司馬日記外伝 『嘘発見器』
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「たーいちょっ」

「あー、らっしゃい」

ノック無しでガチャリと執務室のドアが開けられると、脇に鞄大の袋を抱えた真桜が飛び込んできた。

 

俺の執務室を訪れる人は半分位がノック無し、半分位がノックをして入ってくる。

そして大概前者は帰る時に扉を閉めないし、後者は閉めて帰る。俺自身は『開かれた執務室』ってやつ?の方がいいかなと思っているので特別な会議でない限りは開けっ放していいと言っているけれど後者の人たちにとってはそういうものではないらしい。

尚鍵は一応ついている、っていうか最近つけられた。理由は所謂諸般の事情ってやつだが、直接的には穏との真っ最中にうっかり踏み込んでしまった蓮華がその時の警備担当の明命に八つ当たり気味にしっかり警備するよう注意したところ

「申し訳ありません蓮華さま!『ヤるなら自分で気をつけろ』等と考えず、今後は扉を開けられないようしっかり中から警備致します!」

と軽く米神に血管を浮かべながら答えた為かもしれないしそうではないかも知れない。

 

「例のやつでけたで!」

「…えーっと、こないだの飲みの時言ってたやつ?」

「そや。じゃーん」

そう言いながら真桜が抱えた袋から出したのはグラフレコーダーらしきものとコードがついた布製っぽい腕輪だった。

「すごいな」

「そうかいな、他のもんよっか大分簡単やったで?『嘘発見器』」

「流石真桜えもん…ところであん時俺、嘘発見器って言ったけどさ」

「わーっとるって、単純に血圧と脈拍の変化を記録出来るだけや。ガチで嘘が分かるような装置はウチかてほいほい思いつかんわ」

 

だからと言ってそれでさえ早々作れるもんじゃないと思うが。

「早速試してみていい?」

「んー、せやけど…」

真桜と目が合うと、その微妙に口元を釣り上げた微笑はおおよそ俺と同じ事を考えてるっぽかった。

「まあ折角やから、おもろ…試験に適した人材を呼んであるんや」

そう言いながら部屋の入り口を振り返ると、酒瓶とげっそりとした表情の凪を両脇に抱えながら『御注文の凪、持って来たでー!』と満面の笑みでのたまう霞が居た。

 

 

 

 

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「…そんなわけでまぁ、これは冷静さを保てているかを測定する機械なわけ。で、これからいくつか質問するから動揺せずに答えられればOKってこと」

「真桜が作ったというのが些か気がかりですが、隊長がそうおっしゃるのでしたら…」

「うん、頼む。俺の凪ならきっと冷静なところを見せてくれると信じてる」

「は、はい!頑張ります!」

手を握るとほんのり頬を染め、顔を上げて答えてくれる凪。

真桜から説明すると怪しむだろうと考えて俺から説明したけど、真桜から質問リストを受け取った霞のあの口の端の釣りあがり具合を見ると一抹の不安がよぎる…って言うかもう凪に謝りたくなってきた。

 

「そんじゃあウチから質問するな。精神力を試すもんやから答えは真実の如何に関わらず『いいえ』で答えるんやで」

「はい」

椅子に腰掛け、手首に嘘発見器の腕輪を巻いた凪を三人が囲む。レコーダーの針はカチ、コチと安定して直線を刻んでいる。

 

「庁内での現在の待遇に不満がある」

「いいえ」

「信頼できる友人が居ない」

「いいえ」

「職務に飽きている」

「いいえ」

「実は呉・蜀の間諜である」

「いいえ」

「自分の体に不満がある」

「…いいえ!」

 

答えながらキラキラした瞳で見つめてくる凪に軽く頷く。いつか体の傷がコンプレックスだと言っていた凪に、肉体(と)言語で否定した事を思い出す。真桜も霞もそれを承知で設定した質問なんだろう。

「新参が優遇されていて不満に思うことがある」

「いいえ」

「一刀に嘘をついたことがある」

「いいえ」

「上司に不満がある」

「…いいえ」

 

答えに一瞬の間があった直後、レコーダーの針がぴくりと反応したのを見て霞がわずかに顔をしかめた。

「ここまで見事やで凪、しかし試練はこれからや。あんじょう答えや」

「はい」

エホン、とひとつ咳払いをすると霞の表情が無駄に引き締まった。あの表情見たことある、主に雪蓮とかで。

 

 

 

 

 

「最近、生協で通販したものがある」

「…?…えっ?」

凪は一瞬怪訝な表情を浮かべた後、見ててかわいそうな位赤くなって表情を引きつらせた。

「い…、いいえ…」

カチッ。コチッ。

レコーダーの針が大きく右へ振れる。

 

「それは犬ミミである」

「いっ、いいえ!」

無情な針は反対側へ大きく振れる。…うん、こないだつけてたアレね。

「首輪と一緒に装備してお腹を撫でて貰うのが最近のお気に入りだ」

「いいえっ!?」

答えながら隊長喋っちゃったんですか!?と凪が目で聞いてくるのに俺じゃない、と首を振るジェスチャーで答える。

多分凪の友達か、天井裏の猫好きな警備員のどっちかで間違いないだろう。

「正直、恋に差をつけたかった」

「いいえ!」

「一刀にわんわん言わされながら後ろからされて気持ち良かった」

「いい…………はいっ!とても良かったですっ!またして頂きたいですっ!」

「正直だな!?」

「隊長の事で嘘はつけませんっ!」

茹蛸のように赤くなりながら、自棄のように俺の突っ込みに答える凪が馬鹿正直カワイイ。

 

「これで質問は全部や。動揺するとはまだまだやな、凪。もっともっとわんこ道を極めんと恋は超えられへんで?」

「はいっ!精進しますっ!」

凪は自棄のようにきびきびと返事をすると逃げるように部屋を出て行ってしまい、霞もおもろかったわまたなんかあったら呼んでやと言って帰っていった。

 

 

 

 

-----------------

 

 

 

 

「わんこ道ってなんやねん」

「俺も知らないがなんとなく分かる。ってかホント凪には容赦ないな」

「親愛の証やから。まあええわ、次の組がそろそろ来るで」

「まだ来るのか」

真桜と雑談をしていると、ノックと共に一刀さぁん、いらっしゃいますぅ?と間延びした声が聞こえた。

 

「これはありそうで意外と珍しい取り合わせだねぇ」

「はわわ、こんにちわ。これが件の嘘発見器ですか?」

「あわわ、凄いよ朱里ちゃん!」

来たのは隠、朱里、雛里。

「軍師級を呼んだんやけどなぁ、うち(魏)の連中がまだ誰も来ぃへんのや」

「そっか、まあ後から来るならいいだろ。さしあたり誰からやってみるか…」

考えるが、朱里雛里は仕事中はともかくプライベートは凄くメンタル弱い。

 

「だからって私ですかぁ〜?」

私も朱里さん達に聞いてみたい事もあるんですけどぉ、と腕にセンサを巻かれて被告席(?)に座らされた穏は多少不満気だ。

穏は少なくとも以前は朱里達を少し上に見ている節があったので、実際勉強の為に色々聞いてみたかったのかも知れないがまあ順番って事でと言って納得してもらった。

 

「じゃあ御二方、穏さんを動揺させるような質問してみてや。穏さんもやっぱ政治家なんやから動揺しない訓練やと思ったって」

「そうですねぇ…うーん…では、先日設定した呉の海産物と蜀の鉱物の取引単価の設定は有利に設定できたと思っている」

「いいえ〜」

「三国塾の地方推薦枠の割り振りに不満がある」

「い〜えぇ」

「魏・蜀への水軍指導協力費が少なすぎると思う」

「いいえぇ」

「蜀から張松さん、法正さんを引き抜きたかった」

「いいえー」

「はわわ…難しいですね」

「うん…私達、これが日常だからね」

特に動揺する様子のない穏に二人で顎に手をやり思案顔を浮かべていたが、ふとレコーダーの挙動がおかしいことに気づいた。

 

「あれ…なんか、針の動きおかしくない?」

「あ?ほんまや」

針が不規則に脈動しながら左右に揺れているが、穏の様子は至って平静だ。

「あ…それや、穏さん腕、腕」

「はい〜?…あ」

真桜が指差す方向を見ると、センサの腕輪に穏の巨大な胸が乗せられていた。これのせいで胸と手首を両方感知して誤作動していたようだ。

「すみません〜、ついクセでぇ…あ」

 

 

 

 

 

「「ついクセで?」」

 

 

 

 

 

 

祭もそうだけど、胸が大きい人はよく胸の下で腕を組んでいる。机があると腕を机に乗せてその上に胸を乗せている。

うん、まあわかるんだけど朱里達の瞳から光が消えてるんだよね。穏、ちょっと気づくの遅かったかなぁ。

「………私質問思いついたよ、雛里ちゃん」

「偶然だね、私もだよ」

「あ、あのぉ〜、お手柔らかにお願いしますねぇ〜?」

 

 

 

「貧乳は女じゃないと思っている」

「へぇっ?い、いいえ〜」

「後輩も同僚も助けてくれないので正直辞めたい」

「いいえー!?」

「とりあえず挟んでしゃぶればいいと思っている」

「いぃえぇ!」

「張昭さんが嫌いだ。相手するの疲れたので辞めたい」

「いいえ!」

「小蓮ちゃんがわがまま過ぎる。ちょっと胸が大きくなってきたからって生意気だ」

「いーえっ!」

「蓮華さんも御主人様の事ばっかりで助けてくれない。もう辞めたい」

「貧乳ツンデレ変態ドMが武の頭だと思うと正直恥ずかしい」

「ババァは黙ってろと思う」

「誰が姉だとかどうでもいいから仕事して欲しい」

「あのぅっ、なんか急に質問がキツ過ぎるんですけどぉ!?」

「その位にしようか!な、朱里、雛里!」

やばい単語が出始めたので慌てて止める。むしろ朱里達がどこからともなく飛んでくる矢に射抜かれないように。

 

「じゃ次交代、交代!次穏が質問する番な!」

「い、いぃえぇ〜、ちょっと仕事立て込んでるのでこれで失礼しますぅ〜!」

逃げるように走り去ろうとする穏の、一歩ごとにゆっさゆっさと揺れるお胸に注がれる殺意の篭った雛里達の視線は見なかったことする俺は大人。

 

「(このへんウチとしてもあんま居心地ようないんやけどな)」

「(あえて煽らなけりゃ大丈夫じゃないか?)」

真桜と目線で会話をし、話題を逸らそうという無言のサインに従って行動する。

「ところで魏の娘来ないね?」

「そやなぁ、どしたんやろ…あ、仲達はん」

部屋の入口を見ると、仲達さんが浮かない顔をして立っていた。

 

「今しがた、慌てた様子で陸遜殿が出てこられたのですが何かおありだったのでしょうか」

「いや何でもない。仲達さん、真桜に呼ばれて来たの?」

「いえ、李典殿の依頼で仲謀様、文若様、稟様らをお呼びに行ったのですが、李典殿の御依頼でと言うと皆一様にお断りになられたのでその報告に参りました」

「あちゃー」

隣で額に手を当てる真桜を横目に、流石魏の皆は経験に良く学んでるなと喉まで出かかったのをぐっと飲み込む。

さてどうしたもんか。じゃあ仲達さんさぁと言いかけ、はたとこの取り合わせはまずかったんじゃないかと気づいて言葉を止めたが時すでに遅し。

朱里と雛里の表情は完全に凍り付いている。

 

「はい。何でしょうか、一刀様」

「あ、いや…」

「?えっとなぁ仲達はん、この機械な、これこれ斯様でこうやねん。ほんなわけで、折角やから蜀の二枚看板の動揺するような質問してみ?」

「はあ…」

答えながら、仲達さんはきっとちらりと雛里達の方を見たつもりなんだろう。しかし見られた側は『ギンッ!!』とした眼光で睨みつけられたと感じているのが手に取るようにわかる。具体的には二人が掴んでる俺の服の震え具合から。

 

「(なあ真桜、これやばい)」

「(?なんでや)」

「(いいから。相性みたいなもん、切り上げよう)」

少し困った様子で俺を見る仲達さんは二人との官位差から僭越だと思っているらしい。俺の判断を待っているようだったので俺の方から止めてあげた方がいいだろう。

 

「ああごめん、やっぱ仲達さん無理しなくていいよ。それより、お茶でも淹れてくれる?」

「はい、承知致しました」

仲達さんが給湯室へ向かう為背を向けると、両脇で俺の服を掴む力が抜けるのがはっきりと感じられる。仲達さんが出て行ったら、この二人はすぐに帰そう。そんな俺の優しさはわりと意味が無かった。

 

「失礼致します、書類を取りに参りました…や、これは仲達様」

「ん、張任か」

「「」」

 

アカン。この取り合わせだけはマジあかん。

「どうされたのですか、仲達様」

「一刀様がお茶を御所望だ。給湯室へ行ってくる」

「ああ、そのような些事は私がやりますので、仲達様は一刀様の御側へ…む、この絡繰りは何でしょうか?」

「それは李典殿の発明された斯く斯く云々だ」

「あ、そや張任はん、仲達はんの代わりにこの二人に質問してんか?」

「「」」

 

やっちまった。この二人にですか、と言いながらちらりと見たようで実は睨んでいた。はっきりぎっちり殺意を持って睨んでいた。

「そうですか、この二人には是非問い質したい事がありました。…申し訳ありませんが、御無礼も考えられますので旦那様は席をお外し頂けますでしょうか」

「ちょっと待とうか晶(張任)!」

質問するのに何故晶(張任)が刀の鯉口を切る必要があるのかは敢えて突っ込まない。

「いえ、旦那様の御名誉の為でも御座いますので」

「いやいやいやいや」

二人との間に体を割り込ませ、晶の腰を抱きよせて密着する。

 

「これまだ試作品の精密機械なんだ、真桜はああ言ったけど爆発するかもしれないからまたにしてくれるかな?それよか俺お茶が欲しいな、仲達さんが点てて晶が淹れたお茶が。仲達さんを手伝って来てくれる?」

「…は。旦那様の御命ならば」

顔を寄せておでコツンしながらお願いすると、頬を染めて給湯室へと向かってくれた。

 

その後ろ姿を見送ってさあ今のうちに、と背後の雛里と朱里を振り向くと、二人は俺の服の裾を掴んだまま泡を吹きながら白目を剥いていた。

 

 

 

------------------

 

 

 

 

「…とりあえず二人を蜀の救護室に寝かせて来た」

「あの二人なんか張任さんに弱みでも握られとるん?」

「うん、割と公然の秘密的な弱みを」

「ほーか、やおい好きやったら今更過ぎるからなんやろな?それよか爆発するって何やねん隊長、そないなことなってへんやろ最近は」

「言葉のあやって事で勘弁してくれ。さてどうしようか?」

晶(張任)は書類を持って出て行ってしまったので、部屋には部屋の隅で佇立している仲達さんと俺と真桜だけだ。

 

「(そや、折角やから感度調整するで)」

「(感度調整?)」

「なぁ仲達はん、隊長が仲達さんにも試験して貰いたいゆうてんねん、ちょっと付き合ってんか?」

「…一刀様の御指示でしたら致しますが」

「んー…うん、ちょっとだけやってみてくれる?」

真桜の目配せに乗って、仲達さんにお願いしてセンサをつけてもらう。

けどこれ、結果は大体見えてると思うんだが?この完璧ポンコツ両極端お姉さんは普通の質問には定規で引いた線のように無反応で、俺のことが絡むと途端にびよびよびよっと動揺してくれる人だってのは真桜も知ってる筈だ。

 

「それじゃ腕輪もつけたし、準備良しやな。仲達はんは目ェ瞑ってや?」

「はい」

「(たいちょ、手)」

「(?まあいいけど)」

仲達さんが目を閉じると、真桜が仲達さんの手を握れとジェスチャーで示すのに従って右手を握る。

「あ…」

瞬間、仲達さんの体がピクンと震えて頬に赤みがさす。

それとほぼ同時に、机の方からぺきょっ、と言う金属音が聞こえた。…ぺきょ?

 

 

 

 

「こ…この姉ちゃんっ、針振り切ってへし折りよった!」

悲鳴をあげた真桜の視線の先で、レコーダの針が壁にぶち当たって綺麗に折れていた。

 

 

 

 

 

「予備の針用意しといて良かったわぁ…。仲達はんの振れ幅を最大値に設定して感度調整しよ思ただけやのに」

「安全装置とかついてなかったの?」

「勿論ついとって壊れんようにしとるがな!どうなっとんのやあの姉ちゃんの神経、隊長愛され過ぎにも程があるわ」

困惑し謝罪する仲達さんに、真桜が科学者としてのウチの読みの甘さやと潔く負け(?)を認めて業務に戻ってもらった。

しかし、集めたメンツはこれで大体打ち止めか?(魏の軍師連中は置いといて)

そろそろお開きかな、と思ったところで真桜のよっしゃ直ったという声に扉が開かれる音が重なった。

 

「ご主人様いるー?法律の決裁をねぇ…あ、真桜ちゃんこんにちは!それなあに?」

「あー、桃香さま…に、華琳さま、蓮華さままで。こりゃおもろ…ええところへ」

「取り込み中だったかしら?」

「いえ構いまへんで、例の嘘発見器の試作機が完成しましてん」

桃香は興味津々ですぐ傍までやって来たが、蓮華は部屋の入口で後ずさった。

 

「ねえ、それ…爆発したりしない?」

「しませんわ!」

「蓮華、今回は大丈夫そうよ」

「どうして分かるの?」

「何て言うか…雰囲気で分かるのよ、慣れてくると。あ、これ駄目だわとか」

「華琳さま、ひどっ!」

真桜がむくれるが正直分かる。真桜が自信満々な時、可動部が多い時、モノが大きい時はだいたい危険だ。

 

「ねえねえこの腕輪をつければ分かるの?誰かやってみようよ!」

桃香が明らかにやってみたそうにしているが、んーと少し考えて真桜とアイコンタクトをする。

(桃香だとものすごくあっさり針が振れると思う)

(ものすごく当たり前な結果が出そうやな。蓮華さまならどや)

(なんとなくどう転んでも蓮華が凹みそうな未来が見える)

「(了解)…せやったら、まず華琳さま着けてみてもらえまへんか?冷静沈着な華琳さまやったら試験には最適ですわ」

「私?…まあ、いいけれど」

「うん!じゃあ私たちが華琳さんが動揺するような質問するんだね、頑張っちゃうよ!?ね、蓮華さん」

「え、ええ、そうね…」

「貴女達に出来るかしらね、ふふっ」

華琳は余裕綽々だ、この二人相手に華琳ならまあ結果は推して知るべしだろう。

 

 

 

 

「それじゃ準備完了だね。じゃあ、第一問っ」

「やっほー♪一刀いるぅ?…あら蓮華達も。何してるの?」

 

「急用を思い出したわ、悪いけどこれで失礼するわね」

雪蓮の顔を見た瞬間に無表情になり速攻でセンサを外す華琳。うん、この後の展開超読めるから仕方ないね。

「あ、雪蓮姉様…実は斯く斯く云々で」

「あら面白そうねぇ折角だからやっていきましょうよ華琳ちゃん、華琳ちゃーん?しぇれん、かりんちゃんと遊びたーいぃー」

「五月蠅いわね忙しいのよ私は忙しい忙しいああ忙しい」

すたすたと部屋を出ていく華琳をニヤニヤしながら追うように雪蓮も出て行ってしまった。

 

ぽかーんと見送る桃香とは対照的に、最近あの二人仲良いのよね、と羨まし気に蓮華は呟いた。

俺には雪蓮が華琳を煽ってるようにしか見えなかったが、事実を教えて蓮華を汚す気はさらさらない。

と言うか最近ネガり方が異常な事があるのは気にはなってはいたのでもう少し蓮華に構おうと心に決める。

 

「えーっと…じゃあ折角だから私つけるねっ?」

「え、ええ、そうね」

「私だってなんだかんだで王様長いんだからね、どんな質問だってどんとこいだよ!」

ムフーンとドヤ顔キメてセンサを巻いた桃香を取り囲むのは蓮華、真桜と俺の三人。

 

 

 

 

…と、部屋の入り口から背を向けて座っていた桃香は思っていたんだと思う、実際ついさっきまではその通りだったんだが。今はヤバい笑顔の軍神が無言で足音を消して部屋に入ってきたのを見て三人ともが全てを愛紗に任せよう、とアイコンタクトで意思統一し蓮華は余り油を売っていては穏に怒られるわと言ってそそくさと逃げ、もとい帰っていった。

 

 

「それでは質問します」

「ひゃ!?この声、あ、愛紗ちゃん?」

「いいえ桃香様の一介の部下ですがそんな事はどうでもいいです」

そういいながら背後からがしっと桃香の両肩を掴む蜀の軍神様(仕事モード)。まあ軽く掴んだだけでも桃香の力で振り切れる事も無いんだが。

「第一問です、『今日の昼迄に決裁してくださいね』とお願いしていた書類は全て決裁して頂けましたね?」

「い…いいえ…」

「庁内書式統合部会にもつまんないから等という理由で部会長の桃香様が欠席したりしませんでしたね?」

「い、いいぇ〜…」

「三時から蜀の予算編成会議もサボろうとか考えてませんでしたか?」

「あれそれ今日だっけ!?あ、ううん勿論覚えてたよいいえ!」

「では四時からの会議もすっかり忘れて流琉や月とお菓子作りの約束等していませんね!?」

「あ、あうぅ…」

「おまけに折角明日は二人の番ですから、お揃いの首輪と手枷足枷を持って行きましょうねって約束したのに封も開けずに箪笥の奥にしまいっぱなしだったりしてませんよねっ!?」

「そんな約束はしてないよ!?」

「問答無用、さあきりきり仕事に戻りますよ!月と流琉とのお菓子作りは幸い時間が空いているので代わりに私が行っておきますね」

「それはちょっと待とうか愛紗」

 

 

桃香の首根っこを掴んで引きずっていく愛紗を説得(軽く二揉み)してBC兵器製造祭りはなんとか回避したが、『では明日は…(激しいのを)期待していますよ』と頬を染めながらハードルを上げられた。とりあえず桃香を縛ったりするのはかわいそうだから『洗脳プレイ』ってことにして愛紗を緊縛放置して桃香といちゃつけばいいかと算段を巡らす。

 

 

愛紗がぱたん、と扉を閉めるのを見送って残った真桜と顔を見合わして会議机の席に腰を下ろす。

「まあ今日はこんなもんか?基本、ちゃんと動作はしてるみたいだし。ほんと凄いよな、真桜は」

「そやろ?もっと褒めたってええんやで」

「よっ真桜様仏様、21世紀を作れる唯一のいい女」

「へっへー」

にいっと笑うと、はぁーっと大きく息をついた表情が妙に色っぽい。

 

「でも折角やから、他のセンサも試しとかんとな」

言いながら、膝の上に向き合う形で座って抱き着いてきた。んーっ、とひとしきり抱きしめられた後、俺の手を掴んでその水着様のブラの下に導く。

「んっ…な、隊長の右手センサ。うちドキドキしとるの、分かる?」

「分かるよ。ほら俺のだって」

抱きしめる右手を解き、同じように俺の左胸に添わさせる。

「…分かるけど、うちのよかゆっくりやで。うち隊長に発明褒めてもらうんホンマ嬉しいんや、ビンビン来とんねん」

「知ってる」

真桜に自覚があるかは分からないが、発明の報告を受ける時は必ず二人きりだ。そして成功を確認出来た時は工場だろうが屋外だろうが大体してる。もっと強うしたってええんやで、という吐息交じりの囁きに蠢かせた右手に少し力を込めながら唇を合わせた。

 

息が苦しくなるほどに絡めた舌を漸く離すと、微笑を浮かべながらガチャガチャと器用にベルトを外していく。

「なあ、うちのこと好き?」

「好きだよ」

「ほんま?」

「ほんまほんま」

「なら、『うちの』?発見器で検査したるから…覚悟して、やぁっ…んぅ…」

一度腰を浮かせてから、ゆっくりと沈めながらとろけていく彼女の表情が愛おしい。

 

よしこの可愛過ぎる発見器壊そう。

そう思いながら、真桜のお尻を引き寄せた。

説明
お久しぶりで御座います。実は生きていました…

ここ数か月書けない環境だったのですがまた戻って参りまして、遅筆にも程がありますがちまちま書いて行きたいなと思っております。
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コメント
真桜ほんま最高やな〜wでかぱいやし身体えろいし便利やしw更新速度上がってくれると嬉しいやで〜〜〜(よしお)
華琳w(テルル)
毎回楽しみにさせて頂いてます。仲達さんはぶれないですねww(味野娯楽)
雪蓮そろそろやめてあげようぜww(オレンジ)
待ってました! 仲達さんそのうち血圧上がりすぎて血管破裂するんじゃあなかろうかw(nebusoku)
華琳は我が王、異論は認めない(おこめさまだっこ)
途中まで誰だこいつと思ったら何時もの愛紗だったwww(happy envrem)
嘘っていうか動揺発見器だよこれwww(悠なるかな)
面白いです、応援してます。(宇和)
恋姫版ドラキュラ裁判かw(飯坂裕一)
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