無限銀河魔天王 第5話「魔天王敗北」 |
第5章「魔天王敗北」
「よし、座標軸確認……」
ピピッとノートパソコンのキーボードから手を離し、巫女はふと笑みを漏らした。
「これで、いつでも敵の本拠地にたどり着けるよ♪」
「本当につけるのか?」
あまりにあっけらかんとした巫女の座標軸の確認に、光は少し怪訝そうに顔をしかめた。
「お前は、どこかで、いつもいい加減だからな?」
「失礼な!」
頬をぷくっと膨らませ巫女は癇癪を上げた。
「私のどこが、いい加減なの! いつも、ピンチを救ってあげてるのに!」
「元をたどれば、お前がドタンバで寝なければ、いつもピンチにならなかった気がするが?」
「気にしすぎだよ♪」
「……」
巫女の笑顔に頭痛を覚えたのか光は苦悶の表情で頭を押さえた。
もっとも、巫女はそんな光の顔など見えていないのか、右手のを大きく振り上げ……
「じゃあ、早速……」
スッと人差し指を突き立て……
「敵の本拠地にレッツゴー♪」
ピッとエンターキーが押された。
暗い雷鳴の轟く暗黒の世界で、剣聖のマルスは手に持った刀をジッと見つめ呟いていた。
「私は……どうすれば?」
あの衛星との会話の後、マルスはずっと自問自答していた。
ヴァクについていくのが正しいのか……
それとも、自分の正義に従うのが正しいのか……
ずっと自問していた。
「残る四天王も私一人……レミーは本当に?」
チャキンッと刀を鞘に納め、マルスはスッと立ち上がった。
「魔天王との戦いで、それが証明できるかもしれない……」
気づいたら光は何も見えない真っ暗な洞窟の中で気を失っていた。
「ここは……俺はいったい?」
頭を振ると光は隣で倒れている巫女の身体を揺すった。
「巫女?」
光は心配げに揺すると巫女は少し苛立った顔で寝返りを打った。
「う、うぅん……後、五分!」
「五分じゃね!」
巫女の頭を蹴飛ばし、光は腰に手を当てた。
「ここはどこだ!? 敵の本拠地に見えないが!?」
「後で調べるよ……」
「今すぐ、調べろ!」
「うるさいな……」
巫女はいやいや、寝心地の悪い岩肌から起き上がり、背中のリュックを下ろした。
「調べればいいんでしょう……調べれば?」
せっかくの睡眠を邪魔され、不満そうにノートパソコンを開くと巫女はキーボードを連打し始めた。
「えぇっと、座標軸は……あれ?」
巫女は目を瞬かせた。
「ここ、敵の本拠地じゃないよ?」
「なに……どういう事だ?」
「どうやら、計算にミスがあったようだね、少しだけ敵の本拠地からズレてる!」
「ズレてるじゃねーよ! お前はどうしていつもそう抜けてるんだ!」
「もう、うるさい!」
あまりに責め立てられ、巫女は涙目で光を睨んだ。
「そういうなら、光くんが座標軸の計算をすればよかったんだ。機械関係は全部、私に任せてたくせに……」
「それを言われると……」
返す言葉が無くなり、光は申し訳なさそうに頭を下げた。
「すまん……」
「もう、いいや……」
巫女は拗ねたまま、スクッと立ち上がり……
「とりあえず、座標を間違えただけで、敵の本拠地にいけないわけじゃないよ……」
巫女の言葉と同時に洞窟の入り口から、円盤型のバイクが入り込み二人の前に下りた。
「このスカイバイクで敵の本拠地まで行けばいいんだよ!」
「行けるのか?」
「スカイバイクの速さならね!」
「わかったよ……」
観念したように光は腰をかがめた。
「ん♪」
光の背中にしがみつき、巫女は嬉しそうにノドを鳴らした。
「じゃあ、敵の本拠地にレッツゴー♪」
(重い……)
スカイバイクで洞窟を出ると、光は目を仰天させた。
「きょ、巨大ロボット……」
「……よく来たな、魔天王の少年と少女よ!」
巨大ロボットの姿に光は両目をキッと吊り上げた。
「四天王の一人か……」
「すぅ〜〜すぅ〜〜……」
「巫女〜〜……」
こんな状況になっても寝る子は育つを素で実行してる巫女に光は額に青筋を立て、怒鳴った。
「起きろ!」
「うるさい〜〜……」
寝言交じりに返事を返す巫女に光はこれ以上なにも言うまいと首を振った。
気を取り直し、光はビッと巨大ロボットを指差した。
「貴様は、何者だ!」
「破滅の四天王が最後の一人……剣聖のマルス! そして、これは私の愛機、大天王」
(最後の一人……遊聖のレミーはどうしたんだ?)
光の疑問も去るうちに大天王は腰の刀を抜き去り、光たちに叫んだ。
「さぁ、貴様も搭乗しろ……そして、戦え!」
「っ……!」
自分の胸ポケットからフロッピーディスクを取り出し、光はスカイバイクのハンドルの真ん中にある差込口にフロッピーディスクを差し込んだ。
「天空聖邪降臨! 無限銀河魔天王!」
ピッとハンドルの横についてある、赤いスイッチを押した。
その瞬間、天空から青い稲妻が轟き、陣の怒号が響き渡った。
大地がゆれ、マグマが噴出す火口から一体の巨神が現れた。
そう、無限銀河魔天王が。
「いくぞっ!」
光たちの身体が淡い光に包まれ、魔天王の中へと吸収されていった。
「よしっ!」
二個の光る球体に手を合わせると、光は叫んだ。
「銀河に轟く、一閃の流星! その名は無限銀河魔天王……正義を貫くため、ここに推参!」
拳を構え、魔天王は駆け出した。
「いくぞ……勝負!」
「っ……!」
刀を振り上げ、大天王も駆け出した。
「ハァッ!」
魔天王の横っ腹を切り裂こうと、大天王の刀が空を斬った。
魔天王はその攻撃を両足を閉じるようにジャンプする事で避け、空中で大天王の脳天を拳を合わせ打っ叩いた。
ドゴンッと大天王の脳天に凄まじい衝撃が走り、大天王は大地に膝をついた。
さらに魔天王は追い討ちをかけるように大天王の横顔に蹴りを浴びせようとした。
「こんなもの!」
飛びかる蹴りを受け止め、大天王は魔天王の身体を遠くへと投げ飛ばした。
バシンッと大地に身体を強く打ちつけ、魔天王の中にいた光は苦しそうに息を吐いた。
「クッ!」
「これで止めだ!」
刀を振り上げ、大天王は魔天王切り裂こうと大空に高くジャンプした。
「負けるか!」
大地に伏せた魔天王は身体をすばやく横に回転させ、起き上がろうとした。
「遅いっ!」
しかし、大天王の攻撃のほうが早く、起き上がろうとした魔天王の左腕を切り裂いた。
「クッ……」
左腕を失いながらもなんとか立ち上がり、魔天王は大天王を睨みつけた。
逆に大天王は悲しそうに言葉を詰まらせた。
「その程度か……魔天王よ!」
「っ……」
魔天王は残った右腕を左腰の前に当て、叫んだ。
「銀河剣……絶刀!」
左腰に刀の鞘が現れ、魔天王は刀を抜き去った。
「いくぞっ……飛翔形態!」
魔天王の背中に黒き鷹の翼が現れ、大空に向かって飛び上がった。
魔天王は空中で刀を十字に斬り……
「銀河英雄奥義!」
刀の刀身に光が帯び、魔天王は大天王を切り裂こうとした。
「光波空切剣!」
「この技は!?」
魔天王の技を見切る間もなく、大天王の身体が爆風に煽られた。
「やったか!?」
刀を鞘に戻さず、魔天王は爆風のあおる大地に足をついた。
「っ!?」
その瞬間、魔天王の身体が横一文字に切り裂かれた。
「なっ……!?」
「……」
いつの間にか魔天王の頭上にいた大天王は冷たい目で言い切った。
「強かったぞ……ただ」
大天王は刀を鞘に戻し、背中を向けた。
「私の求めた答えを教えてくれる、強さではなかった……」
魔天王の身体が強い光に包まれ、大爆発を起こした。
「……さらばだ、魔天王」
大天王は振り向くこともなく、深い闇の中に消えていった。
「……」
喫茶店のテーブルの前で、牡丹は怪訝そうに烈の顔を眺めていた。
「何を企んでるのよ?」
「何が?」
ニコニコ顔で、烈は言い返した。
「あんたが、あたしにコーヒー奢るときは、必ず悪い事が起きる前触れなのよ!」
そう言いながらも、出されたコーヒーを牡丹は飲み始めた。
コクの効いた、大人の味に牡丹は顔を渋め、砂糖とミルクを大量にコーヒーに入れはじめた。
「ハッハッ♪ やっぱり、関西の田舎娘にはブラックは早すぎたか?」
「堂々と、パフェ食べてる奴に言われたくないわよ!」
「ん?」
烈は口の回りについたパフェのクリームを拭うとおかしそうに笑った。
「食いたきゃ、頼めばいいぞ……奢るぞ?」
「気味が悪いから、さっさと用件を言いなさいよ!」
「そうは言ってもな……?」
腕の時計を眺め、烈は困ったように苦笑した。
「なに、時間のかかることなの?」
「まぁ……もうちょっと、だと思うんだが?」
「もうちょっとって……あれ?」
その途端、牡丹の脳裏に強烈な睡魔が襲った。
「なんで、こんなに眠いの……?」
(来たか?)
「あ……」
バタンッとテーブルに倒れこむ牡丹を眺め、烈は困ったように頬を掻いた。
「こいつが寝ないと、ライナーゼオンは発進できないのが痛いよな?」
そういい、牡丹の胸のポケットから列車のパスポートを取り出し、烈は牡丹の額に宛がった。
その瞬間、二人の身体が淡い光に包まれ消えていった。
「クッ……」
粉々に粉砕された瓦礫の山から這い上がり、光は血の流れる頭を振った。
「油断した……」
口の中の大量の血を吐き出し、光は大地に拳を打ちつけた。
「ドタンバで相手の力量を見誤った……」
「あたた……何が起きたの?」
光とは逆に、なぜかまったくの無傷の巫女は頭を振り、光を見た。
「光くん、すごい出血だよ!?」
「額を切っただけだ……」
光は呆れたように腰に手を当て、呟いた。
「お前、今の今まで、寝てたのか?」
「うん! なんか、心地いい揺れを感じたけど……」
「頭痛い……」
頭を押さえ、光は巫女を睨みつけた。
「魔天王が負けたんだよ……俺のせいでな!」
「負けた……魔天王が?」
「そうだ!」
八つ当たり気味に光は叫んだ。
「咄嗟に脱出したが、魔天王がまた使えるか……それがわからない」
「……」
ヤケになりかけている光を眺め、巫女は背中のリュックからノートパソコンを取り出し、キーボードを連打した。
「魔天王は完璧に破壊されない限り、自動修復が可能だよ……」
「……?」
言ってる意味がわからず、光は首を傾げた。
「ようするに魔天王はまだ、戦えるってこと!」
「本当か!?」
「うん♪」
巫女は元気よく頷いた。
「修復が完了するまで、一時間くらいだね……それまで、どうする?」
「とりあえず、ここは死んだふりをしよう……戦う手段のない、俺たちじゃ、殺してくれと言ってるようなものだ!」
「さんせ〜〜〜い♪」
嬉しそうに返事を返すと巫女は猫のように光の背中に飛びつき、頬擦りをした。
「じゃあ、もう少し寝かせて〜〜〜……♪」
「今だけ、許してやるよ……」
「わ〜〜い♪」
ヴァクの元に戻ると剣聖のマルスは膝を突き、頭を下げた。
「ヴァク様……魔天王の始末、完了いたしました!」
「ふむ……ご苦労であった」
満足そうに頷くヴァクを見て、マルスは躊躇うように言った。
「それよりも、ヴァク様……少し問いただしたき議がございます!」
「なんだ?」
「かつて、私は星を放浪する傭兵だった……死にかけた私を救ってくれたのも、あなただ! だが、最近になり、私はあなたの人格を疑いだしている……」
「どういう意味だ?」
「遊聖のレミーの姿がないのですが……それは、どういう意味ですか?」
ヴァクは黙ったままマルスに背を向けた。
「ワシに逆らう愚か者はワシの手ゴマにいらん!」
「っ!」
その瞬間、マルスの目が見開き、ヴァクをその刀で手にかけようとした。
ヴァクの顔がニヤッと緩んだ。
「そして、お前も用済みじゃ……」
「なっ!?」
胴体を切り裂かれ、マルスの上半身がベチャッと大地に叩きつけられた。
「ふっ……ただの老いぼれと思ったか?」
冷たい目で見下され、マルスは心の中でほくそ笑んだ。
(これで……済むと思うな……魔天王の少年と少女は生きている……)
ヴァクを睨みつけたまま、マルスは思い知らされた。
(所詮……戦士の恩義は報われないものか?)
マルスの身体が光に包まれ消滅していった。
説明 | ||
シリーズも架橋です。 後数話で、最終回ですので、どぅか、つまらなくとも、お付き合いください。 |
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すみません、元ネタがわかりませんでした……(スーサン) | ||
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