マイ「艦これ」「みほ3ん」(第参部)EX回 第11話『決着と絆』
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「えぇ〜!負けたっぽい〜?」

 

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マイ「艦これ」「みほ3ん」(第参部)

 EX回:第11話『決着と絆』

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自分の喉が落ち着いたところで私は再び海上に目をやった。

 

「演習はそろそろ決着するかな……」

私は呟いた。

 

私の背中を擦(さす)ってくれていた五月雨も一瞬、その手を止めて会場を見たようだ。

「そうですね……そんな感じですね」

 

だが海上では相変わらず激しい攻撃が続いている。視界の悪い状態は続いていて水柱の壁が生じていた。

 

:金剛(ブルネイ)

「Oh! ソーリー」

 

:比叡(ブルネイ)

「頭、下げて下さいね!」

 

ブルネイ側の金剛と比叡が連射している。

 

 しかし私のインカムに入ってくる音声は海上の戦闘シーンとは、まったく違っていた。実に奇妙な構図が展開されていた。

やがてブルネイの金剛は、横に居る比叡に攻撃を緩めるように腕を横に突き出して指示している。

 

:金剛(ブルネイ)

「もう良いワ!今度は外ネ」

 

:比叡(ブルネイ)

「はい! 行きます!」

 

 ブルネイの艦娘二人は最初、私たち美保の二人の至近距離を狙っていた。やがて中心から外側に向けて再び水しぶきの壁を作るように砲撃を続けた。それは迫力があり観客は大喜びだ。

 

 私のインカムにも断片的に相手側の音声が入る。

 

:金剛(ブルネイ)

「イェイ! たまには一斉射もイイネ!」

 

:比叡(ブルネイ)

「お姉さま……でも慎重にお願いします! これから空母が動きますから」

 

:金剛(ブルネイ)

「No problem ヨ!」

 

:赤城(美保?)

「今のうちに……」

 

:日向(美保?)

「早く!」

その陰では互いの赤城さんペアと日向ペアが動き出していた。水柱の陰で、美保の金剛が赤城さんたちと会話をしているのが聞こえてくる。

 

:金剛(美保)

「Oh! 赤城さん? ……これは?」

 

:赤城(美保)

「これは特殊メイクよ。墨で体を汚してカモフラージュするの……大丈夫。服に付いても洗濯すれば落ちるから」

 

絶対、関係者以外には聞かせられないマル秘音声だ。しかし衣装の心配をしてくれるなんて優しい赤城さんだな。

 

さらに赤城さんは日向に言った。

 

:赤城(美保)

「さ、私たちは外側の、所定の位置へ」

 

:日向(美保)

「了解!」

 

『後はよろしく』

『ありがとう』

『艤装も汚しておいてね』

直ぐに慌ただしく艦娘たちのやり取りがあった。

 

「これでフィニッシュ!」

恐らくブルネイの金剛だろう。その直後に激しい水柱と轟音。まるで残弾の全てを撃ち尽くすかのようだった。もちろん観客席の人たちの興奮もクライマックスに達していた。

 

……そして水煙が晴れた。その輪の中には美保の艦娘たちが大破していた。ボロボロになって抱き合っている金剛と比叡。よく見れば、その周りにも同様な赤城さんと日向……まあ、彼女たちは実際には戦っていない。同じようにカモフラージュしているだけで、そう見えるだけだ。

 

 私もインカムの音声が無ければ、この状況下で美保の艦娘がブルネイの艦娘たちにボコボコにされたようにしか見えなかっただろう。

 

「……」

私の背中を擦ってくれていた五月雨が息を呑んでいる感じが伝わって来た。半分振り返って彼女を見ると両手で口を押さえている。心配してくれているのか? 五月雨……ああ、そうか。彼女には美保の艦娘たちの会話は伝わらないか。

 

いくら演習とはいえ、彼女は本気で美保の艦娘たちを心配してくれているようだ。何だか申し訳ないな……本当のことを言うべきか、どうか? だが言ったらこの真面目そうな子には別の意味で衝撃かなあ……私は躊躇(ちゅうちょ)した。

 

「こ、これは……?」

直ぐに本部席の判定官が双眼鏡で海上を覗いている。彼は何度か頷(うなづ)くと、手にした旗を高く上げた。

 

それを受けて実況も叫ぶ。

「美保鎮守府旗艦・金剛の轟沈判定が出ました! 我がブルネイ鎮守府の勝利ですっ!」

「しかし、これは呆気ない終わり方でしたねぇ。まさか航空機の爆撃で終わるなんて」

 

……その遥か向こうでも呆気に取られて立ち尽くしている美保の夕立がいた。

「えぇ! 負けたっぽい?」

 

 がっくりうなだれる夕立。それでも闘争心はあったんだな。偉いぞ、夕立。

しかし意外に美保の金剛は粘ったな。演習の時間も予定よりも、かなり延長したようだ。やはり旗艦は要領が良い赤城さんにしておくべきだったか。

 

 相手の武蔵様が、この演習の流れの解説をし始めている。それを感心して聞いている観客たち。よどみの無い解説だが……もしこの演習の裏の本当のことも悟っていて、敢えて違うことを即興で解説しているとしたら? 

 

 私はインカムを外して呟いた。

「恐らく彼女は分かっているだろうな」

 

「あ……」

私を介抱してくれていた五月雨は、その手が疎かになったことを詫びようとした。私は手を上げてそれを軽く制した。

 

「ありがとう五月雨……だいぶ楽になったよ」

私の言葉に彼女ははにかんだ様な表情を見せた。本当に純朴そうな子だな。

 

 水柱による水蒸気で視界が落ちている上に戦闘も終わったので、観客の多くは海上を注目していない。一部は立ち上がって屋台を覗いたり、祭りの他のイベント会場へ移動し始めている。

 

『以上で演習イベントは終了いたします。皆様、ごゆっくりお祭りをお楽しみ下さい』

会場にもアナウンスが流れる。

 

「では司令、私も失礼してよろしいでしょうか?」

 

「あ、ああ」

五月雨の言葉に私もハッとしたように応える。

 

 彼女に双眼鏡を返して私は改めて海上を見た。そこでは、ブルネイと美保の金剛と比叡たち4人が互いに抱き合って泣いている。身を挺して姉を護ろうとした美保の比叡の一途な姿に心を打たれたようだ。

 

 演習とはいえブルネイの提督に疑われるほど実力が違い過ぎた。それに今回はブルネイは美保と同じ艦娘をあてがって来た。ちょっと趣味が悪いというか……艦娘たちにとっても自分と同型艦を攻撃するのは葛藤があるだろう。そういう一連の想いが演習を終わって一気に緊張が解き放たれたようにも見える。

 

 私は抱き合う艦娘を見てふと、この夏に境港の路地で深海棲艦に対して両手を広げた寛代を思い出した。振り返ると寛代は相変わらず寝ているが……。

ただそれは艦娘にしか分かり得ない絆、そして想いだろう。それこそが艦娘が単なる機械ではない重要な証しなのだ。抱きあう比叡と金剛の姿に私も、いろいろと考えさせられる。

 

 まあ美保の金剛や夕立は今回、本調子じゃなかった。それに演習冒頭の肉弾戦も美保の龍田さんが担当してくれて、何とか様になった。

そう、お互いの龍田さんの機転によって何とかイベントが回ったようなものだ。もしこれが金剛や夕立だったらゲロゲロ地獄で大惨事。きっとイベントも台無しになったことだろう。

 

 ダブル赤城さんも、お互いに健闘を讃えあっている。また二人の日向同士も戦闘機を取り出して何かを語り合っている。

 ブルネイの夕立が美保の龍田さんの側頭部を気にしている。龍田さんの手を当てて心配そうな顔をしている。でも龍田さんは『大丈夫よ』という雰囲気で笑っている。相手の夕立は強いだけでなく優しさも備えているようだ。素晴らしい。

 

 一方ブルネイの龍田さんは蚊帳の外に押し出された格好の美保の夕立を呼びに向かっている。夕立は脱力して座り込んでいたが……気づいたようだ。直ぐに立ち上がると恥ずかしそうに頭をかいている……お前は無線を全然、聞いて居なかったんだろうな! やれやれ。真っ直ぐな性格も過ぎると問題だよな。

 

 さて、すべてが丸く収まったようだ。きっとブルネイの大将も水に流してくれるだろう。私は、ゆっくり席を立つと向こうの席に座っている大将の元へ向かった。

 

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中〜(^_^;)

http://www13.plala.or.jp/shosen/

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PS:「みほ3ん」とは

「美保鎮守府:第参部」の略称です。

説明
演習は一方的にブルネイ側が勝利した。しかし、あっけなさと同時に様々な思惑が渦巻くのだった。
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二次創作 ブルネイ 五月雨 艦娘 艦これ 美保鎮守府 

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