恋姫†夢想×三極姫 〜選ばれし英雄達〜
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「呂布隊は生き残った義勇軍をこちらに向かわせているの?」

 

 紫色の服一色を好み、黒い髪をなびかせ魔性を匂わせる女性が、先日の銀河達が戦った黄巾賊との戦いの報告を聞く。

 彼女の名は董卓仲頴。

 

「はい、問題なく。彼らの今後についてもお任せください」

 

 董卓の指示に従う女性名は李儒。

 この李儒と呂布隊はこの董卓の部下であり、黄巾賊を討伐するために立ち上がった義勇軍の一つである。

 

「そう、じゃぁこれで戦力の補充はやめましょう、あまりに多いと色々と面倒だから」

 

 ただ、董卓は組織化していない義勇軍や生き残った部隊を自軍に取り込むことに集中していた。

 狙いは『先』への準備。

 

「楽しみね。この世界がもうすぐ、私の物になると思ったら・・・」

 

 董卓はほほ笑む。

 この先に続く、未来を見て・・・。

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黄巾の乱編 中章 『出会い』

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 呂布は、先の戦での勝利を報告するために、自身の総大将である董卓の軍へと向かっていた。

 助けられた銀河と北郷も生き残った義勇軍と共に董卓軍へと一緒に向う。

 その道中で、暁人という青年と出会い、同じ同世代ということで意気投合し、三人はチームとして行動していた。

 

「董卓・・・か」

 

 ある日の食事時に、ぽつりと北郷はつぶやいた。

 

「董卓がどうかしたのか?」

 

 銀河は少し歯切れの悪そうな北郷に質問した。

 暁人は、黙って会話を聞いている。

 

「いや、董卓って名前は実はあまり好印象を持っていないんだよ」

 

「へぇ・・・それは興味あるな」

 

 銀河は董卓のことを何も知らない。

 少なくともこの時代に生きている銀河や暁人にとっては、董卓とは無名の武将という認識であった。

 

「でも、あくまでも俺が好印象を持てないということだけだから、気にしなくていいよ」

 

 北郷は明らかに作り笑顔を見せつつ、自身の食事を終えてその場をでる。

 残された二人はそんな北郷の行動に少し不安を抱いた。

 

 特に銀河は、あんな出会い方をしてしまっているため、彼は夢を叶えてくれる可能性を持つ人間だと信じている部分があり、その一つ一つの発言は、貴重な『お告げ』と思い込んでいた。

 

「・・・気になるね」

 

「暁人もか・・・」

 

 暁人は北郷と銀河の出会いの詳細は知らない。

 彼にとっての気になるは仲間としての『気になる』だ。

 

「・・・暁人」

 

「何かな、銀河?」

 

 だから、銀河が『気になる』という理由を言うのは少しためらってしまう。

 

「これから話をすることは他言無用で、お願い出来るかな?」

 

 しかし、初めて『仲間』と認識として接する人間であり、何よりも『秘密』をいつまでも一人で抱え込むことは銀河には出来なかった。

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 一方で、北郷は自身が持つ『三国志歴史』について銀河に話すかどうか悩んでいた。

 話すことで、銀河がどんな行動をとるのかと不安だったからだ。

 

 人は未来を知ってしまうとどうしても『得』になる行動を起こしてしまう。

 この北郷も然り、あの戦い以来、歴史を知っている彼にとっては、呂布は最強の武将と知っているので、生きていくという生存本能において、常に呂布の傍にいろと囁いていた。

 

 だが、それも限界が近い。

 呂布が董卓と合流するいうことは、もうすぐ次の『戦い』が始まるという予兆。

 北郷は次の選択を余儀なくされていた。

 

「・・・貴様、一人か?」

 

「えっ?」

 

 ガチャりと金属音と共に、北郷を呼ぶ。

 それは呂布であった。

 

「・・・あっ、その」

 

 いきなりの呂布登場に驚く北郷だが、彼女はそんなことを気にせずに空を見上げた。

 

「空はいつも何も変わらない。だが、地は荒れ果て人は人を殺している」

 

「・・・」

 

「お前はこの地を見て、何を感じた? 何をしたい?」

 

 やがて、呂布はまっすぐと北郷を見る。

 その瞳はとても綺麗であり、引き込まれそうな感覚を北郷は感じた。

 

「運命に流されるままも、それも天命だ。だが、お前の心はそう言っているのか?」

 

「・・・俺の心」

 

「心に嘘をつく人間に、天は決して答えはくれない」

 

 呂布はそう言うと、その場を去っていった。

 取り残されるような形となった北郷。

 

「俺は・・・」

 

 自身の手を見つめ、呂布の言葉の意味を考える。

 

『お前の心はどう思っている』

 

 真意を充てられたように言った呂布の言葉は、北郷の心に確かに響いた。

 これから自分はどうするべきなのか、という大きな目的が。

 

「おーい!」

 

 今度は銀河と暁人が北郷を呼ぶ。

 合流すると、二人はさきほどの北郷のつぶやきが、気になって話に来たらしい。

 

「二人共、大事な話がある」

 

 北郷は決める。

 自身の心のゆくままに、従って。

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 次の日。

 出発の準備をしている中、呂玲綺が呂布にある報告をしに来た。

 

「義母上・・・脱走者がでました」

 

「どんな奴だ?」

 

「知らない二人と、この前助けたキラキラした服を着た男」

 

 呂玲綺が知らないなら二人はわからないが、キラキラした服を着た男なら呂布もすぐに理解した。

 北郷という男ならば。

 

「捨て置け。雑兵に構っている暇はない」

 

「わかった、すぐに出発の準備をする」

 

 呂玲綺が報告を終えて、出立の準備に出ていくのを確認すると呂布は空を見た。

 

「・・・」

 

 過去の思い出。

 呂布は北郷とは出会ったことがある。いや、出会ったところか一緒に旅をしてきた仲間でもあった。

 ただし、それは違う『北郷』である。

 

 出会った頃は呂布も驚いた。

 なんせ『二人』の呂布がいたのだから。

 実は義母上と名乗っている彼女は、もう一人の『異世界の呂布』である。

 この呂布と北郷は、謎の砂塵よってこの地に流されてしまい、二人を見分けるために北郷の提案より親子の縁になり、異世界の呂布は義母として呂玲綺という名前になると北郷が決めた。

 そして、しばらく彷徨っていたところをこの世界の董卓に拾われて、今に至る。

 

 だが、現在『その』北郷はいない。

 『異世界の呂布』である呂玲綺も北郷の記憶を失っている。

 彼は死んだ。

 殺されたわけではない。消滅したのだ、呂布の前で。

 

「俺の役目は終わったらしい。すまないけど、恋・・・呂玲綺のことをお願いね」

 

 消滅寸前に北郷は、呂玲綺をこの世界で生きて生けるために、自身の記憶を奪っていき、彼女は北郷のことを何も知らないで過ごしている。

 でも、それは呂玲綺だけの話。

 呂布は記憶の消去はされていないため、彼の記憶は残っている。

 残っているため、他人似の北郷に会った。

 

『運命に流されるままも、それも天命だ。だが、お前の心はそう言っているのか?』

 

 あの時に、後を託す北郷に対して言いたかったこと。

 運命のままに生きてきて、それでよかったのか、と。

 

「・・・しかし、己の命に意味を与えられるのは自分のみ」

 

 決して誰か意思で動くことはない。全ては自身の意思だ。

 仮に『全て』が『与えられた命』だとしても、最後の一歩を決めるのは自身のみ。

 

「・・・ふっ、ふふ」 

 

 呂布は今後の北郷が、どう動くのか少し楽しみを感じつつ、董卓の元へと向かうのであった。

説明
・・・呂布隊に助けられた二人は?

※※※
2話です。
後編は5月初めごろに投稿します。
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