金剛姉妹
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 私、青葉がこの鎮守府に着任したのは秋も深まる頃の事でした。

 提督がいる執務室に行けば、扉には『入室禁止』の札が掛かっていました。

 首をかしげながらも、戸を叩くと戸がほんの少し空きました。

 中からやつれた姿の青年、第1種軍装を着ている事から恐らく提督でしょう、が出てきました。

 

 

 

 「ども、恐縮です、青葉です!!」

 「!!?」

 

 

 

 敬礼をしながら、私は提督に挨拶をしましたが、私の何かに気が付き、息をのみました。

 そして、そのまま部屋に逃げ込み鍵をかけてしまいました。

 私は訳も分からず、立ち尽くしていました。

 

 

 

 「おやぁ?新しい娘?」

 

 

 

 少し間延びした声が聞こえ、私はそちら側を向きました。

 そこにはへそだしセーラー服を着た少女が居ました。

 

 

 

 「あ、貴女は?」

 「私は重雷装巡洋艦の『北上』だよ〜。」

 「あ、先任の方ですか。」

 「うん。」

 

 

 

 挨拶を交わすと、北上さんはそのまま歩いて行こうとしました。

 ですが私は、気になっている事を聞こうと思い、北上さんを呼び止めました。

 

 

 

 「聞きたいこと〜?」

 「はい。」

 「まあ、いいかな〜。じゃあ、私の部屋に行こうか。」

 「よろしくお願いします。」

 

 

 

 こうして、私は北上さんに連れられ、彼女の部屋へと向かいました。

 

 

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 ――以下、インタビュー形式(になっているかはわかりませんがそんな感じだと思ってください、また地の文が亡くなりますのでご了承ください)――

 

 

 

 

 青葉(以下、青);では、お願いします。

 北上(以下、北);ん、分かったよ〜。

 

 

 

 青;では、この鎮守府の提督はなぜ部屋から出てこないのでしょうか。

 北;あらら、それを先に聞いちゃうか…。聞いたら戻れないけど、いいの?

 青;…………………構いません。

 北;あの人はね、ある艦娘たちの行動の所為で私たちが怖いのさ。

 青;ある、艦娘たち…?『たち』と言っていると言う事は複数と言う事ですね?

 北;そう提督はさ、とっても優秀で、優しかった。数年前まではどうしても私たちは|兵器《・・》として見られていたじゃない。最近はそう言うのも減ったって聞くけど。

 青;ええ。

 北;でさ、ウチの提督はまだ私らが兵器扱いされている中でも「一人の人間」、それもちゃんとした女の子みたいに接してくれた。私らはさ、演習とかで他の鎮守府の艦娘たち受けている仕打ちを見てこう思ったんだよ。「ああ、この鎮守府に来られてよかったな」ってさ。そうしている内に、なんて言うんだろうね、提督が好きになっちゃったんだよ。

 青;提督を好きに…?

 北;言っておくけど「Like」じゃなくて「Love」の方だよ?

 青;わかりますが…。

 北;まあいいや、そんな感じで皆アプローチを始めたのよ。特にすごかったのが金剛型戦艦の四姉妹。

 青;金剛型…。あの高速戦艦のですよね。

 北;そうだよ〜。話を戻すね。

 青;あ、はい。

 北;初めのうちはね、執務室で提督を巻き込んでお茶会をしたり、提督の仕事を手伝ったりしてアプローチをしていたんだけど、その内アプローチが激しくなって、提督の私室にまで侵入したりしていたよ。一度だけ見たんだけどさ、金剛が提督の下着を大事そうに抱えて提督の私室から出てきたこともあったんだよね。聞いた話だけど、金剛の他にも比叡、榛名、霧島も同じような事をしていたって。そして、ある日事件は起きたんだ。

 青;事件………ですか?

 北;提督が拉致されたんだよ。

 青;!?だ、誰にですか!!

 北;金剛たちだよ。いつまで経っても自分たちの好意になびかない提督に業を煮やしたんだろうね。提督に飲ませる紅茶に睡眠薬を混ぜて、攫った。

 青;ひっ(北上の形相に恐れ戦く)

 北;あろうことかあいつらは提督を拘束して!好き勝手に凌辱したんだ!!私たちが必死に捜索して見つけた時には提督の髪は真っ白で目は虚ろで!

 青;そ、それで、どうなったのですか?

 北;あの女どもはすぐに捕まって、コロしたよ。

 青;殺…した?

 北;そう、それはもう残酷にね。体を少しも動かせないようにして、指に五寸釘を打ちつけて、体の末端から細切れにして!皆、そうやって憎しみをぶつけたよ。気が付いたらアイツラの原型は無かったね。まあ、貴女がこれを聞いてどう思うかは分からないよ?でもさ、私らにとって提督の存在って言うのはさ、拠り所なんだよ…。……………もういいよね?

 青;あ、はい。ありがとうございました。

 

 

 

 ――インタビュー形式終了――

 

 

 

 

 私が北上さんの部屋から出る際、後ろを振り向くと今まで気が付きませんでしたが、そこには先ほどの提督の髪の毛がまだ黒い頃の写真…、おそらく盗撮でしょう、がありました。

 そして、それに頬ずりをする北上さんの瞳は先ほどと違って昏く澱んでいました。

 気が付けば私は体が小刻みに震えているのに気が付きました。

 

 

 

 「なんで寒くないのに…。」

 

 

 

 寒さじゃない、これは………恐怖からくる震えだと気が付くのにそう時間はかかりませんでした。

 

 

 

 「触らぬ神に祟りなし……ですか…。」

 

 

 

 この鎮守府で生活するにあたって思い浮かんだ言葉はそれでした。

 はてさて、どうなるんでしょう…。

 

 

 

 

 

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 〈提督〉

 

 

 

 ―提督が悪いんです、姉さまをそして私たちを見てくれないから―

 ―私は提督にこんなにもLoveなのになんで振り向いてくれないデスか!―

 

 

 

 眠ろうと思って、布団に入るといつもあの出来事を思い出してしまう。

 このせいで、俺はここ数年まともな睡眠を取れていない…。

 誰か、誰か助けてくれ!

 この金剛たちの呪縛から解き放ってくれ!!

 

 

 

 そんな悲痛な願いも通じることはない。

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