[恋姫になれなかった英傑達  前編]
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[恋姫になれなかった英傑達  前編]

 

 

 

 

 

―――――正史―――――

 

黄巾の乱。

中国の古代王朝、後漢の領土の東半分を中心に発生した農民達の大反乱。

彼らは皆、黄色い頭巾を頭に巻いていたため「黄巾党」「黄巾賊」「黄魔」と呼ばれた。

合言葉は「蒼天已死 黄天當立 歳在甲子 天下大吉」「中! 黄! 太! 乙!」。

 

正史に刻まれる首謀者は、宗教「太平道」の教祖・張角、並びに兄弟の張宝、張梁。

 

●張角

天公将軍、大賢良師、太平道人、太平道教祖、黄巾党総帥

●張宝

地公将軍、黄巾党総帥代行

●張梁

人公将軍、冀州方面総司令官

 

 

しかし、この張三兄弟は拠点である冀州からほとんど動けずに居た。

では、何故「東半分」でこれ程の大反乱が起きたのか?。

それは、黄巾党でも中核をになった「渠帥」と「大方」によるものだ。

「渠帥」………黄巾党でも「指導者」と称される者。

「大方」………黄巾党の軍勢を束ねる権限を与えられた者。

 

その中でも、特に正史に刻まれる彼らの名は、以下の通り。

 

 

●馬元義

大方。

荊州・揚州方面の兵隊、合計すれば数万人規模の大軍勢を作り上げた者。

その後、帝都・洛陽へ向かい、当時権勢を奮っていた宦官たちでも最高位である「中常侍」の一部を内応させた謀略の将。

 

●張曼成

渠帥。

荊州の南陽黄巾軍総帥。

民衆扇動による挙兵後、南陽太守とその軍勢を攻め滅ぼした者。

南陽を拠点とした後、南方面から帝都・洛陽を脅(おびや)かした将。

自らを「神上使」と称した。

 

 

彼らは共に、帝都・洛陽の攻略を念頭に行動していた者達だ。

しかし、彼らが実際に帝都・洛陽へ軍事行動を起こす機会は無かった。

馬元義は、独自の軍勢を造り上げたが、黄巾党内の裏切り者の密告により、軍を動かす前に、車裂きの刑へ。

張曼成は、南陽を支配したものの、新たな南陽太守の軍勢の攻撃を受け、敗北し、処刑へ。

 

だが………たった1人だけ存在した。

 

帝都・洛陽のある司隷(司州)へ軍勢を向け、あと一歩の所で官軍に敗退した者が。

黄巾軍の中でも、洛陽侵攻を決断した唯一の将が、確かに居た。

 

 

此度の外史は、その者の一世一代の負け戦を、御覧頂こう―――――。

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―――――外史―――――

 

 

赤い髪に、赤い目。

南の人間に多い、褐色の肌。

アタシは、まあ自分で言うのも変だけど、それなりに容姿は整っている。

で、そんなアタシが、クソでエロエロな役人に目を付けられた訳だ。

珍しくも何とも無い話だ。

アタシの村には、クソ役人が居た。

役人は、好き放題だった。

皆が必死こいて作った物を「税」と言う名目で奪いまくった。

そこらの盗賊の方がまだマシだ。

奴らは、端っから「奪う」を生業にしている。

そして…………自慢では無いが、アタシは我慢強くない。

 

?「おらぁッ!」

役人「ぎゃああああーーーーーーーーッッッ!!!」

 

アタシは、腕っ節には自信があるが、考えるのは苦手だ。

そんなアタシが、お偉い御立派な役人様の御威張り行為に、耐えられるはずも無かった。

まあ、そんなアタシと同じ考えで一緒に暴れてくれる奴が、他にも沢山居たが。

アタシの自慢の得物は「斧」。

女だけどさ、腕っ節は村一番。

なので、仕事は山で木を切り倒すのが主。

…………って言うのは、もう過去形だな。

たった今、役人を殺っちまった……ん?。

 

役人「き、きさ、きさまぁぁぁ……わ……わたし、に手を、だ、出して………」

?「へーえ、しぶといねー。いや、ぶくぶく太ったデブな腹のせいかい?」

 

ズンッ、とアタシは、うつ伏せにぶっ倒れた役人の背中に足を乗っけた。

痛みからか、クソ役人の悲鳴が木霊すが、問題は無い。

何故なら…………。

 

村人A「いい気味だぜ!」

村人B「こ、こいつ、よ、弱いだす。こんな奴に、う、ウチらはずっと……」

村人C「姐さん! やっちまえーーー!」

 

アタシの住む村の住人、その全てが今回の騒動に加担している。

 

?「はいはい、判ってるよ。でもお前ら、そろそろ逃げる準備しろよ?」

村人A「わかってるけどよー、せめてコイツの最期ぐらいは…………」

 

皆、覚悟の上だ。

これでアタシらは賊扱い。

バレたらすぐに手配される。

だから、せめて……コイツが苦しんで死ぬ様を焼き付ける。

 

役人「く、くぞぉ…………こ、こんな、げ、下民にぃぃぃ…………」

?「はッ! もう喋るなよッ!」

 

ブンッ、とアタシは斧を振り下ろした。

……グシャ、と、役人の頭を叩き割った。

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後悔は、無かった。

 

 

 

 

 

でも…………世の中は酷い。

 

 

 

 

 

皆で逃げた、森の中を。

皆で逃げた、山の中を。

皆で逃げた、川の中を。

 

 

 

 

 

そして、皆、殺された。

アタシを、残して。

 

 

 

 

 

―――――それが、四年前のこと

 

 

 

 

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張角「みんな大好きーーーーー」

ファン達「てんほーーーちゃーーーーん」

 

張宝「みんなの妹ーーーーー」

ファン達「ちーほーーーちゃーーーーん」

 

張梁「とってもかわいいーーーーー」

ファン達「れんほーーーちゃーーーーん」

 

 

 

?「…………なぜに???」

 

疑問符が多数浮かんだ。

いや、個人的に、張三姉妹の歌は好きだった。

あまり人気は無かったが、明るいし、身体を燃えさせるモノが歌の中にあったから、僅かな金を払ったりはしていた。

他に、娯楽もなかったしねー。

まあ、そんな訳での微妙な面識の元、腕っ節はあるし、同じ女だから、陳留への護衛を引き受けた。

暇だったし。

でも、陳留から移動した村から、急におかしくなった。

増えたのだ、一気に。

張三姉妹の追っかけと信望者が。

 

?「…………」

 

いや、理由は判る。

歌も、曲も、全体の流れも、さらに磨きがかかり、通りすぎる人々が足を止めて見入ってしまう魅了があった。

でも、思わず、頭を傾げて考えてしまう。

 

?「いきなりだもんな…………」

 

都会に出た途端、こうも変わるモノか?。

田舎育ちのアタシには判らない。

さらに、もう1つ判らない事がある。

 

ファン(親衛隊隊員A)「親衛隊長! 次の指示を!」

?「あ、ああ。えーと、そこの機材を第七班の連中と一緒に組み立ててくれ」

ファン(親衛隊隊員B)「親衛隊長! 荷物の搬入終わりました!」

?「うーーんと、それなら会場の警備にあたれ。右側の連中が暴走しそうだ」

ファン(親衛隊隊員C)「親衛隊長! 今回の売り上げ結果が出ました!」

?「そー……それなら、あとで張梁さまに報告すっから、竹簡にまとめたら、三姉妹の部屋の前に置いとけ。……部屋の中には入るなよ?」

ファン(親衛隊隊員D)「し、しん、親衛隊長! か、会場の、か、鏡設置、お、終わりました、つ、次は……?」

?「…………お前は休め」

 

そう、アタシは何時の間にか、張三姉妹親衛隊隊長になっていた。

いや、会場の用意とか、人和さんと一緒に会計の整理してただけなんだけどね?。

…………断れる機会が無かった訳じゃない。

アタシは追っかけでも、信望者でもない。

たまーに、聞いて、楽しむだけだ。

でも…………どうしても抜けられない理由がある。

それは…………。

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ファン(親衛隊隊員E)「た、大変です! 「てんほーちゃんを崇拝する会」の「会長」張曼成さんが、騎馬隊を率いて来ました! 「突撃隊長」の趙弘さん、「斬り込み隊長」韓忠さん、「先駆け隊長」の孫夏さんも一緒です!」

?「何だとッ!?」

 

てんほーちゃんを崇拝する会「「「「「ほわああああああああああああーーーーーーーー!!!」」」」」

 

ファン(親衛隊隊員E)「も、申し上げます! 「ちーほー応援団」の「総団長」の卜已さんが、櫓に乗ってやって来ました! 「右団長」の張伯さん、「左団長」の梁仲寧さんも同乗してます!」

?「うぉいッ!!!」

 

ちーほー応援団「中! 黄! 太! 乙! 中! 黄! 太! 乙!」

 

ファン(親衛隊隊員F)「ほ、報告します! 「れんほーちゃんを見守る人々」の「首領」馬元義さんが、1万の軍勢率いて現れました!」

?「こらーーーーーーッッッ!!!」

 

れんほーちゃんを見守る組織「「「「「「蒼天已死! 黄天當立! 歳在甲子! 天下大吉!」」」」」

 

?「…………ていうか最後のが怖いよ! アタシらは淫祠邪教(いんしじゃきょう)じゃないぞ!!!???」

 

アタシの突っ込みは、信望者の大軍勢の前には何の役にも立たない。

 

?「どいつもこいつも! 彭脱! 彭脱は何をしている!」

彭脱「こ、ここですよ!」

 

見れば、同じく会場の暴徒止めに走っていた。

ぶっちゃけ、物凄く疲れてるみたい。

 

?「…………すまない、アンタは真面目だったね」

彭脱「いえ、それはともかく…………どうしますか? 波才さん」

?こと波才「…………」

 

彭脱の泣き掛けの質問に、アタシは決断した。

 

波才「親衛隊全兵に告げる! 会場外縁部分防衛作戦は失敗! 全隊員は現場を放棄後、速やかに会場の中央に集結! 張三姉妹を守る肉の壁となれッ!!!」

彭脱&親衛隊「「「「「応ッッッ!!!」」」」」

 

 

 

 

 

アタシの名は「波才」。

斧を振り回すしか脳の無い女。

 

 

 

 

 

でも、意地はある。

 

 

 

 

 

そして、未だに消えない憎悪も―――――。

 

 

 

 

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※本SSのキャラ、正史における解説

 

 

●波才

渠帥。

豫州(予州)の潁川(許昌)方面黄巾軍総帥。

数多ある黄巾軍の中で、帝都・洛陽へ向けての遠征軍を率いた唯一の将。(正史に記録されている限りでは、だが)

皇甫崇軍が来る前に、朱儁軍を倒そうとするなど、各個撃破の必要性は理解していたらしく、本人にはそれなりの才があったと思われる。

しかし、率いていた軍勢がまともな訓練をしていない農民&山賊&野盗だった。

そのため、夜の休憩中の警戒が疎かになり、火攻めを受け、敗死。

 

 

 

後書き

 

と、言う訳で、三国志の序盤の黄巾党にスポットをあててみましたー。

…………この後、シリアスに持っていくつもりです。

一応、前編・中編・後編で、終わります。

恋姫になれなかった英傑<達>なので、皇甫崇とか、朱儁もちょろっと出ます。

 

拙い文章ですが、宜しくお願いしまーす。

 

 

 

 

 

説明
始めまして、zanettaと申します。
このお話は

三国志演義の<黄巾党>の話を絡めた真・恋姫†無双〜乙女繚乱☆三国志演義〜の外伝SSです。
オリキャラ主人公です。

出来れば、感想下さい。(涙)
あと、他で書いた作品の文章を使ったりしますけど、盗作では有りません。
…………似たような文章は、他にも沢山あるかもしれませんが、多目に見てください。(汗)



他作品

http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=etc&all=8806&n=0&count=1
[三界†無双〜人間記、闇エルフ演義、魔族伝〜](旧作・未完)

http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=etc&all=9406&n=0&count=1
[ランスシリーズ外伝SS   コノ魔物隊長ハ、南アフリカニテ散ル運命ニアル]

http://mai-net.ath.cx/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=etc&all=9891&n=0&count=1
[真・恋姫†無双〜乙女繚乱☆三国志演義〜外伝SS集]
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コメント
Poussiere様、救われるかどうか・・・中編で予想できるかと。(汗)  のぼり銚子様、キャラは姐さんぽいので、霞に似すぎないように努力しています。  cheat様、過度な期待は・・・いえ、頑張ります!。  ブックマン様、腕と腕の間をドリルでやられたら、崩れますね(笑)  悪来様、黄巾党の幹部って、SSでも大体は男なんですよねー。(zanetta)
皆様、感想有難う御座います!(zanetta)
読ませて貰いました、波才さんが主人公ですかね!?次回更新待ってます。(悪来)
肉のカーテンですねw(ブックマン)
これからの作品を楽しみにさせて頂きますよ〜 ( ´∀`)b(cheat)
テンポよく読ませる文章で退屈しませんでした。波才さんのキャラも立ってますし、これからの展開に期待です(のぼり銚子)
fmfm・・・・・・・・さて、ここでの活躍でどう救われるのかが 作者様の腕の見せ所ですな〜。 愉しみにさせて貰いますね♪(Poussiere)
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