カンスト!北郷一刀『魏伝』三章 |
カンスト!北郷一刀『魏伝』三章
俺は季衣と、盗賊団がいるところに駆けだす。
その途中、
「季衣! 俺は右から盗賊を殲滅するから、左から頼めるか?」
「まっかせてー!」
そうして俺は季衣と別れ、別々に盗賊団のもとへ駆ける。
(………これで俺は“殺す覚悟”をしなくてはいけなくなったな)
そう。俺はわざと季衣と別れた。
盗賊団を殲滅するなら季衣と一緒にいるほうが二人とも安全だ。
けど俺は別れた。
(俺は今ここで“殺す覚悟”を決め、実行しなくてはならない)
無意識のうちに俺は白夜を握りしめ、身体は少し震えていた。
手は汗ばみ、頭がズキズキと痛み始める。
(やれるのか?)
俺は心の中で自問自答する。
いくら心の中で“覚悟”を決めただの、“誓った”だのと言っても、それを実行出来なくては意味がない。
(やれるのか? じゃない。やってみせる!)
もう一度だけ心の中で決意し、白夜を抜刀した。
そしてとうとう―――――――――――
最初の盗賊の集団が見えた。
「死ねや! 国の犬共が!」
「お前らが死ね! この獣にも劣る存在め!」
仲間の兵士と盗賊達が罵り合い、戦い合う。
戦闘の錬度は圧倒的に仲間の方が上で、常時優勢な戦闘状態だった。
そんな光景を俺は立ち止り見ていた。
(クソッ! 身体が言う事を効かないだと! なんて無様な!)
俺は震えながらその戦いを見続けた。
そして初めて盗賊の死者が出る。
「ギャッ!」
「テメェ! よくも仲間を!」
「うるせぇ! お前ら全員ここで死ぬんだよっ!」
怒号の中で戦いは続く。
そんな中、俺は戦いの中の死者を見て、想像してしまった。
(もし、今死んだのが華琳だったら…………)
そんな想像をしてしまい、汚物をぶちまけそうになる。が、俺は耐えた。
気丈に戦線を見つめる。
(俺が戦わなかったら、華琳や春蘭があんな風になるかもしれない………)
俺はそう思い、物言わぬ死者を見た。
(そんな事耐えられるかっ!)
そして初めて俺は戦場を歩きだす。
その瞳は何かを恐れるのではなく、何かを決意した瞳だった。
人を“殺す”のが恐い?
―――――――――そんなの当たり前じゃねぇか!
それなのになぜあなたは人を“殺す”の?
―――――――――もう二度と間違わないためだ!
何を間違ったの?
―――――――――俺が人を“殺す”のに怯え、そのせいで大切な人を失ってしまったことだ!
だから人を“殺す”の?
―――――――――そうだ! もう俺は二度と迷わない!
そうだよ。何で俺は迷ってたんだよ。
俺は“アイツ”が死んだ後に誓ったじゃねぇか!
星たちにも言ったことじゃねぇか!
―――――――――大切な人を何がなんでも守ること。二度と大切な人を奪わせないこと。
―――――――――俺は大切な人を守るためなら何だってやる………それこそ人を殺してでもな。
それなのに今さら、目の前で起きてるってのに何震えてるんだよ!
ふざけんじゃねぇ!
「お前ら、新手が来たぞ。やっちまえ!」
「!? 北郷殿!」
俺は目の前からやって来る盗賊達を見据える。
(遅いっ!)
俺は白夜を先頭にいた盗賊に振るう。
その刃は相手の首を飛ばし、絶命させる。
俺は初めて“自覚”して人を殺した。
“自覚”して人を“殺した”という事実が俺に重くのしかかる。
しかし―――――――――
(俺はこんなところで倒れる訳にはいかねぇんだよ!)
刀を振るう。
その度に盗賊達の命を奪っていく。
(俺は華琳達を守るために!)
一振り、二振りと。
(“アイツ”との約束を守るために!)
三振り、四振りと。
その行動を続け、ものの数分でさっきまでいた盗賊達が全て物言わない存在になった。
「よし! ここはもう大丈夫だからお前らも他のやつらの所へ援軍に行け!」
「はっ!」
俺の号令とともに兵士達が駆けだす。
俺も盗賊が残っている場所に駆けだした。
(これで俺のもとの世界でいう人殺しという存在になったか………)
駆けながら思う。
(それでも………俺はさっき立てた“誓い”を守って見せる)
その身体は初めのように震えてはいなく、いつも通りの状態だった。
(“約束”を守り“誓い”を守る………か。守るものが多いな)
内心で苦笑しながらその重みを感じる。
その重みは決して嫌な重みじゃない。
(これが本当に“覚悟”を決めた、ってことなんだろうな)
その重みを感じながら、駆ける速度を上げる。
その顔にはもう何も迷いはなかった。
「はぁぁぁああああっ!」
「ガハッ!」
俺は戦線を駆けあがり中心地点辺りまで来たようだ。
流石の中心地点だけあって盗賊の人数は桁違いに多い。
それでもこちらの仲間は簡単には倒れない。
「大丈夫か!?」
「はっ! ご助力ありがとうございます、北郷殿!」
フォローは出来る限りしているがそれでも間に合わない時もある。
また一人仲間が倒れる。俺が見ただけだはこれで三人目。
「カハッ………」
「クソッ!」
そんな光景を見ながらも俺は白夜を振るい続ける。
ここで俺が立ち止まったりしたら、その方が仲間が死ぬ確率が上がるかも知れない。
「それにしても盗賊の数が減ってる気がしないな………」
「そうですね……確か敵の総人数は三千弱。こちらが千人弱くらいでしたか」
横にいた隊長格の兵士と話しながら戦況を見守る。
「奇襲でいくらか敵数を削りましたけど、それでも良くて五百くらいが限界でしょう。そして今は半刻くらい経ちましたから、残りは半数より少ないくらいの人数でしょうね」
「なるほど………」
俺は隊長格の兵士の話を聞きながら考える。
(左の方は季衣に任してある………後方は春蘭と秋蘭。前方は華琳と本隊が詰めてるから問題なし。ここは左から後方に向かう感じで迎撃でいいか)
考えを纏め隊長格の兵士に話しかける。
「俺は左から後方に向かうが……ここは任せられるか?」
「大丈夫です。心置きなく行ってください、北郷殿」
「そうか、なら……頼んだぞ!」
俺はそう告げるともう一度だけ戦況を見つめ、駆けだす。
少し走ると盗賊達の小さな集団を見つけた。
俺はその集団に突撃を仕掛ける。相手もこちらに気づいたのか迎撃を仕掛けてくる。
「おい! どこかの馬鹿が単身で突っ込んでくるぞ、やっちまえ!」
そこの集団のリーダー的な大柄な男が叫ぶ。
その叫びに盗賊の集団は俺に突撃してくる。
「そんなんじゃ俺は倒せねぇよ」
「はぁ? 何言………っ……て……………」
最後まで言い終わることなく集団の先頭の盗賊を切り捨てる。
その後に続く盗賊達も斬り刻んでいく。
一振りで数人―――春蘭や季衣みたいな事は出来ないが、二人には出来ないやり方で俺は敵を殺していく。
俺のやり方は一振りで一人。しかし確実にその命を奪っていく。
そして鍛えに鍛えた身体能力と体捌きで一か所に留まらず、戦場を駆け続ける。
それはこの世界では到底考えられない戦い方。
――――“異質”
故に敵味方が見入ってしまう。
それは何か神々しいモノを見つめている時の表情に似ている。
味方にとってそれは“戦神”
だが敵にとってそれは―――――――――
「う、うわぁぁぁぁああ! 来るな、こっちに来るなぁぁぁぁああああ!」
「うるさい………」
泣き叫ぶ盗賊など無視し、敵を抹殺する。
「た、頼む! 命だけは!!」
「………………」
先ほどいた集団はもう最後の一人になっていた。
「お願いだ! 命だけ『お前はどうした?』はっ?」
俺は命乞いする盗賊の声に被せ問いを掛ける。
「お前はそうやって命乞いする力無い人達に何をした?」
「そ、それは…………」
「お前はそんな事を無視して……嗤いながら殺したんだろう? そんな人間が助かることが出来るとでも思ってるのか?」
「へっ?」
そう言い残し、俺は盗賊に心臓に白夜を突き刺す。
そんな光景を信じられないように眺める盗賊。
「こ……の…“悪魔”め……………」
「……………」
最後の言葉を言い、絶命する。
そんな盗賊を見詰め、
「“悪魔”……ね。初めて呼ばれた言い方だが、それは自分達だろう?」
俺は血振りをし、白夜を納刀する。
「自分達のことを何も考えないで相手だけを糾弾する………こういった輩が一番嫌いな存在だな」
胸糞悪い感じがする。
「俺はこんなヤツらを“殺す”ことに怯えていたのか………こんな……………人を人と思っていないヤツを!」
歯をギリッと鳴らしながら俺は耐える。
「信念を持った相手を“殺す”のは確かに辛い………だがこんなヤツらなんかに割いてやる感情なんか何一つないな」
最後に一言呟き、さらに奥へと俺は駆けだした。
「それじゃあな………人の形をした“悪魔ども”………」
中心地から大分と離れた場所。
「なんだ? コイツら………」
俺の目の前に突如現れた白装飾達の軍団。
その数は百は下らないだろう。
「誰だ、お前達………。盗賊じゃ………ないよな?」
「諸悪の根源である、北郷一刀。悪を狩る信託はすでに下った。おとなしく死ぬがいい!」
「なっ!?」
いきなり手に持つ短剣で俺を斬りつけてきた。
俺はそれを受け流し、白夜で相手の腕を落とし、首を刈る。
そんな光景を見たにも関わらず、後ろにいた他の白装飾の軍団は俺に殺到する。
いったい何なんだ!?
俺は諸悪の根源? どういうことだ?
「けどな………俺もそう簡単に死ぬ訳にはいかないんだよっ!」
「がはっ」
殺到する白装飾の軍団を斬り刻む。
一人で多数の人間を相手にする時は絶対に足を止めてはならない。
もし足を止めたならそこでTHE ENDだ。
周りを囲まれて串刺しにされるだろう。
だから俺も足を止めずに戦場を走り回る。
「死ね! 北郷一刀!」
「何で死ななくちゃならないんだよっ!」
もはや極致に達せられた体捌きで戦場を駆ける。
横薙ぎ、袈裟斬り、兜割―――――
一太刀も止まる事を知らない斬撃で相手を屠っていく。
「「「「「悪に鉄鎚を!」」」」」
「うるせぇ!」
十人単位で俺を囲もうとする連中を、俺は空へと跳び、斬り抜ける。
戦力差は圧倒的………なのに、
(コイツら………恐怖心というものがないのか………?)
仲間がいくら殺されても連中は俺に向かってくる。
それは洗脳の類のようにも思えてくる。
やがてその数も四分の一くらいになったところで白装飾の一人が口を開いた。
「なぜお前は死を拒む!? お前はこの世界の悪だというのに!」
「意味がわからねぇって言ってるだろうが!」
「意味なんてものはいらん! “北郷一刀”という存在が悪だということは決まっているのだ!」
「そんな意味がわからん理由で死ねるかよっ!」
俺は口を開いていた最後の白装飾の胴を真っ二つにする。
「ガ……ハッ………。………北……郷…一刀…………に………死を………!」
「………………」
俺は最後の一人の死を見届け、白夜を納刀する。
「一体なんだったんだ………コイツら」
俺は胸の内に何か気持ち悪いものが入ってきたような感覚に陥るが無視する。
「俺が悪………か」
その言葉だけは俺の心の中へと響いてくる。
けど響くだけであって、覚悟は揺るがない。
「俺が悪か………そうかもしれない。人殺しが正義なんてことは絶対にあるはずがないからな」
それでも―――――――――
「俺はこの道を突き進むだけだ………」
空を見上げる。
空はこんな血生臭い戦いをしているというのに、雲一つない快晴だった。
「さて………さっさとこんな戦いを終わらせるか」
俺は歩きだす。
この先に何があるかわからない。
それでも俺は―――――――――
「立ち止る気なんて………もうないんだよ」
一刀が去った後、木の陰から一人の青年が出現した。
「ふむ………やはり傀儡ではあの者は殺せませんか」
「当り前だろう………あれだけで殺せるならこの世界に来る前に死んでいる」
その言葉に反応し、もう一人の少年が現れた。
「それにしてもうれしそうですねぇ、左慈」
「当り前だろう? あいつと戦える日がだんだんと近づいてきているだからな」
左慈は残酷な笑みを浮かべ、もう一人の青年―――于吉の方に向き直す。
「それでも時間で言えばまだまだかかりますよ?」
「何………あいつなら生き残るさ………」
左慈は于吉から目線を外し、先ほど一刀が去って行った方向を見る。
「はぁ………まぁいいでしょう。私は次のための準備に向かいますが、左慈、あなたはどうしますか?」
「俺はもう少しここにいるさ」
「そうですか………ならくれぐれもバレないようにしてくださいね?」
「俺はそんなヘマをするか! とっとと行け、于吉」
「はいはい」
于吉はそう言い残すと光に包まれ、その場所から消えた。
左慈もそれを見届けた後、光に包まれる。
「北郷一刀………この俺が唯一認めた人間………」
クックックと笑う左慈。
「于吉なんかの傀儡如きにやられるなよ? お前を殺すのはこの俺だからな………」
そして左慈もまた于吉と同じように消えた。
「逃げる者は逃げる道を無理に塞ぐな! 後方から追撃を掛ける、放っておけ!」
「………それ、もっとタチが悪いな」
やっと華琳達がいる場所に戻ってこれた。
「正面からヘタに受け止めて、噛みつかれるよりはマシでしょう?」
「まぁな………」
早速コイツは軍師をしてるなぁ。
テキパキと指示をこなしてるし。
「華琳さま。ご無事でしたか」
「ご苦労さま、秋蘭。見事な働きだったわ」
お、秋蘭が返ってきた。
ん? 一緒にいるはずの春蘭がいないな。
「なぁ秋蘭、春蘭は?」
「どうせ追撃したいだろうから、季衣に春蘭と追撃に行くよう、指示しておいたわ」
「……………見事なもんだ」
いくら春蘭がその方面で有名だからって、今回が顔を合わせるのも初めてで春蘭に指示するのも初めてなはずなのにそこまで出来るなんて………
流石は王佐の才と呼ばれただけはあるな………人間性はともかくとして。
「………何か、私に対して無礼なこと考えてたでしょ」
「別に」
コイツ心を読んできやがった!
「桂花も見事な作戦だったわ。負傷者もほとんだいないようだし、上出来よ」
「あ………ありがとうございます!」
うわっ!? もの凄い笑顔だな、おい。
なんていうかもう、この世の最上級の笑みのような気がする。
幸せ絶頂期みたいな?
「それと………一刀」
「ん?」
「……………」
なんだ? 俺なんかしたっけ?
「流石だったわね」
「………見てたのか?」
「えぇ」
「そうか………」
俺としてはアレをあんまり見られてるのはうれしくないんだが………
その言葉で………少しは救われる………かな…………
「ふぅ…………」
バタンッ!
「ち、ちょっと、一刀っ!?」
「やれやれ………。緊張の糸が切れたようですな」
「もういっそ、このまま捨てていったらどうですか!?」
「……………あれ?」
俺はいつのまにか馬の上で眠っていた。
確か華琳と話しをしてたはずなんだが………
「やっと気が付いたか」
掛けられたのは、秋蘭の穏やかな声。
「………城は?」
「とっくに陥としたぞ。その間、貴様はずっと眠りこけていたがな」
「役立たずもここに極まれりね………」
どうやら俺は華琳と話しをしている最中に気絶してしまっていたらしい。
あの時張り詰めていた緊張の糸が切れたのか………
「スマン………」
「はぁ………」
「気にするな」
「華琳さまが庇わなかったらこんな奴………」
春蘭は呆れ、桂花はなんかブツブツ言ってるし………
唯一励ましてくれたのは秋蘭だけかよ。
「まぁそれは置いておいて………」
「あ、強引に話変えた!」
イヤイヤ、イイガカリデスヨ?
「それより………目が覚めたんだからこの縄、そろそろ解いてくれないか?」
そう、俺は馬の上にいるわけだが………
縄でグルグル巻きにされた挙げ句、鞍の後ろにひょいと乗っけられているわけで。
「どうせ馬に乗れる体力なんか戻ってないでしょう? ついでだから、そのまま帰ったらどう?」
「もう戻ってるよ………」
これじゃなんか俺、文字通りにお荷物扱いじゃないか。
「まぁなんにせよ………皆無事で良かった………」
「ふんっ。あの程度で死ぬような軟弱者、我が軍にいるわけがなかろう」
「気絶して荷物扱いされてるヤツはいるけどねー」
チクショー………
こんな時だけ優勢に出やがって!
俺は一応今回が初陣だったんだぞ?
そこのところを考えろよ。
「うるさい、このネコミミ頭巾」
「ふんだ。荷物みたいに積まれてる奴になに言われたって、怖くも何ともないわよ」
「ふふっ。今回は一刀の負けね」
そんな楽しそうな笑みを浮かべるなよ………
タクッ………まぁ皆無事だからいっか。
「ただ、心残りなのは………華琳さまが気にかけておられた古書が見つからなかった事だな」
「大変………」
「春蘭! 太平要術の書だよな?」
「う、うむ。そうだ、大変用心の書だな!」
「「「「………………」」」」
えぇ…………
俺ちゃんとフォローしたよな?
「ま、まぁ結局無かったのか?」
「無知な盗賊に薪にでもされたか、落城の時に燃え落ちたのか。………まあ、代わりに桂花と季衣という得がたい宝が手に入ったのだから、良しとしましょう」
「………そうか。季衣は華琳の所に残るのか」
俺は後ろでピコピコと馬に乗っている季衣に話しかける。
「うん! それにボクの村も、華琳さまが治めてくれることになったんだ。だから今度はボクが、華琳さまを守るんだよ」
「ん?」
「この辺りを治めていた州牧が、盗賊に恐れをなして逃げ出したらしくてな。そこで華琳さまが州牧の任も引き継ぎ、この地を治めることになったのだ」
解説ありがとう、秋蘭。
「それに季衣には、今回の武功をもって華琳さまの親衛隊を任せることになった」
そっか。季衣は華琳の親衛隊になったのか………
あれ? 俺って何も仕事持ってなくね?
え? もしかしてニ○ト?
「そっか………よかったな、季衣」
少し顔を引き攣りながら答える。
「これからもよろしくね、兄ちゃん!」
「おう!」
これで荷物扱いされてなかったら、もっと格好良く兄ちゃんって呼ばれたんだろうけどな!
「さて。後は、桂花のことだけれども………」
「………はい」
桂花のこと? 何かあったっけ?
………あぁ! 食料半分の件か。
正直な話、今回の戦いで存分に力を振るってたから、もともと華琳の下にいる気がしてたな。
「桂花。最初にした約束、覚えているわよね?」
「………はい」
何か雲行きが怪しいな………
「城を目の前にして言うのも何だけれど、私………とてもお腹が空いているの。分かる?」
お腹が空いている?
どういう事―――――まさか!?
「………はい」
「………糧食が足らなかったのか」
おいおい………
しかも足らなかった理由って………
「こっちの兵の損害が少なすぎて、兵が予想以上に残ったってとこか………」
「流石ね。現場を見ていないのに一瞬でその考えに至るなんて」
マジかよ………
俺もあの時それについては危惧したけど………
正直『んなことあるわけないか♪』ってな感じに流しちゃったな。
「ですが、華琳さま。一つだけ言わさせていただければ、それはこの季衣が………」
「にゃ?」
季衣が何かしたのか?
いや、今は桂花の援護に回るとするか。
ここでコイツを失うのは痛すぎるからな。
「まぁまぁ華琳。それはどう考えても不可抗力だろ?」
「不可抗力や予測できない事態が起こるのが、戦場の常よ。それを言い訳にするのは、適切な予測が出来ない、無能者のすることだと思うのだけれど?」
なかなか痛い所を突いてくるな………
「そ、それはそうですが………」
「………それでも、糧食を人の十倍食べる味方がいきなり加わるってのは、いくらなんでも常人の予想を超えてると思うぞ? 流石の俺もそれは予想してなかったし」
そう。
季衣はあの小ささで、俺達の十倍以上の糧食を平らげたらしい。
まぁ、あれだけのパワーの源になるって考えれば、妥当な計算なんだが………
ありえない………
まぁ桂花のフォローをするとなれば、一応の誤差のために多めには持ってきたそうだ。
それでも季衣の胃袋には勝てなかった訳だが………
「え? えっと………ボク、何か悪いこと、した?」
「いや、季衣は別に悪くない。気にするな」
確かに季衣は悪くない………と思う。
今回は少し間が悪かっただけさ。
「なぁ、華琳」
「何かしら?」
さてコイツをここまで引っ張ってきたのは俺だ。
それなのにコイツが死ぬなんてことは目覚めが悪い。
そのために―――――――――
「コイツの帳簿を見て何も言わないで連れてきたのは俺だ。だから首を刎ねるなら俺にしてくれ」
「「「「「なっ!?」」」」」
皆唖然とした顔で俺を見てくる。
「ば、馬鹿じゃないの!? あんたは何も関係ないでしょ!? 華琳さまっ! 今回の件は私の不始末です! コイツは関係ありません。だから私の首を刎ねるなり、思うがままにしてくださいませ!」
「駄目だって言ってるだろ? お前は今後の華琳の覇業を進むために必要な人材なんだ。そんなヤツをこんなところで死なせるか」
「だからって何でアンタが!」
「それは連れてきたのが俺だからって言ってるだろ?」
そんな言葉の応酬を続けていたらとうとう華琳がキレ出した。
「いい加減にしなさいっ!」
「「っ!?」」
いきなり華琳の覇気に当てられた俺と桂花は硬直する。
周りの皆も同じようだ。
まぁ俺は一瞬だけ硬直してすぐに解けたけど。
「大体なんで一刀が桂花の代わりに罪を被るって言うの?」
「それは俺がコイツを連れてきたからに決まってるだろ? 俺が連れてこなかったらこんなことにはならかったはずだ」
「………………」
俺は華琳を真正面から睨む。
華琳も俺を真正面から睨み返してくる。
………メチャクチャ怖ぇ。
「………はぁ。桂花」
「は、はい!」
「今回の遠征の功績を無視できないのは周知の事実。………一刀に免じて、死刑を減刑して、おしおきだけで許してあげる」
「華琳さま………っ!」
「華琳………」
ふぅ〜………助かったか。
場当たりだったけど、なんとかなるもんだな。
「あ………ありがとうございます! 華琳さまっ!」
「ふふっ。なら、桂花は城に戻ったら、私の部屋に来なさい。たっぷり………可愛がってあげる」
「はい……………っ!」
何なんだ? この桃色空間は………
「…………むぅ」
「…………いいなぁ」
華琳のおしおきが良い?
コイツら、まさか…………
「ねぇねぇ兄ちゃん。ボク、お腹すいたよー。何か食べに行こうよぅ」
「それがいいか。片付けが終わったら、皆で何か食べに行くか」
まぁコイツらが同性愛者だろうが俺には関係ないし。
それに俺はコイツらがどんなヤツだろうと守るって決めたしな。
「やったぁ! それじゃ、早く帰りましょうっ!」
「ははは。こらこら、縄を引っ張るな、季衣」
この状態でその縄がほどけたら、落ちちゃうじゃないか。いくらなんでもこの高さで頭から落ちたら、流石の俺でも助からないぜ、HA☆HA☆HA☆HA
「ほら、春蘭さまも早く早くー!」
「分かったというに。ほら、秋蘭も行くぞ」
「うむ」
春蘭と秋蘭は先に進んでいく。
俺はもしかしてこのまま結局帰るのか?
「一刀」
「なんだ? 華琳」
「ごちそうになるわね?」
「なっ!?」
その言葉を残し華琳は桂花を連れて先に進む。
アイツ………顔には出してないけど、俺が桂花を助けたのに怒ってるな?
どうせ俺が助けなくても殺そうとしなかったくせに………
「まぁいいか」
俺はそう無理やり思い込むことする。
そうでもしてないとやってられないしな。
………ありゃ? なんか縄が緩くなってきた気が………
「あ、解けちゃった」
……………マジかよ。
ドスンッ!
………これが今回のオチだと言う………の…か…………チィーン。
あとがき
やっとこさ三章に入れましたね。
なんていうか………疲れましたよ、ホントw
蒼はまだ学生ですから“夏休みの宿題”という悪魔がいるんですよねww
それをやりながらssを書くのは骨が折れます(泣)
てか戦闘描写少なっ!ww
一番の見どころがこんなことになっちゃったw
………ま、いっかw
それよりもssを書いてる途中に思ったことが一つ―――――――――
『一人称か三人称かはっきりしてないなw』
ということですw
いいでしょうかねぇ………
何か変な文章になってるようで困ってるんですが、皆さまはどう思いでしょうか?
変だという場合はコメにでも書いてくれれば考えるんで言ってください。
あまり辛辣なコメだと泣くかも知れませんがww
あぁ、後、少しの間更新が滞るかも知れません………
テストとかいろいろあるんですよねぇww
まぁいざとなったら繋ぎとしてもう一つ執筆しているssの方を投稿するようにするんで勘弁してくださいwww
さて今回のあとがきはここまで。
いつも通りのコメの返信をしておさらばです。
ではでは(^o^)/
逢魔紫さん>いつも誤字報告助かります。ホントw
雄さん>誤字報告ありがとうございます。今回も見つけたら連絡お願いしますね。
munimuniさん>ひぃぃいい。かっこよくするんでギロチンだけわぁぁああww
タンデムさん>そうですね。今回は戦闘描写も入ったので少しくらい(ホント少しw)楽しめたんじゃないでしょうか。次回の一刀を待ってて下さいw
ストーさん>これぞカンスト!ですねww
motomaruさん>そうですね。人間ある種の覚悟をしたら強くなるのが一般ですし。すいませんね、凪の方はまだ先になりそうですw
Poussiereさん>誤字報告ありがとうございます。今回は盗賊団との戦いになりました。次回は期待せずに待っていてくださいw
ブックマンさん>それはもう斬っては投げ、斬っては投げの大奮闘ですww
伏宮真華さん>蒼が思うに、桂花はデレてこそ桂花だと思うんですよww
cielo spadaさん>さぁ、どうなることやらw詳細は次回(マテw嘘です、すいませんww
jackryさん>土下座じゃたりない!?ならアクロバティック土下座でwwまぁなんにせよ頑張りますよ?ww
アインさん>声援ありがとうございます。次回は頑張って一週間で仕上げて見せます(でももう一つの作品も書いてるせいで執筆が遅くなってるんだよなぁww
説明 | ||
とうとう五回目の投稿となりました、蒼です。 いや〜、戦闘描写は難しいですね。なんか変な感じになったような気が(汗) それより今回は文字数がいつもより少なくなってしましましたw まぁそこんところを理解した上で、本編へどうぞ! |
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コメント | ||
はじめまして。読ませていただきました。真の魏ルートだと思うのですが、なぜ左慈が筋肉ダルマにつかまってないのですか?w(黒猫) 白装束の登場……どこかで同じようなのあったような……(伏宮真華) 一刀カッコよかったな。まぁ最後にオチがついたけどねwでもそれが一刀らしさかな。(ブックマン) 桂花がデレたんだから、左慈もデレないかなぁwww(キラ・リョウ) 左慈、于吉は、導師勢に入るかな? ん〜 さて、一刀が更なる成長する事を愉しみですね^^w(Poussiere) ちょこっとコメ返信w jackryさん>ふむふむ、なるほどなるほど。参考になりますね。ならそこのところを考えて続きを執筆することにします。感想ありがとうございます(蒼) 急に白装束だ!!倒しちゃうあたりがカンストだね〜〜(motomaru) ちょこっとここでコメ返信w jackryさん、shin1203さん>導士勢というと左慈や于吉なんかも入るんですかねぇ。そこんところは許していのか駄目なのかで今後の話の展開に関わってくるんですが、どうでしょうか?(蒼) 白装束入ると今一現実味が抜ける・・・・なしの方向にして欲しい(shin1203) b@/y(shin1203) 白装束が・・・ せわしなくなりますねww(ストー) |
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