この後行きたいところはあるか?」

「特には無いけど………なんで?」

「じゃあ、これから桜公園に行こう」

「いいけど、どうして?」

「それは着いてからのお楽しみ」

 

さくらは何か釈然としない様子だったが、俺はさくらの手を引いて歩き出した。

 

 

「着いたのは良いけど、何にもないじゃん」

 

さくらが不満そうに言った。

それもそうだろう、なぜなら俺が連れて行ったのは元枯れない桜の木の前だったからだ。

辺りには街灯はなく、シーンと静まりかえっていた。

 

「まあ待ってろって。じゃあ、今から3つ数えるからそれまで目を開けるなよ」

「…うん」

「じゃあいくぞ。1…2………3」

「えっ…なにこれ?キレイ………」

 

さくらと俺の前には色とりどりのイルミネーションで飾られた桜の木があった。

さらに、それだけでなくクリスマスツリーのような飾り付けがされていた。

まるでここだけが別世界のように明るかった。

 

「大成功のようだな、My.同士朝倉よ」

「ちょっと杉並、出て行ったら隠れていた意味が無いじゃないの!!」

 

木の陰から騒がしく杉並と眞子が出てきた。

 

「杉並君に眞子ちゃん…どうしてここに?」

「芳乃嬢、俺たちだけではないぞ」

「こんばんは芳乃さん」

「こんばんはです、芳乃先輩」

 

木の陰からことりと美春が出てきた。

 

「えっえ?どういうことなの、お兄ちゃん?」

「みんなで桜の木を飾り付けしたんだよ」

「フッ、水越妹が力仕事を手伝ってくれたのだ」

「杉並〜!!あんた死にたいの!? だいたい、私はイルミネーションを借りてくるだけのはずだったのに…」

「適材適所だ。せっかくほめているんだがな」

「あんた、今日という今日は決着を付けさせてもらうわよ」

 

完全に眞子と杉並は俺たちを忘れてしまったようだ。

ああなると誰にも手がつけられなくなる。

 

コホンと俺は咳払いをして

 

「まあ、あの2人の事はおいとくとして。どうだ、さくら気に入ったか?」

「うん、と〜っても。でも、何でやろうと思ったの?」

「この前、さくらが雪と桜の花を一緒に見たいって言っただろ。それで、本物の桜の花は無理だからみんなで飾り付けた訳」

「そうなんだ…。みんなありがとうね」

 

さくらはことりや美春に向かって頭を下げた。

 

「これくらいで驚いてもらっちゃ困るな」

「えっ、まだあるの?」

「朝倉君、私たちも知らないよ」

「実はこのスイッチを押すとだな」

 

俺はコートのポケットからリモコンを取り出した。

 

「ほれ、ぽちっとな」

 

「すごい………」

「さすが、朝倉先輩です。美春、感激です」

「本当に雪が降ってきた…」

 

辺りにほんの少しではあるが、雪が降り始めた。

そう、俺が真っ先に杉並に連絡したのはこれを用意するためだったんだ。

この人工降雪機を用意するには、さすがの杉並も相当苦労したようだった。

 

まあ、だからといってあまりお礼を言いたくは無いが。

 

「これで、少しは去年の光景に近づけただろう」

「お兄ちゃん、本当にありがとう」

「よせやい、俺だけのおかげじゃない」

「も〜、素直じゃないな。お兄ちゃんは」

「白河先輩、私たちお邪魔みたいだからそろそろ退散しましょう」

「そうね。では、芳乃さんと朝倉君。またね」

 

2人は手を振りながら帰っていった。

 

「さて、俺らはどうする?」

「もう少しここにいたいな」

「そうか」

 

俺とさくらは地面の上に座って2人で雪化粧された桜の木を見上げた。

この世界には2人しかいなかった。

 

「来年も一緒に見たいね」

 

さくらが俺に寄り添いながら言った

 

「見たいんじゃない。見るんだよ」

「あ…うん♪大好きだよお兄ちゃん」

 

説明
倉庫(ry
相当初期の作品だなぁw

D.C.より芳乃さくらさんをお呼びしました。
アフターシナリオで純一視点です
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D.C. ダカーポ 芳乃さくら 二次創作 小説 SS 

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