【蜀】小ネタ |
良く晴れた、昼間。
・・・どこからか元気だが、ひたすらに頭の悪い歌が聞こえてくる。
「いち たす いちは 3なのだ〜 倍 なのだ〜♪」
一刀は、ずり落ちそうになりながらも、歌の発信源をたどると、一丈八尺の鋼矛(蛇矛ちゃん)をブンブン振り回し、中庭を闊歩している小さな影を見つけた。言うまでもなく・・・やっぱり、それは、もちろん、鈴々だった。
ズンズンと音を立て歩くようなその姿に、城内を歩く兵も、誰もが、口元をゆるめてしまう。どうやら、今日の鈴々はご機嫌のようだ。
「おーい。鈴々〜!」
声をかけてみると、一瞬、何処から声をかけられたのかと、辺りを探すそぶりを見せるが、すぐにこちらに気が付き、テトテトとこちらへ駈けてきた。・・・ただ、その場にポーンと投げ捨てられた蛇矛は気の毒だなあ。
「にゃ? お兄ちゃん、こんなところで何してるのだ?」
ぴょこぴょこと跳ねながら、訪ねてくる鈴々の可愛らしさは、2割増だ。眼福、眼福。
「ちょっと、息抜きにね。町まで行こうと思ったんだけれども、鈴々も一緒に行くか?」
「にゃ〜!、行きたい行きたい!鈴々、さっきまで鍛練で蒲公英をボコボコにしてたから、おなかがペコペコなのだ〜」
うん。一部、聞き捨てならないことも聞いたような気がしたが、まあ、イイだろう。ゴメンよ、蒲公英!埋め合わせは今度するから。
それにしても、現在の俺の状況といえば実は、愛紗が目を離した隙に、コッソリと政務を抜け出してきたのだけれどね。この際、鈴々も一緒に怒られ仲間になってもらおう。ふっふっふ。
「うぅ〜鈴々、何故だか急に町には行かない方がいい気がしてきたのだ・・・。」
(うっ、なんと勘のいいことだ。まずい!ここで時間を食っては、やっとのこと抜け出してきた苦労が水の泡に!だって、愛紗がぴったりで離れてくれないんだもん。やっぱ俺って、信頼無いのかなぁ・・・)
「そっそう言わずに、さあ行こう!ほら行こう!すぐに行こう!よっと!『にゃっ!?』」
そう言うや否や、一刀は鈴々を小脇に抱えてピューと町へと走っていった。何しろ兵は迅速を尊ぶのだ。
町についても、あ〜とか、う〜とか唸っていた鈴々も、今ではさっきまでの上機嫌を取り戻していた。いや、さっきよりも機嫌がいいかな?なんでだろう?
「おや、張将軍!今日は御使い様と逢引きですかい?」
「うん!鈴々達は今、“でぇ〜と”なのだ!」
「御使い様〜 こちらの桃は食べごろですよ〜 いかがですか?」
「はは、本当においしそうだ。何個かもらうよ、いくらだい?」
流石は城下、人徳と言うべきか、オーラの無さからなのか、行く先々で、町の人から次々と声を掛けられ、呼び止められてゆく。これも、まあ、愛されているのだろう。
そんな一刀の思いを知ってか知らずか、先ほど買った桃にかぶり付きながら、鈴々はますます機嫌を良くしていた。久しぶりの一刀とのお出かけ、というのも去ることながら、さっきの店のおっちゃんの一言か利いたのは、言うまでもない。
「に〜 たす に〜は 4なのだ〜♪」
あはっ、今度はあたっている。ご機嫌だなぁ鈴々。よっぽど桃がおいしかったかな。
全く持って、一刀の頭は脳みその代わりに藁でも詰まっているのではないのだろうか?
ともあれ、二人は、日が暮れるまで、町の彼方此方で買い食いやら、買い物やらをしてすごした。
「鈴々〜 そろそろ、暗くなってきたし帰ろうか?」
「え〜、もうそんな時間になっちゃったのか、なのだ〜」
この時点で、二人とも、すでに自分たちが昼間に何をやらかして来たのかを完全に忘れ去っていた。
城門の前までやってくると、普段はまだ開いているはずの門が閉められ、更に、付いているはずの門兵がおらず、城門は異様な静けさを保っていた。
「・・・何だろう?この門をくぐると、首から上がバッサりと逝ってしまう気がするのだけれど・・・。よっ良ければ、鈴々さんからお先にいかかがですか?」
「にゃはは〜、それは、賛成の反対なのだ・・・。鈴々も嫌な予感しか無いのだ・・・。お兄ちゃんからどうぞ、なのだ。」
二人が互いに譲り(押し付け)合いをしてると、ギィ〜っと静かに城門が開かれた。
「り、鈴々はまだ、何にもしてないのだ!」
「おっ俺だってまだ!」
そこに、開かれた門の内側には、八十二斤の青龍偃月刀をでんと構え、戦場でも見せぬような鬼の形相の軍神が立っていた。
「「ゲッ!関羽!!」」
見事にハモった二人に対して、愛紗がカミナリを落とした。
「何が“ゲッ!”ですか! 日頃からご主人様が、私のことをどの様にお思いかが垣間見える発言ですねぇ!(中略)ですから・・・(中略)鈴々と町へ行った方が幾分、有意義なのでしょうとも(中略)だいたい・・・(中略)。」
止まることのないお説教に、一刀もただただ頭を下げ続けることしかできない。そんな中、
「りっ鈴々は、お兄ちゃんに誘われて付いていっただけだから、なっ何も悪くないのだ!」
鈴々が何んとか言い切ると、その場に一瞬の静寂とユラリという効果音が付きそうな愛紗のまなざしと共に、
「ほ〜う。・・・そうか。そうであろうな、珍しく、仕事もこなし、ご主人様の警護としてお供した事も評価できる。それに、ご主人様の遊びに出る口実に利用され、あまつさえ巻き添え食ったとすれば被害者ともとれる・・・。」
ああ、やっぱりバレていますよね。鈴々を巻き込んだこと。怖い、怖いよ、愛紗さん。お願いだから、その人を殺せるような笑顔をこっちに向けないで。
ほっとした顔の鈴々に騙したな、とばかりに睨まれる。あ〜ゴメンよ、ゴメン。でも、鈴々と遊びたかったのは嘘じゃないよ。
しかし、それだけでことは終わらなかった。
「時に鈴々、武人の魂とも言える、得物をその辺に投げ捨てて起き、そこに、通りかかった朱里がつまずき、一緒にいた雛里もつられて転んだとしても、そこには何の落ち度も無いものなのだな。更には、気を失った蒲公英を鍛錬場にそのまま放置することに、何の落ち度もないと言い切れるのか!この馬鹿者が!!」
うわ〜途中から爆発パターンだ・・・。怖い、愛紗さん。愛紗さん、怖い。
「うにゃ〜 ごめんなさいなのだ〜 もうしません許してなのだ〜」
「愛紗〜悪かった!ホントの本当に反省してる!」
「いいえ!ご主人様も鈴々も全く分かってはいません!・・・・・・私がどんなに(中略)・・・そもそも何故、私を誘っては下さらない。ゴニョゴニョ。」
それから、数刻の間、将軍と太守が、城門の前に正座させられる、という世にも奇妙な姿が民によって見かけられたとか・・・。
また、城内にも響き渡った愛紗の怒声により、一刀の姑息な小細工が知れ渡り、そのせいで、一刀がしばらくは皆から警戒され、誰を誘っても断られると言う状況が続いた、これを泣きそうになりながら愛紗に訴えるも、頬を膨らまし、プイとそっぽを向いた彼女に、「自業自得です!」と一蹴されるだけであった。
説明 | ||
どこぞからの電波を受信! 好き勝手にやらせていただいております。 キャラ崩壊が気になる方はお気を付け下さい。 |
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コメント | ||
一刀は自業自得ですねw(ブックマン) 素直に本音をぶちまけちゃえばいいのにねぇwwwwwwwwwww(スターダスト) ここはご機嫌取りに種馬としての本業をひとつ・・・・・(cheat) こりゃあ一刀が夜に愛紗と話し合うしかないね。何処でとは言わないが。(トーヤ) さすが嫉妬神、はんぱじゃねぇwww(キラ・リョウ) 嫉妬将軍爆発www(温泉まんじゅう) |
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