恋姫無双 擬人劉璋伝 「胎動」 |
益州は巴郡の邑、安漢
ここに天下を狙う三人の姉妹がいた
志高く 意気軒昂 されどどこか幸薄そうな そんな姉妹だった
天和 「人和ちゃーん おねーちゃん お腹すいたー」
地和 「ねぇー 人和 その辺の店に入っちゃおうよ」
人和 「ダメよ 路銀が残り少ないんだから」
きゅるる…… 何処からか可愛らしい音が響く
天和 「お腹すいて おねーちゃん もう泣きそうだよ〜」
地和 「お腹減ってるの 天和お姉ちゃんだけじゃないんだからね」
地和 「……それもこれも ケチな連中ばかりなのが悪いのよ!」
人和 「……(はぁ) しかたないじゃない 何処に行っても重税かけられてるし」
人和 「娯楽に大枚を叩けるほど 裕福じゃないのよ」
天和 「えーん(涙) もう死んじゃう〜」
地和 「なんとかならないの? 人和」
人和 「とりあえず ここではダメね 豪族が好き勝手に牛耳ってるし……」
人和 「……幸い洛陽に向かう商団の方がいるし 便乗して山間を抜けてしまいましょう」
地和 「そうね! ケチしかいないんなら 裕福な人間がいる邑に行けばいいのよね!」
天和 「えー ここの人達も おねーちゃんを好きだって言ってくれてるのに〜」
地和 「そんなこと言ったって お金にならなきゃ意味がないじゃない」
人和 「……天和姉さん ここの人達はあまりにも余裕がなさ過ぎるわ」
人和 「好意に甘えれば甘えるほど 私達がみんなを苦しめることになるのよ」
天和 「む〜〜…………そっか〜 それじゃ しかたないよね」
天和 「ね!ね! 人和ちゃん 洛陽にいったら かっこいい人いるかな?」
地和 「それだけじゃなくて 裕福な出資者が見つかるかもしれないわよ!?」
人和 「そう簡単に上手くはいかないでしょうけど……でも 決まりね 商団の方にお願いしに行きましょう」
緑豊かな山間の地より 三人の姉妹が旅に出る
彼女達が巻き起こすことになるであろう争乱を……彼女達が知る由はない
この地に深く爪痕が残っていることも
当然 彼女たちには知りえなかったのである
若者 「おい! 天和ちゃん達が旅に出ちゃったって!?」
若者 「うおー! なぜだっ! なんで行ってしまったんだー!」
老人 「…………ワシ等のためじゃよ」
若者 「あ!? なんだよ!? どういうことだよ爺ちゃん!」
若者 「いい加減なこと言ってっと 爺さんでも容赦しねぇぞ!」
老人 「しゃからしかっ!」 ※方言:五月蝿い等
老人 「孫娘同然に愛でておったワシの気持ちが! ヌシ等孺子共にわかってたまるかっ!」
若者 「ぅぉっ……」
老婆 「まぁまぁ おじいさん 興奮すると またパッタリいってしまいますよ」
老人 「(はぁ〜 ふぅ〜) スマンな婆さん」
天を見上げ 目をつぶり 老人は脳裏に三姉妹を描く
老人 「…………ワシ等にとって あの娘達の歌は救いじゃった」
老人 「じゃが……当然、聞くからには金を払う あの娘達のためにな」
若者 「当たり前じゃねぇか……」
老人 「その金が……ワシ等の生活を逼迫していると そう感じてしまったのじゃろぅ」
若者 「なに言ってやがる! 彼女達のためなら飯を抜いたところで……!」
老人 「ほれ……それがダメじゃと言うておるのじゃ」
若者 「!……!!……」
老人の指摘に二の句を告げられなくなる
あまりもの悔しさに 若者は歯を食いしばり
怒りに全身を振るわせた
若者 「………………チクショウ!」
若者 「税が重くなったりしなきゃあ まだ余裕があったのに!」
若者 「そうだっ! 人和ちゃんに送ろうと思っていた服も……増税のせいで諦めたんだぜ」
若者 「おまえ……人和ちゃんの……」
若者 「そうだ……悪いか? お前には悪いが 世の中、巨乳が全てじゃない」
若者 「馬鹿を言うな! 地和ちゃんの小悪魔的な瞳 微笑み あれが最高なんじゃないか!」
若者 「なんだと!? いいや、お前はわかっちゃいない! いいか!?……!……!!」
血気にはやる若者のみならず 老若男女全てが 我も我もと主張を繰り返す
やがてそれは 税を徴収する役人への愚痴に変わり
しだいに邑を治める豪族たちや管理への文句へと変わって言った
みな一様に その内に憤懣を抱えていたのだ
思っても顔に出せず 口に出せず ただひたすらに秘めていた感情
支配される人間は 言ってはならない言葉……やってはならない行動
それらを覆い隠し 意識をそらし 忘れさせていた心地よき音色は
彼等のもとから離れて行ってしまった……
喪失の痛みが 重く閉ざされた心の防壁に穴を穿つ
小さき穴から吹き出た炎が 少しずつ防壁を燃やし 崩してゆく
一言
誰が言ったのかは定かではない
だが その一言が 民衆の心に楔を打ち込んだ
若者「……あ……あいつ等…………あいつ等さえいなかったら!」
その声は重い怨嗟の響きを伴い 民衆の心に深く沈みこむ
山に閉ざされた天賦の里にある 田舎の邑に
帝をも焼かんとする 公憤の業火が灯り 燻り始めたのだった
洛陽……古くから兵家必争の地であるとされ 歴代の帝王がここに都を構えた
後漢朝末期
時の皇帝 孝霊皇帝劉宏も この邑に居を構えている
政治のことごとくを張譲ら十常侍と呼ばれる宦官達に任せ
酒と女に溺れる生活を続けていた
そのような最中 霊帝に上奏をしようとする一人の男がいた
霊帝と同じく皇族の血を引く 宗室と呼ばれる一族の一人で
かつては太常(皇帝の祭祀を司る九卿の筆頭に当たる役職)まで登りつめた男
姓を劉 名を焉 字を君郎といった
劉焉 「陛下、風に吹かれる麻絹のごとく世は乱れ、庶人は匪賊の横行に疲れきっております」
劉焉 「これまでのやり方では世を治めるのが難しくなってきているのです」
霊帝 「儒をもって寛で治める今までのやり方では もはや追いつかんか」
(寛治:大土地所有者である豪族をなるべく罰せず、穏やかに統治する方策 儒:儒教)
劉焉 「はっ……今までは秩石ニ千石の郡太守の管理の下、秩石六百石の刺史が各州の監察を勤めておりましたが」
劉焉 「刺史の俸給は安く、士気も高くありません」
劉焉 「結果、匪賊が各地に跋扈し 隠れた所では郡太守の専横も目立ち始めております」
劉焉 「そこで……刺史を廃し 新たに州牧を設けてはいかがかと思います」
霊帝 「州牧だと?」
劉焉 「はっ……刺史に代えて秩石ニ千石の州牧を行政官として郡太守の上に据えるのです」
劉焉 「重臣の内より清廉な人物を州牧に任じ、強い権限を持たせ、地方統治を根幹から建て直すべきかと」
霊帝 「……即決はできぬ しばし考えさせてくれ」
劉焉 「はっ」
帝の前から辞した劉焉に 近づく者が一人
?? 「此度の献策は 功を奏しそうですかな?」
劉焉 「おお 誰かと思えば董扶殿か」
董扶 「久しゅうございますな」
親しみをこめた笑みがこぼれる
賄賂がまかり通ようなる悪政のもと 陰謀が渦巻く宮中において
董扶は数少ない 信をおける人物であった
劉焉の表情からも 心なしか険しさが薄れる
劉焉 「どこまで お聞きになられた?」
董扶 「州の頭を挿げ替える……とか……」
劉焉 「ふ さすがに耳がお早いですな」
董扶 「…………中央より 離れるおつもりか?」
劉焉 「正直 今の中央はキナ臭い」
劉焉 「少々距離をあけて 時勢を見るのが良いでしょうな」
董扶 「………………ふむ」
しばし黙考した後 董扶は探るかのように問いかける
董扶 「して……何処に向かわれる?」
劉焉 「交州が良いかと……」
劉焉 「海運を開き 海に面する東の州や南国との交易を整備すれば」
劉焉 「大いに賑わい 邑が栄えることでしょう」
董扶 「……交州にございますか………………」
なにかを考えこみ 押し黙る
その何かを呑んで隠しているような様子に
劉焉は その心意を確かめずにはいられなかった
劉焉 「董扶殿……なにを考えておられる……?」
董扶 「………………」
董扶 「……劉焉殿」
劉焉 「うん?」
董扶 「宮中より離れること しごくもっとも」
董扶 「されど 交州は異境と接する南端の地」
董扶 「中央で何かあっても 容易には来られますまい……」
劉焉 「……(我が意を悟られているのか……?)」
劉焉には野望があった
誰にも慮ることのない 自らを頂点とした王国の樹立
足がかりさえできていない今 意を悟られるわけにはいかなかった
劉焉 「で、では……董扶殿は何処が良いと思われるのか?」
董扶 「益州へ向かいなされ」
劉焉 「益州……ですと?」
董扶 「さよう かの地もまた「天険」に遮られた要害の地……」
劉焉 「……(ワシを諮っておるのか……?)」
董扶 「漢中を介せば中央にも近く 大事小事 いかなる情勢にも対処できましょう」
劉焉 「ううむ……益州か……」
董扶 「我が図識にも……出ておるのですよ、劉焉殿」
劉焉 「なに?」
董扶は太学で儒学を学ぶ一方 同郷の学者「楊厚」に師事し
同門の任安と共に図識(天文による予言の一種)を学び その名声をほしいままにしていた
妖言風説の類を好まない劉焉ではあったが
董扶の言となると あながち無視もできない
劉焉 「して? いかなる内容なのですかな?」
董扶 「…………益州の地は天子の気に満ちている……と」
劉焉 「天子の……気?」
いかにも意を得たりと言わんばかりの表情で言葉を続ける
董扶の告げるその言葉
その低く小さい声が 驚くほどに強く劉焉の耳朶を打った
自らの王朝を思い描く劉焉にとって
この上もなく甘美な音色であるかのように響き渡ったのだ
後日 霊帝の玉座の前に二人の男が傅いていた
劉虞 「これは劉焉殿 お久しぶりですな」
劉焉 「劉虞殿もお変わりなく」
劉焉 「……(宗室の中においても精錬で知られる劉虞殿がいるということは……)」
劉虞 「今回のお呼び出し いかなるものかご存知か?」
劉焉 「さて……いくつか思い当たるものの いかなる用件であるのかは 私にも……」
劉焉 「……(我が策 成ったか)」
兵士 「霊帝陛下が参られます」
近習の者が帝の入室を告げる
共に劉の姓を持つ宗室二人は あらためて頭をたれた
女と酒に溺れ 醜い腹回りに酒精の匂いを漂わせた皇帝が
二人を前に玉座に着く
霊帝「よく来たな 二人共、面を上げよ」
劉焉、劉虞 両名が顔を持ち上げ 自らの主を仰ぎ見る
霊帝 「先の州牧の件だが…………」
霊帝 「政治のことはお前達や張譲達に任せた 好きにやってみるがよい」
劉焉 「はっ」
州牧の設置は、結果的に国家の分裂に拍車をかけることになるのであるが
霊帝は自ら頭を悩ませることを疎ましく思い、これを採用してしまう
劉虞 「陛下……州牧とは いったいなんのことで……?」
疑問を発する劉虞
さも面倒そうな仕草で 劉焉に促し
劉焉は 事の仔細を劉虞に説明した
劉虞 「なるほど……州ごとに権力をまとめ」
劉虞 「個々別々に地方統治を建て直すというわけですな」
劉虞 「……(しかし、これでは……)」
霊帝 「そうだ……とはいえ いきなり全ての地域で行うのも難しかろう」
霊帝 「そこで宗室たる お前達に まずやってもらうことにした」
疑問を浮かべる劉虞を押さえ込むかのように
劉焉は大仰な仕草と声を発する
劉焉 「なるほど まず試してみて様子を見るということですな」
霊帝 「帝の血を引く そち達なれば なんの問題もあるまい」
政治に興味を示さず 宦官の専断をもそのままにする 暗愚な王の姿がそこにあった
霊帝 「して 何処の州から始めるつもりだ?」
劉虞 「……急に申されましても……そうですな……」
霊帝 「なれば劉焉よ そちは何処を所望する?」
劉焉 「はっ 私はぜひとも交…………」
(董扶 「かの地は天子の気に満ちております」)
霊帝 「ん? 聞き取れんぞ 何処と申した?」
劉焉 「はっ 失礼を(天子の気 か……)」
劉焉 「恐れながら……私は益州に参ろうと思います」
霊帝 「ほう? 益州か……なんとも物好きなものよ」
霊帝 「まぁ よい」
霊帝 「かの地は山間に阻まれ目が届かぬと思うてか 田舎豪族共の勝手が目立つ」
霊帝 「そちが赴き 漢室の威光を示すが良い」
劉焉 「ははっ」
皇帝の命を受け 劉焉は益州牧に
異民族との対立に頭を悩ませ 彼等との親交も深かった劉虞は幽州牧に任ぜられた
劉焉の野望が走り始めた その瞬間であった
−後書きのようなもの−
いろんな方々のSSを読んでいるうちに
自分でも書いてみようか などと不届きな行動をしております
会話文が名前つきになっておりもうすが
なんでかっちゅうと ワシがリプレイ好きだからなんですな〜
あと
個人的にオリキャラが多数でてくる作品は苦手なほうでして
オリキャラを踏まえ多人数の会話が入り混じると
会話文の文体で誰が誰かを 個別化するのが難しくなりますよな
んで
なら冒頭に名前を書いちまえ〜と (見慣れてない方 スイマセン
どうせ書くなら ありふれてないものがええのぅ
などと思いつつ劉璋√を選んでみたわけなんじゃが…………結構書いてる人いるジャマイカ
文の一部が 過分にネタバレしとりますがの
過分にド素人ゆえ なにとぞ 平に 平に ご容赦願いたく
誤字脱字 演出の間違いなど
ご指摘いただけるとありがたいですな〜^^
説明 | ||
ええと…………恋姫です そのはずなんです 出てくるのが ちょい役で三姉妹だけとか……Orz 次回以降はちゃんと出てくるはずです 桔梗とか桔梗とか桔梗とか ……え? 紫苑をはじめ年齢層が高いって? それは仕方がないのです だって好きなんじゃもん というわけで本筋は次回から …………あ! 一刀出すの忘れた! |
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コメント | ||
と言っても みんなの友達うぃきぺであ がベースだったりします^^;(リアルG) すげー劉焉と董扶 の逸話をよく調べている・・・これはかなり期待できます。(thule) 期待されると後が怖いですねw でも頑張ってみます^^(リアルG) 面白そうですね。(ブックマン) |
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