本編補足
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抜擢

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C1 人情

C2 介入

C3 いびつな同盟

C4 一握りの忠臣

C5 バカイ王国国王

C6 毒

C7 即位

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C1 人情

 

ミゼ王国の首都キョン。ジュ宮殿の政の間。玉座に座るユズルハ。ミゼ王国の文武官のユミルとその弟で文武官のユラルに同じく文武官のシンノパクマンをはじめとする文武官達が左右に並ぶ。ユズルハの前に跪く暗黒大陸連邦のパシフィック国際鉄道株式会社代表取締役のハンス・ハーネス。

 

ハンス・ハーネス『ご機嫌麗しゅう。女王陛下。』

 

ハンス・ハーネスを見下ろす。ユズルハ。

 

ユズルハ『暗黒大陸連邦には疫病が流行した時にたいへんお世話になりました。それで、その暗黒大陸連邦の方がどういったご用件で?』

 

立ち上がるハンス・ハーネス。

 

ハンス・ハーネス『はい。実はここテウシンの地に弾丸列車を通したいのです。』

ユズルハ『弾丸列車…。弾丸列車とはあのユランシアを横断する…。』

 

頷くハンス・ハーネス。

 

ハンス・ハーネス『そうです。乗られたことはありますかな。』

 

首を横に振るユズルハ。

 

ユズルハ『いえ。』

ハンス・ハーネス『人型機構や車や飛行機よりいい旅ができますよ。』

ユズルハ『そんなものなんですか。』

 

頷くハンス・ハーネス。

 

ハンス・ハーネス『この度、グリーンアイス連邦にも開通し、シーン皇国は自国の弾丸列車とユランシアの弾丸列車をつなぐ為、トセ海峡にトンネルを掘っているところです。無論、弾丸列車開通を許可していただけるなら、こちらがもてる技術の全てを提供しましょう。』

 

顔を見合わせるミゼ王国の文武官達。

 

ユズルハ『それは、まあ。凄い事ですね。早速、テウシンの各国に連絡を取り…。』

 

ユズルハを見つめるハンス・ハーネス。

 

ハンス・ハーネス『その必要はありません。』

 

首を傾げるユズルハ。

 

ユズルハ『必要はないとは?』

ハンス・ハーネス『我々が開通したい場所は決まっています。』

 

瞬きするユズルハ。

 

ハンス・ハーネス『ミゼ王国の飛び地…。ジョルガロンの地です。』

 

眼を見開くユズルハ。

 

ハンス・ハーネス『ヂョルガロンの地に弾丸列車を開通することで世界周遊が可能になるのです。是非とも…。』

ユズルハ『…それはできません。』

 

眉を顰めるハンス・ハーネス。

 

ハンス・ハーネス『なぜですか。ヂョルガロンの地は飛び地。利益はそうそう見込めない筈です。弾丸列車が開通すれば各主要国から人々がやってくるのですよ。それに我が社の鉄道技術全てを提供します。あなた方にとっても悪い話ではない筈だ。』

 

ハンス・ハーネスを睨み付けるユズルハ。

 

ユズルハ『無理なものは無理です。どんなことがあってもあの地を他国に使用させることはできません!ヂョルガロン国王と…ギュウジュウ殿との約束だからです!』

 

ユズルハの顔を見つめるハンス・ハーネス。

 

ハンス・ハーネス『…分かりました。残念ですが、この話はなかったことにしましょう。』

 

ハンス・ハーネスはユズルハに背を向け、肩を落としながら去って行く。ハンス・ハーネスの背を見つめるユミルとユラル。

 

 

ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。郊外に建つ小さなユミルの家。二階。机の上に置かれたボードゲームのソウグンの駒の置かれたボードを見つめるユミル。腕組みをするユラル。

 

ユミル『ドンジェに伝えてくれ。ハンス・ハーネスと話したいと。ミゼの文武官ユミルが女王陛下は心変わりするかもしれないと。』

 

ユミルを見つめるユラル。

 

ユラル『心変わり……兄上。随分と早いご決断ですね。』

ユミル『もう少し時間をかけても良いと思っていた…。』

 

鼻で笑うユミル。ユミルの背を見つめるユラル。

 

ユミル『…テウシンの中のたかだか弱小国の一つが、暗黒大陸連邦側の、それもかなり譲歩した提案を却下したと知れ渡ればどうなるか。交易に支障が出るだろう。我が国の代わりの取引先なぞ、いくらでもあるからな。人情や義理よりも利益を優先する輩に義理や人情のみで対処していては、得られるべき大利を失い、望まぬ大損を被る。』

ユラル『兄上の仰せのままに。しかし、会えるかどうかは分かりません。』

ユミル『分かっている。その時は次の手立てを考える。』

 

一礼し、部屋を出ていくユラル。ユミルは駒の置かれたソウグンのボードを見つめる。

 

ユヅルの声『ユラルお兄様。お出かけですか?』

ユラルの声『ああ。ドンジェ殿の所へいってくる。』

ユヅルの声『ドンジェ様の…。』

ユラルの声『何。仕事の話だよ。』

 

彼の眼にはソウグンの王の駒が映る。

 

ユミル『…ユヅル。』

 

C1 人情

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C2 介入

 

ミゼ王国の首都キョン。ジュ宮殿の政の間。玉座に座るユズルハ。ユミルとユラルにシンノパクマンをはじめとする文武官達が左右に並ぶ。

 

ユズルハ『これより朝議を始めます。』

 

一歩前に出るユミル。

 

ユミル『女王陛下。』

ユズルハ『では、ユミル。』

 

頷くユミル。

 

ユミル『はい。バカイの件で…。』

 

眉を顰めるユズルハ。

 

ユミル『ダンヅー王子とダンファン王子は同盟を結びました。我が王国もそろそろバカイと国交を回復すべきかと。』

 

ユミルの方を向く一同。

 

ユミル『我が国にいる避難民もさぞ、帰りづらくなりましょう。ガゴゴ殿がいれば真っ先にそう言う筈です。』

 

ミゼ王国の文武官で、疫病で没したガゴゴの息子ガゴパを見た後、ユズルハの方を向くユミル。

 

ユズルハ『…ダンヅー王子も成長したものですね。それに…まあ、ダンファン王子がいれば心配はないでしょう。後はダンガン王子と彼らが手を取り合えば、丸く収まりますね。』

 

頷くユズルハ。

 

ユズルハ『分かりました。ダンヅー王子とダンファン王子に使者を立てましょう。』

 

一礼するユミル。

 

ユミル『はは。』

 

ユズルハはユミルの方を向く。

 

ユズルハ『その使者の役目…。』

 

一歩前に出るガゴパ。

 

ガゴパ『お待ちください。その役目、ガゴゴの息子ガゴパにお任せください。』

 

ガゴパの方を見るユズルハ。一歩前に出るシンノパクマン。

 

シンノパクマン『女王陛下。ここは言い出したユミル殿がいくべきでは。』

 

シンノパクマンの方を向くユズルハ。

 

シンノパクマン『…それにガゴパ殿は若すぎる。果たして使者の役割が務まるかどうか…。』

 

シンノパクマンを睨むガゴパ。

 

ユミル『シンノパクマン殿の言うことももっともです。ガゴパ殿は若い。それにバカイはまだおさまっておりません危険すぎかと…。』

 

ユミルを見つめるユズルハ。ユミルを睨み付けた後、ガゴパはユズルハの前に出ていき、跪く。

 

ガゴパ『いえ、ここは私に行かせてください!女王陛下』

ユズルハ『ガゴパ…。』

ガゴパ『このガゴパ、一命に変えてもその役割果たしてまいります!』

 

ガゴパを見下ろすユズルハ。ユズルハの眼を見つめるガゴパ。

 

ユズルハ『分かりました。そこまで言うなら。あなたを使者としてたてましょう。』

 

頭を深々と下げるガゴパ。

 

ガゴパ『はは!父の名に恥じぬように、使者の役目努めてまいります!』

ユズルハ『くれぐれもダンヅー王子、ダンファン王子に粗相のない様に、アレでも一応王子ですから…。』

ガゴパ『はは。』

 

顎に手を当てるシンノパクマン。ガゴパを見下ろすユミル、ユラル。

 

 

夕方。ミゼ王国の首都キョン。ジュ宮殿。正門をくぐるユミルとユラル。

 

ユミル『若いな…。ガゴパ殿は。』

ユラル『ええ。』

ユミル『挑発と酒と女…。』

 

眼を見開いてユミルの背を見つめるユラル。

 

ユミル『若いとよくそういったものに溺れるものだ。』

 

口角を上げ頷くユラル。

 

ユラル『そうですね。分かりますよ。兄上…。』

 

ユミルはユラルの方を向き頷く。

 

ユラル『それでは私は少し用事があるのでこれで…。』

 

去って行くユラル。ユミルはユラルの背を少し見つめた後、去って行く。

 

C2 介入 END

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C3 いびつな同盟

 

ミゼ王国の首都キョン。ジュ宮殿の政の間。玉座に座るユズルハ。ユミルとユラルにシンノパクマンをはじめとする文武官達が左右に並ぶ。ユズルハの前に跪くバカイ王国の第一王子ダンヅーにその軍師のソユル、ガゴパ。ユズルハは彼らを見つめる。立ち上がるダンヅーにソユルにガゴパ。

 

ダンヅー『この度のユ王国の配慮感謝いたしておりますじゃ。』

 

眉を顰めるダンヅー。

 

ダンヅー『差し出がましい事ではありますのじゃが…。』

 

頭を深々と下げるダンヅー。

 

ダンヅー『え、援軍をお頼みしたい!』

 

眼を見開くユズルハ。

 

ユズルハ『援軍。援軍とはまた大胆な…。ダンファン王子とは同盟をして、ダンガン王子とは好を結ばないのですか?』

 

首を横に振るダンヅー。ダンヅーは拳を震わす。

 

ダンヅー『こちらも努力しましたじゃ!使者も何人もたてた、もちろんダンファンも。しっかし、…あいつは、攻めてきおった!あいつは…。』

 

頭を下げるガゴパ。

 

ガゴパ『はい。不意打ちで攻めてきたので、せめてダンヅー様をここへと…。』

 

ガゴパを睨むミゼ王国の文武官A。

 

ミゼ王国の文武官A『んっ。…ダンヅー王子だけか!?ダンファン王子はどうした!』

 

眼を見開いて、下を向くガゴパ。

 

ミゼ王国の文武官B『使者の役目をはたしておるなら、なぜダンヅー王子しか連れて来ておらん!』

 

顔を上げるガゴパ。

 

ガゴパ『…それはダンガン王子の不意打ちで…。』

 

ガゴパを、眼を細めて見つめるユミル。

 

ユミル『時間は充分にあった筈です。出立から何日たっていると思っているのですか!』

 

拳を震わし、下を向くガゴパ。ガゴパを見つめるミゼ王国の文武官達。ソユルの方を向くダンヅー。眉間に皺を寄せるソユル。

 

ソユル『…困ったことになりました。』

ダンヅー『ど、どういうことじゃ?な、何か問題でもあるのか?ダンファンとわしは同盟を…。』

 

ガゴパを見た後、ダンヅーの方を向く

 

ソユル『しかし、ミゼ王国はダンヅー王子としか好を結んでおりません。』

ダンヅー『そ、それなら今からでも…。』

ソユル『無理です。ダンヅー王子、ダンファン王子と同盟関係を結んだとしても、貴方は各国から信頼されていないんだ。』

 

眼を見開き、後ずさりするダンヅー。ソユルはユズルハを見る。

 

ソユル『女王陛下。あなたは、我々と国交を回復しようとしたとき、ダンファン王子の名を聞いて動いたでしょう。』

 

頷くユズルハ。

 

ユズルハ『ええ。ダンファン王子の徳はこちらまで響いておりますから。』

 

崩れ落ちるダンヅー。

 

ダンヅー『そんなぁ…。』

ソユル『だからこそ、ダンファン王子のお目付け役のユ王国はミゼ王国とクド王国の動きを不審がる。無論ミゼ王国を不審がっているのではありませんクド王国とダンヅー王子を不審がるのだ。パノパス王国も3国と戦うのは不利。』

 

ダンヅーの方を向くソユル。

 

ソユル『つまり、我々は、我々の力であのダンガン王子の軍勢を倒すしかないのです。もし、ダンファン王子とミゼ王国の好がなっていれば…、多勢に無勢。ダンガン王子は戦を諦め、和解がなったかもしれません。』

 

下を向いて拳を震わすガゴパ。ガゴパを見るシンノパクマン。

 

シンノパクマン『大方、女遊びでもしていたのだろう。こんな姿をみたらガゴゴどのが泣くぞ。』

 

眼を見開くガゴパ。

 

シンノパクマン『このようなことになるなら、あの時もっと…。』

 

シンノパクマンの方を向くユミル。

 

ユミル『過ぎたことはどうしようもありません。』

 

ユミルはユズルハの方を向く。

 

ユミル『女王陛下。我々はバカイの戦には加勢することはできません。しかし…。』

 

ユミルはソユルの方を向く。

 

ユミル『軍勢を出すことはできます。』

 

眉を顰めるユズルハ。

 

ユズルハ『どういうことです?』

ユミル『…軍は出します。しかし、戦闘行為は一切いたしません。それならば、もしかすればダンガン王子を動揺させることができるかもしれません。』

 

ユミルの方を向くミゼ王国の文武官C。

 

ミゼ王国の文武官C『…すでに見抜かれとるじゃろ。それを阻止するための襲撃ではないか?』

ユミル『だからといってこれを、手をこまねいてみていることができますか?』

ミゼ王国の文武官C『うむ…。』

 

ユズルハは周りを見て頷く。

 

ユズルハ『分かりました。バカイ王国に援軍を出しましょう。ただし、戦闘行為は一切禁じます。』

 

ユズルハに深々と頭を下げるソユル。ソユルを見てユズルハに頭を下げるダンヅー。

 

ガゴパは顔を上げる。

 

ガゴパ『その行軍に私も参加させてください。』

 

ガゴパを見る一同。ユミルはガゴパを見つめる。

 

ユミル『それはできない。名誉回復の為に変な行動を起こされたらたまったものではない。こちらは、戦闘行為は一切できない。』

 

ユズルハの方を向くユミル。

 

ユミル『そうでしょう。女王陛下。』

 

ガゴパを見つめて頷くユズルハ。

 

ユズルハ『今回の行軍は普通の行軍とは違うのです。名誉を挽回したいなら、また次の機会があります。』

 

俯き、拳を震わすガゴパ。

 

C3 いびつな同盟 END

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C4 一握りの忠臣

 

ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。郊外に建つ小さなユミルの家。二階。椅子に向かい合って座るユミルとソユル。扉の近くにはユラル。窓から見えるソユルの副官ジョルツギと数名のバカイ王国兵士達。お茶を出すユミルとユラルの妹のユヅル。ユヅルの顔を見つめるソユル。

 

ソユル『お美しい方ですね。』

 

ユヅルはソユルを見て一礼する。一瞬ソユルを睨むユミルとユラル。ユミルはユヅルの方を向く。

 

ユミル『少し外していてくれないか。』

 

頷くユヅル。

 

ユヅル『はい。』

 

扉を開けて出ていくユヅル。ユヅルの背を見つめるソユル。ユミルの方を向くソユル。

 

ソユル『ユの王族の血縁は美男美女ばかりですね。ユ王国のユガ殿やこの国のユズルハ殿もそうですが、あなたがたも。』

ユミル『はは、美男といえるかどうか。私達は傍系ですので。』

ソユル『そうですか。』

ユミル『ユの王族が奴隷だったことの名残でしょう。我々の先祖が有力者に取り入れるために美男美女と交配させた成れの果てです。』

 

2、3回頷くソユル。

 

ソユル『なるほど。それで…話というのは。』

 

ユミルはソユルを見つめる。

 

ユミル『貴方ほどの男が今の境遇でよろしいのか…と。』

 

片眉を上げるソユル。

 

ユミル『ソユル殿。本当にこのまま、あのような各国から信頼の無い王子に仕えていてよろしいのですか?』

 

眉を顰めるソユル。

 

ソユル『何をいいたのですか?…確かに王子は各国から信頼を失っている。しかし、それは王子を止められなかった私の責任だ。』

 

眉を顰めるユミル。

 

ユミル『…ダンヅー王子はひどく軽蔑されていますが、各国はあなたには一目置いている。』

 

ユミルを睨むソユル。

 

ソユル『…王子を裏切り、ミゼ王国に鞍替えしろと!』

 

立ち上がるソユル。

 

ソユル『そのようなことはできん!』

 

ユミルに背を向けるソユル。

 

ユミル『あなたのことを思って言っているのだ。ダンヅー王子は王の器ではない。』

 

ユミルの眼を見つめるソユル。

 

ソユル『…私はダンヅー王子を見捨てることはできない!忠臣二君に仕えず!失礼する!』

 

扉を勢い良く開けて出ていくソユル。ユミルは扉の方を向いた後、立ち上がりソウグンのボード上にある兵に囲まれた軍師の駒を見つめる。窓から見えるソユルとジョルツギに数名のバカイ王国兵士達。

 

ユミル『…二君に仕えずか。』

 

ジョルツギはユミルの方を向く、頷くユミル。頷くジョルツギ。ユミルは塀に囲まれた軍師の駒の頭に人差し指を当て、弾く。階段を駆け上がり、ユミルとユラルを見るユヅル。

 

ユヅル『お兄様。あの方、ひどく怒って…。』

 

頷くユミル。

 

ユミル『ああ、大丈夫。ダンヅー王子の悪口をいって怒らせてしまったらしい。』

ユヅル『そうですか。お兄様たちになにかあったのかと心配で心配で。』

ユラル『苦労を掛けるね。』

 

 

バカイ王国クデクラ盆地。北方に位置するダンガンのトン級起動城塞数百機と展開されるカッシャ級人型機構。南西に位置するダンファンの50機以上のトン級小型起動城塞と展開されるカッシャ級人型機構、南東に位置するダンヅーの50機以上のトン級小型起動城塞と展開されるカッシャ級人型機構。クデクラ山にはクド王国、ミゼ王国、ユ王国、パノパス王国の旗が靡いている。クデクラ山ミゼ王国の陣から、ダンガン軍、ダンファン軍、ダンヅー軍を見つめるミゼ王国の文武官達。

 

ミゼ王国の文武官D『…しかし、各国からも軍勢が派遣されるとは。』

 

ミゼ王国の文武官Dの方を向くミゼ王国の文武官C。

 

ミゼ王国の文武官C『…火事場泥棒でも狙ってるのかもしれんの。ふぉふぉふぉ。』

ミゼ王国の文武官E『これで、ダンガン王子は、和睦するかどうか。』

 

眼を細め、クデクラ盆地に展開する軍勢を見つめるミゼ王国の文武官C。

 

ミゼ王国の文武官C『無理じゃな…。』

 

動かない軍勢を見つめるミゼ王国の文武官達。

 

ミゼ王国の文武官F『いや、しかし、戦は始まっておらぬ。決めつけるのは…。』

 

銃声が響き。暫く立った後、雄たけびが上がる。

 

クデクラ盆地に展開された軍勢の方を向く一同。ダンファン軍とダンガン軍との戦闘が始まる。ダンヅー軍の主力以外の軍勢がダンガン軍に襲い掛かる。

 

シンノパクマン『始まったか…。』

 

ユミルの方を向くミゼ王国文武官G。

 

ミゼ王国の文武官G『…戦に参戦できないのは歯がゆいものですな。』

ユミル『そうでもないさ。』

 

ユミルはダンヅー軍の主力を見つめる。ダンファン軍の先発のカッシャ級人型機構の部隊が、ダンガン軍のカッシャ級人型機構を切り捨てる。コックピットから出て逃げるダンガン軍の兵士を踏みつぶし、先端を切り開く。押されるダンガン軍。動かないダンヅー軍の主力。ダンヅー軍の主力部隊を見つめるミゼ王国の文武官H。

 

ミゼ王国の文武官H『ダンヅー王子は何をやっているのだ!先程から全く動いていないではないか!』

ミゼ王国の文武官I『それに引き換え、ダンファン王子は…。やる気はあるのか。同盟相手が接戦しているのだぞ!』

 

瓦礫と、死体の山が築かれる戦場を見つめる一同。数が減ったダンファン軍がダンガン軍を勢いよく押し込む。

 

ミゼ王国の文武官J『この勢いなら…。』

ユミル『まだ、分かりません。今は押してはいますが、ダンファン王子の軍勢は少数に…。』

ミゼ王国の文武官J『あのバカ王子は何をやっているのだ。先程から全く動いていない…。』

 

動き出すダンヅー軍。

 

ミゼ王国の文武官J『おお、ようやく動き出したか。このままダンガン軍を抑え…』

 

ダンヅー軍の主力部隊を見つめるユミルとユラル。ゆっくりとダンファン軍の背後に回るダンヅー軍の主力部隊。

 

ミゼ王国の文官J『…ん。あれは…。』

 

ダンヅー軍の主力部隊は一斉にダンファン軍とダンガン軍に突撃する。

 

ミゼ王国の文武官I『お、おい!味方だぞ!』

 

ダンファン軍のカッシャ級人型機構を斬り、狼狽するダンガン軍の人型機構を切り捨てて勢いと共に突撃するダンヅー軍。戦場から逃げる兵士やカッシャ人型機構、トン級小型機動城塞を包囲して、斬り、踏みつぶし、破壊するダンヅー軍の先遣部隊。中央部に作られる、血だまりと瓦礫、死体の山。眉を顰めてダンヅー軍を見つめる一同。

 

C4 一握りの忠臣 END

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C5 バカイ王国国王

 

ミゼ王国の首都キョン。ジュ宮殿の政の間。玉座に座るユズルハ。ユズルハの前に跪くダンヅー。ユズルハはダンヅーを睨み付け、顔を背ける。

 

ダンヅー『じょ、女王陛下。そんな怖い顔をなさらずに。いや、ミゼ王国とクド王国のおかげで私は晴れて王になることができました。いやいや、まことありがとうございますじゃ。』

 

肘あてを叩くユズルハ。

 

ユズルハ『…バカイ王の血縁はあなたしかいないから、あなたが王になったのです。それを分かっているのですか。本来ならあなたのような人間は王になど到底なれる人間ではないのですよ!』

 

後退りするダンヅー。

 

ダンヅー『ひ、ひぃ。』

ユズルハ『あなたは、ダンガン王子とその軍師ソラルを倒しました。しかし、あなたはその過程でダンファン王子とその軍師のソシルを…味方を後方から襲って殺した、卑劣極まりない手段で王となってのですよ!』

ダンヅー『し、しかし、ソユルが。ソユルが流れ弾に当たって死んでしまって。どうすればよかったと…。そ、それで混乱したんじゃ。それで、ジョ、ジョルツギが…。』

ユズルハ『人のせいにするのですか?王としての自覚はあるのですか!』

 

地団太を踏むダンヅー。

 

ダンヅー『あ、あのダンガンを武力にすぐれたダンガンを倒すには、あれしかあの時、あれしか方法は無かったのですじゃ!ダンガンの軍は押されたとはいえ、ダンファンの軍は多勢に無勢で…。』

 

ため息をつくユズルハ。

 

ユズルハ『…はぁ、言い訳はもうよろしいです。』

 

ダンヅーを見つめるユズルハ。

 

ユズルハ『こうなってしまった以上、我々も、バカイの目付役となった各国もその責を取らねばなりません。』

 

ダンヅーを睨み付けるユズルハ。

 

ユズルハ『ダンヅー王。私はバカイの王としてのあなたの権限を大幅に削減することを各国に提案するつもりです。』

ダンヅー『えっ!』

ユズルハ『当たり前でしょう。あなたの様な信用のおけない王が国王になれば当然の措置です。』

 

歯ぎしりし、下を向くダンヅー。

 

ユズルハ『それにこれからあなたが我儘勝手なことをしないように我が国も抜き打ちで顔を見さして頂きますから…。本当に見たくない顔ですけど…。』

 

肩を落とし、去って行くダンヅー。ミゼ王国の兵士Aが駆けて来る。ミゼ王国兵士Aを見つめる一同。一歩前に出るシンノパクマン。

 

シンノパクマン『どうした?』

ミゼ王国の兵士A『はっ!…ガゴパ殿が。』

 

ミゼ王国兵士Aの方を向くユズルハ。

 

ユズルハ『ガゴパがどうしたのですか?』

 

俯くミゼ王国の兵士A『ガゴパ殿がガゴゴ殿の墓前の前で自刃いたしました。』

 

眼を見開くユズルハ。ミゼ王国兵士Aを、眼を細めて見つめるユミル、ユラル。

 

ユズルハ『…なんてこと!』

 

ミゼ王国の兵士Aは懐からガゴパの遺書を取り出す。

 

ミゼ王国の兵士A『ガゴパ殿の遺書です。…この度のバカイの責は私にあります。女王陛下の期待を裏切り、使者の任務を勤しむところ、ついつい気が緩み、酒と女に溺れて無駄に日数を使いダンファン王子との好を結べなかったばかりか、ダンガン王子、ダンファン王子、ソゲン大将軍の御子息全てを奪う原因を作ってしまいました。父の名に恥じぬどころか、父の顔に泥をぬったこの愚息をお許しください。このガゴパ、死してその責を果たします。』

 

額に手を当て俯くユズルハ。

 

ユズルハ『…閉廷します。』

 

一歩前に出るミゼ王国の文武官A。

 

ユズルハ『…閉廷します!閉廷させてください!』

 

ユズルハの頬から零れ落ちる涙。

 

 

C5 バカイ王国国王 END

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C6 毒

 

バカイ王国首都クラダンジョン王の宮殿。応接の間。向かい合って座るユズルハとダンヅー。外にはユミル、ユラルをはじめとした兜を被ったミゼ王国の文武官達と兜を被ったバカイ王国の臣下達が並ぶ。

 

ユズルハ『あなたから会食に誘われるとは思っていませんでした。』

 

頷くダンヅー。

 

ダンヅー『ええ、私も、いざいらっしゃられるかわからなかったのですじゃが…。』

ユズルハ『…心は入れ替えられましたか?』

 

ダンヅーは机に並べられた食べ物を見つめる。

 

ダンヅー『…ソユルが枕元に立ち、このままではいかんと。怒りに任せてジョルツギを斬ってしまってから…。はぁ。それに子供の頃のダンガンとダンファンをよく夢にみますんじゃよ。』

ユズルハ『そうですか。』

 

お茶をすするユズルハ。

 

ダンヅー『…ソユルがいなければ、私はだめですじゃ。ソユルが…。あっ…。』

ユズルハ『うっ…うう!』

 

震えだすユズルハ。立ち上がるダンヅー。

 

ダンヅー『どうか…なされたか?』

 

のたうち回り、喉を掻きむしるユズルハ。机がひっくり返され料理が散乱する。

 

ユズルハ『ぎっ…うげっ…ごえっ!』

 

苦悶の表情を浮かべ、口から血を垂らすユズルハ。後退りするダンヅー。

 

ダンヅー『え、ええっ!!!?』

 

ユズルハに駆け寄るミゼ王国の文武官達。

 

ミゼ王国の文武官K『女王陛下!』

ミゼ王国の文武官L『女王陛下!どうなされましたか!』

ユミル『女王陛下!』

ユラル『女王陛下!』

 

動かなくなるユズルハ。

 

ユラル『毒だ!』

ミゼ王国の文武官A『何!毒だと!』

シンノパクマン『ともかく女王陛下を…。』

 

ユズルハの脈をとるユミル。

 

ユミル『手遅れだ。』

 

眉を顰めるシンノパクマン。呆然とするダンヅー。剣を抜くミゼ王国の文武官達。

 

ミゼ王国の文武官A『女王陛下の仇!』

 

首を横に振るダンヅー。

 

ダンヅー『ち、違う!』

 

ミゼ王国の文武官Aはダンヅーに向けて剣を振り下ろす。バカイ王国の臣下Aがミゼ王国の文武官Aの件を受け止める。

 

バカイ王国の臣下A『王!お逃げを!これは何かの謀略です。』

ミゼ王国の文武官A『ええい、何を言っている!年増だのアバズレだの舅オバサンだの女王陛下の悪口を言っていたのは知っておるわ!何が謀略だ!切れ切れ!切り捨て!!』

 

腰を抜かすダンヅー。斬りかかるミゼ王国の文武官達。応戦するバカイ王国の臣下達。

 

バカイ王国臣下B『王!早くお逃げ…。』

 

背中から切られ血しぶきを上げて倒れるバカイ王国臣下B。ユミルとユラルは元ソユル配下のバカイ王国臣下を優先的に切り捨てる。

 

ダンヅーは起き上がり、駆けだす。バカイ王国の臣下達の血が応接の間を染め、多くの死体が転がる。転ぶダンヅー。ダンヅーに剣を向けるミゼ王国の文武官A。ミゼ王国の文武官Aの後ろに現れるシンノパクマン、ユミル、ユラルをはじめとするミゼ王国の文武官達。

上体を起こし彼らを見つめるダンヅー。

 

ダンヅー『…ま、まま待ってくれぇ!待ってくれぇ!』

 

首を横に振り、後ずさりするダンヅー。

 

ダンヅー『違う。…違う違う違う!何だ!これは何だーーーーーーーーーーーっ!!!』

ミゼ王国の文武官A『女王陛下の仇!』

 

ダンヅーに振り下ろされるミゼ王国の文武官Aの刃。ダンヅーの血がミゼ王国文武官Aを染める。ダンヅーを、眼を細めて見つめるユミルとユラル。

 

C6 毒 END

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C7 即位

 

ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。郊外に建つ小さなユミルの家。椅子に座り俯き、涙を流すユヅル。

 

ユヅル『あのお優しいユズルハ様が殺されるなんて。』

 

ユヅルの肩を叩くユミル。

 

ユミル『ああ。』

ユタの声『ごめんください。ここはユミル殿の御宅ですか?』

 

顔を上げるユミルとユラル。ユラルが外に出る。ユラルを見つめるユ王国の臣下のユタ。一礼するユタ。

 

ユタ『国中が喪に服している最中に申し訳ない。』

 

首を横に振るユラル。ユラルの方へ歩いてくるユミル。

 

ユミル『…私がユミルだが。』

 

ユミルを見つめるユタ。

 

ユタ『私、ユ王国のユタと申します。遠い親戚と会えることを嬉しく思います。まあ、今はユズルハ殿の死でそうも言ってはいられませんが…。』

ユミル『…ご用件は。』

ユタ『重大な話になるのでここでは。』

ユミル『分かりました。では、中で。』

 

ユミルとユラルはユタに背を向け、口角を上げる。

 

 

ユランシア大陸テウシンの地。ミゼ王国。首都キョン。郊外に建つ小さなユミルの家。広間に座るユタ。お茶を持って来るユヅル。ユヅルはユミルとユラルの顔を向く。

 

ユヅル『何かとても重要な話みたいですから、私はこれで…。』

 

ユヅルの方を向くユタ。

 

ユタ『いえ、これはユヅル様にも関係のある話です。』

 

瞬きするユヅル。

 

ユヅル『えっ!』

ユタ『ミゼ王国は血縁の女性が統治すると決まっております。そしてユズルハ殿の血縁はユ、つまり我々のユの血縁が継がなければなりません。』

 

ユタを見つめるユヅル。

 

ユタ『…単刀直入に我々はあなたを次期、ミゼ王国女王に抜擢します。』

 

眼を見開くユヅル。

 

ユヅル『いえ、だって、私は。ユズルハ様の様にはなれない…。それに、私より立派な方はユの血縁の中にもいるはずです。』

 

ユヅルを見つめるユタ。

 

ユタ『…あなたは、今ミゼ王国が直面している状況を理解しておいでですか。』

 

首を横に振るユヅル。

 

ユタ『バカイ国王ダンヅーを返り討ちにした影響で、各国はミゼに対して非難をし、強硬な姿勢を示しています。結論から言えば、ミゼの立たされた苦境を見て誰もミゼの王になりたくないのですよ。』

 

眉を顰めるユヅル。

 

ユヅル『そんな勝手な。苦境に立たされたからと言って、ユズルハ殿が築き上げたこの地を、人を見捨てるのですか?だって、同じ血縁の…。』

ユタ『血縁など関係ありません。甘さには群がり、辛さからは逃げる。それが人です。』

 

ユタを見つめるユヅル。

 

ユヅル『…分かりました。』

 

ユヅルはユミルとユラルの方を向く。

 

ユヅル『…お兄様。私…。』

 

頷くユミルとユラル。

 

ユヅルはユタの方を向く。

 

ユヅル『その抜擢。お受けします。ミゼが…生まれ育ったこの故郷が苦境に立たされているのなら、微力ながら力になります!』

 

ユヅルの眼を見つめるユタ。

 

ユタ『…いい眼をしている。』

 

立ち上がるユタ。

 

ユタ『では、頼みます。』

ユヅル『はい。』

 

 

ミゼ王国の首都キョン。ジュ宮殿の政の間。玉座の左右に並ぶミゼ王国の文武官達。扉が開き、玉座に向けて進むユヅル。ユヅルを見つめるミゼ王国の文武官達。ユズルハは玉座の前で跪く。暫くして立ち上がり、ミゼ王国の文武官達を見回し、一礼するユヅル。

 

ユヅル『皆様。私がユヅルハ様の後に指名されたユヅルです。』

 

ユヅルを見つめるミゼ王国の文武官達。

 

ユヅル『…この玉座は、本来ならば私の様な下郎の身が座ることを許された席ではありません。』

 

ユヅルを見つめるシンノパクマン。

 

ユヅル『しかし、今、この国は苦境に立たされています。聡明だったユズルハ様はお亡くなりになり、バカイ王を殺傷したことで、各国からの強硬な姿勢と非難は止みません。私のような身分のものが、この席に座ることすらおこがましいことです。ですが、私には、私の故郷、ユズルハ殿が築き上げたこの地を、人を見捨てることなんてできない。』

 

涙を流すユヅル。ユヅルを見つめるユミルとユラル。

 

ユヅル『…ううっ。すみません。』

 

ユヅルは涙を拭く。

 

ユヅル『…この苦境を乗り切るために微力ですが全力で女王の任に取り組みます。その為に、

長い間このミゼの国を支えて来た皆様の力と知恵でお力添えをしていただきたいのです。

このミゼ王国を、ユズルハ様が築いたこの国を、人を守り、人々が今よりも幸せに暮らせる国家にし、ユズルハ様の名に恥じない国家にするために。』

 

ユヅルは跪き、頭を深々と下げる。

 

ユヅル『どうか。よろしくお願いします。』

 

ざわめき。ユヅルを見つめるミゼ王国の文武官達。ミゼ王国の文武官Aが跪き、頭を下げる。跪き、頭を下げるシンノパクマン。次々とユヅルに頭を下げるミゼ王国の文武官達。

 

 

夜。ミゼ王国。首都キョン。郊外に建つ小さなユミルの家。二階。窓から外を見るユミルと扉の傍らに立つユラル。

 

ユミル『まだだ、まだ、我々は歩み続けなければならない。ユラル。』

ユラル『はい。』

ユミル『王は偉大な業績を残して初めて王として残るのだ。』

 

ゆっくりと頷くユラル。

 

C7 即位 END

 

END

 

説明
・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
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