魔女狩り
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 その日、僕が見上げた空は青かった。

「先生……」

 そよ風が頬を撫でる。

 どうやら、雨が降ってきたようだった。

 

 それは半年ほど前のことだっただろうか。旅人というにはあまりにも貧相な装備で、先生は村にやってきた。

 行き倒れに近い状態で倒れていた先生の面倒をみたのが僕の両親だった。

 僕は先生からいろいろなことを教わった。先生は遠い都の生まれらしく、僕の知らないことをたくさん知っていた。

 いつしか先生の授業は、僕だけのものではなくなっていた。村の子供たちが集まり、小さな塾のようになっていた。僕らは誰もが先生を慕った。村人の誰もが先生を頼った。先生が教えてくれた方法で、村の収穫は増えた。先生が村に訪れる商人と掛け合ってくれたお陰で、村の収益が増えた。先生が来てから、村はどんどん豊かになっていった。

 僕たちにとって先生は、なんでもできる魔法使いだったのだ。

 

 とても平和で、輝いていた日々だった。そんな日々に終わりをもたらしたのは、ある日突然やってきた異端審問官だった。

 となり村から、先生を魔女だという告発があったらしい。

 そうして先生は大勢の兵士に囲まれて、どこかへ連れて行かれてしまった。

 先生は、大丈夫、すぐに戻ってくる、と笑っていた。

 それから程なくして、先生が魔女として処刑されたと、商人たちの噂で聞いた。僕らの魔法使いは、魔女と呼ばれて死んだのだ。

 

 その日、僕が見上げた空は青かった。

「先生……」

 そよ風が頬を撫でる。

 先生は、本当に魔女だったんですか?

 僕には本当のことは何もわからない。ただ、頬を流れる涙は止まることはなかった。

 

説明
この世界を、未だ数匹の亀と象が支えていた時代。
霧は濃く、森は暗く、神秘と信仰と迷信は絶えず、ただ空だけはどこまでも高かった頃。
忘れられた、彼らの物語。
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コメント
……なぜか涙。(アイン)
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中二病 死者物語 

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