マイ「艦これ」「みほ3ん」(第参部)EX回 第10話『君は天使か?』 |
「お姉さまを、お守りします!」
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マイ「艦これ」「みほ3ん」(第参部)
EX回:第10話『君は天使か?』
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演習の、いわば『第一ラウンド』は終わったようだ。まぁ相手の格が違いすぎるよな。最初からある程度は予想された結果だ。
もちろん裏では、とても『平和的』に事が運んでいる。私が双眼鏡で海上を覗くと、美保の龍田さんがブルネイの龍田さんに助け起こされている。
「どうなるのかな……これで終わりか?」
そう呟いた私としては、さっさと終わって欲しかった。初っ端から実力の差があり過ぎる。
だが、物事はうまく行かないものだ。
:夕立(美保)
「ぽいぽいぽーぃ」
あれ? この声……と思うまもなく美保鎮守府の夕立が叫んだ。すぐに無謀にも猛然と立ち向かっていく。もちろんその相手は浴衣を着た『夕立』。
「おいおい、マジかよ?」
私の不安そうな呟きとは裏腹に、会場は再び歓声に包まれて盛り上がる。
美保の夕立は今までずっと棒立ちだったけど急に『やる気』になったらしい……相変わらず微妙にズレているんだよな、お前は。まぁ、やっと『やる気』になっただけでも褒めてやるべきか。
:夕立(ブルネイ)
「フフ……」
不適に笑ったブルネイの夕立は、やおら魚雷を発射? ……え? 魚雷を投げているって……なんで空中を飛んでいくわけ?
:夕立(美保)
「ぽいっ?」
美保の夕立が困惑するのも無理は無い。常識を逸した魚雷が滑空してくる。しかも妙な迷彩が施されて……美保の夕立は血相変えると180度ターンして逃げ出す。
:夕立(美保)
「ちょ、そんなの反則っぽいーっ!」
「……」
私も空いた口が塞がらない。あんなのが空を飛んで向かってきたら当然、逃げるよな。
:龍田さん(美保)
「あらぁーすごい。あんな魚雷があるのね」
美保の龍田さんの呟きがインカムに入る。
:龍田さん(ブルネイ)
「大丈夫よぉ、あれは単なる脅し……ちょっと作戦上、本隊から遠ざかって貰うから」
相手側の龍田さん、ニッコリしながら小声で応えている。
実況も叫ぶ。
『おおっと! 龍田と夕立は相手の夕立をジワジワと敵戦艦群から引き剥がしに掛かる!』
『……巧いな。挟み撃ちの形を活かして敵主力から遠ざけている。何か仕掛けるつもりだぞ。』
解説もヒートアップ。
海上では相手の『空中魚雷』が美保の夕立の周囲に着弾し無数の水柱を林立させていく。ほぼギリギリで必死に着弾を避ける夕立。それは手に汗握る展開だが……明らかにブルネイの夕立は意図的に着弾を外しているな。
:夕立(美保)
「ぽいー!」
必死な形相で夕立は逃げ惑う。その直後を狙って次々と水柱が上がる。結果的に彼女は徐々に主戦場から遠ざけられていく。
私はふと観覧席に居る相手の提督(大将)を見た。うむ……やはり彼は美保鎮守府側のあまりの弱さに呆気に取られているようだ。
いや、それ以上に何か『疑い』の表情すら浮かべ始めているぞ。
そうだよな。今回の演習だって恐らくブルネイの艦娘と互角の相手が本来居たはずだ。それが何かの理由で来れなくなって……
そこに幸か不幸か私たちの部隊が入り込んだだけだよな?
あ……大将が、こっちを見た。やばい! 私は思わず目を逸らしてしまった。だが私の今の行動は余計に拙い。大将の疑念を深めさせるだけじゃないか?
やばい……私自身、非常に焦り始めた。
別に悪いことはしていないけど、こうなってくると針のムシロだ。もはやジッと座って、いられない気持ちだ。
しかし今、逃げ出したら余計に疑われるよな。夏なのに冷や汗が出る。そして……私がさりげなく会場を見回すと、点在している憲兵さんも気になる。
ああ、この夏に境港の神社で憲兵に詰められた、あの嫌な緊張を思い出してしまった。
「やば……」
つい、口走ってしまう。
しかし今さら逃げ出せない。こうなったら仕方ないか……。私は深呼吸をすると自分の不安を隠すように双眼鏡で再び海上を覗く。
あれ? ……ウチの金剛はまだ本調子じゃないのか? やたら小さく見える。もしかして蹲(うずくま)っているのか?
その金剛の前で……
「おい、比叡? 何をやっているんだ?」
思わず呟く。私は慌ててインカムを下ろした。
その比叡はブルネイの金剛と比叡の前で両手を広げている。どういう事態だ?
「おい比叡、いくら演習とは言っても、実戦的なものだぞ!」
私はインカム越しに問いかける。だが、比叡は聞こえないのだろう。敵(ブルネイ)の前で両手広げている。
「お前は寛代か?」
不安だらけの私は思わず、言ってしまった。
その寛代は……
「あれ?」
振り返ると、その寛代本人は……
「なんだ寝ているのか?」
祥高さんの膝の上に頭を乗せて熟睡中だった。もちろん、祥高さんもコックリと「船」を漕いでいる。いやこの二人、ぎゃにこの演習海上の喧騒の中で、よく眠れるよなあ……。
急に、たった独りで敵地に放り出されたような孤独感が襲ってくる。私は、もはやゴクリと生唾を飲み込むしかなかった。
「……」
だめだ、緊張で生唾すら飲めない。
風向きが変わって、演習している海上では水柱の霧が司会を再び悪化させている。
私の異常な雰囲気に気が付いたのだろう。ブルネイの五月雨が声をかけてきた。
「司令? どこか調子がお悪いのでしょうか」
「あ、いや、別に……」
私はインカムの送話口を跳ね上げて応えた。
それでも彼女は心配そうな瞳でこちらを見詰める。
「あの汗が……冷たい物をお持ちしましょうか?」
「あ、ああ……」
ブルネイの五月雨は親切だ。五月雨か……確か美保にも居たはずだ。今度、もし無事に日本に戻ったら調べてみよう。
でも今は、それどころではない。
突然、実況が叫んだ。
『み、見て下さい! ……アレ?』
観客はいっせいにブルネイの青葉さんの指差した先……制空権争いが繰り広げられている上空を見た。
私も再び双眼鏡を覗き込む。
そこではブルネイの赤城さんと日向が放った瑞雲と彗星がそれぞれ爆撃体勢に入ろうとしていた。相手の瑞雲は水平爆撃、彗星は急降下爆撃で私たちの主力……美保の金剛と比叡に襲いかった。
美保の比叡が叫ぶ。
「お姉さまを、お守りしますっ!」
彼女は対空砲火を開いて迎撃を始める。そのとき蹲(うづくま)っていた美保の金剛も起き上がり歯を食いしばって共に反撃を試みた。
「Fire……」
金剛に、いつもの覇気がない。そうだよな、ついさっきまでゲロゲロやっていたのだから。
そのとき、美保の龍田さんの声が入る。
:龍田さん(美保)
「金剛さん、比叡ちゃん……無理に反撃すると被害が増えるから、その場を動かないで。相手の赤城さんも日向さんも、直撃は避けてくれるからぁ」
続けて、美保の赤城さんの通信が入る。
:赤城さん(美保)
「そうよ。ちょっと痛いかもしれないけど、相手を信じて、その場で動かないで……」
あれ? ……さっき夕立を攻撃した魚雷の水柱に隠れて見え難かったが、二人の赤城さんと日向は既に戦っていないのか?
それぞれが並んで状況を見ている……もしかして休戦状態?
美保の日向も呟く。
:日向(美保)
「私たちの司令の為にも、お願い」
冷や汗が出た。私のことは、どうでも良いよ。もとより勝ち目はないし割切って上手に負けを演じてイベントを盛り上げる方がスマートだ。今は、その方が私も何とか大将に顔向け出来そうだ。
美保の赤城さんと日向は、それを悟ってブルネイの二人と上手に『停戦』に持ち込んだのかも知れない。ある程度、イベントが盛り上がったから、さっさと停戦させる。それはまた一種の『作戦勝ち』だよな。
美保の龍田さんが改めて続ける。
:龍田さん(美保)
「航空機の攻撃後も判定が出るまでその場で、じっとして動かないでね」
次々に襲いかかる爆撃機を落とそうと砲撃を加えていた金剛たちは、その通信を受けて急に砲撃を停止した。
:金剛(美保)
「シット……」
やはり金剛は悔しそうに言う、その言葉も弱々しい。比叡は、必死になだめているように見えた。
二人が海上で抱き合って防御体制を取った次の瞬間、2人を覆うようにして無数の水柱が上がった。二人の姿が見えなくなる。
炸裂音と水柱……観客の目は釘付けだ。
私はまた別の緊張でガクガクになりつつも、ブルネイの五月雨が持ってきた氷水を飲んだ。これで少しでも落ち着けば良いけど。
「ごほっ、げほっ!」
緊張するあまり吹いた。
すると誰かが優しく背中をさすってくれた。
「あの……大丈夫ですか?」
さ、五月雨……君は天使か? 内心そう思いつつも、私は迷惑をかけて済まないと思っていた。
「あ、ありがとう」
「いえ……」
やはり恥ずかしそうに微笑む五月雨。
純朴そうな良い駆逐艦だ。絶対に帰ったら美保でも探してみよう……
「げほっ」
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中〜(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第参部」の略称です。
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美保鎮守府側の夕立が果敢にブルネイへ反撃を試みるも、見たこともない兵器に逃げ回る結果に。それはまた提督の大きな疑念を生むことになるのだった。 | ||
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