魔術士オーフェン異世界編D〜キリランシェロの過去〜 |
「さて、今回の任務やけど―――スターズとライトニング、そしてキリランシェロにとっては初めての任務になるな」
移動中のヘリのモニターの中ではやては厳粛に話し始めた。
今回、彼女達機動六課に下された任務は、山岳地帯に走るモノレールに搭載されたレリックと言う巨大な魔力を秘めた危険物を回収することである。
「この作戦では、スターズのヴィータちゃん、ティアナちゃん、スバルちゃんは前の車両から突入してください」
はやてから説明を受け継いだリインフォースU―――愛称リィンが小さな体を浮かせて指示を下していく。
「なのはちゃん、フェイトちゃん、シグナムちゃんは空中のガジェットと遊撃部隊として戦ってください。ライトニングの2人と、キリランシェロさんは最後尾から突入をお願いします・・・何か質問は?・・・無いようですね。それではしばらく待機していてください」
「キャロ、ちょっと」
キリランシェロはブリーフィング終了後、キャロをヘリの後部に呼び寄せた。
「キャロ、キミの事情はフェイトに聞いたよ」
「っ!」
ビクッとキャロの体が震え、顔が青ざめる。
彼女には少々複雑な事情があった。
彼女は強すぎる召喚の力を持って生まれ、それを制御できなかったが為に故郷を追われた過去がある。管理局に入ってからも部隊の中に居場所がなかった。
(もしもここでも力を制御できなかったら―――?)
そんな想いが彼女の中にあり、その想いが彼女を縛っていた。
「いいかい?」
キリランシェロはかがんで目線をキャロに合わせる。そして力強く、彼女に言い聞かせた。
「キミの居場所はここだ」
「!」
「エリオやなのは、フェイト達がいるこの場こそ、キミの居場所だ。これは揺るがない事実だし、これを揺るがそうとするやつからは―――」
ポン、と頭に手を置く。
「僕らが、守って見せる・・・後ろの赤毛のお子ちゃまと僕と同年代の2人、後で拳骨ね」
少々頬を赤くしたキリランシェロは、キョトンとした顔のキャロの頭を乱暴にグシグシと撫でた。
(くさいセリフ言っちゃったなぁ・・・)
(傷が疼く・・)
揺れる列車の中で、彼は己の左頬を撫でた。彼は15才ほどの少年で、顔が奇妙なほど美しい事を除いては取り立てて特徴は無い少年だが、顔の美しさは右半分だけだった。左半分は醜い―――というより無い、と言った方が正しい。彼はニィッと唇を歪ませると座っていたソファーから立ちあがった。
(キリランシェロよ・・・機動六課とやらと仲良くしているようだが、そろそろ俺が貴様の立場を思い出させてやろう・・・)
立ち上がってひとりごちていた彼に声をかけたのは、銀髪で小柄の右目を眼帯で覆った少女だった。
「ハイドラント、敵襲だ。敵は機動六課、お前が言っていた『黒髪黒目で首から銀のペンダント』を下げた少年もいるそうだ」
「解った。チンク、私も出るぞ」
チンクと呼ばれた少女に続いて、『牙の塔』でどこにでもあるという意味で名付けられたあだ名―――消火栓(ハイドラント)の名を持つミラン・トラムは控えていた客室を後にした。
「じゃ、先に行くわよ」
ヘリに残った後輩達に向けて一言告げると、ティアナは同僚と先輩に続いて空へと身を躍らせた。
「さて、みんな・・・行くぞ!」
『はい!』
キリランシェロの号令とともにモノレールの最後尾の車両の屋根に飛び移るエリオとキャロ。
彼等が屋根に着地するや、キリランシェロは車両内の様子を確かめるための手っ取り早い方法をとった。
「我は放つ光の白刃!」
熱衝撃波で天井を爆砕し、大穴をあけるとエリオを突入させた。これは事前に決めていたことである。
幸いにしてこの車両にはガジェットはおらず、エリオを屋根に引き上げて次の車両の屋根を爆破する。
「あの〜・・・」
その行為をしばらく続けているうちに、おずおずとエリオが戦闘服の武装ベルトを引っ張ってきた。
「ん?どしたのエリオ?」
振り返って彼を見てみると、少年は頬に冷や汗を垂らして意見してきた。
「ここまで破壊する意味ってあるんでしょうか・・・?」
少年の視線の先には屋根が破壊された車両の列が。通ってきた車両はもれなく大穴が開いて煙を吹いている。
「仕方ないでしょ?いちいちドアを開けて入ってたら急な襲撃に対応できないし。外から攻撃されちゃひとたまりもないからね」
「はぁ・・・」
しかし少年はなぜか納得していないようだった。
途中、ガジェットに出くわし、エリオの魔法が通用しなかった事態もあったがキリランシェロが難なく蹴散らして事なきを得ていた。
その時だった。キリランシェロの耳に聞きなれた声が聞こえてきたのは。
「プアヌークの魔剣よ!」
「―――!!」
キリランシェロの反応は素早かった。
「うわっ!」「きゃっ!」
キャロとエリオを抱えてその場から離れる。一瞬前にキリランシェロが立っていた位置を熱衝撃波が襲った。
「久しぶりだな、キリランシェロ」
「ハイドラント!?」
キリランシェロが立つ車両の一両先に立っていたのは牙の塔執行部員のハイドラントことミラン・トラムだった。
「なんでお前がここにいるんだ!?」
ハイドラントは左の頬につけている仮面を摩りながら、ニヤリと口を歪ませて答えた。
「ある者の依頼を受けて、な。だが今回はお礼参りだ」
彼は仮面に手をかけてそれを放り投げた。
「忘れたとは言わせんぞ―――この傷の事を!」
仮面が失われた彼の顔の左半分は、醜い傷が額にまで広がっていた。
「ひっ」
キャロが思わず口を押さえる。彼女の反応を見たハイドラントは嬉しそうに笑う。
「どうした、お嬢さん?この傷が怖いのかな?」
話しかけられたキャロはますます怯え、エリオが彼女をかばう。ポン、とハイドラントは思い出したように手を打つ。
「そうそう、実は預かっているものがあってね」
彼は懐から黒い色の小箱を取り出すと、小箱のふたをなにやらなぞり始めた。
(ノルニルの遺産か・・・?)
なぞり終わると2人の人間がキリランシェロ達とハイドラントに挟まれた車両の上に現れた。
「スバル!ティアナ!」
スバルとティアナはぐったりと横たわって起きる気配、いや呼吸しているようにも見えない。そして首を長い針が貫通していた。
「し、死んでる・・・?」
エリオが声を引き攣らせながらキリランシェロに話しかけると、代わりにハイドラントが答えた。
「少年、安心したまえ。彼女たちには少し眠ってもらっているだけだ。その針を抜いて2時間も放っておけば目を覚ますよ」
「それでも、あなたを放置しておく理由にはなりません」
頼もしい声と共に降り立ったのは、なのは達空中戦組。彼女達はスバルとティアナをかばうように降り立った。
「おや、キミたちはたしか機動六課とやらの隊長格の少女たちだな。丁度いい、手間が省けた」
「手間が省けただと?どういう事だ?」
シグナムが不審げにハイドラントに問いただす。
「そういえば名乗って無かったな。私はミラン・トラム。ハイドラントととも呼ばれているが、そこのキリランシェロと同じ組織に属する者だ」
「キリランシェロと同じ組織の者?」
「そうだ。キリランシェロから聞いてなかったか?我々は『牙の塔』という黒魔術士の養成機関の者だ。私は執行部という指導部の人間で、キリランシェロは生徒という違いはあるがな」
キリランシェロは俯き、黙って聞いている。
「君たちはキリランシェロについて何を知っている?おそらくは何も知らないはずだ。キリランシェロが我らの『塔』で何を教わっているのか教えてやろう」
「黙れ!ハイドラント!」
その声を呪文にキリランシェロが熱衝撃波を放つ。しかしハイドラントは落ち着き払って魔術の障壁を展開させてそれを防いだ。
「黙るのは貴様だよ、キリランシェロ。彼女らには知る権利があるだろう?まぁ貴様は知られて困るかも知れんが私の知った事ではないしな」
「く・・・」
キリランシェロは彼を睨みつけるが、ハイドラントはどこ吹く風とばかりに続けた。
「キリランシェロは『塔』で、人殺しの技術を主に学んでいる」
説明 | ||
キリランシェロが初任務に挑みます。 しかし彼の本当の姿を暴露する敵が・・・ |
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コメント | ||
ぷりんさん:コメントありがとうございます!そもそもオーフェンもののクロスオーバーってあんまりないんですよね・・・(三好八人衆) まさかのハイドラント!中々クロスオーバーでも見かけないのでおもしろいですね!!(ぷりん) |
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