【★矢】幼き日
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「おーい、カミュ!」

小さな赤髪の少年を、金髪の癖毛の少年が呼んだ。

「…何?」

あからさまに不機嫌そうなカミュ。

そんなことを意にも介していないように、金髪の少年は息をきらせながら、走ってきた。

「何って、おいていくことないだろ?」

「私に用事はない」

まだ声変わりをしてない少年の、冷たいとも取れる声音。

「好きなんだら、一緒にいたいんだ」

そう、悪びれもなく言い放つ少年を、見ようともせずカミュは歩きだす。

「まてよ!」

また彼はあわてて追いかける。

「・・ついてくるな」

立ち止まったカミュはそれだけを言った。

カミュはいらいらする理由が、ミロのせいだと思っていた。

毎日のように纏わりつかれ、朝といわず夜といわず、生活を脅かしてくる。

ただでさえ、頼れる人間は若干14才のサガとアイオロスのみ。

あとは見知らぬ子供だけ。

自分がどこの出身であるかくらいしかわからぬ身の上。

これで安穏としていられるミロが、たぶん嫌いだった。

はあ…

ため息が漏れる。

質素な夕食を終え、片づけをする。

また、くるだろう、彼は。

「カミュ!星がきれいだぜ?見に行こう!」

突然開かれる扉。

案の定、ミロが扉から飛び込んできた。

「なあ、いこうぜ!」

いつも強引。

「いやだといっても、連れていくのだろう?」

「いやじゃないだろ?」

そう、いつも切り返される。

また、ため息が漏れた。

いつかは邪魔だといってやらねばらない。

それが彼ためだし、自分のためだ。

そう思いながら、ミロのあとに続く。

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どんどんミロは歩いていく。

あまり遠くまでいくことは、修行の身である自分たちにはいけないこと。

「…こんなとこまできたら・・」

「いや、ここだよ。ここがきれいなんだ!」

ミロはそういうと、少し高くなった岩の上に座った。

しぶしぶ従うカミュ。

「きれいだろ?こんなに星がきれいに見える!見せてやりたかったんだ、カミュに」

にこっと微笑むミロから顔をそむけ、カミュは空を見上げた。

まさしく満天の夜空。

星が、きれいだった。

自分の守護すべき星座が、なにより目に飛びこんできた。

いや、ひきつけられた。

ミロはその様子をじっと見た。

「すごいだろ?」

見上げて感動しているカミュに声をかける。

「…聖闘士、ならないなんていうなよな…」

「え…」

カミュの瞳が、初めて正面からミロを捕らえた。

「…なんとなく、そう感じたんだ。いやみたいだなって。どうしてかはわからないけど、そう思ったんだ」

ミロのまっすぐな瞳はカミュとその後ろの星座を見つめた。

「俺だって考えたさ」

「…」

「だけど、これは俺にしか出来ないことだと思ったから、いや、今は俺がやりたいと思ってるんだ」

「…どうしてそう思った?」

小さな呟き。

ミロはにかっと破顔した。

「カミュに会えたから。カミュと一緒に聖闘士になって肩を並べたいだ!」

「…ミロ」

「だからさ、一緒にがんばろうぜ!俺はカミュを守れるような男になる!」

そんなばかばかしい言葉に思わず笑みが漏れた。

ああ、そうか、自分がどうかしていた。

運命だから、やらなきゃいけないからと、自分をごまかしてきたからね何もかもいやだったんだ。

れそよりも、ミロのようにやれることをやろうとする姿勢、それがうらやましく、楽しそうだったのが、きっと認めたくなくて嫌いだったんた。

「でも、カミュががんばっている姿をみて、俺も負けられないなって思ったんだ」

邪気のないミロの笑顔。

その笑顔を向けられて、カミュは違うため息をついた。

すっきりした・・自分だけじゃなかった・・

「・・負けない、ミロなんかには…」

そういって、いたずらっぽく笑ったのだった。

 

end

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★矢ミロカミュ
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