マイ「艦これ」「みほちん」第56話<轟沈と異動>(改) |
「普通さぁ、艦娘ってここまではしないんだろうね」
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マイ「艦これ」「みほちん」
:第56話<轟沈と異動>(改)
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その艦娘の声が響いた。
「だから、なんで付いて来るのさ?」
「違う! 話を聞いてくれっ」
舞鶴にしては珍しく大声を出している。二人の声が埠頭にエコーする。
空には月が出ていた。遠くに大山のシルエットを掲げてダークブルーに浮かび上がった美保湾。
それを背景に鎮守府埠頭と岸壁が黒々としたコントラストをなしている。
見ると手前の埠頭に舞鶴らしき人影。
そして話している相手の艦娘が……
「あれ? いないけど」
どこだ?
「もう、放っておいてよ!」
その艦娘の、ちょっと怒ったような、ぶっきらぼうなセリフが響いた。
「あ……」
私は呟いた。そのエコーのかかった声は海上から聞こえている。
「なぁんだ、舞鶴が嫌で、ついに海の上まで逃げたのか」
嫌われたな、お前も。
「……」
知らない人が見たら驚くだろう。艦娘は艤装を付けなくても基本的に、そのままで海の上を歩ける。
正確に言うと航行しているのだが……しかしパッと見ると、まるで忍者が水上歩行しているようにしか見えない。
「日向の航行姿なんかは、もう制服と合わせて忍者そのものなんだけどな」
思わず思い出した私は苦笑した。
「いや、そんな事はどうでも良い」
自分で何を考えているのだ? 呆れるな。
少し怒ったように艦娘は続ける。
「アタシのことなんかさぁ、もぉ気にしてくれなくっても大丈夫だから。いい加減にしてくれないかな」
「……」
月明かりに少し黒髪が反射して青白く水面(みなも)に立つ艦娘……
思い出した!
「あの艦娘は以前、舞鶴にも居た北上じゃないか?」
実は彼女と私は舞鶴に着任後から接する機会が多い艦娘だった。
北上自身が竹を割ったような、あっさりした性格だった。艦娘でありながら右も左も分からない不器用な私にも遠慮せず、あれこれ教えてくれた。
だから彼女は、よくこう言っていた。
「普通さぁ、艦娘ってここまではしないんだろうね」
「そうだね」
お互いに苦笑しながら、そんな会話をよく二人でしていた。
実際、そのくらい屈託が無くて面倒見が良かった北上だ。それ以外でも、いろいろウマが合ったから気が付けば日向同様、彼女にも「さん」を付けずに呼び捨て出来る間柄になっていた。
「……そういえば私が艦娘と出会った順番としては北上のほうが先か?」
だから単純に比較すれば彼女のほうが「旧友」になるのか。
ただ北上との関係も長くは続かなかった。彼女は私が舞鶴沖の海戦で敗走した後に他の鎮守府に異動になったらしい。
らしい……と言うのは私も、あの海戦後はしばらく現場から遠ざかっていたからだ。だから私も、その後の舞鶴の艦隊編成事情には疎い。気がつくと、いつの間にか北上は、ひっそりと舞鶴から消えていた。
軍隊の異動は、いつも突然だ。ましてや異動理由なんか機密事項に類するから当時下っ端の私が知る由もない。
彼女のショックを和らげるために上層部が事情を汲んで異動させたという噂もあった。つまり私が沈めた軽巡……あの重雷装艦と北上がとても仲が良かったらしいのだ。その艦娘が沈没したことにショックを受けた北上は以後、精神的に不安定になった……という噂もあったくらいだ。
いや実際のところは分からない。だが改めて思い返すと私が美保に着任した姿を見た彼女が慌てて逃げ出したのも何となく分かる気もする。その親友を轟沈させたのが他でもない私なのだから。
だが改めてショックを受けたのは私の方だよな……彼女を忘れようとするあまり……本当に忘れていた。薄情者だ。
「もしそうだったら、ごめん北上」
私は直接詫びたくなった。あいつには美保に来てからの私自身の行動も含めて申し訳ない。
そうやって私が過去を思い出している間にも夜の海の上では未だに妙な睨み合いが続いているようだ。
「いい加減、どっちか折れないかな?」
痴話ゲンカみたいな二人に割って入る気はないけど何だろう? ……さっきから妙な胸騒ぎがするんだ。変な緊張感。
この状況は早く収拾しないとまずい事になりそうな気がする。あの美保湾から深海棲艦に見つめられたときのような刺すような感覚だ。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは「美保鎮守府」の略称です。
説明 | ||
司令は夜の鎮守府埠頭で口論をする艦娘と舞鶴の参謀を見て驚いた。その娘は、よく知っていたから。 |
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美保鎮守府 舞鶴 ア艦これ 艦娘 北上 | ||
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