いぬねこ!14
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【猫山】

 

 犬神さんと二人で猫カフェに行って最初は緊張したけど、子猫の癒し力のおかげか

少しずつ心が解れていって素直に楽しむことができた。

 

 まぁ、子猫も可愛かったけど子猫を見て喜んでいる犬神さんも同じくらい可愛かった。

 

 そういうこともあってか、それ以降二人で出かけることに少しずつだけど

抵抗がなくなっていったのを感じられた。

 

「猫山さーん、楽しんでます?」

「う、うん。楽しいよ」

 

 子猫に続き動物つながりで触れられて一緒にわんこと遊べる所に来ていた。

入場料はそれなりにしたけど、それ以上にいろんなわんこと触れられて癒された。

 

「あはっ、もう〜くすぐったいですよ〜。うちの犬の匂いでも残っていたんですかね」

「そ、そうかもね」

 

 小型犬のわんこが犬神さんの胸元に顔を埋めて顔をぺろぺろと舐めまくっていた。

そしてちょっと色気を含めながらはしゃぐ犬神さんを見てつい顔が熱くなる私。

適当に言葉を返してもそのドキドキは収まることはなかった。

 

 せっかくわんこを堪能してきたというのに、半分くらいは犬神さんのことを意識してしまっている。

いや、それは嫌なことじゃないけれど。わんこといられる時間は今しかないのに。

そんなもやもやが溜まっていると、いきなり目の前に犬神さんの顔がドアップで映って

びっくりした。

 

「わっ…!びっくりした」

「あ、ごめんなさい。猫山さんちょっと悩んでいるような表情してたので」

 

「・・・」

 

 こういう出かけた先でよく犬神さんに心配されてしまう。

普段はこれでもかっ!というくらい鈍感なのに…。

そういう差に少し気持ちが揺らいで犬神さんに身を委ねたくなってしまう自分がいる。

 

「大丈夫です?」

「う、うん。大丈夫」

 

 近すぎてなおさらドキドキする俯きがちな私の頬にぺろっという舐められる感触がした。

一瞬犬神さんがそんなことをしたのかと思って心臓が破れてしまいそうな勢いだったけど。

よく見ると犬神さんが抱きかかえていたちっちゃいわんこが私のことを舐めていたみたいだった。

 

「わん!わん!」

「お姉ちゃん〜元気だしてー、一緒に遊んでよーって言ってますよ」

 

 まるでわんこの気持ちを伝えているように声色を変えながら私に言う犬神さん。

そのわんこの目を見ながら頭をそっと撫でてそのもふもふ具合を味わうと

さっきまでのもやもやが少しずつ晴れてきた気がする。

 

 そうだ、この子と遊べるのは今しかないんだから。犬神さんのことは後回しだ!

と珍しく強い気持ちが私の中で芽生えて二人でその子と一緒に遊んでいると。

 

「あはは、こうしていると。私たち夫婦っぽくありません?」

「この子が子供みたいな感じ?」

 

「そうです!そう!」

 

 私が言うとすごく興奮しながら語りだす犬神さんを放置して私はその小型わんこと

戯れていた。想像するのは容易いし嬉しいのだろうけど、精神が持たなくなりそうだから

敢えて考えずにスルーをした。

 

***

 

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 楽しい時間はあっという間に過ぎて割と閉館ぎりぎりまで粘っていた気がする。

もう辺りは暗くて家に帰るにも少しめんどくさいなぁって思っていた時、

私の考えてることがわかるのかタイミングよく犬神さんが手を繋いで歩きながら

言ってきた。

 

「ここからだと私の家が一番近いので、もういっそ私の家に泊っちゃいます?」

「え!?」

 

「あ、猫山さんが嫌じゃなければ…ですけど」

 

 薄暗い中でもその優しい柔らかい笑みを浮かべてるのがよくわかるほど

私たちの距離は近かった。

 

「いいの?」

「えぇ、ぜひ!」

 

 さっきまで犬分を補給していたけど、犬神さん分がほしかったから

その誘いはとても嬉しかった。

 

 私はちょっと緊張しながらもその言葉を受け入れると犬神さんはまるでさっきの

わんこのように嬉しそうにはしゃいでいた。

 

「でも家の人は…」

「あ、今日も私一人なんで大丈夫ですよ〜」

 

 さらっと言っているけど、いつも彼女は一人でいるような気がして

そう思うと少しさみしいんじゃないだろうかと考えてしまう。

 

 だから今日は犬神さんが家の中でも楽しめるように

私も少しはがんばろうと心に決めるのであった。

 

***

 

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 玄関に入ると一斉に犬神さんちのわんこたちがドアの向こうから騒ぎ出す。

大好きなご主人の帰りに興奮しているのだろう。

 

「ちょっとごはんあげてきますね」

「あ、わ、私もいいかな…?」

 

「いいですよ〜」

 

 餌を用意してわんこのいる部屋を開けると溢れんばかりに吠えながら

飛び出そうとするわんこを制止しながら犬神さんはわんこたちに言うことを聞かせながら

餌入れに餌を投入していく。その姿は普段からとろけてるようなのとは違って

しっかりしている表情に少しドキッとしていた。

 

「普段からこうしっかりしていればいいのに…」

「え、何か言いました〜?」

 

「ううん、なんでもない…」

 

 本人には言えないけど…こういう犬神さんだったらもっと早く素直に

なれたかもしれないなぁと思っているとそれぞれのわんこにごはんが

行き渡っていた。そして犬神さんの言葉と同時にわんこたちは一斉に

ごはんを貪り始めた。

 

「さて、私たちも軽く済ませます? それともお風呂?」

「あぁ…お風呂入りたいかなぁ」

 

「了解です!やったぁ、猫山さんと一緒におふろ〜♪」

「ちょっ、なんで一緒に入ること前提なの!?」

 

「え、違うんですか!?」

「や…普通違うんじゃ…あれ、よくわかんなくなってきた」

 

「ぶー…。猫山さんが嫌じゃ仕方ないですね〜」

「い、嫌とかじゃないけど。恥ずかしいじゃん?」

 

「何が恥ずかしいことがありましょうか!私たち女の子同士ですよ!」

 

 仁王立ちのように立って胸の辺りに手を当てながら開き直りのポーズをしながら

熱弁するめんどくさい犬神さん。

でも何だか、めんどくさいこっちの方が見慣れているせいか

落ち着くというか、なんというか…。

 

 そんなちょっとおかしな心境のまま犬神さんに流されるようにして

お風呂に入ることになった。

 

***

 

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「湯加減どうですか?」

「ん…ちょうどいい…」

 

「それはよかったです」

 

 交代しながら頭や体を洗うところまではそんなに意識しないで済んだんだけど、

その後、犬神さんと向かい合いながら湯船に浸かる状況になっていた。

しかもそんな広くないのでけっこうお互いの顔の距離が近い…!

 

「どうしました?顔赤いですけど」

「いや、顔…近くて」

 

「でもこうしないと入れないですし。あ、じゃあ私の前に乗っかる形にします?」

 

 それだと犬神さんのたわわな二つの丘が私の背中に押し当てられるじゃないかぁぁ!

って口に出しそうになったのを必至に堪える。

 

 天然なのか狙ってるのか時々わかりにくいから困る。

嬉しいけど困る。…嬉しいって何さ!!

 

 そんな頭の中で混乱していると何だかのぼせたような感覚になってきて

思考が止まっていった。

 

「あぁ、猫山さんかわいい。ちゅーしたいくらい」

「じゃあ、する?」

 

「え?」

 

 ちゅっ。

 

 犬神さんからの返事を待たずに私は彼女の艶やかな唇にキスをした。

柔らかくてしっとり濡れていて温かみを感じる。

 

 私は口を離した後すかさず犬神さんの耳元まで近づけてから囁いた。

 

「どうだった?」

「どうって…びっくりしました…」

 

「ふふっ、犬神さんのそういう反応もすごくかわいいよ」

「えぇ…!?」

 

 そして体の力が抜けてきた私はそのまま犬神さんに体を預けるようにしてから。

 

「また遊びにくるからね、犬神さんとこうしていたいから…」

「ね、猫山さん!?」

 

 そこから私の意識はなくなって、その後どうなったのかは目を覚ますまで

わからなかった。

 

***

 

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「ん・・・」

「あ、目覚めました?」

 

「あれ、私…」

「あはは、猫山さんお風呂でのぼせて気失ってましたよ〜」

 

「んん…なんかお風呂でした気がするんだけど。覚えてない…どうして」

 

 起き上がってから頭の中でもやがかかり、思い出そうとしながら言葉を

紡いでいる最中にちらっと犬神さんの方を見ると真っ赤になって固まっていた。

 

え、どういうこと!?

 

私何かやらかしちゃったの!?

 

「ちょっ、犬神さんどうしたの!?」

「な、なんでもないですよ!?」

 

「や、なんでもないことないよ!その顔!」

「この顔は生まれつきなんです!」

 

 必死になっている犬神さんが珍しくて私もその後に言葉を繋げられなくて

その日あまり喋ることができないまま、翌日家に帰った。

その途中にちょっと消化不良ながらも犬神さんと過ごした時間を思い出して

胸が熱くなった。もう少し…私もがんばって近づかないと…そう思った。

 

***

 

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【犬神】

 

「また遊びにくるね、犬神さんとこうしていたいから」

 

 顔を赤くしてのぼせたようになっている猫山さんがすごく積極的に

私のことを言葉で攻めてきていた。好きな人の言葉にドキドキして

体のあちこちが敏感になりながらもどう返すか言葉を捜していると。

 

「それと…いつか敬語もやめてね…秋ばっかり…ずるい…」

「ね、猫山さん。そ、それは秋ちゃんとの付き合いが長いからで」

 

「ん…好き…」

「ね、猫山さん…!?」

 

 そのままぐったりと私の体にもたれかけるようにして私は別の意味で驚いた。

声をかけても反応がなかったから慌てて猫山さんを引き上げて

体を拭いてから涼しい場所に寝かせた。

 

 それから少ししてうなされてきた猫山さん。それでもさっきよりは顔色が

よくなってきたので少し安心しながら彼女の顔を見つめた。

 

 あれは猫山さんにタメで話せということだろうか。

今更それは少し恥ずかしい気もする…でも、もしこれから私達が

付き合うとしたら必ず訪れることだけど。

 

 それは私が本気で愛さなきゃいけなくなるってことで…。

いや、この気持ちは確かに本気だけれど一歩踏み出すことが少し怖くて…。

 

 一度深呼吸してドキドキを少しでも和らげようとしながらもう一度考えた。

うん、猫山さんのことは猫っぽいとか抜きでも一番好きだ。

今すぐには無理だろうけど、少しずつ貴女との心の距離が近づけたら…。

 

「私、がんばりますね。猫山さん」

 

 お返しに寝ている猫山さんの耳元でそう呟いた。

それからしばらくして起きた猫山さんはお風呂でのことを

ほとんど覚えてなさそうでちょっとがっかりのような安心したような

複雑な気持ちながらも思い出すと顔が熱くなるのを

猫山さんに心配されてしまったり。

 

 せっかくのお泊りだったのにそれからあまり話せることもなく

お泊り終了してしまって、また一人きり…。まぁ、犬はいるけれど。

 

(また遊びにいくから)

 

 彼女のその言葉を思い出してまた胸が締め付けられるような気持ちに…。

きゅんってマンガであるようなそんな感覚。

 

 猫山さんが言ったあの言葉…思い出してくれたら…きっかけがなくても、

また遊びに来てくれるかな…。

 

 いや、待ってるだけじゃだめか。また私からもアプローチかけないと。

がんばるって言ったんだから。

 

 ベッドの上に転がって天井を見ながら心に決めた。

もう一回、がんばって猫山さんに近づいて気持ちを伝えるんだ…と。

 

お終い。

 

説明
よく付き合ってたり付き合う前だったりばらけてますが。
今回は5巻のデートより少し後の感じで書いてみました。
とりあえずイチャついてればいいんだよ!
愛し合ってればいいんだよ!( ゚∀゚ )トイウカンジ。
あぁ〜^犬猫の間に産まれた子供がみたいんじゃ〜^
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犬神さんと猫山さん 犬神八千代 猫山鈴 百合 お風呂 キス 

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