Triangle Goddess! 第32話「英霊、地上へ赴く」
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 その頃、ヴァルハラでは……。

 

「せいっ!」

「はあっ!」

「とおっ!」

―ガキィィィィィン!

 エルダーを含むアインヘリアルが、ヴァルキリーに見守られながら訓練をしていました。

 アインヘリアルは1日に何度でも戦い続け、大きく傷ついても次の日には全快します。

 こうしてアインヘリアルは「来るべき戦い」に打ち勝つための力を身に着けるのです。

「敵を知るのも大事だが、己を知るのももっと大事だぞ」

「敵は自分自身にあり、とも言うしな」

「当然だ。力に溺れ、欲に飲まれれば己の身を滅ぼす」

「力があっても浮かれないぞ! 俺は! はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

―ガキィィィィィン!

 エルダーとアインヘリアルの武器がぶつかり合い、大きな音がヴァルハラに鳴り響きました。

 

「来るべき戦い、か」

「そうだ、我々の敵たるものに勝利をしなければならん。そのためにも、訓練が大事なのだ」

「……ジーン……ゲルダ……ヴィア……」

「独り言を言っている暇があったら、訓練に集中しろ!」

「あ、ああ!」

 

 こうして、今日のアインヘリアルの訓練は終わりました。

 しかし、エルダーは浮かない顔をしていました。

「俺は、地上に行く事ができるのだろうか……」

「えっ?」

「ああ、今地上には見習いの女神がいてな……。

 彼女達とかつては共に冒険していたのだが、今はこうやって別々の世界にいる」

 エルダーは仲間のアインヘリアルに、地上に三女神がいると話しました。

「へえ、神様と一緒に冒険してたなんて凄いわね」

「この神界にいる時点で、既にそうなのだが……」

「それで、あなたは地上に行きたいんでしょ? でも、神様はそれを許してくれるのかしら……」

「……」

 

「条件付きでならば、地上に行かない事もない」

「スケッギョルド様!」

 そんなエルダーのところに現れたのは、斧を武器とする戦乙女・スケッギョルドでした。

「これより私はジェプトに向かう。お前も来い」

「戦力の増強のためか?」

「それもあるが、そこに我々が退治するべき魔物がいる。それも兼ねて、だ」

「分かった。この任務、必ずや果たして見せる」

「良い心意気だ。では、地上に向かうぞ!」

 そう言い、スケッギョルドとエルダーは地上へと降り立つのでした。

 

「女神様に会えるといいわね」

 

「久しぶりの地上だな」

 エルダーは、スケッギョルドと共に地上に降りました。

 アインヘリアルとして初めて、エルダーとして久しぶりの地上です。

「さて、その魔物だが……それはどこにいるんだ?」

「私が探す」

 スケッギョルドは目を閉じ、精神を集中させました。

 

「……そこか!」

 しばらくして、スケッギョルドは西の方角へ走っていきました。

 エルダーも彼女の後を追いかけていきました。

 

 数分後、エルダーとスケッギョルドは問題の魔物がいる場所に辿り着きました。

「これは、ハーピーか」

 エルダーとスケッギョルドの目の前にいたのは、半人半鳥の魔物、ハーピーでした。

 ハルピュイアと異なり、人間に対しては敵対的な態度を取る事が多いです。

「ここはお前達が来る場所ではない」

 スケッギョルドは、ハーピーに向かって斧を向けました。

 しかしハーピーはそれを見ても動じず、いきなり襲い掛かってきました。

「不意打ちか!」

「だが、そんなものは効かん!」

 ハーピーの足による攻撃を、エルダーは剣で受け止め、その後に剣を振ってハーピーを斬りました。

「パワーブレイカー!」

 スケッギョルドは飛び上がってハーピーを斧で斬りつけ、攻撃力を一時的に減少させました。

 斬られたハーピーはスケッギョルドに襲い掛かりましたが、

 パワーブレイカーの効果によりダメージはありませんでした。

「助かる」

「だが攻撃力を減らしたのは片方だけだ、油断はするなよ!」

「ああ! アーストレマー!」

 エルダーは高く飛び上がり、剣をハーピーに叩きつけ、地に墜としました。

「ゼロファイター!」

 その隙にスケッギョルドが素早い動きで斧を振るい、ハーピーを遠くまで吹き飛ばしました。

 ハーピーはすぐにスケッギョルドのところに戻ってきましたが、ハーピーの前にはエルダーがいました。

「剣閃!」

 エルダーの剣から衝撃波が飛び、それがハーピーに命中するとハーピーは切り刻まれました。

 ハーピーは衝撃波から逃れるために暴れ回りました。

「よし、今がチャンスだ!」

「ゆくぞ! バスタースマッシュ!!」

 スケッギョルドは斧に力を溜め、ハーピーに向けて全力を込めた一撃を放ちました。

 その一撃は受け止める事はできず、敵は身を貫いた衝撃によって体の自由を奪われてしまいます。

 しかし、スケッギョルドの膂力によって、ハーピーは体が動かなくなるまでもなく、

 彼女の斧の前に倒れました。

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「しかし、魔物はこいつしかいないのか?」

 あっけなく倒されたハーピーを前に、エルダーはぽつりと呟きました。

 しかし、スケッギョルドは油断せず、斧を構えたままでした。

「……スケッギョルド? どうした?」

「油断するな、英霊よ。まだ、親玉が残っている……!」

「親玉? 一体なん……」

 エルダーがそう言いかけた途端、

「クェーーーーーーーーーーーッ!!」

 巨大な鳥が、上空から襲い掛かってきました。

「なんだ、この鳥は!?」

「気をつけろ、こいつはロック鳥だ!」

 ロック鳥は、翼を広げると30m以上にもなる巨大な鳥です。

 個体数は少ないながらもその力は強大で「大空の覇者」と呼ばれています。

「ただ大きいだけならば、私の斧で倒せるのだが……」

「問題は、それ以外にあるんだよ、な」

 そう、このロック鳥は大きいだけでなく、非常に素早いのです。

 そのせいで、熟練の冒険者であっても、そのスピードに追い付けず一瞬で肉塊にされる事があるのです。

「英霊よ、この魔物が親玉の可能性が高い」

「行くぞ! 負けるわけにはいかない……!」

 

「クェーーーーーーーーッ!」

 ロック鳥が翼を広げ、エルダーに風のようなスピードで突っ込んで

 爪で切り裂こうとしましたが、エルダーは剣でそれを受け止めました。

 攻撃が通らないと判断したロック鳥はすぐに猛スピードで離脱しましたが、

「アーストレマー!」

「パワーブレイカー!」

 逃がすかとばかりにエルダーが走って飛び上がり、ジャンプして剣を叩きつけました。

 スケッギョルドも斧を振るい、ロック鳥を切り裂きました。

「クェーーーーーーーーッ!」

 ロック鳥は空に上がり、翼を羽ばたかせて風を起こしました。

「くっ!」

「スケッギョルド!」

 エルダーをかばったスケッギョルドは、風の刃によって傷を負ってしまいました。

「これくらい問題はない」

「ああ、そうだな! 多少の傷くらい、どうって事はない! 行くぞ! アーストレマー!」

「クェーーーーーーーーッ!」

 エルダーは飛び上がって剣を叩きつけようとしましたが、

 ロック鳥はそれを回避し、羽ばたきによって起きた風でエルダーを吹き飛ばしました。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 吹き飛ばされたエルダーは地面に叩きつけられ、大きなダメージを受けてしまいます。

 エルダーは態勢を整え直し、剣に炎を纏わせました。

「フレイムソード!」

 エルダーは炎を纏った剣でロック鳥を切り裂きました。

 炎に包まれたロック鳥は苦しみ出しました。

「アクスブーメラン!」

 スケッギョルドは遠くから斧をブーメランのように投げ、ロック鳥を切り裂きました。

 翼を切り裂かれたロック鳥は墜落してしまいました。

 これにより、ロック鳥に攻撃を当てやすくなりました。

 

「相手が速くても、動きを封じれば……!」

「このまま一気に決めるぞ!」

「ああ!」

「はぁぁぁぁぁぁ……流星剣!」

 エルダーは力を溜め、凄まじいスピードでロック鳥を切り刻みました。

 そのスピードのために、軌跡は残像しか残しません。

 この技は体に負担がかかりますが、アインヘリアルとなっているためそれは軽減されています。

「トライアングル・ホーク!」

 そしてスケッギョルドは、疾風のスピードで自らの分身と共にロック鳥を斧で斬りつけました。

 これも流星剣同様、体に負担はかかるのですが、

 スケッギョルドはヴァルキリーなのでそんなものは気になりません。

「クェエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

 アインヘリアルとヴァルキリーの奥義を連続で食らったロック鳥は、跡形もなく消滅しました。

 

「スピードにはスピードで、だな」

「ああ」

 魔物が消えた空を見たエルダーとスケッギョルドは、そう呟きました。

「さて、そろそろ神界に戻るぞ」

「俺はまだ……」

「今はアインヘリアルとして訓練を優先させろ」

「……分かった」

 エルダーとスケッギョルドは、神界へと戻っていきました。

説明
英霊エルダーのターン。なので主人公の出番はありません。
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