戦国†恋姫 混沌伝 序幕 |
永禄3年1月
「………」
暗雲が立ち上り、辺りは真っ暗で遠くが見えない夜
広々と広がる草原で一人の黒い学ランを着る少年が顔を上げてうっすらと目先に見える城を見つめる。
「信助」
ふと、信助の後ろから白を強調した服を着て目が前髪で隠れた少女が信助の隣に寄り添う。
「詩乃、そろそろ時間か?」
信助はそういって懐からケータイを取り出して時間を確認する。
現在は1時23分…完全に真夜中である。
「我等が成功すれば、一鉄様の稲葉衆と友子様の氏家衆が押し寄せる手はず…この作戦も今夜を逃せばもう無理でしょう」
「なら、絶対に成功しないとな」
「信助さま〜」
そう、小走りで黄緑色の髪をした少女がやってくる。
「雫、城の方に放たれました草の報告は?」
「はい!城の警備にはあまり兵をさいてないようですから、今が絶好の機会かと」
「そうか、それじゃあそろそろ行くとするか!詩乃、雫、ここまできたら俺はもう何も言わない、絶対に成功させよう」
「「はい!」」
信助は決意固め、その信助の決意に答えるように詩乃と雫も強く返答する。
「…」
そうして信助は再び、先ほど見つめていた城をにらみつけるように見つめる
(ここまで来るまで色々とあったよな)
そう信助の脳裏にはこの世界に来てからの出来事を思い浮かべていた。
永禄2年
日の本を統治していた幕府の権威は衰え、各地では諸侯らの争いが起こり世はまさに群雄割拠と呼ぶにふさわしい時代
現代では岐阜県に位地する国美濃…そこを納めているのは平民から下克上により、国主になった斎藤家が治めている国。
先代、斎藤利政は優れた主君であったが斎藤義龍の謀叛により空しく倒れ、その義龍もいまは病に伏せていた。
次の当主となるのはその義龍の子供である龍興であったが、龍興には当主としての力量は無く美濃では不穏な雰囲気が漂ってきた。
美濃の西に位置する支城の大垣城…ここの城主西美濃の三人衆の一人安藤守就はいまの斎藤家の現状に非常に嘆いていた。
(はぁ…義龍様が病に倒れている今…後継者であらせられる龍興様が皆を纏めなければならない中…龍興様はただ娯楽に没頭するのみ…このままでは…斎藤家守りしこの美濃は…)
守就は今後…戦乱によって荒れていく美濃を想像し悲しみで顔をうつむける中安藤守就の屋敷の部屋の外から守就の部屋へと近づく足音が1つ、その足音は部屋の前でみたりと止まった。
「安藤様、失礼いたします」
礼儀正しい話し方で襖を開け入ってくる少女、守就は顔をそちらに向けて、誰なのかを確認するとクスリと笑みを微笑んだ。
「今は公務じゃないから、いつも通りに接してくれて構わないわよ詩乃」
「は、はい…日向叔母様」
詩乃は少し恥ずかしげに、安藤守就…日向をいつも通りの呼び方で呼ぶ。
「それで、私の所にきたのは何かしら?」
詩乃がここに来るのは何かあったからだろうと面倒を見ていたからこそ日向には直ぐに分かった。
「はい、先日の昼間からの流星がここより少し西の山に落ちたのは報告しましたよね?」
「ええ、先日あなたから聞いたわ」
この美濃国では数日前に昼間なのにかかわらず流星が落ちてきたと、大垣城の付近の街では騒然とさせたじたいが起きておりその時も日向により、騒ぎを静めた。
「先程、また流星が西の山に落ちていくのを私も含め大勢の人々が目撃しました」
「また流星がね…」
再び西の山へと落ちてきた流星…いったいこれは何を示しているのか、それを日向は考える。
(1回目はただ、そうみえた錯覚だと思えたのだけれど、二回も同じことが起こるとなると…調べる必要があるわね)
「詩乃、手勢を集めて、流星が落ちたという山に探索に向かうわよ」
「承知いたしました、直ぐに兵を集めてまいります」
日向はそう詩乃に指示を飛ばすと詩乃は二つ返事で了承して部屋を後にした。
「さて…二度目の墜ちてきた流星…これは何を示しているのか…」
日向一人しか居ない部屋でそう呟き部屋から見える外の青空眺めるのであった。
その頃…その西の山の中で日向と同じように空を上げている男が立っていた…いや、立ち尽くしていた。
「ど…」
そう、微かに体を震わせ、何か言いたいのか言おうとしている言葉が漏れ出しそして…
「どこだよここ−!?」
そう男は自分の奇妙な状況に声を荒げた。
それにこの事態において男の要しもあまりにも変わっていた。
上から下まで黒一色で身嗜みもきっちりと整っていた。
それはこの時代より遥か未来に男の年なると誰もが来たことがあるであろう学生服。
「お、落ちつけ、まずは状況整理だ」
男は自信を落ち着かせると今の現状を整理し出す。
「先ずは…名前からだな…俺は高橋信助、年は17才……埼玉出身…」
先ずはぶつぶつと彼は自身のことを呟いていく。
「俺は確か…」
信助は記憶の一番新しい記憶をおもいうかべる。
「文化祭が終わって…帰りのバスで…眠った…だけだよな」
信助の一番新しい記憶を引き出しても今の現状にどう繋がるかわからず、頭を悩ます。
「まさか!煮えを斬らしたバス運転手がどこぞのしれない山に…」
ついには尾びれも尻尾もないでたらめなことを言い出す始末…だが、見ての通り彼はひどく混乱しているのだ。
「……とりあえず…ケータイ繋がるかな?」
ひとまずおちついてからポケットに入れていたスマフォを取り出して画面をつけると、現時刻の日付と時間が表示されて画面のロックを解除すると画面上に表示されている電波を確認するがひとつもたってはいなかった。
「やっぱり山の中じゃあ無理か…山を抜けるしかないな」
そう、ため息を漏らしながらも信助は山を降ろうと斜面を下っていく。
方角すらわからない山中でとりあえずと斜面を下っていこうと考える信助。
整備もされていない道なりを進むこともありこっちであっているのかと信助の頭には心配の色を見せる中、信助の耳に微かにある音を聞き取る。
「この音は水!?」
こんな山中で水の流れる音…ここまでくれば連想するものはひとつしかなかった。
「やっぱり川だ」
信助の目の前に川幅は狭いが透明な水が流れている川を発見する。
「あの川を下っていけば!」
川を沿っていけば無事に山から出られるのではないかと予想して川に近づこうとしたとき、前方の木下にある物に気がつく。
「あれ?これは…バック?それに…ライフル?」
木下に置いてあったのはぎっちりと収納されてそうなでかいリュックサックとモデルガンとは思えないライフルが一丁
それをみてもしや人がと信介は辺りを見渡すと川の方にあるものが見えた
川の端で倒れ込んでいる自衛隊と思われる服をした人間…そしてその人から大量の血が流れ、川へと流れていっている光景だ。
「ひっ!」
その光景を見て信助は1歩2歩と後退る。
「に、逃げないと」
間違いなくここに居れば加害者に接触する可能性がある。そう、体が危機感を感じ取り信助は本能的に置かれているリュックサックとライフルを回収するとここから離れようとした矢先彼の目の前には4人ほどのならず者達が気味の悪い笑みを浮かべて信助を見ていた。
「おうおう、兄ちゃん良いもん持ってんじゃねえか」
そう、ならず者に声を掛けられた瞬間、信助の脳裏には、これはやばいと更に危機感を高めてすぐさまならず者がいる反対方向に方向転換して思いっきり走りだした。
走る走る
遮る木々などに肩や体にぶつかりながらそんなことをお構いなしに信助は走る。
追いつかれれば最後自分はどうなるか簡単に想像できるからこそ、死にたくない一心で信助は山道をかける。
「あっちに逃げたぞ!囲め囲め!」
信助の後ろからは追いかけてきている山賊達の指示の声が聞こえて足音も信助の耳には徐々に近づいているように聞こえた。
「このままじゃ追いつかれる」
息を上げ、内心では立ち止まりたい所である信助だが立ち止まれば最後命も終わるの言うのは先ほどの川岸で死亡していた人間を見れば明らか、故に止まるわけにはいかなかった。
しかし、信助は人…例え超が付くほどの運動神経がよくても、いずれは体力が尽きてしまう。
体力も運動神経も人並みの信助は全力疾走し続けたことによりスビードが落ちていた。
「はぁ…はぁっ…!」
奥底から空気をはき出して吸う…もう既に立つこともやっとと言えるほど体力を使い切り棒立ちする信助の前にほんの二十秒ほどで山賊達は信助に追いついた。
「へへへ、漸く追いついたぜ」
疲弊した信助を見て狩り時の獲物を見る目で見る山賊に信助は血の気を引いた。
このままでは殺される、そう思った信助は持っているライフルを震えている腕で構えて山賊達を脅す。
「く、来るな!う、撃つぞ!」
明らかに怯えている声が出ている信助に山賊達は笑みを浮かべながら1歩また1歩と信助に近づいてくる。
「う、うわあぁぁぁっ!!」
近づいてきているのを見て信助はライフルの銃口を上に向けてトリガーを引く。
引くと大きな音と共に銃口から青いエネルギーらしい球体が上空へと飛んでいく。
「何やってんだ?てめえ、せっかくの火縄銃を空なんかに撃ち込みやがった」
信助が空にライフルを放ったことが不思議でしょうが無く、馬鹿だと見下した山賊はついに信助に一気に近づき持っていた刀で縦に切りつける。
「っ!」
信助は振るわれた刀を見て声にもならない悲鳴を上げながら咄嗟に突きだした両手で持っているライフルで受け止めた。
「ちっ!しゃらくせえ!」
「うわっ!」
受け止められたことに舌打ちする山賊は信助を軽くいなして転倒させると倒れている信助に向けて刀を振り上げる。
「いやだ……」
死ぬ。信助の脳裏にはその言葉が浮かび上がり全身が死の恐怖に震え上がる。
「いやだ!!」
信助はがむしゃらにライフルの銃口を刀を振り上げている山賊の腹に当てる。
「弾も入ってねえ鉄砲なんて怖くねえんだよ!」
腹に当てられた行動に怯えることなく山賊は信助を殺そうと刀を振り落とそうとする。
だがこの時山賊達は大きな誤解をしていた。
この時代の鉄砲は火縄銃で弾も単発式と撃てば再装填に時間を要する武器。
この山賊達が言っていることも一理あることだが今信助が持っている鉄砲は信助の時代…銃口から放たれた青いエネルギー体の銃弾を見ても更にそれ以上未来の代物である。
故に…
「うわあぁぁぁっ!!!」
信助は叫び声と共に目の前の恐怖を直視できないと目をつぶりながらライフルのトリガーを引き、銃声とともに腹に当てられていた山賊は腹から血が大量に噴き出しながら1メートルほど吹き飛ばされ倒れ込み直ぐに絶命した。
「な、なんだこれ…」
「に、にげろぉ!!」
山賊達からみてあり得なかった二発目の銃弾それにより山賊達は恐怖し信助からがむしゃらに逃げ出していった。
「はぁ…はぁ…うっ…」
撃った信助も生死の瀬戸際だったためか半分放心状態でありそのまま力尽きて気絶してしまう。
力尽きて気絶した信助が居る場所に一つの集団が現れる。
安藤守就率いる調査隊である。
「銃声を聞き来てみればこれは…」
日向の付き添いとして同行していた詩乃はこの光景を見て冷静に分析する。
「先ほどの銃声は彼の持ってる鉄砲ね」
そういって日向は倒れている信助が持っているライフルを手に持つ。
「火縄銃じゃないわね…」
日向はライフルをまじまじと見て火縄銃ではないと直ぐに見抜く。
「銃声は短い時間に二発でしたが…彼が持っているのは一丁だけ…もう一丁はこの近くに落ちているのでしょうか」
「…もしかしたら、これは天の貢ぎものと天から使わされた使者なのかもしれないわね」
「日向様?」
「守就様!この男まだ息があります!」
信助やライフルのことを天からの贈り物ではないかと夢見がちな考えをする日向に配下の足軽が信助の生存を確認し、そのことを日向に知らせる。
「報告ご苦労、その男は私の屋敷に連れていきます、丁重に運びなさい」
「日向様!?何処の誰かも分からぬこの者を屋敷に連れていくなど」
日向は信助を日向の屋敷に運ぶように指示を出すと同じ屋敷に住まっている詩乃は何者かも分からない信助を屋敷に入れることに反発をする。
「詩乃、警戒されるのも無理はないけど、こんなところで行き倒れを野放しには出来ないし、それに見たことのない服装に見たことのない鉄砲…私は彼に興味があるわ」
「…日向様がそこまで言うなら…」
日向の説得で敢え無く折れた詩乃。
そして日向達、安藤守就隊は信助を連れて大垣城へと戻っていくのであった。
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どうも!ウイングゼロです なんとか今年中に間に合いました。 作品としてはまあまあのできだと思うので評価、コメント募集しております。 |
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