英雄伝説〜光と闇の軌跡〜エレボニアカオスルート |
〜緊急避難用ガレージ〜
「つ、強すぎるよ……」
「!?う、嘘だろう……!子爵閣下まで負けたのかよ……!?」
「な――――ち、父上!?」
全員が敗北し、戦闘によるダメージで呻いている中エリオットは不安そうな表情で呟き、地面に倒れているアルゼイド子爵に気づいたトヴァルとラウラは信じられない表情で声を上げ
「しっかりしろ、アリサ!ミリアム!委員長!シャロンさん!」
「起きなさい、エマ!アンタ達も早く目を覚ましなさい!」
意識を失っているアリサ達にはガイウスとセリーヌが血相を変えて呼びかけていた。
「公爵夫妻は見つかったか!?」
「いや、まだだっ!」
「向こうはまだ探していないぞ!」
するとその時扉の外からメンフィル兵達の声が聞こえてきた。
「しまった……!」
「え、援軍のメンフィル兵……!」
「万事休す……だね……」
「クッ……!」
外から聞こえてきたメンフィル兵達の声を聞いたクレア大尉は血相を変え、マキアスは表情を青褪めさせ、フィーとサラは厳しい表情をした。
「制圧完了、ですね。」
「お兄様、彼らをどうしますか?」
一方戦闘不能になったサラ達を確認したステラは武器を収め、セレーネはリィンにサラ達の処遇を訊ねた。
「…………トヴァルさん。貴方にはユミルが襲撃された時猟兵達に撃たれて重傷を負った父さんの応急手当をしてもらった恩があります。その恩もありますから、条件付きで貴方達をこの場から逃がしてあげても構いません。」
「リィン……」
「……その条件とはどういうものでしょうか?」
解放していた”力”を抑えて元の姿に戻り、太刀を鞘に収めたリィンの話を聞いたトヴァルは驚き、クレア大尉は真剣な表情で問いかけた。
「条件は二つです。一つはユーシス・アルバレアの救出を諦める事。その代わり彼の身の安全の保証は約束します。」
「そ、そんな……」
「……下っ端の兵士が国の判断に口出しできると思っているのかしら?」
リィンが口にした条件を聞いたエリオットは辛そうな表情をし、サラは厳しい表情でリィンに問いかけた。
「勿論俺達の”上司”に当たる副長達――――リフィア皇女殿下の親衛隊を率いるゼルギウス将軍閣下やシグルーン副将軍閣下を通しての嘆願になりますが、リフィア皇女殿下御付きの専属侍女長であるエリゼを通してリフィア殿下にも彼の身の安全の保証を約束してくれるように嘆願してもらいますので心配は無用です。エリゼ、頼めるか?」
「はい、お任せ下さい。」
リィンに視線を向けられたエリゼは静かな表情で頷き
「リフィア皇女殿下……メンフィル帝国の次期皇帝であられる御方か。確かにメンフィルの帝位継承者であられるリフィア殿下ならば、メンフィル帝国が捕虜にしたユーシスの処遇についても口出しできるだろうが……」
「……それ以前にわたし達と大して変わらない年齢のメイドが”聖魔皇女”付きのメイド長とか、普通に考えて信じられないんだけど。」
リィンの話を聞いたラウラとフィーはそれぞれ真剣な表情でエリゼを見つめて呟いた。
「いえ、彼女―――エリゼさんがリフィア殿下の専属侍女長である事は事実です。”西ゼムリア通商会議”でも彼女はリフィア殿下御付きの専属侍女長としてクロスベルを訪れていた事が確認されていますし、会議に参加していたオリヴァルト殿下もエリゼさんがリフィア殿下の専属侍女長である事をご存知です。」
「………なるほどね、少なくてもあんたの妹がリフィア皇女の専属侍女長である事はハッタリではないみたいね。それで?もう一つの条件ってのは何かしら?」
クレア大尉の情報を聞いたサラは真剣な表情でリィン達を見つめながら問いかけた。
「それは―――この剣を俺達が預からせてもらう事です。」
サラの問いかけに対してリィンは倒れているアルゼイド子爵に近づいてアルゼイド子爵の傍に落ちている”宝剣ガランシャール”を回収した。
「あの剣は子爵閣下―――いや、ラウラ達”アルゼイド家”の………」
「”宝剣ガランシャール”をどうするつもりだ……!?」
リィンが回収したガイウスは静かな表情で呟き、ラウラは厳しい表情でリィンを睨んで問いかけた。
「貴方達を撃退した証拠として一旦こちらが預かり、メンフィル帝国に渡させてもらう。」
「”宝剣ガランシャール”は”アルゼイド子爵家”の家宝として有名ですから、”光の剣匠”を撃退した証拠としてこれ以上の物はありませんね。」
リィンの話を聞いたステラは静かな表情で呟いた。
「勿論可能な限り早く―――遅くてもメンフィルとエレボニアの戦争が終われば、”アルゼイド家”にこの剣を返還してもらえるように手配する。―――そういう訳で立て続けになって悪いが、頼めるか、エリゼ。」
「はい、兄様。―――私がリフィア殿下にユーシスさんの件も合わせて”アルゼイド家”の家宝である”ガランシャール”を必ず返還するように説得する事を確約しますので、どうかご安心下さい。」
「何の保証もなく戦争相手である君達が約束を守ってくれるなんて、普通に考えて信じられないぞ……!」
リィンとエリゼの話を聞いたマキアスは反論したが
「信じる、信じないの問題ではないわ。アタシ達の命運は向こうが握っているのよ。アタシ達に反論する権利はないわ。」
「そ、それは…………」
セリーヌの指摘を聞くと複雑そうな表情で黙り込んだ。
「…………―――わかりました。そちらの条件を全て呑みます。サラさん達も構いませんね?」
「……ああ。」
「………ッ!それで?どうやってあたし達を味方(メンフィル)の目を誤魔化して逃がしてくれるのかしら?」
少しの間考えた後結論を出したクレア大尉は静かな表情で頷いてサラ達に視線を向け、クレア大尉の言葉にトヴァルは重々しい様子を纏って頷き、唇を噛みしめてユーシスを見つめていたサラだったがすぐに気を取り直してリィンに問いかけた。
「ベルフェゴール、頼めるか?」
「了解♪どこまで送ればいいかしら?」
「俺達突入隊がバリアハートに突入するまで待機していた場所に頼む。」
「わかったわ。じゃ、送ってくるわね〜。」
リィンの指示に頷いたベルフェゴールは転移魔術を発動してサラ達と共にその場から消えた。ベルフェゴール達が転移して数秒が経つと扉が開かれ、メンフィル兵達がガレージに現れた!
「お前達は……」
「!アルバレア公爵夫妻を発見!」
「……既に死んでいるな。」
「L小隊、まさか公爵夫妻をお前達が討ち取ったのか?」
ガレージに現れたメンフィル兵達はアルバレア公爵夫妻や領邦軍の兵士達の死体を見つけると驚き、そしてリィン達に問いかけた。
「―――はい、つい先程討ち取ったばかりです。なお、アルバレア公の次男並びに執事を生かして捕えました。」
「アルバレア公の次男まで……!」
「しかも生かして捕えるとは……!」
「大手柄じゃないか、L小隊!」
リィンの報告を聞いたメンフィル兵達は驚いたり、感心した様子でリィン達を見つめ
「―――了解した。よし、後は城館の制圧だけだ!まずは各部隊にアルバレア公爵夫妻がL小隊によって討ち取られた事を連絡し、その後は城館の制圧をするぞ!」
「おおっ!」
すぐに次の行動に移る為にガレージから出て行った。
「……俺も甘いな。幾ら父さんの件があるとはいえ、みすみす”光の剣匠”達を逃がしてしまったんだから。」
「お兄様………」
「―――そんな事はありません。」
メンフィル兵達が去った後溜息を吐いて苦笑しているリィンをセレーネが心配そうな表情で見つめている中ステラが静かな表情で答えた。
「ステラ………?」
ステラの答えを聞いたリィンは不思議そうな表情でステラを見つめた。
「彼―――ユーシスさんの救出の為だけに”戦場”であるこの場に現れ、私達とも剣を交えたのですから彼らの仲間意識は相当なものです。もし、あのまま彼らを捕縛しようとすれば自滅覚悟の激しい抵抗をした可能性も考えられます。彼らにユーシスさんの救出を諦めさせ、素直に撤退させた事は私達にとってもよかったと私は思っています。」
「私もステラさんと同じ考えです、兄様。第一私達メンフィル帝国が戦争している相手はエレボニア帝国ではありますが”メンフィルが滅ぼすべき明確な敵”は貴族連合軍。貴族連合軍ではない勢力―――それもまだ学生の彼らまで捕縛すれば、周辺諸国のメンフィルに対する印象も良くないものへと発展する可能性も考えられますから、兄様の判断は間違っていません。」
「はい……!それにトヴァルさんに対する恩も返さずにトヴァルさん達を捕まえたら、シュバルツァー卿達も悲しむと思いますから、お兄様の判断はわたくしも間違っていないと思いますわ……!」
「万が一貴方達の上司がその件で貴方達を罰しようとすればメンフィルの”客将”が私達が庇って何とかしますから、ご安心ください。最も、後で”代償”として毎晩たっぷりとご主人様に返してもらいますが。ふふふ……」
「リ、リザイラ様……え、えっと、きっと大丈夫ですよ、リィン様。リィン様にとって上司にあたるシグルーン様やゼルギウス様は”軍人”ですが柔軟な考えをお持ちでいらっしゃる方達ですし、誇り高いリフィア殿下もその件でリィン様達を罰するような事はしないと思いますわよ?」
「―――貴方の判断は決して間違っていないと私達も断言できるわ、リィン。」
「みんな………―――ありがとう。」
ステラ達のフォローの言葉を聞いたリィンは目を丸くした後ステラ達に感謝した。
〜南クロイツェン街道〜
一方その頃サラ達はベルフェゴールの転移魔術によってリィン達突入隊が待機していた場所に現れた。
「ここは………」
「どこかの街道みたいだけど……」
「あ!あれって、バリアハートじゃないか!?」
「ああ……!それにここは南クロイツェン街道だ……!」
「ええっ!?さ、さっきまで僕達、バリアハートにいたのにどうなっているの!?」
街道に現れたガイウスとフィーは不思議そうな表情で周囲を見回し、バリアハートに気づいたマキアスは声を上げ、見覚えがある風景にラウラは驚き、エリオットは困惑していた。
「まさかこんな大人数を無詠唱で転移させるなんて、少なくても”魔女”として最高峰の力を持つヴィータですら比べものにならない術者のようね……」
「うふふ、”上には上がいる”と言う事よ♪それは私だけに限らず、ご主人様達を含めたメンフィル帝国の”力”もそう。今回の件で貴方達も思い知ったでしょう?」
セリーヌに睨まれたベルフェゴールは微笑みながら答えてサラ達に問いかけ
「…………ッ!」
「やれやれ……リィンと言い、エステルと言い、あの二人は一体どうやってこんな非常識過ぎる存在を仲間にできたのか、本気で気になってきたぜ………」
「………我々をあの場から脱出させてくれた事、心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。この御恩は一生忘れません。」
ベルフェゴールの言葉を聞いたサラは悔しそうな表情で唇を噛みしめてベルフェゴールを睨み、トヴァルは疲れた表情で溜息を吐き、クレア大尉は静かな表情でベルフェゴールに感謝の言葉を述べた。
「感謝をするのなら、貴女達を逃がす事を決めたお優しい私達のご主人様に感謝しなさい。ま、これにこりたらこれ以上メンフィルとエレボニアの戦争にちょっかいを出さない事ね。」
「待ちなさい!エマ達の暗示はまだ解いていないわよ!」
クレア大尉に指摘し終えたベルフェゴールが去ろうとしたその時セリーヌが制止の声を上げた。
「あら、その娘たちの暗示ならそこのメイドを無力化した後に解いているわよ?―――ほら、ちょうど起きたわよ。」
「う、う〜ん……?」
「ん……」
「アリサ!委員長!」
ベルフェゴールに視線を向けられたアリサとエマは目覚め、それを見たエリオットは明るい表情で声を上げ
「それじゃあね〜。」
ベルフェゴールは転移魔術でその場から去った。
「あ、あれ……私、さっきまで戦っていたのに……――――え……シャロン!?嘘でしょう……!?起きてよ、シャロン!」
目覚めたアリサは気を失って倒れているシャロンに気づくと表情を青褪めさせて悲痛そうな表情で声を上げ
「セリーヌ……もしかして私達……」
「ええ……さっきまでアンタ達が戦っていた女の暗示にかかっていたのよ。」
エマの疑問にセリーヌは重々しい様子を纏って答えた。
「………とりあえず、まずは手当をした後カレイジャスに作戦失敗の連絡をして、あたし達を回収してもらうわよ……」
そしてサラは重々しい様子を纏って今後の方針をアリサ達に伝えた。
その後バリアハートの防衛部隊はメンフィル軍によって一人残らず殲滅され……ケルディック、オーロックス砦に続いてバリアハートもメンフィル帝国によって占領されてしまった。また今回の戦いによってリィン達L小隊はアルバレア公爵夫妻の殺害とアルバレア公の次男であるユーシスの捕縛に加えてエレボニア最高の剣士と謳われている”光の剣匠”率いるユーシス・アルバレアの救出部隊の撃退と言う大手柄を立てる事ができた。
一方アリサ達はユーシスの救出に失敗し、更には”アルゼイド子爵家”の家宝である”宝剣ガランシャール”が奪われるという事態に陥ってしまった――――――
と言う訳でアリサ達は何とガランシャールと引き換えに見逃してもらいました!カオスルートと謳っていますが実は現在の所カオス展開になるのはかなり終盤の予定です(ぇ)それとアリサ達を誰一人欠ける事なく生かした理由は後々の話の展開に関係ありますので、その時にわかると思います。そして今回の話にてついにリィンが大手柄を立てました!ちなみにリィンの快進撃はまだ続きます!次のリィンの手柄が何なのかは恐らく次の話で察する事ができるかもしれませんww
説明 | ||
第16話 | ||
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コメント | ||
本郷 刃様 確かに。利用価値がないのはガイウスとエマくらいですかね K'様 いや、肝心の碧の軌跡の話はほぼ終盤なんですがww d-sword様 というかロウルートに必要なキャラであるイリーナとリフィアがいる時点でメンフィルのカオスルートにはならないかと……(sorano) ↓作者様が言っていたようにあくまでも光と闇の軌跡本編よりもエレボニア帝国内の敵側が酷い目に会うという意味でのエレボニアカオスルートであって、別にメンフィルのカオスルートではないことを覚えておきましょう(本郷 刃) ユーシス、アルセイド生存、閃メンバー再戦可能状態で解放ってロウポイントばっかり稼いでるやんww(d-sword) >カオス展開になるのはかなり終盤の予定 ズコー(AA略)これじゃあカオス編じゃなくて「閃2と暁で発覚した情報を元に書き直した蒼の軌跡後半シナリオ」じゃないすか!やだー!(K') 実際、相手全員に大なり小なりの利用価値があると言っても過言ではないですからね、まぁ今後のフラグでもあるのならそれはそれで十分ですがw(本郷 刃) |
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