東方放浪録4〜輝夜と永琳〜
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【永琳】

 

「師匠、集めた材料そこに置いておきますね」

「ご苦労様、うどんげ」

 

 私は振り返ることなくうどんげに伝えると、少し経った後も

うどんげの気配が消えることはなく、それどころか私に近づいて

顔を覗き込んできた。

 

「大丈夫ですか、師匠」

「何が?」

 

「ここ最近忙しすぎじゃないですか」

「だって薬品の注文やら患者を診たり休む暇がないのよ」

 

 私の言葉に頷きつつも心配そうな顔のままのうどんげ。

 

「体調を崩さないか心配で…」

「大丈夫だっ…て…!」

 

 平気に振る舞ってさっさと部屋から追い払おうとうどんげの

方に視線を向けると、ぐるっと視界が一回転する。

 

「師匠!?」

 

 うどんげの声はしつつも姿が見えない。徐々に私の意識は暗闇の中へと

堕ちていった。

 

「姫様ー!姫様いますか!」

 

 慌てる声が少しだけ聞こえた後に私は完全に意識を失った。

 

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**

 

「…」

「どう、お目覚め?」

 

「輝夜…」

「もう…貴女は最近根を詰めすぎるんだから…」

 

「申し訳ありません…」

 

 私は気が付くと輝夜の部屋の中で輝夜に膝枕をしてもらっている状態にあった。

すぐに起き上がろうとすると、まだ多少のふらつきがあって輝夜に強引に

膝枕させられた。

 

「しばらくこうしていなさい」

「でも仕事が…」

 

「永琳が倒れたらその仕事はもっと増えていくのよ。

たまには休まないと」

 

 まさか輝夜にこんなことを言われるとは…。複雑半分、嬉しさ半分といったところか。

あぁ…輝夜の香りがする…。ここに来たのも久しぶりかもしれない。

 

 偽の月を作りみんなで篭っていたのが嘘のよう。今では人里との交流もあり

輝夜も自分のやれることを探しに行くのを見て満足した。

 

 機材とか材料に充足しているとは言えないが私は今十分幸せな気持ちでいた。

しばらく輝夜の膝に頭を預けていると、輝夜の表情が明るくなり閃いたとばかりに

私に提案を投げてきた。

 

「ねぇねぇ、一度だけ。明日どこかに遊びにいかない?」

「え、だから仕事が…」

 

「一日だけ忘れなさい。さて、どこに行こうかしら」

 

 すっかり行くことが決定したかのように話をすすめる輝夜。

確かにここのとこ体がだるかったからリフレッシュした方が

効率が上がるか、と私は自分に半ば強引に納得させた。

 

「川はどうかしら。川のせせらぎでリフレッシュするというのは」

「あら、いいわね。たまには自然に身を置くのも気分転換になるかも」

 

「じゃあ行きましょう!幻想郷で一番きれいな川のある場所は…」

「何か嫌な予感するわね…」

 

 二人で顔を見合わせて私は不安な、輝夜は嬉しそうな顔をした。

 

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**

 

「輝夜!ここ妖怪の山なんだけれど!?」

「えぇ、そうよ。河童もいるし、おっきな滝もあるし。マイナスイオンもたっぷり!」

 

「それはそうだけど、妖怪もたっぷりいるんだけれど…」

「そうよ。なんていったって妖怪の山だもの。挨拶してちょっと場所借りていきましょ」

「話が通じる相手ならいいのだけど」

 

 そう言って輝夜が私を引っ張って飛んでいくとさっそく川の中から

河童が飛び出して輝夜に質問してきた。

 

「私たちの縄張りに何か用?」

 

 相変わらずセンスを感じさせない地味なリュックと帽子を纏いながら

輝夜に接触を図る河童。だけど…。

 

「あのね…姫に何かしようとするなら私が相手するわよ…」

「おぉ、怖い怖い。大丈夫だって話は聞いてるし、

ちょっとした手続きを取ってるだけだよ」

「あらそう。妖怪の中にも話がわかるのっているのね」

「ちぇっ…信用ないんだから」

 

 そう言ってから河童は元の場所へと戻っていった。

私が脅す時にはもう許可はもらったみたいで輝夜は河童から

受け取った紙を嬉しそうに握りながら近くの花が咲いている陸地に

降り立って散策を始めた。

 

「さすが高い所なだけあって景色が綺麗ね」

「でしょ。魔理沙に連れてこられて来てみたらほんと綺麗で」

 

 他の女の名前が出た途端に私の気持ちはもやもやした感じになる。

それに楽しそうに話している輝夜の顔を見ればなおさらである。

 

「私が仕事している間に色々見て回ってるのね」

「あ、ごめんなさい。でも永琳といつか行きたいなって思いながら

色々巡っていたのよ」

 

 輝夜がやや赤らめて私の顔を覗き込みながら言うもんだから

私は単純なものでその言葉ですっかり気をよくして納得した。

 

 花が沢山咲いていて近くにはほどよく小川が流れ下へと落ちていく。

ほどよい気温と湿度があって心地よくて寝そうになるのを

輝夜が手を握ってきたことで目が覚める。

 

「どう、とてもいいところでしょ?」

「えぇ、そうね」

 

 あぁ、確かに。昔と比べると平和で気持ちが安らぐ。

月にいたころも肩書きから休まることがないし、幻想郷に

来たばかりの時は追手から隠れることしか考えてなかったから。

 

 思えば月にいた時に輝夜の教育をしていた時間が一番の

安らぎだったのかもしれない。それ以来となると…。

数えると気が遠くなるような年月が経っていた。

 

 結局私が私でいられる間には必ず輝夜の存在があった。

私はもう…彼女がいないと私らしくは生きられないのだと

再確認させられてしまった。

 

「ふふ、いくら月の頭脳って言われる程の永琳でも休まないとね」

「輝夜…」

 

 何でもできる、できないことはないっていう意味を遠回しでつけられた名。

輝夜は若干皮肉って言った後に私の頬に口付けをして。

 

「本当の永琳を知ってるのは私だけで十分」

「輝夜」

「こんな可愛い永琳を知るのは私だけで十分よ」

 

 こんな風にちょっと触れ合うだけで、口付けをされるだけで顔は火照り

その火照りを涼しい風がさらっていく。ほんのわずかな時間だけれど

すごく気持ちよく感じられた。

 

「私もよ」

 

 少し間を空けてから私の口からも同じだと伝えて

輝夜の唇に自分の唇をそっと重ねた………。

 

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**

 

「師匠〜、頼まれた材料ここに置いておきますね〜」

「ありがとう、うどんげ」

 

 ひいひい言いながら疲れた顔をして帰ってくるうどんげに

一言そう告げると私の顔を見たうどんげは嬉しそうに笑っていた。

 

「顔色良くなってますね」

「そう?」

 

「姫様とのデートから随分と調子良さそうですよ」

「そうかもしれないわね」

 

 この間のことを思い出しながら私は小さく笑う。

するとうどんげは感心したように私に言った。

 

「やっぱり姫様はすごいですね」

「それはそうよ。姫だもの」

 

 そう言って二人で笑う。

 

 周りから見た姫はどう映るかはわからないけれどうさぎ達や

私から見た姫はその名に負けない魅力とカリスマを備えている。

そんな彼女に仕えられるのはとても名誉なことだ。

それに…。

 

 輝夜は私が唯一心の底から愛せる存在。

言葉では全てを言い表せられないくらい大事な存在なのだ。

 

「ではほどほどになさってくださいね」

「えぇ、そうするわ」

 

 うどんげが去った後、周りは賑やかになる。

輝夜がうさぎ達を戯れているのだろう。

それが心地良い音色のように感じられて

私の耳にずっと残るのだった。

 

お終い。

 

説明
かぐえい♪ かぐえい♪ ?( ・?・)?"!!
天才でも疲労というものはありそうなので
それを利用して輝夜とイチャイチャしてもらいました。
ただそれだけのお話(*´∇`*)←
うちの永琳は輝夜依存症ですが少しでも楽しんでもらえたら幸いです♪

*ちなみに輝夜は河童(にとり)とこっそり貴重品を取引をしてあの場所を
ある程度自由に使わせてもらっています*
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