本編補足 |
道筋
C1 行為
C2 条件
C3 引っ越し
C4 協力者
C5 城
C6 到着
C7 葬儀
C8 許し
C9 開かれた道
C1 行為
ユランシア大陸の中央に位置し、ウロボス海に囲まれ、南方がリヴァイアス海に面したセントラル大陸。ワンデイ王国港町トトルゥガ。トトゥルガ軍港に停泊するアドヴァンス・ギャリー戦艦を初めとする軍艦。湾岸の街道沿いに立つワンデイ王国軍人キッド・チャンスワカメの館。北の間。ソファに向かい合って座るワンデイ王国のマンディ王子の世話役キッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。ため息をつくジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…はぁ。分かってはいたことですが。なれど…なれど!王位継承から外されたとはいえ王子はまだ王族の生活が抜けきっていない。いや、致し方のない事とはいえ、飯は不味いとか、部屋が狭いとか…もっと高級な内装がいいと…。』
額に手を当てて俯くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『もぅ。こちらの懐事情も察して頂きたい。』
キッド・チャンスワカメ『飯ならホクガ殿に任せておけば大丈夫だ。ホクガ殿が作った飯は文句を言わずに全て食っておられる。』
頷くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…あの方はあらゆる面で優秀でありますからね。我が家にいるのが勿体ないくらいの。雇ったのは賢明な判断でした。』
キッド・チャンスワカメ『それに最近は街へ良く行かれとるぞ。』
キッド・チャンスワカメを見つめるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『街へ。視察、いやクロンド家の方々との交流かな?まあ、王子も変わってきたということか。』
扉が開き、息を荒げて顔を真っ赤に染めながら駆けこんで来るキラ兄弟。
ミハエル・キラ『キッド様!ジット様ぁ!』
マグナス・キラ『王子様がぁ!王子様がぁ!!』
キラ兄弟を見つめるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。立ち上がるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『どうした。』
泣き出すキラ兄弟。
ミハエル・キラ『あんなの見てられない。』
マグナス・キラ『あんなこと…もう…あんなハレンチな。』
キラ兄弟を見た後、駆け出ていくジット・シオスコンプ。立ち上がり続くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメの館。中庭に面したマンディ王子の部屋の階段に座る半裸のワンデイ王国第一王子マンディ・ワンデイ。彼の周りを半裸の高級娼婦たちが囲む。マンディ・ワンデイの股座に顔をうずめる高級娼婦A。彼らを見つめ唖然とするキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。マンディ・ワンデイは体を震わせ、上を向く。
マンディ『…うっ!』
顔を下げ、満ち足りた表情を浮かべるマンディ・ワンデイ。喉を鳴らす高級娼婦A。彼女は立ち上がり、唇を上腕で拭う。
マンディ・ワンデイ『ふぅ〜。』
マンディ・ワンデイはキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプの方を向く。
マンディ・ワンデイ『何だ。お前らか。』
鼻の下を伸ばすキッド・チャンスワカメと眉を顰めるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『王子!この者達は???』
高級娼婦達を見回した後、キッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプの方を向くマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『わかんねえの?お前ら童貞?』
頭を抱えるジット・シオスコンプ。高級娼婦Bの胸を揉み、高級娼婦Cにキスするマンディ・ワンデイ。キッド・チャンスワカメの館の正門から駆け入るワンデイ王国重鎮で四大貴族の一つトイ家のサウザン。
サウザン『王子!!』
眼を見開くマンディ・ワンデイ。サウザンの方を向くキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
マンディ・ワンデイ『げぇ!爺!!』
サウザン『聞きましたぞ!!』
身構えるマンディ・ワンデイと高級娼婦達。サウザンはマンディ・ワンデイを睨み付けながらキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプの方を指さす。
サウザン『女遊びに現を抜かし、仕送りでは足りずにこの者達の家を担保に借金を重ね!!!』
唖然とするキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
マンディ・ワンデイ『べべ、別にいいだろ!俺の部下のこいつらの家だし!!』
一歩前に出るジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『ちょっと待ってください!そんなこと一言も聞いておりませんよ!!』
ジット・シオスコンプの方を向くマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『え?部下の者は俺のもの。俺、王族だし、当然でしょ。お前ら頭おかしいの?』
唖然とするキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。ため息をつくサウザン。
サウザン『ともかく一度、王のもとまで来てもらいます!!』
首を横に振るマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『え、なんであんなクソ親父のとこなんか…。』
サウザン『御命です!いいから来ていただきます!』
マンディ・ワンデイを引っ張って行くサウザン。
マンディ・ワンデイ『ちょちょちょっと。嫌だって。いーやーだー。』
サウザンはキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプの方を向く。駄々をこねるマンディ・ワンデイ。
サウザン『キッド殿とジット殿。後で王より沙汰が来るでしょう。』
頷くキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。サウザンは放送禁止用語を連発するマンディ・ワンデイを引っ張って行く。顔を見合わせるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。彼らを見つめる高級娼婦達。
C1 行為 END
C2 条件
首都ウィークエンド。中央部にあるサウザンの屋敷。応接室。サウザンと向かい合って座る、キッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
サウザン『貴殿らには迷惑をかける。』
ジット・シオスコンプ『…いえ、それでその借金の方は?』
頷くサウザン。
サウザン『…王はこちらで払うと。』
キッド・チャンスワカメ『おう。それは助かった。』
サウザンはキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプの顔を見る。
サウザン『が。』
キッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ『が?』
頷くサウザン。
サウザン『…1つ条件がある。』
サウザンの顔を見つめるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
キッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ『条件?』
頷くサウザン。
サウザン『うむ。言い辛い事だが、今回のこの件、王子へのキッド殿の監督不行き届きの罪状がある。』
目と口を大きく開けるキッド・チャンスワカメ。キッド・チャンスワカメの方を向いた後、サウザンの方を向くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『いや、それは…王子が独断で。』
頷くサウザン。
サウザン『…だが、王と我々の以外の大貴族たちはそう思ってはおらん。』
俯くジット・シオスコンプ。肩を落として俯く、キッド・チャンスワカメ。
ジット・シオスコンプ『なんとまあ…。』
サウザン『だが、条件を飲めば。借金は国が肩代わりし、今まで倍以上の給金も支給する。階級も上がる。』
サウザンの顔を見つめるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
キッド・チャンスワカメ『おお!それならば、その条件を飲みましょう!』
キッド・チャンスワカメの腕をつかむジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『兄上!話がうますぎます。』
キッド・チャンスワカメ『いや、でも、今までの倍以上の金額だぞ。それに階級だって…。』
ジット・シオスコンプはサウザンの顔を見つめる。
ジット・シオスコンプ『それで、その条件というのは?』
頷くサウザン。
サウザン『うむ。』
咳払いするサウザン。
サウザン『1つめ、チャンスワカメ家とシオスコンプ家の館を手放す。』
眉を顰めるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
キッド・チャンスワカメ『え。そ、それは…。』
ジット・シオスコンプ『それは困ります。住む場所が無くなれば…。』
サウザン『安心していい。そのかわりこちらが城を支給する。オコ城じゃ。キッド殿は晴れてオコ城主。ジット殿はその城主補佐じゃ。』
立ち上がって万歳するキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『やったー。城主だ!』
ジット・シオスコンプの方を向くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『おい。ジット。お前ももっと喜べ、わし、城主になったんだぞ!!』
顎に手を当てるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…オコ?聞いたことのない城ですが。』
サウザン『…まあ、そうだろう。ゲキオコ山にある城だ。』
眉を顰めるジット・シオスコンプ。両手を天井に伸ばしながら飛び跳ねているキッド・チャンスワカメ。
ジット・シオスコンプ『ゲキオコ山!!!!』
頷くサウザン。ジット・シオスコンプの方を向くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『なんだ?大きな声を出して!』
キッド・チャンスワカメの方を向くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『喜んでいる場合ではありませんぞ。ゲキオコ山なんて周囲に街も村もないんですよ!』
眼を大きく見開いてジット・シオスコンプの方を向くキッド・チャンスワカメ。キッド・チャンスワカメを見るサウザン。
サウザン『まあ、座りなさい。』
座るキッド・チャンスワカメ。ジット・シオスコンプはサウザンを見つめる。
ジット・シオスコンプ『サウザン殿。これはどういうことですか。説明を。』
頷くサウザン。
サウザン『うむ。それは2つ目の条件に関係する。』
サウザンを見つめるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…あ、あの〜。サウザン殿?それは…もしや…。』
ジット・シオスコンプの方を向きキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『どうした?ジット。青い顔なぞしおって。』
2、3回頷くサウザン。
サウザン『2つ目の条件は…マンディ王子のお世話だ。』
頭を抱えるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『やっぱり!!』
額に手を当てるキッド・チャンスワカメ。キッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプを見て、ため息をつくサウザン。
サウザン『すまんな。我々がマンディ王子の世話をしようとすると凄まじく嫌がり、抵抗も激しいのだ。それで、したかなく様々な方面に手配はして見たのだが、お前さん方の噂が広がり、誰もやりたくない…と。幸いオコ城なら、距離的に王子が遊ぶこともできなくなる。』
俯くキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『それで我々にと…。もう、これは交渉というより脅しですよ。サウザン殿。選択肢が一つしかないようなものだ。ねえ、兄上。』
ジット・シオスコンプの方を向くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『城主も賃金も嬉しいが、王子はなぁ…。』
顔を見合わせため息をつくキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
C2 条件 END
C3 引っ越し
ユランシア大陸の中央に位置し、ウロボス海に囲まれ、南方がリヴァイアス海に面したセントラル大陸。ワンデイ王国港町トトルゥガ。トトゥルガ軍港に停泊するアドヴァンス・ギャリー戦艦を初めとする軍艦。湾岸の街道沿いに立つワンデイ王国軍人キッド・チャンスワカメの館。正門から館を見つめるキッド・チャンスワカメにジット・シオスコンプとキラ兄弟。
キッド・チャンスワカメ『…ああ、住み慣れた我が家を手放すか。』
トトルゥガ軍港の方を向くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『トトルゥガともお別れですね。』
頷くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『そうだな。生れ育ったこの街ともお別れか。』
キッド・チャンスワカメの方を向くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『思えば、父上の命で、断絶していたシオスコンプ家の家督を継ぎ、館を得て…。』
キッド・チャンスワカメ『寿命が早くなければ相当な地位まで成り上がっただろうな。父上は。』
キッド・チャンスワカメの館を見るジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…野心の跡ですね。』
頷くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『我々は結局父上の様になれなかったからな。結局、何も残らなかったな…。』
泣き出すキラ兄弟。
ジット・シオスコンプ『…泣くな。キラ兄弟。』
ジット・シオスコンプの方を向くキラ兄弟。
ミハエル・キラ『だって、シャルウィワン様は。』
マグナス・キラ『身寄りのない僕達を迎え入れて下さって…。』
ジット・シオスコンプ『私まで泣きたくなってしまうだろう。』
大泣きするキッド・チャンスワカメ。彼の方を見つめるジット・シオスコンプとキラ兄弟。
ワンデイ王国プソプソ街道を見つめるキッド・チャンスワカメにジット・シオスコンプ、キラ兄弟達。
ミハエル・キラ『キッド様。あとどれくらいでつくんですか?』
マグナス・キラ『もう、疲れましたよ。休憩しましょうよ。』
キラ兄弟の方を向くキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。ジット・シオスコンプは太陽を見つめた後、キッド・チャンスワカメの方を向く。
ジット・シオスコンプ『…ううむ。兄上、このままではオコ山にたどり着くまで夜になってしまいます。ここは一旦、マルタトルの街に戻ってから…。』
プソプソ街道の方を向くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『いや…しかし、せっかくここまで来たのに戻るのか?』
ジット・シオスコンプ『ええ、でなければ野宿ですね。』
キッド・チャンスワカメ『野宿…。』
顔を見合わせるキラ兄弟。
ミハエル・キラ『野宿…。』
マグナス・キラ『野宿なんて。』
キッド・チャンスワカメ『しかたあるまい。暫くしたら進むぞ。』
道端に座り込むキラ兄弟。
ミハエル・キラ『なんであんなゴミクズ野郎の王子の為にこんな目に合わないといけないんですか!』
マグナス・キラ『ほんと、あの王子絶対に僕達についてきたらへばるよね。』
ジット・シオスコンプ『こらこら。気持ちは分かるが。大きな声を出すな。聞かれたらどうする。』
マグナス・キラ『んっ?』
下を向くマグナス・キラ。マグナス・キラの方を向くミハエル・キラ。
ミハエル・キラ『どした?』
マグナス・キラ『あれ…あ…。』
顔を上げるマグナス・キラ。
マグナス・キラ『キッド様。そういえばホクガ様は?』
唖然とする一同。
ミハイル・キラ『ちょちょちょ!ど〜するんですか!』
マグナス・キラ『王子のエサ、誰が作るんですか!!』
キッド・チャンスワカメの方を向くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『ちょっと、兄上!』
腕組みするキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『うむ。』
ジット・シオスコンプ『いや、落ち着いてうむじゃないでしょう!』
自身の後頭部に手を当て笑い出すキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『ああ、すまんすまん。忘れとった。引っ越しの荷物の手配をしてもらったんだよ。』
胸をなでおろす一同。
ジット・シオスコンプ『なんだ。』
キッド・チャンスワカメ『なんでも、知り合いの人型機構で荷物を運んでくれるらしい。』
暫し、沈黙。キッド・チャンスワカメを睨み付ける一同。
ジット・シオスコンプとキラ兄弟『あ!?』
キッド・チャンスワカメ『どうしたそんな怖い顔をして。』
下を向き、拳を震わすジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…今、兄上、ホクガ殿が知り合いの人型機構を使って荷物を運ぶっていいましたよね。』
頷くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『ああ、その通り。』
顔を上げてキッド・チャンスワカメを睨み付けるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『ふざけんなや!バカ兄貴!その人型機構で私達も運んでもらえばよかったじゃないですか!』
眼と口を大きく開けて頷くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『ああ〜!その手があったか!』
額に手を当て、俯き首を横に振るジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…いや、考えてください!』
顎に手を当てるキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『むう。しかし、今からとなると…。』
人型機構の歩く音。振り向き、荷物を巻き付けたヴェルクーク級人型機構アパ仕様を見上げるキッド・チャンスワカメ達。
C3 引っ越し END
C4 協力者
ワンデイ王国プソプソ街道。ヴェルクーク級人型機構アパ仕様を見上げるキッド・チャンスワカメにジット・シオスコンプ、キラ兄弟達。
キッド・チャンスワカメ『こんな辺鄙なところに人型機構とは珍しいな。』
キッド・チャンスワカメの方を向くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『とりあえず、道の端によりましょうか。』
頷き、プソプソ街道の路肩に寄るキッド・チャンスワカメ、ジット・シオスコンプにキラ兄弟達。ヴェルクーク級人型機構アパ仕様は彼らの前で止まる。ヴェルクーク級人型機構アパ仕様を見つめるキッド・チャンスワカメ達。ヴェルクーク級人型機構アパ仕様のコックピットのハッチが開き、現れるヂョルガロン王国の元軍師で、キッド・チャンスワカメの配下のホクガ。ホクガを見つめるキッド・チャンスワカメ達。
キッド・チャンスワカメ『おお!これはホクガ殿!』
頷くホクガ。
ホクガ『キッド様。挨拶もせずに行ってしまわれたもので、それにしても、これに一緒に乗って行けば良かったのではと。』
キッド・チャンスワカメ『ああ、そうだった。すまんすまん。』
ジット・シオスコンプ『すまんじゃないですよ。兄上。』
ヴェルクーク級人型機構アパ仕様足部を触るキラ兄弟。
ミハエル・キラ『すごい。見た事しかないのに。』
マグナス・キラ『結構固いね。』
ホクガの後ろから現れる筋肉質で所々に傷がある女性で、紫のバンダナをし、風船ガムを膨らませる弓兼銃使いのアパ。彼女は風船ガムをはぜさせ、口に入れる。
アパ『ニシシシシ、話は聞いたよ。あんたらが、この国の第1王子の世話役になるってさ。』
アパを見つめるキッド・チャンスワカメ達。アパはホクガの方を向いた後、ジット・シオスコンプの方を向く。
アパ『いや〜、てっきりしっかりしてそうなあっちかと…。』
ジット・シオスコンプはアパの方を向く。
ジット・シオスコンプ『この方は?』
頷くホクガ。
ホクガ『ええ。』
一歩前に出るアパ。
アパ『ああ、アパってんだ。宜しくな。』
キッド・チャンスワカメはアパとホクガを見つめる。
キッド・チャンスワカメ『どういうご関係で?』
アパ『んっ、あんたら知らないのかい。ホクガ殿は、まあ、亡くちまってるが、ヂョルガロン王国国王ギュウキュウ王直属の軍師なんだぜ。』
ホクガを見つめるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
キッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ『えっ!』
アパ『まあ、テウシン…ヂョルガロンで厄介になってね。まあ、その好さ。』
額を拭うキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『そんな経歴の方だったとは。いや失礼いたしました。通りで、何事も卒なくこなすわけですね。』
ホクガ『昔のことです。それにヂョルガロンと取り巻きの国などユランシアのあなた方が知っておられるのもツァ王国ぐらいでしょう。』
頷くキッド・チャンスワカメ
キッド・チャンスワカメ『まあ、そうだな。』
アパ『送ってやるよ。入りな。』
ヴェルクーク級人型機構アパ仕様のコックピット内に向かって、ハッチを歩いていくアパ。彼女は立ち止まり、キラ兄弟の方を向く。
アパ『そこのガキ共も!』
ミハエル・キラ『乗っていいの?』
キラ兄弟の方を向くアパ。
アパ『んっ。ああ。乗れ乗れ。』
眼を細め、ホクガの方を向くアパ。顔を見合わせ、笑顔になるキラ兄弟。彼らはヴェルクーク級人型機構アパ仕様の中へ駆けていく。
ミハエル・キラ『やった!おばさんありがとう!』
マグナス・キラ『ありがとう!おばさん!』
顔をしかめるアパ。
アパ『おば…。』
プソプソ街道に止まるヴェルクーク級人型機構アパ仕様内部。コックピットのハッチで立ち止まるキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『それにしても、ヴェルクーク級…とは。』
キッド・チャンスワカメの方を向くアパ。アパの前を横切って行くキラ兄弟。
アパ『んっ?なんか問題でも?』
キッド・チャンスワカメ『いや、ヂョルガロン王国は、確か違った人型機構を使っていたような。』
ホクガ『カッシャ級ですね。』
2、3回頷くアパ。
アパ『ああ、それはあたいらは主に大陸方面で活動してるからさ。千年大陸連邦がライセンス販売に切り替えて人型機構が爆発的に普及したといっても、ユランシアに昔から普及してたのは…。』
アパはヴェルクーク級人型機構アパ仕様の装甲を叩く。
アパ『こいつ。このヴェルクーク級さ。下手に自国のものを大陸方面で使えば、現地で部品の整合性があわなくて難儀するからね。』
頷くキッド・チャンスワカメ達。コックピット内部を駆け回り、操縦席の横の金具にかけてある操縦冠を手に取るキラ兄弟。
ミハエル・キラ『これなんだろう。あ、なんかある。』
マグナス・キラ『押してみよう。ポチ。』
キラ兄弟の方を向くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『こら、あまり騒ぐな。』
コックピット内部に入るアパとキッド・チャンスワカメ、ジット・シオスコンプにホクガ。
キラ兄弟『はぁ〜い。』
アパは操縦席に座り、操縦冠を被る。
ホクガ『では、頼みますよ。』
頷き、レバーを動かすアパ。停止したままのヴェルクーク級人型機構アパ仕様。
アパ『んっ?』
レバーを動かすアパ。停止したままのヴェルクーク級人型機構アパ仕様。
アパ『んっ!!?んっ!!?』
レバーを激しく動かすアパ。停止したままのヴェルクーク級人型機構アパ仕様。
アパ『…えっ?故障…。燃料は入れてるし…。』
ホクガがアパの被る操縦冠にリミッターのボタンをオフにする。動き出すヴェルクーク級人型機構アパ仕様。咳払いするアパ。
アパ『誰だ!!?リミッター解除した奴!!!』
キラ兄弟『ごめんなさい!』
動き出すヴェルクーク級人型機構アパ仕様。
キラ兄弟『すごい。動いた。』
キラ兄弟の方を向くアパ。
アパ『…なんだ。人型機構は初めてなのかい。』
ジット・シオスコンプ『ええ、いえ恥ずかしい話ながら人型機構を買うお金が…。』
アパ『なんだ。貴族も儲かってるわけじゃないんだな。』
アパの方を向くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『しかし、他人が操縦すると乗り心地が違うもんなんだな。』
アパ『そうかい?』
ジット・シオスコンプ『…確かに。先程から騒音もせず、振動もまったくないですね。』
アパの方を向くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『アパ殿は、余程の手練れ何ですか?』
アパ『はは、乙女に手練れなんて言われても嬉しくないさ。ところで。』
アパの方を向く一同。
アパ『あんたら、王子の世話役になるって聞いてさ。その、どうかな。』
アパを見つめるキラ兄弟。
ミハエル・キラ『う〜ん。駄目だと思う。』
マグナス・キラ『あの王子、絶対筋肉ゴリラっていって相手にしないと思うし。』
ミハエル・キラ『きっと、言うよ。あの王子なら、筋肉ゴリラババアいらねとか。ほんと、アパさんが可哀想。』
キラ兄弟『ね〜。』
額に手を当てて下を向くアパ。
アパ『…お前らなあ。』
顔を上げるアパ。
アパ『まあ、そうじゃなくて。どうだい。あたいを雇わないかい?』
アパを見つめる一同。
アパ『ゲキオコ山の周囲には何もない。あんたらも、人型機構持ってないんだろ。あたいを雇えば遠くの街まで買い出しに行くときに便利だぜ。』
頷くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『確かにそれはありがたいですが…。』
キッド・チャンスワカメ『願ってもない。是非お願いする。』
笑うアパ。
アパ『じゃ、決まりだな。』
前方を見るアパ。
アパ『お、見えて来たぜ。あの山頂にあるのがそうじゃないか。』
オコ城を見つめる一同。
C4 協力者 END
C5 城
ワンデイ王国ゲキオコ山山頂、草木に覆われたオコ城の前に止まるヴェルクーク級人型機構アパ仕様。
オコ城を見つめる一同。
キラ兄弟『うわぁ…。』
アパ『いや〜。城に続く道も、相当ひどかったからな。案の定か…。』
額に手を当てるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『いや…。しかし、これほどとは…。』
アパ『…とりあえず、外に出よっか。』
頷く一同。
アパが機器の操作をする。ヴェルクーク級人型機構アパ仕様のコクピットのハッチが開き、地面へと伸びる。降りていく一同。オコ城を見つめる一同。一歩前に出るジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…使われてないとはいえ、ここまでひどいとは…。』
ため息をつくジット・シオスコンプ。伸びをするキラ兄弟。
ミハエル・キラ『アハハ。空気が美味しいね。』
マグナス・キラ『都会では味わえないとってもすがすがしい気分。アハハ。』
キラ兄弟を見つめるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『ミハエルにマグナス!』
ジット・シオスコンプの方を向くキラ兄弟。彼らは顔を見合わせてため息をつく。
ミハエル・キラ『アハハ…はぁ、だってぇ、この分だと中も荒れ放題でしょ。』
マグナス・キラ『おまけに王子まで来るし…。はぁ…。』
呪文を唱えるキッド・チャンスワカメ。彼の方を向くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…兄上。何を。』
呪文を中断し、ジット・シオスコンプの方を向くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『いや、火術でちゃっちゃと終わらせようと思ってな。』
ジット・シオスコンプ『城まで燃えるわ!』
唖然とするキッド・チャンスワカメ。額に手を当てて首を横に振るジット・シオスコンプ。頭を抱えるキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『はあ、どうしたものか?』
ミハエル・キラ『もう、初日からあの王子から嫌味聞かされるの〜。』
マグナス・キラ『やだよ!』
キッド・チャンスワカメの方を向くアパ。
アパ『こういうのは人数かけた方がはやいぜ。』
アパの方を向くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『おお、確かに。』
アパ『業者に頼めばいいんだよ。』
ホクガ『幸い。王子到着までまだ日数があります。』
腕組みするジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…業者か。しかし、アパ殿、ホクガ殿。こんな辺鄙な所に来てくれる業者なんているのですか?』
顎に人差し指を当てて上を向くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『確かに…。』
アパが自身を指さす。
アパ『あ、そのツテならある。』
アパの方を一斉に向く一同。
キッド・チャンスワカメ『本当に!』
頷くアパ。
アパ『ああ、このセントラルに出稼ぎにきてるパー商会ってのがな。連れて来てやるよ。それに、商業やってるからルートにここを加えるように言っとくよ。そうすりゃ、まあ、定期的に買い物はここでできるわけだし、足らなくなったらあたいを使えばいいしね。』
キッド・チャンスワカメ『おお、それはありがたい。渡りに船とはこのことだ。』
ジット・シオスコンプ『むむむ。本当にあなたは何者なんですか?』
ジット・シオスコンプとキッド・チャンスワカメの方を向くアパ。
アパ『まあ、ただのツテが色々とあるだけだよ。まあ、でも…。』
草木に覆われたオコ城を見つめた後、ヴェルクーク級人型機構アパ仕様を見るアパ。
アパ『この調子じゃ、当分はこっちが家になりそうだな。』
ワンデイ王国ゲキオコ山山頂、草木に覆われたオコ城。ヴェルクーク級人型機構アパ仕様の少し後ろに止まるパー商会仕様のテスラ級小型機動城塞。降り立つパー商会の面々。彼らの前に立つ出すアパ。アパを見つめるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ、キラ兄弟にホクガ。
アパ『とりあえず、タンク類を取り変えてくれ。ここ数日…。』
アパはヴェルクーク級人型機構アパ仕様の方を向く。
アパ『こいつに泊まりっぱなしだったからよ。』
パー商会メンバーA『あいよ。』
アパの前に立つチンチラ獣人でパー商会副会長のポコ。
アパ『お、いたいた。』
アパの方を向くポコ。ポコを見るキッド・チャンスワカメ達。ポコは草木に覆われたオコ城を見つめる。
ポコ『おおう。これはやりがいがありますねえ。』
ジット・シオスコンプ『…この方は?』
キッド・チャンスワカメの方を向くポコ。
ポコ『わたくし、パー商会の副会長でチン…。』
ポコの方を向くアパ。
アパ『ポコっていうんだ。宜しくな。』
暫し沈黙。一礼するポコ。
ポコ『宜しくです。』
ポコに駆け寄るキラ兄弟。
ミハエル・キラ『あー、獣人だ。』
マグナス・キラ『獣人。』
ポコの体を撫でまわすキラ兄弟。
ミハエル・キラ『ほんとだ。モチモチしてる。』
マグナス・キラ『ふわふわ〜。』
微笑むポコ。
キッド・チャンスワカメ『ん、どれ。』
キッド、チャンスワカメはポコの傍らに寄り、ポコをこねくり回す。
ポコ『あ、あんまりこねくりまわさないでー。』
ポコを見つめるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…副会長?それでは会長さんは?
アパの方を向くポコ。軽く頷くアパ。
ポコ『…いえ。会長は、今は忙しくて席を外しています。』
ジット・シオスコンプ『そうですか。』
ポコ『では、さっそくはじめますか!』
ポコはパー商会のメンバー達の方を向く。
パー商会のメンバー達『おー!』
C5 城 END
C6 到着
昼間。ワンデイ王国ゲキオコ山山頂オコ城。2階の中央の部屋のソファに座るキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…そろそろ王子が来る時間ですね。』
ため息をつくキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『はぁ〜あ。アパ殿がいてホクガ殿がいて、定期的に商隊は来るわ、金も入るわという生活ももう、おしまいか。』
ジット・シオスコンプ『しかたないですよ。兄上。水上軍の任も解かれましたし、私達の仕事は王子の世話です。』
俯くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『王子か…。』
ジット・シオスコンプはキッド・チャンスワカメの方を向く。
ジット・シオスコンプ『王子と言えば、そういえば兄上はあの偽王子にあったことがあるんですよね。』
キッド・チャンスワカメ『んっ?誰だっけ?』
ジット・シオスコンプ『いえ、アレス王国の…。』
大きく頷くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『ああ。思い出したぞ。』
ジット・シオスコンプ『どんな感じでした?』
キッド・チャンスワカメ『どんな感じって…。』
上を向くキッド・チャンスワカメ。
ジット・シオスコンプ『いえ、うちの王子と比べて。』
キッド・チャンスワカメ『そりゃ、雲泥の差だぞ。あの子は勇敢で立派だった。』
キッド・チャンスワカメを見つめ、顎に手を当てるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『…勇敢で立派と、人間なにがあるか分かりませんな。』
頷くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『まったくだ。』
マンディ・ワンデイの声『へ〜おもったより綺麗じゃん。』
ジット・シオスコンプ『あの声は!』
キッド・チャンスワカメ『ああ、ついに来てしまったか。』
立ち上がり、部屋を出ていくキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
ワンデイ王国ゲキオコ山山頂オコ城。城の前に止まるトイ家仕様のパラディンヴェルクーク級人型機構。その下にはマンディ・ワンデイとサウザン。彼らの前に駆けて行くキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。庭からマンディ・ワンデイの方を向くキラ兄弟とホクガにアパ。
キッド・チャンスワカメ『これはこれはようこそおこしくださいました。』
一礼するサウザン。
サウザン『では、よろしく頼みます。』
笑顔を作るキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
キッド・チャンスワカメ『はい。かしこまりました。』
サウザン『では。』
サウザンはトイ家仕様のパラディンヴェルクーク級人型機構に乗り去る。トイ家仕様パラディンヴェルクーク級人型機構の方を向いた後、キッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプの方を向くマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『ちっ、出向も無しかよ。』
キッド・チャンスワカメ『や、すみません。』
マンディ・ワンデイ『たくっ、使えねえ奴らだな。』
ジット・シオスコンプ『いえ、色々と用事がございまして。』
マンディ・ワンデイ『こんな辺鄙なところそんな用事ねえだろ。それより、お前ら女雇ったんだってな。』
マンディ・ワンデイを見るキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
キッド・チャンスワカメ『…女?』
ジット・シオスコンプ『アパ殿のことですよ。』
頷くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『あ、ああ。アパ殿ね。』
額に手を当てるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『全く…。』
マンディ・ワンデイ『へぇ、アパってのか。で、何処にいる?』
キッド・チャンスワカメはアパの方を指さす。
キッド・チャンスワカメ『あちらにございます。』
アパを見つめるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『えーっ!あの筋肉ゴリラァ!!』
マンディ・ワンデイの方を向くアパ。
マンディ・ワンデイ『ババアでしかも筋肉ゴリラなんていらねえし。』
城の方を向くマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『城を見たい。案内しろよ。』
頷くキッド・チャンスワカメ。マンディ・ワンデイはキッド・チャンスワカメと一緒にオコ城に入って行く。アパの方へ歩み寄るジット・シオスコンプ。
キラ兄弟『あの王子、やっぱり、筋肉ゴリラババアって言った!』
ミハエル・キラ『まったく、アパさんにあんなひどいことを言うなんて。』
マグナス・キラ『ほんとうに失礼ですよね!』
苦笑いするアパ。
アパ『お前らも相当失礼だと思うぞ。』
アパに向かい一礼するジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『いや、すみません。…あれが王子なんですよ。』
オコ城の方を向くアパ。
アパ『ふ〜ん。あれが…王子さん。なるほどね。』
ワンデイ王国ゲキオコ山山頂オコ城。二階中央の部屋。ソファに座るマンディ・ワンデイ。彼の前に立つキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
マンディ・ワンデイ『…本当に何もねえな。けっ、あの爺が考えそうなことだぜ。』
キッド・チャンスワカメ『まあまあ。』
ソファに寝そべるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『飽きた。もう、都会帰りたい。』
マンディ・ワンデイの方を向くキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
マンディ・ワンデイ『なんで、俺がこんな目にあわなきゃなんないの!まったく、ただ港町で女とあそんだだけじゃん!』
握り拳を震わすキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。マンディ・ワンデイは彼らの方を向く。
マンディ・ワンデイ『なあ。』
上体を起こすマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『女よんできてくれない。お前ら、給金増額されたみたいじゃん。いいだろ!』
一歩前に出るキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『駄目です!』
マンディ・ワンデイ『駄目!お前ら、俺は王子だぞ。それで、お前らは世話役じゃん。拒否権なんてないだろ!分かったら、さっさと…。』
一歩前に出るジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『サウザン殿のいいつけもありますし…。』
マンディ・ワンデイ『そんな死にぞこないのおいぼれ爺のことなんてほっとけよ!』
ジット・シオスコンプ『また、借金をこさえるつもりですか?』
キッド・チャンスワカメ『王子、また悪い噂がたちますよ。』
耳を両手で押さえるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『ああ、ヤダヤダ。お前らにも爺が感染したの?ともかく、王子の命令だ!早く女、あんな筋肉ゴリラじゃなくて、もっと美人のカワイイ子ちゃん呼んできて!』
顔を見合わせるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
マンディ・ワンデイ『けっ、いいじゃんかよ。別に爺いないんだから何し…。』
ゆっくりと扉が開き、現れるサウザン。
マンディ・ワンデイ『たって…ええっ!』
マンディ・ワンデイを見つめるサウザン。
サウザン『今日の言動逐一聞かせて頂きましたぞ。』
口に手を当てるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『あ…あわわわわ。』
サウザン『王子は、今だ、反省をしておらぬようですな!まだ、自分がなにをしでかしたか分かっていないようだ。今日はわかるまでみっちりとお付き合いさせていだだきます。』
サウザンはマンディ・ワンデイを引っ張って行く。抵抗するマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『やだ!やめろー!はなせー!』
早朝。ワンデイ王国ゲキオコ山山頂オコ城。城の前に立つサウザン、向かい合うマンディ・ワンデイとキッド・チャンスワカメ達。
サウザン『これからも抜き打ちできますので、覚悟しておいてください!』
マンディ・ワンデイ『そんなぁ…。』
トイ家仕様人型機構に乗り込み、去って行くサウザン。
C6 到着 END
C7 葬儀
ワンデイ王国ゲキオコ山山頂オコ城。城の前に止まるパー商会仕様のテスラ級小型機動城塞。庭にはキッド・チャンスワカメにジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『王子もおとなしくなりましたね。最近は城に引きこもって、テレビを見たり、ゲームをやったりと…。』
キッド・チャンスワカメ『いつサウザン殿が来るかわからないからな。』
ポコから食材を買うホクガにキラ兄弟。アパと雑談するパー商会の情報部門のメンバーで髭を生やしたスカイフィッシュ人のハエノザンゾウ。ハエノザンゾウを見つめるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。アパの方へ歩み寄るキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。口角を上げるアパ。彼女はハエノザンゾウに煙草を咥えさせる。
アパ『…吸う訳ねえだろ。借りただけだ。』
ハエノザンゾウ『そうですよね。』
アパ『それにこっちで間に合うしね。』
風船ガムを膨らますアパ。風に舞う灰。アパの傍らに寄るキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
キッド・チャンスワカメ『アパ殿。』
キッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプの方を向くアパ。
アパ『ああ、あんたらかい。』
頷くキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。キッド・チャンスワカメはハエノザンゾウの方を向く。
キッド・チャンスワカメ『見ない人だが…。』
笑うアパ。
アパ『嫉妬かい?』
アパを見つめるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
アパ『…そんな顔すんなよ。冗談だって。冗談。』
アパはハエノザンゾウの方を向く。
アパ『こいつはハエノザンゾウっていってさ。情報をえるためにそこら中飛び回ってるからね。なかなかお目にかかる機会がないのさ。』
ハエノザンゾウの方を向くキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
キッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ『はあ。』
一礼するハエノザンゾウ。
ハエノザンゾウ『パー商会のハエノザンゾウと申します。』
ハエノザンゾウの方を向くアパ。
アパ『ああ、そうだ。この方達にも教えてやってくれよ。今、ワンデイのなんたらって貴族が危篤らしいじゃないか。』
顔を見合わせるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
キッド・チャンスワカメ『なに!』
ジット・シオスコンプ『それは…もしやト。』
ハエノザンゾウ『バハラキ家の当主シラケ殿です。近々、葬儀が行われるでしょう。』
ジット・シオスコンプ『シラケ殿か。』
キッド・チャンスワカメ『サウザン殿かと思って焦ってしまったわい。』
キッド・チャンスワカメの方を向くアパとハエノザンゾウ。
ハエノザンゾウ『そうそう。話は変わりますが、このゲキオコ山は、平時は全くもって何の役にも立ちません。ただ、有事の際は地理的にも戦略的にも非常に重要な位置になります。』
キッド・チャンスワカメ『…戦が起こるとでも?セントラルはユランシアのようにはならないだろう。』
ハエノザンゾウを見つめるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『なぜ、そのようなことを?』
ハエノザンゾウ『いえ、追放されたパパパ氏が、カノッサ・パパパを中心にワンデイ王国以外の国に積極的に働きかけております。こちらも取引して頂く顧客様を失いたくはありませんからね。』
ハエノザンゾウの方を向くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『とか言って、兵器とか武器をかわすつもりだろ。』
頭を掻くハエノザンゾウ。
ハエノザンゾウ『これは一本とられましたね。』
ワンデイ王国ゲキオコ山山頂オコ城。二階中央の部屋。ソファに座るキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプに向かい合って座るサウザン。
サウザン『…シラケ殿がお亡くなりになった。』
顔を見合わせるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
キッド・チャンスワカメ『…そうですか。』
サウザン『明日が葬儀で、わしも参列する。』
頷くジット・シオスコンプ。
サウザン『シラケとは長い仲でな。誠実で真面目な男だった。何よりも自分が抱える身内に責任を持つ男だった。』
下を向くサウザン。
サウザン『…残念だ。』
サウザンの顔を見つめ頷くキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
夜。ワンデイ王国ゲキオコ山山頂オコ城食堂。食卓に並ぶ料理を取り囲むキッド・チャンスワカメにジット・シオスコンプ、ホクガとアパ。
キッド・チャンスワカメ『いや、いつみても実にうまそうだな。』
ホクガの方を向くアパ。
アパ『流石、ギュウジュウ王の軍師ってとこか。』
ホクガ『昔は肉屋を営んでいましたからね。その腕も上がったというものです。』
キラ兄弟の声『た、大変です!!』
食堂に駆け込んで来るキラ兄弟。
ミハエル・キラ『た、大変です!キッド様!ジット様!』
マグナス・キラ『おお王子が、王子が!』
立ち上がるキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプにホクガとアパ。
ジット・シオスコンプ『どうした?』
ミハエル・キラ『いなくなっちゃったんです!』
キッド・チャンスワカメ『何!』
ホクガ『それは真に?』
頷くキラ兄弟。右往左往するキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『あわわわわ、王子が家出するなんて!これが上に知れたら!!』
頭を抱えるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『お役御免で。これからどうなるんですか!』
アパ『とりあえず、探そうぜ。』
頷く一同。
ゲキオコ山をコックピットのハッチを開けながら歩くヴェルクーク級人型機構アパ仕様。
ホクガ『王子ーーーーっ!』
キッド・チャンスワカメ『王子や〜い!』
ジット・シオスコンプ『王子ーーーーーーー!』
キラ兄弟『王子ーーーーー!』
早朝。ワンデイ王国ゲキオコ山山頂オコ城の前に立つヴェルクーク級人型機構アパ仕様。コックピットのハッチが開き降り立つキッド・チャンスワカメ達。
アパ『結局見つからなかったな。』
ホクガ『いったいどこに行かれたのか…。』
騒ぐキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプを見つめるアパとホクガ。
キッド・チャンスワカメ『うわあああああああ。お終いだーーー。』
ジット・シオスコンプ『頭が痛いです。』
キラ兄弟『どうしよう?どうしよう?』
開くオコ城の扉。壁にもたれかかるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『ヒック。うるせえなあ!』
マンディ・ワンデイの方を向く一同。
一同『王子!』
王子に駆けて行く一同。
キッド・チャンスワカメ『王子!いったい何処に行っていたんですか!』
キッド・チャンスワカメを見つめるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『いやあ、アギ国の連中と飲んでてさ、で、出て来る女の子が上玉に上玉ばかりで。ヒック。久しぶりにハッスルしたらさあ。』
腰をおさえるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『いてててて、腰痛めちゃったらしくてぇ、ヒック。爺が絶対に来ないのはバハラキの葬儀がある今日だけだろ!だから、ハッスルハッスルって〜。』
キッド・チャンスワカメに向かって倒れるマンディ・ワンデイ。マンディ・ワンデイを抱きかかえるキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『王子!…まったく。』
マンディ・ワンデイを見つめ、頭を抱える一同。吐息を立てるマンディ・ワンデイ。
C7 葬儀 END
C8 許し
ワンデイ王国ゲキオコ山オコ城の前に立つワンデイ王国のヴェルクーク級人型機構。そのコックピットのハッチが開き降りて城に向かうワンデイ王国軍伝令A。
ワンデイ王国軍伝令A『国王より勅命である!』
オコ城の扉が開く。中に入って行くワンデイ王国軍伝令A。オコ城1階。広間。椅子に座るマンディ・ワンデイ、壁側に立つキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ、キラ兄弟にホクガとアパ。マンディ・ワンデイの前に跪くワンデイ王国軍伝令A。
ワンデイ王国軍伝令A『マンディ王子。王より勅命です!』
ワンデイ王国軍伝令Aを見つめるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『親父から…で、何?』
頭を下げるワンデイ王国軍伝令A。
ワンデイ王国軍伝令A『は、アギ連合との戦の為、至急王都に参陣するようにと!』
ワンデイ王国軍伝令Aの方を向く一同。
キッド・チャンスワカメ『アギとの?』
マンディ・ワンデイ『ちょい、ちょい、ちょっと待てって。話がみえないんだけど。』
マンディ・ワンデイを見つめるワンデイ王国軍伝令A。
ワンデイ王国軍伝令A『アギ王国は周辺諸国と共に、我が国へ宣戦布告を致しました。』
ジット・シオスコンプ『なっ…。』
ジット・シオスコンプの方を向くワンデイ王国軍伝令A。
ワンデイ王国軍伝令A『首謀者は…カノッサ・パパパ。ワンデイ領を欲しがる周辺諸国に大義名分を与えたのです。正式な発表もその内行われるでしょう。』
ジット・シオスコンプ『なんと…。』
ジット・シオスコンプ『…追放されたパパパ氏が。』
ジット・シオスコンプの方を向くキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『あやつの言う通りになってしまったなぁ。』
キッド・チャンスワカメの方を向くアパ。椅子に寝そべるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『戦争。下らないな。勝手にやってろよ。』
マンディ・ワンデイの方を向くワンデイ王国軍伝令A。
マンディ・ワンデイ『だって、俺、王位継承から外されてるし。だから何って感じだけど。俺が参戦したところで意味あんの?全く、特にもならないじゃん。』
マンディ・ワンデイの眼を見つめるワンデイ王国軍伝令A。
ワンデイ王国軍伝令A『…それがマンディ様の返答ということですか。』
伸びをするマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『俺は行かね。』
一歩前に出るキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプ。
キッド・チャンスワカメ『王子!』
ジット・シオスコンプ『王子!』
マンディ・ワンデイを目に映すワンデイ王国軍伝令A。
ワンデイ王国軍伝令A『本当に宜しいので?』
マンディ・ワンデイ『ああ。俺は行かない。ともかくいきたくねえの。』
ワンデイ王国軍伝令A『…それがマンディ様の返答ということで本当に宜しいのですね。』
上体を起こしワンデイ王国軍伝令Aを睨み付けるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『だから、いちいちうぜえんだよ!いかないつったらいかねえの!!』
下を向くワンデイ王国軍伝令A。
ワンデイ王国軍伝令A『…分かりました』
顔を上げマンディ・ワンデイを見つめるワンデイ王国軍伝令A。
ワンデイ王国軍伝令A『…その旨。しかと国王陛下に伝えておきましょう。』
立ち上がるワンデイ王国軍伝令A。
ワンデイ王国軍伝令A『それでは。』
去って行くワンデイ王国軍伝令A。椅子に寝そべるマンディ・ワンデイ。マンディ・ワンデイに駆け寄る一同。
キド・チャンスワカメ『王子!』
ジット・シオスコンプ『王子、ここは王命にしたがいましょう!』
マンディ・ワンデイ『うるせえな!あんなクソ親父の命令に従うなんてまっぴらごめんだぜ。』
一歩前に出るホクガ。
ホクガ『王子様。アギ国の方々と酒を飲んでいたことが知れたらただではすみますまい。ここは…。』
アパ『ホクガ殿の言う通りだよ。親父さんなんだろ。』
首を横に振るマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『ヤダヤダヤダ、絶対に嫌だ!』
マンディ・ワンデイを見つめる一同。
早朝。ワンデイ王国ゲキオコ山オコ城に止まるパー商会のテスラ級機動城塞。ポコの前に立つジット・シオスコンプとキッド・チャンスワカメ。
ジット・シオスコンプ『ポコ殿。戦がはじまりますので。』
ポコ『ほっほう。戦ですか。』
キッド・チャンスワカメ『そうだな。暫くはここを離れた方がいい。』
顎に手を当てるポコ。
ポコ『道理でウィークエンドに大軍が終結していたわけですか。ここにもその内来ると思いますよ。戦か、兵器や武器も取り揃えているので見ていきます?』
苦笑いするジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『こんな時まで、商売熱心な…。』
笑うポコ。
轟音が鳴り響き、揺れが起きる。
キッド・チャンスワカメ『何だ?』
ジット・シオスコンプ『なっ…。ともかく城壁へ行きましょう。』
頷くキッド・チャンスワカメ。
ワンデイ王国ゲキオコ山オコ城城壁の上に立つアパとホクガ、キラ兄弟と、キッド・チャンスワカメにジット・シオスコンプ、ポコが駆けあがってくる。
キッド・チャンスワカメ『はあ、はあ。』
アパの方を向くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『今の轟音と揺れは?』
額に手をかざすアパ。
アパ『まあ、見な。』
城壁からゲキオコ山の麓を覗き込む一同。
キッド・チャンスワカメ『なんと、壮観な。』
ジット・シオスコンプ『これは凄い。』
ゲキオコ山の麓に止まるワンデイ王国の無数のマゼンタ級起動城塞。
ポコ『おお、あれはワンデイ王国の旗印ですねえ。』
ジット・シオスコンプ『…ついにアギとの戦が。』
ホクガ『…アギだけではありません。周辺諸国も連合した軍勢です。』
キッド・チャンスワカメ『アギのキトラ王は対ロズマール王国戦で活躍したからな。どうなることやら。』
ホクガの方を向くジット・シオスコンプ。
ホクガ『そして、シトマント川に向かっていると。』
城壁の胸癖に背を向け、もたれかかるアパ。
アパ『ハエノザンゾからの情報。』
ポコ『あれあれあれ、人型機構の軍勢が出てきましたよ。』
キッド・チャンスワカメ『シトマント!それは…ここからすぐの…。』
頷くホクガ。
ジット・シオスコンプ『では、オコ城は戦略的に重要な…はっ!』
眉を顰めるホクガ。
キッド・チャンスワカメ『しかし、我々の様な小勢など…。』
ホクガ『…アギの方々とあっていた王子が重要拠点におり、しかも悪い事に、参陣の要求を拒否しました。例え小勢であっても、我々を無視すれば、アギ連合軍に挟撃との血筋を引くものという大義という二つの利点を与えることになりかねません。だからこそ、ワンデイ王がどう動くか分からないのです。』
キッド・チャンスワカメ『しっかしな。あれは王子のだだだと思うぞ。』
ホクガ『…王はそうは思いますまい。』
ホクガを見る一同。胸壁から体を乗り出すポコ。
ポコ『すごい。訓練された人達はちがうなあ。あんなに綺麗に陣形が整っちゃって。』
城壁に上がってくるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『おい。どうした。騒がしいけど。』
キッド・チャンスワカメ『王子!』
ポコ『あらあらあら、砲塔がまわっちゃって。』
一同『えっ…。』
ワンデイ王国のマゼンタ級軌道城塞の砲塔がゲキオコ山に一斉に向けられる。飛び上がるアパ。
アパ『退避だ!退避!』
キラ兄弟『えっ!』
キラ兄弟を両脇に抱えるポコ。城壁から逃げ出す一同。轟音が響き渡り、大爆発が起こる。煙が立ち上る。咳をしながら、オコ城の庭で息を切らすキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプにキラ兄弟とポコにマンディ・ワンデイ。
崩れ落ちるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『お、親父が…親父が…。』
キッド・チャンスワカメ『まさか、攻撃をしてくるとは…。』
城壁の方を向き、鼻をひくつかせるポコ。
ポコ『煙が収まったらつぎがきますね。』
ポコの方を睨むマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『おい、お前!』
周りを見回すポコ。
マンディ・ワンデイ『こんな時に落ち着きやがって!そのこの獣人!』
瞬きしてマンディ・ワンデイの方を向くポコ。
マンディ・ワンデイ『なんだその鼠の様な面構えは!』
ポコに近づくマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『…げっ歯類のような面持をしやがって!』
体を震わすポコ。
マンディ・ワンデイ『それにそのもちもちでもふもふの腹をもちらせやがって!腹モチならんやつだ!』
ポコ『ひい!』
マンディ・ワンデイ『腹を出せ!もちり殺してやる!!』
マンディ・ワンデイの方を向くジット・シオスコンプ。
ポコ『たちけてー。』
ジット・シオスコンプ『なんという残酷な!』
城壁から降りて来るホクガとアパ。
ホクガ『お待ちください。』
ホクガの方を向く一同。
ホクガ『王子。王が王を誅するのなら天空軍を使ってくるはずです。』
マンディ・ワンデイ『なっ。』
マンディ・ワンデイの顔を見つめるホクガ。
ホクガ『…今なら間に合う筈です。ともかく、王の陣に参陣してください。』
眉を顰めるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『…で、でも。あ、つ、通信じゃだめ?』
マンディ・ワンデイの眼を見つめるホクガ。
ホクガ『王子が直接に行かなければ許しは得られないでしょう。』
マンディ・ワンデイ『ゆ、許しって。』
目を潤ませるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『お、俺、悪い事何もしてないんだけど!な、何で俺が、こんな目に!』
マンディ・ワンデイの方を向く一同。
ホクガ『今、王は王子の出方を見ようとしています。このままなにもしなければ、あの軍勢で我々を押しつぶすでしょう。』
晴れる煙。鳴り響く轟音。煙で包まれるオコ城。
マンディ・ワンデイ『分かった。分かったよ!行く、行きゃいいんでしょ!い…。』
砲で削られた地面を見つめた後、尻もちをつくマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『ちょっと、この砲弾の中を行けっての?無理だって!絶対無理!すぐ次のが来るんだろ。もう嫌!』
キッド・チャンスワカメ『王子!王子が行かないと我々も!』
マンディ・ワンデイ『し、知らねえよ…。』
マンディ・ワンデイの前に立つポコ。
ポコ『パー商会は、ワンデイ王子にお供しましょう。』
ポコの方を向くマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『…えっ、いいのか。』
ポコ『はいはい。これでも私ども、幾多の戦場を練り歩いてますので。』
ポコの方を向く一同。
キッド・チャンスワカメ『大丈夫なのか?』
ジット・シオスコンプ『でも、ポコ殿は副会長で、勝手に我々に加担したとなると…。』
ジット・シオスコンプの傍らを横切るアパ。
アパ『何、心配ないよ。許可ならするさ。』
パー商会のメンバー達の前に立った後、キッド達の方を向くアパ。
アパ『パー商会の会長は…あたいさね。』
眼を見開く一同。
一同『ええ!』
頬を人差し指でかくアパ。
アパ『ああ、騙しちまったようで悪かったな。いや、別にいう必要もないかなってさ。ま、そういことで。』
アパはパー商会のテスラ級起動城塞の方を向く。アパの方を向くパー商会の面々。
パー商会のメンバーAがアパに馬を放つ。馬に飛び乗るアパ。
アパ『砲弾はある程度あたいが始末するよ。』
騎乗するアパの方を向く一同。
ジット・シオスコンプ『あ、鐙もつけずに馬に乗るとは!』
ジット・シオスコンプの方を向くアパ。
アパ『心配ないよ。あたしゃ、騎馬民族出身さね。』
アパを見つめるホクガ。
ホクガ『アパ殿。』
眼を細めてホクガを見つめ、口角を上げるアパ。
アパ『…分かってるよ。』
手綱を引き、城壁に駆け上がる馬に乗ったアパ。晴れていく煙。轟音が鳴り響く。アパは高速で爆弾のついた弓矢を右手でもった短弓で射た後、左手に持ち替えて二つ目の爆弾のついた弓矢を射、飛び交う砲弾に向かう二つの爆弾のついた弓矢の爆弾のついた部分をスナイパーライフルで撃ち抜く。爆弾が破裂し飛び出す子弾が散布され、それに当り、爆発する砲弾。アパはその俊敏で機械的な動作を、場所を少しずつ変えながら、何回も繰り返す。アパを見つめる一同。
キッド・チャンスワカメ『なんという腕前だ…。』
ホクガの方を向くジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『ホクガ殿。あの方はいったい何者なのですか!?』
アパを見つめるホクガ。
ホクガ『あの方は…テウシンの手練れの元暗殺者です。』
ホクガの顔を見た後、アパの方を向くジット・シオスコンプ。ホクガはマンディ・ワンデイの方を向く。
ホクガ『ささ、お早く。』
頷くマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『あ、ああ。』
C8 許し END
C9 開かれた道
ワンデイ王国ゲキオコ山。山頂に近い山道を進むマンディ・ワンデイにキッド・チャンスワカメにジット・シオスコンプにキラ兄弟に、ポコとパー商会のメンバー数名。凄まじい轟音が鳴り響く。
マンディ・ワンデイ『な、今のは!』
マグナス・キラ『い、今までとはくらべものになりません!』
ミハエル・キラ『まさか!』
オコ城の方を向く一同。
キッド・チャンスワカメ『…あれ、なんともないじゃないか。』
眉を顰めるジット・シオスコンプ。
ジット・シオスコンプ『今のは…。』
パー商会のメンバーB『おお、ありゃはでにやらかしたな。』
ジット・シオスコンプ『えっ?』
パー商会のメンバーC『暴発。暴発。』
ワンデイ王国の軍勢の方を向く一同。中央にはマゼンタ級起動城塞多数の残骸と、黒焦げたワンデイ王国のヴェルクーク級人型機構の残骸と炭化した死体が見える。吹き出すマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『ぷっ、クソ親父の軍勢事故ってやんの。はは。』
ジット・シオスコンプ『王子!…不謹慎ですよ!』
腹に手を当てて笑い出すマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『だって、許しとか、散々威張りくさりやがって、揚句に事故って…けけ。』
眉を顰めるキッド・チャンスワカメにジット・シオスコンプ、キラ兄弟。ポコが鼻をひくつかせながら、周りを見回す。
ポコ『そういえば、攻撃が止みましたね。』
後頭部に両手を当てるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『馬鹿らしい。帰る!』
キッド・チャンスワカメ『お、王子!』
ジット・シオスコンプ『しかし、王のもとに参陣しなければ。』
ワンデイ王国の軍勢を見つめて笑い出すマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『参陣?ないない。プライドの高い親父殿だ。この失態で顔を見せるか…はは、見ものだわ!』
笑いながらオコ城の方へ向かうマンディ・ワンデイ。マンディ・ワンデイを追いかける一同。
キッド・チャンスワカメ『王子!』
ワンデイ王国ゲキオコ山オコ城。アパに向かい頭を下げるホクガ。
ホクガ『ご苦労様です…。』
ホクガとすれ違い、口角を上げるアパ。
アパ『昔からこういったことは得意でね…。』
風がアパとホクガの衣服を激しく揺らす。
ホクガ『私が…シンノパクラの様な手をつかうことになるとは。』
俯くホクガ。鼻で笑うアパ。
キッド・チャンスワカメの声『王子!お待ちください!まだ役目は!!』
マンディ・ワンデイ『うるせえな。もうどうでもいいし…!なんか萎えた。』
オコ城の方へ向かうマンディ・ワンデイとその後に続く、キッド・チャンスワカメにジット・シオスコンプ、キラ兄弟とポコにパー商会のメンバー数名。彼らの方を向くアパとホクガ。機械音が鳴り、バハラキ家仕様のヴェルクーク級人型機構数機の影が伸びる。上を向く一同。
マンディ・ワンデイ『ひ、ひぃ!』
マンディ・ワンデイはキッド・チャンスワカメとジット・シオスコンプの後ろに隠れる。
喉を鳴らすキッド・チャンスワカメ。バハラキ家仕様のヴェルクーク級人型機構のコックピットのハッチが開き、降り立つワンデイ王国四大貴族の一つバハラキ家のシラケ・バハラキの次男クダケ・バハラキ。
マンディ・ワンデイは尻もちをつく。
マンディ・ワンデイ『ご、ごめんなさい。ごめんなさい!ちゃ、ちゃんと参陣しますから!』
マンディ・ワンデイの方を見つめ、跪くクダケ・バハラキ。
クダケ・バハラキ『マンディ王子。』
立ち上がり、頭を下げるクダケ・バハラキ。
クダケ・バハラキ『…言いづらい事ですが、先ほどの暴発に巻き込まれて、王と正当な血縁の王子達が亡くなられました。』
眼を見開くマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『え。』
マンディ・ワンデイは立ち上がり、クダケ・バハラキに近づく。
マンディ・ワンデイ『親父が…、弟たちも。嘘…だよな。』
下を向くクダケ・バハラキ。
クダケ・バハラキ『残念ながら、王の正当な血縁で残っているのはマンディ王子しかおりません。』
下を向くマンディ・ワンデイ。マンディ・ワンデイを見つめる一同。腹をおさえて笑うマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『ははははは。ざまあみろ!親父に、その腰ぎんちゃくの弟どもめ!へへ。俺をないがしろにしたバチがあたったんだ!はは。』
マンディ・ワンデイはクダケ・バハラキの方を向く。
マンディ・ワンデイ『で、王位のほうはもちろん俺が就けるわけだよな。』
マンディ・ワンデイの眼を見つめ、頷くクダケ・バハラキ。
クダケ・バハラキ『ええ。もちろんです。』
飛び跳ねるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『はは、見たか!クソ親父!晴れて俺が国王だ!』
クダケ・バハラキ『アギ国連合を打ち破れば、全てのものが我が国の国王として認めることでしょう。』
唖然とするマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『えっ…。』
マンディ・ワンデイを見つめるクダケ・バハラキ。クダケ・バハラキから顔をそらすマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『あ、い、いや。戦争とか…そのゲームでしかしたことないし…。あ、相手ってあのキトラだろ、降り…。』
クダケ・バハラキ『心配はありません。我々が補佐いたします!今のままでは王位を継承したとて、すぐにアギ国連合に攻め滅ぼされてしまうでしょう。今、我々が敵に背を向ければ、必ずその好機を見逃す筈はありません。我々も王の死…も、悲しみもこらえてアギと戦わなければならないのです。』
眉を顰めるマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『う、う〜ん…。』
クダケ・バハラキ『それとも、王になりたくはないのですか?』
首を横に振るマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『そ、そんなこと!…ああ、やる。やってやるさ。』
頷くクダケ・バハラキ。
クダケ・バハラキ『では、本陣へ行きましょう。そこで軍議を開きます。』
キッド・チャンスワカメの方を向くクダケ・バハラキ。
クダケ・バハラキ『キッド殿と配下の者達も。』
自身を指さすキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『え、わし。』
頷くクダケ・バハラキ。
クダケ・バハラキ『オコ城はキッド殿の手勢では手薄。我が氏族のクウランラン家のものの手勢に任せ、王子の護衛に付いた方がよろしいかと。』
顎に手を当てるキッド・チャンスワカメ。
キッド・チャンスワカメ『しかし、王が…まだ実感がわかず、気持ちの整理が…。』
キッド・チャンスワカメの眼を見つめるクダケ・バハラキ。
クダケ・バハラキ『迷っている暇はありません。ことは急を要します!アギの軍勢はもうそこまで迫っています!ワンデイ領を守る為にお力をお貸しください。』
クダケ・バハラキの眼を見つめるキッド・チャンスワカメ。彼はジット・シオスコンプ、キラ兄弟に、ホクガ、アパにポコをはじめとするパー商会のメンバー達を見つめる。
ジット・シオスコンプ『私は兄上に従います。』
キラ兄弟『僕達もキッド様についていきます。』
ホクガ『私は、貴方様を見込んだからついてきたのですよ。』
アパ『…おいおい。そんな手勢で大丈夫か?手貸すぜ。』
頷くキッド・チャンスワカメ。彼はクダケ・バハラキの方を向く。
キッド・チャンスワカメ『分かった。王子の護衛に回ろう。』
キッド・チャンスワカメの方を向くマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『え、お前は不安だけど…。』
アパの方を向くマンディ・ワンデイ。
マンディ・ワンデイ『まあ、筋肉ゴ…アパ大先生様がいれば大丈夫か。』
苦笑いするアパ。
C9 開かれた道 END
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・必要事項のみ記載。 ・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。 ・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。 |
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