故郷を臨む |
説明 | ||
天を支えると大言し 自らの座所として神聖皇帝が造った塔は半ばから折れ 星空が落ちたかのような灯りを振り撒いた街もいまや湖の底。 蜘蛛の巣のように伸びて旅人を集めた道ももはや水路となり 過去の栄華に水を注ぐ。 両親に手を引かれて旅立った泣き虫の少年なら 故郷の喪失に自失し これを引き起こしたものを恨み 帰る場所を無くした自分を哀れんで泣き叫んだだろう。 旅立った彼の世界は拡張した。 あの頃世界の全てだったこの場所は 広大な大陸と果てしない海原に囲まれた 地図の隅に書かれたたった数文字の文字列に押し込められ 人と物の流れが作る社会と国々のうねりに飲み込まれた。 世の中に満ちる人と思想 主義 哲学 それらが織り成す極彩色の世の中を渡っていれば 自然と俯瞰する目が育つ。 彼の国の行状を外に立って眺めた今 この廃墟を前にしても心に悲しみは浮かんでこない。 ただ ほんの微かな寂しさと遣る瀬なさがたゆたった。 かつての少年はもういない。 高い声が降ってきて 誰より頼りになる相棒が 行く手の安全を知らせてくれた。 そろそろ行こうか。 |
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創作 風景 オリジナル 廃墟 湖 鳥 | ||
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