地震
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 二時間ぐらい寝た、と思ったら目が覚めて、たぶん地震があったんだろう、枕元に本が崩れてきていて、もう少し頭の方に落っこちてきたら、額を打って目覚めただろう、本を戻しながら、枕に頭を据えなおしながら、眠くない、と思うのは、たぶんまだ揺れているような気がするからで、だとすると長い地震だけど、そんなはずはない、本当の長い地震のあとで、いつまでも揺れが収まらないような気がする症状に悩まされるというのが、大地震の後にはよくあるというし、今度のもそんな感じだろう、だいいち、私は最近何がなくても揺れているような気がするし、医者に言わせれば、自律神経失調、と言うことなのだろうけれども、薬を飲んでもいっこうに効く気がしないので薬はみんな排水溝に流してしまう、そう言うわけだから、立っていても、ちょっと手すりが必要になるし、そう言うとき同僚は私のことを船酔いと言ってからかうのだけれども、私の方はいっこうにまじめであって、私が揺れているんじゃない、君たちが揺れを感じていないだけなのだって思っているのだけれども。

 本当に地震があったのかどうか知りたくてスマートフォンを見てみて、Twitterの速報を地震で検索してみるけれども関東の方では誰も地震を呟いていなくて、すると夢でも見ていたのかしらと思うけれども、遠くの方から地鳴りは聞こえるし、これはきっと地震が来る前に目覚めるやつかなと思う。昔から地震の前兆には敏感で、私はよく家族の中で自分一人だけが夜中に目覚めて、地鳴りの音が聞こえてお母さんを起こすと、お母さんは何にも気が付かないものだからどうして起こしたりするのと言って私を軽くしかるのだ、その後でタンスの引き出しが飛び出してきてもうすぐ地面に落っこちて弟の頭にぶつかるというところで止まったりするので、私の言っていたことは間違いではなくなるということが分かる。

 地震が来る、たぶん間違いのないことなのだ、私は目を覚まして枕元の眼鏡をかけ直して、それから布団の中であぐらをかいて、ちょっと考えて台所へ行って水を出して水を一杯飲んで、うまい、それから電気をつけないで地震を待つ(夜の地震は電気を点けない方がなんとなくそれらしい、うまく言えないけど、その方がお化けが来た感じがある)、しばらく、一分も、二分も、十分も待って、地震じゃないなと思う、私が目を覚ましたのは地震じゃないなと思って、ふてくされて寝てしまう。

 翌朝、きちんとした目で気象庁のサイトを見て、地震が来ていないか確かめたけれども、やっぱり地震は来ていなくて、私は夜中に目が覚めた分だけ眠れていなくて、眠たくて仕方がない。

 

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オリジナル小説です
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