提督の恋愛と欲求に関する事例 〜若しくは艦娘との愛ある日常〜
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提督の恋愛と欲求に関する事例 

〜若しくは艦娘との愛ある日常〜

 

【如月の電探(下)】

 

《7:温泉》

如月が悩んでいるのを困っているんだと勘違いして司令官は浴室へ。

ハードルが上がっちゃった気がするわ。

好きな女の子のサイズが好きなサイズ…確かに司令はそう言ってた、じゃあ、今の

好きなサイズは私のサイズ!

…村雨ちゃんは最近、大きくなって良いなぁ。

腰に手を当ててお嬢様風に高笑いをする村雨ちゃんが頭に浮かぶのを振り払う。

「自信を持って如月!」

自分で自分に喝を入れて浴室に向かう、司令官の脱いだ服がこれから何をする

のかを教えてくれてるみたい、如月も服を脱ぎ下着姿で髪を手早く結い上げる。

女の娘の最後の砦を放棄してタオルを纏う。

いよいよね…大きな深呼吸をして、そっとドアを開けるとカチャッという音に反応

して司令官の声が響く。

 

 

「…如月?」

「あ…あの司令官、如月も、お…お風呂頂きに来たわ…入って良い?」

「…あ、ああ、良いよ、おいで」

「でも…ひとつ約束して?」

「約束?」

「がっかりしないでね」

「何が?」

「しょんぼりしないでね」

「如月、ふたつになってるよ?」

「…約束して」

「解った、約束するよ」

その言葉に背中を押されるようにタオル一枚で浴室に入る。

視線が突き刺さるみたいで恥ずかしくて司令官の顔を見られない、顔を伏せた

ままで動けなくなった私に司令官は湯槽の中から優しく命令してくれる。

「如月、来て」

「は、はい」

まるで導かれるように手を伸ばせば触れ合える、そんな距離まで近づく。

「お顔あげて」

顔をあげると司令官の逞しい身体が目に入り慌てて横を向く。

「タオルを取って」

「!?」

「取って」

「は、はい、司令」

一瞬、驚いたけど抵抗する事を不自然に感じた、迷いも躊躇いもなく手を後ろに

組む、自然とタオルは如月の足元に落ちる。

 

タオルの落ちる小さな音が銅鑼のように僕の頭に鳴り響く。

今の僕の感情をなんと表現すればいいのだろうか、感動?感激?

後ろ手を組み、朱に染まった顔を横に向けた如月が生まれたままの姿で僕に

全てを晒し立っている、そんないじらしい彼女の為にお風呂に細工をする。

「如月、湯槽を見てごらん、僕は目を瞑っているから」

「は、はい…あぁ、これって!」

「アメニティにあった濁り湯の素だよ、これなら平気だろ?」

「ありがとう!司令!」

掛け湯のあと、小さな水音を立てて如月が湯船に浸かるのが解った、音、水の振動

、空気の揺れ、僕には何故、電探やセンサーが無いんだと思った。

「目、開けていいかな?」

「はい!」

目を開けると肩まで湯船に浸かった如月の笑顔が目に飛び込んできた、どちら

からともなく腕を伸ばし手をつなぐ、もちろん指を絡めた恋人つなぎだ。

「…如月」

「司令官…」

何を話せばいいのか解らない、話したい事、聞いて欲しい事、知って欲しい事、

たくさんあったはずだ、でも胸がいっぱいで何からお喋りしていいのか解らない。

「ねぇ司令官、キスしましょ?」

繋いだ手をアンカー替わりにして軽い水音を立て如月が僕の胸に接舷する、

胸元に両手を当て体を乗り出すようにしてキスしてくる。

「ん…んっ?…んっ…?」

如月の何かを求めるようなキスは僕を昂ぶらせるには十分だ、彼女も自然と昂ま

っているのだろう僕に躰を擦り付けて来る、甘く香る体臭、すべすべした白い肌と

柔らかい躰に男の嘘をつかない正直な部分が反応し始めている。

「ちょっと待って如月」

「いやぁん?待てないぃ?」

「お願い、これだとまずいっていうか…」

「にゃあん?しれぇ?にゃおん?」

如月にネコミミが生えて目がハートになっている幻覚が見えた。

仕方がない、男の身体の仕組みについてならいつか誰かに教わる事だ、

ならば今、僕が教えてあげたい、必要なのは僕の覚悟だけ…だと思う。

「如月、手を貸して」

「?なぁにぃ?」

「あんまりビックリしないでね」

片手を如月の背中に回し、空いた片手で彼女の手を自分自身の昂まりに導く。

「く…うぅっ」

如月の手が触れただけなのに電撃のような快感が奔る。

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《8:授業》

「?…?…ええっ!こ、こ、これって!!」

頭の中のピンク色のモヤが晴れていく。

司令官の…その…『アレ』なのよね、おっきくて、固くて、熱くて、なんだかスゴイ。

触っても良いのよね…ちらっと見ると司令はコクリと頷く、両手と指で形を確かめる、

司令官のだから丁寧に優しく痛くしないよう。

根元の丸いのを掌でそっと揉んでみたり。

くびれた部分に人差し指を優しく這わせてみたり。

ツルンとした先っちょを親指でゆっくり撫でてみたり。

「ダメだ!如月、お願い!」

苦しそうな司令官の声に思わず手を離す。

「ご、ごめんなさい!痛くしちゃった?」

「…ごめん…そうじゃない…」

 

 

そのあとお風呂の中で司令官をソファーにしてオトコノコの仕組みを教わる。

『二人の為に絶対に必要だから』って誤魔化したりせずに。

知ってる事、初めて聞く事、如月が理解するまで丁寧に教えてくれる、ちゃんと

質問にも答えてくれる。

「じゃあ、おっきくなったってことは如月が『魅力的』だってこと?」

司令官は照れ臭そうに「そうだよ」って笑って頷いた。

「じゃあ、がっかりもしょんぼりもしてないのね?」

「…あぁ、そういう意味だったのか」

「だって男の人って、おっぱい大きいほうが…」

「一つの選択基準だとは思うけど絶対じゃないよ」

「五十鈴さんとか村雨ちゃんとか潮ちゃんみたいなのが…」

「そういう人もいるけど僕は如月のが一番好きだよ」

「ほんと?」

「ほんとだよ」

「本当にホント?」

「本当だって」

司令官を疑うわけじゃない、けど…言葉じゃなく行動で教えて欲しい。

だから、司令官の手を掴んで自分の胸にあてがう。

「じゃあ、如月のおっぱい、可愛がって証明して?」

 

如月の大胆な行動に驚く、好奇心旺盛な娘だから詳しい知識を与えたのが逆に

刺激になったのか、だが間違いなく魅惑的な提案だ、了解の印に頬にキスする。

「優しくするからね」

そう囁いてから、乳房全体を軽く包み優しく揉むが、やはり如月はくすぐったがる。

「ん? やん…きゃはっ?」

「お願い如月、じっとして」

「だってぇ?」

「『好きな人に揉んでもらうと大きくなる』って言うよ」

「本当!じゃあ大好きな人なら絶対ね!」

苦笑しつつも如月の魅惑的なバストに集中する、丁寧に解すように愛撫すると、

徐々に如月の声が甘い響きに変わっていく。

「ん?やっ?あっ? なぁにこれぇ?」

「気持ちいい?如月」

「うん?でも、先っぽせつない?」

如月のピンと固くなった乳首を親指と人差し指で転がす、ちょっぴりだけ強めに。

「いやぁっ?はぁっ?ピリピリって?」

如月の首筋に強くキスして、キスマークを僕のマーキングとして残す。

【「如月のおっぱいは感度いいね、大好きだよ」】

「ホントぉ?ホントにぃ?」

【「うん、すごく僕好みだ」】

「うれしいぃ?」

【「これ我慢できない、セックスしたい」】

「如月もしたいのぉ?しれーとせっくす?」

思わず愛撫の手が止まる、もしかしてアレか。

「如月?」

「なぁに?」

「僕、なんて言ってた?」

「『如月のおっぱいは感度が良い、僕好みだ、せっくすしたい』って」

…この悪癖の救いは嘘を言えない事だが、ここまで明け透けなのも我ながらどうかと

思う、だが本音を知られた以上は色々言い繕うのは却って如月に失礼だ。

「ごめん、いまのが僕の本音だよ、好きな女の娘とは…したくなるのが男なんだよ」

「如月も、女の娘もそうよ」

如月は僕の手を彼女の柔くて敏感なオンナノコの部分に導く、大胆すぎるその

行動に目眩を覚えるが、如月のその部分に触れると指先にお湯とは違う液体の

存在を感じた。

「ね?わかるでしょ?」

そのまま指で滅茶苦茶に掻き回したい強烈な欲望との戦いになんとか勝利する。

僕と如月は本当に求めあっている、改めて実感した。

如月と結ばれる事への抵抗は僕にはもう無い、無言でありったけの想いを込めて

如月を抱きしめる、如月も僕の胸に顔を埋めてうっとりと脱力している。

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《9:準備》

お互いの身体を洗ったりして戯れていると時間を忘れる、二人とも危なくのぼせ

そうになりお風呂から上がる。

体を拭いたり髪を乾かしたり、風呂場の延長のように戯れる、如月が下着を着け

終わったのを見定めてお姫様抱っこで抱き上げてあげる。

如月は恥ずかしいのか「もぅ、司令官たら?」と声を上げるが抵抗しない、むしろ

手をしっかり僕の首にかけて離さない。

自然の風が恋しくなり部屋の窓を開け放つ、秋の涼しい風が風呂上がりの

火照った身体に心地いい。

 

 

だが、僕はある事に思い至る、あまりの展開に今まで失念していたが避妊具を

持っていない、これは男性の責任と作法のうえで重要な問題だ。

でも、これから買いに行くのは間抜けな話だ、学生の頃は財布に入れて得意

がったりしたものだが、そんな恥ずかしい事は今はやらない。

如月が持っている可能性は無い。

そうすると『(何も)しない』という選択肢がある、このあと二人で眠るだけなのは

僕も如月も不完全燃焼だ、そしてもう一つ『(着用)しない』という選択肢が存在

するのだが…

腕から降り、冷蔵庫を開けた如月が尋ねてきた。

「司令官、ジュース頂いて良いかしら?」

「良いよ、僕もコーラでも貰おうか」

「ビールもあるけど?」

「ぼくは下戸だからね、知らなかっただろ?」

「鎮守府じゃお酒の席、少ないものね」

そう言いながらぼくをニコニコと見つめる如月。

「どうしたの?」

「ふふ♪如月しか知らない司令官、みつけちゃった♪」

如月の隣に座って思案する、最後の選択肢の事をどう伝えたものか。

「そういえば…鳳翔さんが、これ司令官に渡してって」

そう言って如月が差し出したのは煙草の箱くらいの紙包みだ、訝しんで開くと

入っていたのはカラフルな小箱に「オカモト」の文字… 6個入りのやつだ。

…僕の脳裏に口元に手を当て「ウフフ」と含み笑いをする鳳翔さんが浮かぶ。

思わずこめかみに手を当てるが、ここは素直にお礼を言っておいたほうが良さそう

だし『お母さん』と慕われる鳳翔さん公認とも言えるわけだ。

 

「如月、それ何か知ってるわ」

如月がジュースを飲みながらベッドに座る、少し取り乱したが知っているなら隠す

必要はない。

「鳳翔さんも艦『娘』だってことか…」

僕は枕の下に箱を置く、隠す気はないが経験からそこがベストの一時保管所で

あるのは知っている。

 

気を取り直して如月のカップを手に取る。

「僕が飲ませてあげようか?」

勘の良い如月は意味を察したようだ、コクリと頷きお祈りするように両手を胸の前

で合わせて顎を上げる、彼女の喉にカップの中身を少しづつ口移しで送り込む、

コクンコクンと白い喉が上下し飲み込んでいくのが解る。

唇を離すと透明な糸がツゥッと引いてフッと切れる、如月は顔を赤く染めて夢見る

ような表情、口は緩んで半開きだ、とても可愛い。

「…美味しかった?」

「ちょっと待ってて」

空調を効かせ窓を閉める、カーテンを閉める音が妙にするどく響く。

「如月…いいかい?」

「はい、お願いします?」

「優しくするけど怖かったり痛かったりしたら言って」

「大丈夫、司令がしたい事は如月がして欲しい事よ」

「下着、取るね」

「如月しか知らない司令官、また教えてね?」

プチッというホックを外す音、小さなショーツを脱がせ丸めて枕の下へ。

彼女を隠しているものはなにもない。

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《10:事後》

横になった司令官がうつ伏せの私の背中からお尻を優しく撫でてくれる。

くすぐったくはないし落ち着く、だからそのままにしておく…だって如月、もう

司令官のものだもの。

それにあんなに恥ずかしかったのに、司令官とせっくすしたら裸を見せるの平気

になっちゃった、不思議だわ。

 

 

如月を撫でていた司令官の手が背中を逸れて脇腹をくすぐる。

「ヒャン!」

やだ!変な声出ちゃった。

「もぅ、司令官たら、ホントに?」

司令の胸の中にコロンと転がって入ると司令官が抱きとめてくれる、おでこへの

キスがくすぐったい、とっても楽しくて幸せ、こういうの新婚気分って言うのかしら?

如月も司令官の大きくて逞しい背中に手を回してサワサワと撫でていると肩甲骨

のあたりで司令が一瞬、顔をしかめる。

「どうしたの?司令?」

「何でもない、如月が気にする事じゃない」

手を見ると、うっすらと赤いものが…血!

「これって…如月が背中を…」

司令官は私の頭を胸の中に抱きしめて優しく囁く

「平気だよ、名誉の負傷みたいなもんだ」

漫画とかお話の中でこんなのを読んだ事ある。

「…ごめんなさい司令」

「如月はわざとやったんじゃない謝ることない…だろ?」

「それはそうだけど…」

「唾でもつけときゃ大丈夫だって」

背中にどうやって…そう思ったとき、素敵なアイデアがひらめいた。

「じゃあ、司令官うつ伏せになって、如月が舐めてあげるわ!」

「え?!」

「唾つけておけば大丈夫なんでしょ?」

「いや、あれは言葉の綾っていうか…」

しどろもどろの司令官の背中に回り込んで傷を舐めてあげる。

所在なげにモソモソしてた司令官も暫くすると心地よくなってきたのか大人しく

なる、怪我をした子猫と舐めて治しあげるお母さん猫みたい。

司令官の背中に滲んでいた血が消えるまで、痛くないように心と愛を込めて丁寧に

舐めとってあげる。

 

不思議と背中の傷の痛みはもう無い、如月のおかげだ。

「ねぇ、司令官、まだお泊り残ってるのよね?」

「そうだな、明日もう一泊して鎮守府に帰る予定だ」

「じゃあ、明日は一日デートしましょ?」

「僕もそう思ってた、なんだか順番が逆だけど」

「いいのいいの、細かい事は」

ベッドライトの柔らかい灯りの中でそんな会話を交わしながら、僕も如月もまだ下着

すら履いていない、一つの毛布に包まっているのが楽しくて心地良い。

「じゃあ、明日は『司令官』って呼んじゃあ雰囲気ないわね」

「如月の好きなように呼ぶといいよ」

「『あなた』とか『旦那様』っていうのは?」

「それは色々と問題があるんだよ」

「司令官のけちぃ」

「そのへんは明日にして今日はもう寝ようか」

「はぁい♪」

僕の腕に如月が頭を乗せる、はにかんだり微笑んだりするのが可愛い、おやすみ

のキスをして照明を落とす、如月の頭の重みが心地いい。

なんとなく眠るのが惜しい気もする、しばらくすると如月が話しかけてきた。

「司令官、なんだか眠るのが惜しくて」

「うん、僕もだ」

「そうだ、なにかお話して?如月が知らない司令官の事」

「子供の頃の話でもいいかな?」

「うん!そういうのが聞きたい!」

「むかしむかし、あるところに…」

「そういうのはいいから」

結局、如月に求められるまま子供の頃の由無し事を話し始める。

記憶の全てが正確なわけじゃないし、思い出の全てが綺麗なわけでもない。

誰にでも話したくない事、思い出したくない事はある、そういうものだ。

でも如月は僕をもっと知りたがってる、僕も如月にもっと知って欲しい、そう思った。

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《11:顛末》

鎮守府に帰ってきた。

数日しか空けていなかったのに、何週間ぶりで帰ってきたような気がする。

正門をくぐってある場所で二人とも足を止める、最初に如月と出合った場所だ。

如月と二人で感慨にふける、どちらからともなく手を繋いでいた。

「質問してもいいかな?」

「なぁに?」

「いつからだったの?その…僕の事を…」

「好きになったか?」

「うん」

「ここで出会ったときに司令官から反応があったの」

「反応?」

「如月のハートの電探に強い反応が…司令官は?」

「同じだよ、あの時は解らなかったけどいま思えば一目惚れだよ」

如月が繋いだ手をギュッと握る。

「司令官…如月のことずーっと、お側に置いてくださいね?」

僕は如月の手を握り返し答える

「もちろんだよ、如月」

 

 

その夜、如月と二人で居酒屋鳳翔に顔を出す、比叡と五十鈴も呼んである。

「お帰りなさい、提督」

「おかえりぃ、提督♪」

「おかえりなさい、司令」

「あぁ、ただいま」

「「「如月ちゃんは?」」」

カウンターに如月と並んで腰掛けるや三人が異口同音に尋ねてくる、意味合い

はやや違うようだし五十鈴はもうほろ酔いだ、顔が赤い。

「いや、横に居るだろ?」

「提督、そうじゃなくてぇ〜」

「そうですよ!司令!」

なるほど、艶っぽい話を期待しているのか、鳳翔さんが差し出したおしぼりで手を

拭いながら、すげなく答える。

「なんで君らにそんな事を話さなきゃならんのだ」

「いえ、私は無事、合流できたのかお聞きしたかったんですが」

「はい、鳳翔さん、素敵なお土産も一緒に」

「うふふ」

想像通り、鳳翔さんは口に手を当てて含み笑いを浮かべてきた。

「…で、あまり愉快ではないお話をしなくちゃなりません…鳳翔さん」

「…承知しております」

鳳翔さんの顔つきが険しくなる、なるほど、処罰は覚悟の上というわけか。

「でも、僕には事を荒立てるつもりはありませんし」

「はい?」

「お世話になったのは間違いないんで、礼を言うに留めておきます」

「いいんですか?」

「まぁ、見方によれば脱走幇助とも取れますね」

「そうですね…」

「司令官の許可無く、艦娘を鎮守府外に『脱走』させたと」

「だが、そこを追求すると如月に会ったとき帰投させなかった僕も同罪です」

「まして自分の手元に引き止めてますからね、何をかいわんやですよ」

「結局、今回の事態を招いたのは他ならぬ僕自身なんですよ」

「それに『お母さん』と慕われるあなたを処罰するのは正直、怖い」

「反感やモチベーションの低下で鎮守府の機能不全の可能性も見えます」

「それは些か考えすぎでは…」

「司令官として今回のケースでは可能性があると考えます」

「とにかく、誰にも迷惑はかかってないですし、組織の秩序の為にする処罰なら

しなくても良いというのが僕の本音であり結論です」

「…全てが在るように在れ、ですよ、そういう事です」

鳳翔さんが胸を押さえて小さくため息をつく、やっといつもの顔になった。

「大本営は艦娘と提督が『親密な関係』になる事に是とも非とも言っていない」

「おそらく、艦娘という『兵器』の特殊性による運用と実際の乖離が生じるのが

解っているからこその『無回答』でしょうね」

「『責任取れるなら好きなようにしろ』という事だと思います」

「艦娘は『兵器』と割り切るには個性的だしチャーミング過ぎますよ」

「実際の話、いずれ公に認められるとは思いますがね」

「そうなれば良いですね、本当に」

「ええ…それはそうと良い機会だから聞いて欲しいんですが」

「なんでしょう?」

「実は僕は下戸でして、それでここには足が遠かったわけです」

「あぁ、そういうことでしたか」

「呑めない者が酒場に入るのは不調法かと思ってですね」

「そんな遠慮は無用ですよ、今後はご贔屓に」

「しれーかーん!たすけてー!」

鳳翔さんと話し込むうちに如月が酔っ払い隊長の尋問モードに捕まっている。

鳳翔さんに軽く手を挙げ如月を助けに行く。

 

「如月ちゃんお帰り」

司令官と鳳翔が込み入った話を始めたようなので如月は軽い気持ちで二人の

間に席を移す、狼の檻に羊を放つようなものだ。

「比叡さん、ご迷惑おかけしました!」

「なんのなんの、背中押した甲斐がありました!」

「はい、ありがとうございます」

「き〜さ〜ら〜ぎ〜♪」

「はい!五十鈴隊長にもその節は大変お世話になりなんとお礼を言って良いか…」

「遠征から帰ってきたら戦果報告ね♪」

「五十鈴隊長、酔っ払ってますよね」

「大丈夫よ!うふふ、どんな『戦果』が聞けるのかしら♪」

「そこは私も聞きたいんです、如月ちゃん」

「比叡さんまで!」

「いや、興味はあるわけでしょ誰でも」

「それともなんの『戦果』も無いの?あららぁ♪」

「そんなことないです!『大戦果』です!」

しまった!という顔をする如月に言質を取ったとばかりに詰め寄る五十鈴。

「で、どうだったの?如月?」

「…明日じゃダメですか?」

「『大戦果』だったのよね?如月?」

「…一緒にお風呂入りました…」

「如月ちゃん、よっしゃあー!」

「どっちから誘ったの?ねぇ?」

「し…司令官ですけど…如月もご一緒したかったから」

「司令やるぅ、けだものぉ!」

「脱がせっことかしたんでしょ?如月?」

「そういうのはしてませんけど…」

明らかに五十鈴と比叡のテンションが下がる。

「…比叡、気を取り直しましょ」

「…そうですね、ここからの盛り上がりは如月ちゃん次第です」

「もうやぁだぁー!」

「もちろん、裸で入ったのよね?如月?」

「水着とか持ってなかったです…」

「如月ちゃん、わかってるぅー」

「洗いっことかしたのよね?如月?」

「し、しましたけど…」

「きたぁぁぁ」

「何処まで洗ったの?如月?」

「ぜ…全身ですぅ!」

「全身じゃ解んないでしょ、提督のお子様は洗って差し上げたの?」

「しれーかーん!たすけてー!」

 

「はいはい、そこまでだ」

「しれーかん!」

本当に司令が王子様に見える、意地悪な姉と継母から救い出してくれる王子様。

「お前ら、息ぴったりだったな、練習でもしてたのか?」

「これが女子力ってやつです!」

ガッツポーズで断言する比叡さん。

「それ絶対違うぞ、それに二人ともパワハラで営倉に招待されたいのか?」

「いえ、すいませんでした、如月ちゃんごめんなさい」

「ちょっと、興が乗って悪ふざけが過ぎたわね〜♪」

「如月もバカ正直に答えなくてよろしい」

「え?如月ちゃんが話を合わせてるんだと思ってました」

「とっさに頭が回らなくって…」

「ていうことは…」

ふたりの視線、いえ鳳翔さんも入れて三人の視線が司令官に集まる。

「「「ホントに提督(司令)が『一緒にお風呂』を誘ったんですか???」」」

「如月が誘うのは不自然極まるだろ?」

「…まぁ、それはそうですね」

鳳翔さんは事実確認がしたかっただけみたい、煮物の仕込みを続ける。

「提督って未経験じゃなかったんだぁ〜♪」

「いや、人並みくらいにはあると思うぞ、ていうか失礼だぞ」

「司令って意外と優男ですね」

「褒め言葉と取っておくよ、じゃあそろそろ帰るか?如月?」

「はい」

鳳翔さんには申し訳ないけど、もう限界だわ。

「鳳翔さん今日はこれで、二人ともお先に」

「また、お待ちしております」

「解りました司令」

「リア充爆発しろ〜♪」

でも、帰る前に司令官が比叡さんと五十鈴さんに話しかける。

「比叡、君に言われなければ僕は自分に正直になれないままだったと思う」

「君の言うとおり『誰かを好きでいる』のは良い事だ、ありがとう礼を言うよ」

「はい!どういたしまして!」

「五十鈴、如月が特に世話になったそうだね、僕からも礼を言っておく」

「まぁ、それも隊長のお仕事ですから♪」

司令官はハハッと笑って「如月、帰ろうか」と声をかけてくる。

私も一緒に居酒屋鳳翔を出る、お月様の下、二人並んで歩く。

「エライ目に遭ったな如月」

「もう!そのお話はしないでくださいよ!」

自分でも赤面してるのが解るくらい顔が熱い。

「酔っぱらいなんて嫌いよ、司令官がお酒呑めなくて良かったわ」

「どうだい?気分直しに少し散歩でもするかい?」

司令官からの願ってもない申し出が素直に嬉しい。

「はい、如月、喜んでお供します」

 

散歩といっても、この時間になると外出するにも手続きが面倒だ。

だが鎮守府の中にも、この季節に打って付けの場所がある、環境保全の目的で

軍港の隅に砂浜と小さな潮だまりが残されている、砂浜の長さは50メートルほど

と言うほど広くないが屋外レクリエーションの場所として活用されている。

ちなみに朧はここの常連だ。

「大丈夫かしら?」

「何がだい?」

夜は少し冷える、如月に僕の上着を掛け、隣に座りながら尋ねる。

「もし青葉さんにでも見られたら…」

「いいネタになるな 『駆逐艦と司令官の熱愛、深夜の逢瀬』ってね」

「もぅ、他人事みたいに言わないで」

「青葉と今度話してみるよ、彼女だって話せば解る」

「はい、司令官がそう仰るなら」

如月が頷いて、僕に同意してくれる。

「如月、おいで」

僕の隣で立っていた如月の手を掴み、グイと引っ張って膝の上に抱き寄せる。

「やぁん、司令官たら、もぅ?」

「良いかい、如月?」

「ええっ!寒くはないけど…お外で?」

主語を省いた僕も悪いが、あまりな勘違いだ、さすがに苦笑する。

「違うちがう、キスしても良いかってこと」

夜目にも真っ赤になった如月が発する言葉も無くして僕の胸をぽかぽかと打つ

「ごめんごめん、ほんとに、僕が悪かったよ」

如月の両手を封じて半ば強引にキスしてしまう。

唇を離すと僕の唇と如月の小さく可憐な唇の間に月明かりに煌く糸。

「今度、本当にしてみないかい?お外で」

ほとんどは戯言とちょっぴりの本気で胸の中の如月に問いかける

「…司令官がお望みなら、如月は…」

如月が僕の胸に顔を埋めて小さな声で囁いた。

 

《了》

説明
・サブタイトル「如月の電探(下)」
・前回の(上)に続いての下巻です、多少ですが性的な描写もあるので
念の為、R18にしました。

注1:時間軸としては2014年2月14日以前 平たく言えば「ケッコンカッコカリ」実装前となっています。
注2:この「艦これ」世界では外見の如何に関わらず艦娘は「成人」と見なされます。

司令官と如月のお話は一旦、筆を置きますが、ご要望があれば続編や
「補完作」の構想もあります。
拙い文章ではありますが御一読下さりありがとうございます。
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