マイ「艦これ」「みほ3ん」(第参部)EX回 第12話『万事休す?』
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「おい、お前何者だ?」

 

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マイ「艦これ」「みほ3ん」(第参部)

 EX回:第12話『万事休す?』

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 観覧席中央に居た私は、ゆっくりと席を立つと向こう側に座っていたブルネイの提督の元へと向かった。

 

「いやぁ、流石は大将、完敗です」

私はそう言いながら右手を差し出す。瞬間的に微妙な間があった。あれ、やっぱりまずいか?

 

 しかし直ぐに提督も私に握手をしてくれた。

 

『よし、これで、あとはさりげなく逃げよう……』

内心そう思った私は手を離そうとした。

 

「あれ?」

思わず声が出た。

 

提督はニコニコしているのに私の手を掴んで離さない。しかも次第に力が入る。

「ちょ、ちょっと? 痛いのですが……」

 

彼は笑顔なのだが目が笑っていない。握手した手は、どんどん力が強くなる。

 

「おい、お前何者だ?」

 

あれ? ……もしかしてお互いの艦娘たちが裏工作したのが気に入らなかったのかな? でもまさか。彼は彼女達の通信は聞こえていないはずだが。

 

硬直した空気が流れる。

 

……いや、これはどうも私の素性を疑っているのだろうか? 何となくそんな感じだ。

 

 しかし私だって美保鎮守府の提督だぞ。(いつも艦娘たちに振り回されているけど)

いやいや、そうだとしても今回は何を咎(とが)められる必要があるんだ?

 

そう思ったら急に強気になってきた。

 

 そもそも妙なのはブルネイの鎮守府ではないか?

まだ開発段階の量産化艦娘を従えて現地陸軍の憲兵まで手なづけた挙句に、南国で一つの帝国を築いているじゃないか?

おまけにブルネイの艦娘たちは見たことも無い戦術を駆使しながら『空中魚雷』等、謎の新兵器を使う。艦娘の量産化はおろか帝国海軍にもまだ知られていない新兵器を開発して独占するつもりか?

 

『疑うべきはむしろ、そちらではないのか!』

……と、心の中で叫んだ。やっぱり声には出せない。

それでも私は負けじと手を握り返そうとする……が、やはり腕力ではかなわないか。

 

ふと見ると憲兵さんたちも私たちの不穏な空気に気付いたらしい。人ごみからジリジリと近寄って来る。

 

『あ、ヤバい』

うはあ、やっぽりケンペイさんは苦手だ。冷や汗がどっと吹き出してくる。

 

『祥高さん! 寛代! 艦娘の、お前たちが何とか申し開きをしてくれ……』っと思ったが。

 

「あれ?」

 私が半分振り返ると、二人ともたった今、起きたばかりだ。ボーっとしてる? あちゃー!

 

 美保の金剛たちは相変わらず海の上だ。怖いけど頼りになりそうな技術参謀は何処へ行ったのか?

青葉さんと夕張さんは人ごみに紛れてる……何でこうなるの?

 

『万事休すか!』

私が心の中で叫んで観念したときだった。

 

「ていっ、……とく……大本営からコレが!」

浴衣を着たブルネイの大淀さんが何かの文書を掴んで駆けて来る。

 

提督は私に疑いの眼(まなこ)を向けたまま、いったん手を離した。一瞬、姿勢を崩しかける私。

 

『あ痛ぁ』

口には出さなかったがジンジンと痺れる掌(てのひら)を軽く振る私。これは暫く痛みが残りそうだな……彼は万力(まんりき)人間か?

 

 その間に大淀さんが提督に書類を手渡す。この暑いのに浴衣で全力疾走して可哀想にゼエゼエ言っている。かなりバテたようだ。

 

 その姿を見て私は美保の大淀さんを思い出した。彼女もしょっちゅう鎮守府内を走り回っている。だが意外に息を切らしている姿を見ないな……あまりにも走り過ぎて鍛えられたのだろうか?

 

 そんな私の妄想をよそに提督は書類を確認している。私もそれをチラッと見ると『緊急』の判が押印されているようだ。

 

 彼は直ぐに『信じられない』といった表情を浮かべた。

そしてもう一度その書類を反復するように読み上げる。

「なになに……えっと『予定していた美保鎮守府の艦隊は濃霧の為、航行が難しいと判断。内地へ引き返す』だと? どういうことだ」

 

 彼が顔を上げると大淀さんは少し落ち着きを取り戻したように言った。

「はい。ですから、こちらの提督は人違いで……」

 

 言いかけた彼女だったが……やはりまだ息が苦しそうで全部言い切れなかった。

 

ただ私は彼女のその喘ぎぶりに勝手にドキドキしていた。いやいや今はそんな場合じゃないんだが、ついつい美保の大淀さんを思い出してしまう。ヤッパ雰囲気は似ているよな。

 

「……」

提督が絶句している。

 

すると近くにいた艦娘の誰かが言う。

「勘違い、……ってか艦(かん)違い? あはは」

 

誰だよ? 今、言ったの。ふと見ると青葉……あ? 美保ではない、ブルネイの青葉さんか。

 

 ただ提督は、その声でちょっと表情を緩めた。観覧席付近の張り詰めた空気も一気に解けたようだ。近づいていたケンペイさんたちも、足を止めた。全体に安堵した空気が漂う。

 

 だが私はそれまでの緊張と、この暑さで目まいがしてさすがに卒倒しかけて足元がふらついた。

 

「危ない!」

慌てて手を差し出してくれたのは、いつの間に戻ってきたのかブルネイの五月雨だ。

 

 一瞬、意識が遠くなったが、気が付くと五月雨が私を支えてくれていた。お陰で私は倒れずに済んだ。可愛らしい声で彼女は言った。

「大丈夫ですか?」

 

「ああ」

やや長身の私を小柄な五月雨が支えて居た。ちょっと情けない格好ではあったが……改めて彼女を見上げた私は内心思った。

『ああ、君の髪も蒼いんだね』

 

直ぐに私は恥ずかしさを誤魔化すように言った。

「有難う」

 

「いえ……」

それまでは、どちらかというと無表情だった彼女は、ここで初めて微笑んだようだ。

 

 私は彼女に支えられるようにして立ち上がった。振り返ると……やれやれ、祥高さんに寛代! お前達なあ、ボーっとこちらを見ているだけでなくて助けてくれよっ! はぁ、美保の司令様は、いろいろ孤軍奮闘してピンチだったんだぞ!

 

 私は身体の不調よりも自分の心のショックが大きいと思った。優しい五月雨の髪の色と相まってブルネイの南国の空は無性に青く見えた。

 

 提督は大淀さんに何か指示を出している。会場は落ち着きを取り戻した。スタッフの艦娘たちは、この演習のために設営した椅子を方付け始めている。

 

 やがて五月雨が呼ばれ大淀さんから何か指示を受けている。直ぐに戻ってきた彼女は私たちに言った。

「では皆さん、こちらへご案内します」

 

 金剛たちも、戻ってきた。龍田さんが敬礼をする。

「ただいま戻りました」

 

「ああ、ご苦労」

私も敬礼を返す。ふと見ると金剛や夕立はバテバテだ。

 

「……」

無言よな。まあ演習とはいえ戦闘直後だからな。精神的ショックも大きいだろうし。

 

「行こうか」

私たちは先行して歩き始めた提督の後に続いた。

 

 落ち着いてきたので改めて敷地内を見る。ブルネイ泊地は広大な敷地だ。その中にある大きな鎮守府本館の中へと導かれる。私たちは艦娘たちを引き連れてゾロゾロと歩いていた。

 

「ハッハッハ、いやースマンスマン。どうにもコッチが早とちりだったなぁ」

 提督は豪快に笑いつつ私の肩をバシバシと叩く。さっきから何度も……私も苦笑しながら我慢しているけどホントは痛いんだって。

 

この提督の豪快な雰囲気は武蔵か大和クラスのイメージだな。美保にはそんな立派な艦娘は居ないから、想像だが。

 

 私は痺れてきた肩を軽く押さえながら応える。

「ハハハ……、まぁ、これも良い経験ですよ」

 

完全な社交辞令。さっきは掌で今度は肩か……そのうち満身創痍で私はぶっ倒れそうだな。

 

「しかしまぁ、すげぇ偶然もあるモンだ。俺たちの本来の演習相手と全く同じ編成だったとはな」

私はハッとした。そう、この彼の言葉で確信したのだ。理由は分からないが私たちは何処かの艦隊と入れ替わったに違いない。

 

 しかしそれは本当に単なる『偶然』なのだろうか? 私は常々『縁』はあると考えている。だから個人的に今回のことは『必然』としか思えない。だがこれは提督には黙っておく。余計にややこしくなるから。

 

 そういえば美保の青葉さんと夕張さんが居ないな。あと「入院」しているはずの技術参謀も。どいつもこいつも大人しくジッとしない連中だ。

ただ彼女達が勝手にブルネイを徘徊するとしても、お祭り後のゴタゴタで、うまく紛れてくれることを期待しよう。

 ケンペイさんも緊張が緩んでいることだろうし。私はそんなことを考えながら歩いていた。

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中〜(^_^;)

http://www13.plala.or.jp/shosen/

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PS:「みほ3ん」とは

「美保鎮守府:第参部」の略称です。

説明
ブルネイの提督に疑われた美保司令は誰も助けられない状況に追い込まれピンチを迎えた。しかし大淀さんが駆けてきて……。
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艦娘 艦これ 艦隊これくしょん ブルネイ 「みほちん」 ピンチ 五月雨 

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