マイ「艦これ」「みほ2ん」第8話<遭遇の十字路> |
「司令! どうかされましたか?」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
:第8話<遭遇の十字路>(改2)
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今日も好天で徐々に気温が上がる。境港は抜けるような青空だ。
ただ軍用車ってのは街中だとエンジン音が乱反射して、よけいにうるさい。
運転している日向も大きな声で叫ぶように言う。
「とりあえず役場へ向かいますか?」
すると母親が後ろから身を乗り出す。
「すぐ大通りの十字路があるけんな、それを通り過ぎて役場の手前のパン屋の角を右だわ」
日向も大きな声で答えた。
「わかりました」
何だか戦闘以外で大声を出す日向っていうのも新鮮だな。
「……」
彼女だけでなく助手席の寛代も母親の言った情報を確認しているようだった。
夕立は相変わらず髪を押さえながら黙って窓の外を眺めている。いい子だ。そうやって大人しくしていれば普通の女子っぽいんだけどね。
「ぽい?」
そう思ったとたん夕立がこっちを見る。私は苦笑い。この娘も感度は高いようだ。
軍用車が市内の十字路を過ぎる頃、私も落ち着いて外の景色を眺められる程度に気分が落ち着いた。
「この大通りも、ぜんぜん変わらないんだね」
角の銀行の建物を見ながら私は横に座っている母親に問いかけた。
「だなぁ。でも寂(さび)れたわ」
確かに私が小さかった頃の境港の街は、もう少し賑やかで大きかった気がする。
今回の着任時に見た米子駅前と比べても現在の境港は全体的に小さい印象だ。
それは私が多少とも『成長』したからだろうか? ……いや、人間的な内容は全然、伴ってはない。
騒音の大きい軍用車内では必然的に口数が減る。淡々と車は進んでいく。私は車窓から自分の左手に見える歩道を何気なく見つめていた。この境港には特に高い建物はない。幹線道路脇でも、ほとんど3階がいいところだ。時おり空き地や畑が目立つ程度で閑散としている。
いくつかの路地を通り過ぎると突然、妙なものが目に留まった。この真夏の暑い最中に厚手の黒っぽい服を着た妙な女性がいた。その服のせいか彼女の白い肌がことさら目立つ。
「ん?」
……その女性の妙に長い髪? 次の瞬間、私だけ時間が止まった。
『まさか?』
間違いない。一瞬すれ違った瞬間に顔を上げたその女性と私は目が合った。その瞳には見覚えがある……
『まさか深海棲艦?』
彼女は不敵な笑みを浮かべてた。ただ不思議なことに今回も鳥肌は立たなかった。
『こんな陸上にまで?』
『なぜ?』
一瞬でアレコレ考えた。しかし実際には瞬く間だったろう。軍用車は、その路地を一瞬で通り過ぎた。だが私には十数秒……いや、もっと長い時間に感じられた。昨日の戦闘に続いて暑くなった今日まで……『わざわざ、ご苦労!』というところか。
祥高さんの『敵は出て来ない』という予想は外れたわけだ。たた深海棲艦らしき『女性』はストーカーの真似事をしているだけかも知れない。あるいは『偵察』か?
この暑さと異常事態に私の頭の中は混乱で一杯になった。
「……参るな」
「あそこ」
……という寛代の言葉で悶々としていた私はハッと我に返った。
混乱している間に軍用車は数百メートルは走ったらしい。寛代は幹線道路の右側に見える赤い看板……自販機のある小さなパン屋を指差していた。
それを見て、運転している日向が応えた。
「了解」
「ぽい」
「なんだよ夕立。その合いの手は」
「?」
母親も不思議そうな顔をしていた。
だが私は、さっきの女性……深海棲艦らしき人物を見た衝撃を引きずって、ただ一人、座席で固まっていた。
シフトチェンジをした軍用車は、そのパン屋の手前で減速した。田舎道だから道幅は広いのに信号は無い。対向車が居なければOKだ。
日向はハンドルを右に回し直ぐにパン屋の角を右折させた。運転している彼女も助手席の寛代も、さっきの女性には、まったく気づいていないらしい。夕立は反対側の座席から外ばかり見ている。
でも日向はハンドルを戻した後で私の異変に気付いた。彼女はバックミラー越しに尋ねてきた。
「司令、どうかされましたか?」
「いや」
私は否定した。本名でなくても親の手前だと役職で呼ばれるのは結構恥ずかしいものだな。
ところが『司令』という言葉に反応した母親がカット・インして来る。
「お前が司令かぁ」
噛み締めるように言う彼女は嬉しそうだった。もし何事も無ければ、私はこの場で『親孝行が出来た!』という気分になったことだろう。
しかし残念ながら、さっきの女性が気になって、それどころではない。
とはいえ日向が私の様子を気に掛けてくれたのは嬉しく、また心強かった。私は心の中で日向に『ありがとう』と唱えていた。
艦娘に支えられる……上官と部下という立場であれば軍隊としては当然のことだが、改めてそのことを実感するのだった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
説明 | ||
墓参へ向かう司令たちの車は順調に走り出した。しかしその道中で彼は気になるものと遭遇した。 | ||
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