恋姫無双 擬人劉璋伝 「命名」 |
一刀「む…………う〜ん……………………くぁぁぁ……はぁ」
一刀「なんだか知らないけど 身体中が痛いな……昨日 何か激しい運動したかな……?」
大あくびをかました後 眠気に涙ぐむ瞳をこすりながら 一刀は その身を起した
手にふれる布団の感触が 今までに感じたこともないくらいに心地いい
一刀「敷きっぱなしにしたせいで 思いっきりこなれてきたのかな……」
オレは寝ぼけながら何度も布団を撫で回してみた
…………ああ やっぱいつもよりフワフワしてるな ひょっとして……起きたのは夢の中のオレで
実際はまだねているのかな……
もう一度潜り込んで 二度寝を決め込んでしまおうか
オレは そんな怠惰な誘惑と争いながら 寝るときに脱ぎ散らかした制服を探し 周囲を見渡した
一刀「……………………………………ん?」
一刀「あれ? …………オレ……本当にまだ寝ているのか?」
見たこともない場所だ…………なんでオレは天蓋付きのベッドで寝てるんだ?
しかも この部屋なんだよ? やたらと大きいけどテントっぽいよな……
Tシャツもやたらとゴツイし…………
一刀「…………って オレ制服脱がないで寝たのかよ!……………………え?」
自分で自分を突っ込んでおいて 声に驚いてたら世話ねぇよ!
なんだよ? なんだよ?ここ………………ゆ、誘拐でもされたのか? オレは!
そうやって一人パニックに陥っていると 表で誰かの話し声が聞こえた
??「オイ……起きたんじゃねぇのか?」
??「……みたいだな 俺はリュウエン様を呼んでくる……気をつけろよ?」
??「わかってる」
シュラッ 表から木材と金属を擦るような音が聞こえた
一刀「だ、誰かいるのかよ……」
ズキンッ……あまりにも強い動悸に 一瞬だけど鈍い痛みを感じる
思わず胸に手をあてる 心臓が早鐘のように打ち 身体中に汗をかきはじめた
自分で言っておいてなんだが 当然「誰か」は いるんだろうよ
現に誘拐されて(?)いるわけだし…………オレ誘拐してどうするよ?
親父はリーマンだし お袋は中年太りだし
唯一じーちゃんは格好いいけど 頑固なうえに門下生もいない道場の師範だしな……
……アレ? 門下生いないのに師範て おかしくね?
まぁ たま〜に引っ張られて 修練とかさせられるけど……なんつーの? 精神修養とか今時いらなくないか?
オレが誘拐されるような理由? ……うちの家族が溜め込んでいる貯金の額とかいろいろ気になることはあるけど
とりあえずベッドから降りて様子を伺うことにした
親がいくら貯め込んでいるか? なんてわかるはずもないしな
これは たぶんオレだけじゃないはずだぞ
今の稼ぎがいくらか? なんて聞いたところで 親というものは誰もがはぐらかすに決まっているのだ
逃げられるなら無償で逃げられるほうがいい……オレは表にいるとおぼしきヤツの様子を見てみた
表にいるヤツは棒でも握っているのか 細い物を持つ腕が 入り口の隙間からチラチラと見えている
……やっぱ警戒されてるなぁ まぁ 当然か……
踏み出したオレの足下で 「ジャリッ」 と砂を噛む音がする オレ……靴を履いたまま寝てたのかよ……
一刀「……いやいやいや おかしくないおかしくない 誘拐されたんなら履いたままでもそれはそれで……」
内心でそこじゃないだろうと突っ込みを入れながらも 今後の展開に思いをめぐらす
…………いい予想図なんて 何も浮かばなかったけれど…………
表に複数の足音が近づいてきている どうやら犯人のお出ましのようだな
天幕の入り口を遮っている布をくぐりぬけ
オレの親父より少し上だろうか……初老の男が入ってきた
男は入ってくるなりオレの身なりに目を走らせる
足下から頭のてっぺんまで ゆっくりと確かめるように眺められているうちに
落ち着き始めた心臓が 再び活発に動き始めたみたいだ
…………ヤバイ 緊張してきた
??「目が覚めたようだな」
オレの目の前にはいい年こいたオッサンがいた
……なぜ 相手が年上なのに敬意を払っていないのか……って?
立派なヒゲ 鋭いまなざし シワが目立ち始めた面立ちが かえって威厳をかもし出している
うん……顔立ちも整っているし正直格好いいとは思った……思ったけど
一刀「その歳でコスプレはないだろう……」
オッサンは中華風(?)の服を着ていた それもいわゆるチャイナ系じゃなくて
古代中国の大河ロマン的な…………そう なんていうか文官っぽい? 格好をしている
同じコスプレでも渋い趣味と言えばそうなのかもしれないが 少々いきすぎだろう
うちの近所に住んでいる爺さんが 本物そっくりの太極剣を抜いて太極拳の体操をしていた時なんか
周囲の人間がそれを見て驚き TVで報道されるような騒ぎになったもんだ
そんな常識知らずなオッサンがオレに話しかけてきた
??「こすぷ…………よく聞き取れなかったが…………まぁ いい」
??「意識は はっきりとしているようだな?」
おかげさまでバッチリだ
できれば心臓は もう少し眠っていてほしい
オッサンの語る言葉のほかに ドクンドクンと心臓の声が耳に響いているような気がする
頭の奥がカアッと熱くなってきて かすかな頭痛も感じた
一刀「……オレを誘拐してどうするんだよ……」
情けないことに声が震えている
あたりまえだろ? 実際に誘拐されるなんて日本の中じゃ ほとんど考えられない
ニュースではときおり見るけれど それだって1億分のなんとかだ
…………今まで対岸の火事みたいに眺めてて ごめんなさい
??「誘拐? 保護といって欲しいものだな」
??「山中に倒れていたお前を助け出し ここで介抱していたのだぞ?」
一刀「倒れていた……だって?」
??「そうだ」
ここより数里先に流星が落ち それを確認しに向かった所でオレを拾ったのだという
ぱっと見 嘘を言っているようには見えなかったんだけど
そもそも流星が数里先に落ちてたら あんたも無事じゃないよな?
いや 大きさにもよるんだろうけど
それに オレは寮の自分の部屋で寝たはずなんだ
それが何故 山ん中に出るのか
正直わけがわかんねー
試しに 星が落ちたっていう 数里先の山裾を見せてもらった
表で見張っている多数のオッサン達も同様にコスっているのにはだいぶ引いたが
オレは そんな感想を漏らすこともできなかった
一刀「………………どこだよ ここ………………?」
周りの何処を見ても 見覚えのない地形ばかりだった
というか そもそも人家がない
やっぱり誘拐されて どこか他の国に捨てられたのか?
そのほうが辻褄があうような気がしてきた
オレはここが何処かと聞いた
……そういえば名前も聞いていないな ……本人曰く 助けてくれたらしいのにな
??「ここは益州の巴郡にある枳県の北東 魚復と呼ばれる地域の近くだ」
??「ここは益州の巴郡にある枳県の北東 魚復と呼ばれる地域の近くだ」
意味がわからなかった
そんな地名聞いたことないし ナントカ州なんて付くのはアメリカくらいのもんだろう
言葉が通じる以上 日本のどこかだと思うんだけど
一刀「あの コスイベントの説明はいいんで ここが日本の何処なのか教えてもらえませんか?」
??「狡い弁当の説明? …………日本とは何のことだ? 話の流れからして地名かなにかか?」
このひと本気でわかってないのか?
隔離された村とか そういうのはないはずだし
少なくとも義務教育で習うよな
…………っていうことはなにか…………本当にここは日本じゃないのかも
あんまり寒くないけど カラフトとか そういうオチかな
このオッサンがナニ人なのか……名前を聞いてみれば 響きでわかるかもしれないな
オレは自分の名を名乗り オッサンの名前を聞いてみた
一刀「あの……オレ 北郷一刀っていいます おじさんの名前は何ていうんですか?」
??「ワシの名前か ワシの名は劉君郎だ」
一刀「リュウ クンロウ?」
劉焉「ああ そうだ」
響きからいって漢字圏なのは間違いなし
服装からいって中国かどこかだろうか…………それにしては流暢な日本語だけど
一刀「すると…………ここは中国なんですか?」
劉焉「中国? 響きから言って それも国の名前なのかな?」
一刀「あ 違うんですか……」
劉焉「少なくともワシは聞いたことがない」
どうしよう? 流れがぶった切れたぞ……
劉焉「ワシからも質問させてもらおう」
むしろ助かります
劉焉「お前は何処から 何処を通って 何ゆえこの土地へ来たのだ?」
どうしよう? かえって困ってしまった
一刀「ええと オレは日本っていう国の東京って街にある自分の家で眠っていたんです」
劉焉「うむ」
一刀「……で 目が覚めて気がついたら そこの天幕の中にいたわけでして……」
劉焉「…………………………」
さすがのコスプレ親父も呆れてしまったようで
嘆息しながら 念を押すように確認してきた
劉焉「つまりお前は その東京とかいう所から いつどうやってここに来たのか まるでわからない……と?」
一刀「はい」
劉焉の脳裏に 洛陽での会話が思い浮かぶ
董扶 『益州へ向かいなされ、かの地は天子の気に満ち溢れておる』
管輅 『黒天を切り裂き 天より白き光が降臨す 東方より飛来せし流星は 乱世を納める使者の乗り物なり』
管輅 『平和を誘うは天の使者 乱世を鎮静し 世に安寧を招くだろう』
流星と共に現れた孺子か……管輅とかいう女の占いにも合致する
仮に この地にあるという『天子の気』とやらに呼ばれたとするのならば…………
劉焉は 豪族の反対に遭い 今だに活路を見出せずにいた
その劉焉の停滞していた頭に 脈々と流れる血の奔流を感じた
劉焉にとって妖言風説など一銭の価値も持たない
あるのは、利用できるか否か
己が野望の足しとなるかどうか、その一点に尽きる
劉焉 「……(太守や官吏の間では共に戯言と一笑にふしていたが)」
劉焉 「……(庶人の間では人気の高い風説であった……はず)」
劉焉 「……(それだけ王朝に対する信が低いということではあるが……)」
しばらく黙考した後、含みある表情でぽつりと声を漏らした
劉焉 「……使えるな」
一刀 「え?」
劉焉 「いや、なんでもない」
オレは保護してくれると言う劉さんの言葉に従い
どこまでも続く山野の行軍に混ざって移動していた
3千人とかいう人数の行軍だぜ? イベント扱いにするには規模がでかすぎる
観客も 中継のカメラマンもいないし…………
さすがのオレも この状況が尋常じゃないってのがわかってきた
劉さんや周りの兵士達が持っている武器が 本物だっていうことも
一刀 「それで ……何処に向かっているんですか?」
劉焉 「益州は広漢郡にある綿竹県だ」
一刀 「はぁ? 益州って……日本には州なんてな…………い」
そう言おうとした時 なにかが頭に引っかかった
そう 益州で……綿竹?
どこかで聞いたことがある……そうだ 確か劉備が攻め込んで ?統が死んだ場所だ
ここは大陸なのか? 改めて劉さんに聞いてみることにした
一刀 「あの……」
劉焉 「なんだ?」
一刀 「益州って……大陸の西の方……ですよね?」
劉焉 「なんだ わかっておるのではないか」
思いっきり肯定されてしまった
劉焉 「お前の言うとおり、ここは漢の南西一体を占める山間の地 益州だ」
一刀 「か、漢?」
劉焉 「……あん? なんだ一刀、国号を知らんとでも言うつもりか?」
一刀 「い、いや……ほんとに何も知らないんだ……」
できれば聞き間違いであって欲しいと思う
劉焉 「…………本気で言っているんだろうな……?」
劉焉 「今の世を統べるのは後漢王朝 霊帝陛下の御世だ」
一刀 「れ、霊帝? そ、それじゃここは三国志の……」
劉焉 「三国志? ……なんのことだかわからんが、霊帝陛下を一個の民が呼び捨てにするなど」
劉焉 「……許されることではないぞ? それこそ そっ首を刎ねねばならん」
劉焉の剣呑な声の響きに促され 周囲の兵士達が剣に手を伸ばす
わ! わ! わ! なんなんだよ! なんなんだよいったい!
帝って要するに天○陛下みたいなもんだろ!? なんで殺気立ってるんだよ!
やっぱ昔なのか!? 昔だからヤバイのか!?
一刀 「れ、れ、霊帝陛下! 陛下!」
劉焉 「………………まぁ いいだろう」
あわてて言い直したら 済ました顔で剣を下げやがったよ!
わざとか? 絶対わざとだな?今の…………くそぅ 覚えてろよ
劉焉は 先ほど行った質疑を思い出す
劉焉 「それで? お前は何処から来たのだ?」
案の定 この国ではない何処かの国の名前を言ってきた
劉焉は内心でほくそ笑む
ここで天子(候補)を身内にすれば 一気に飛躍する為の力になるかもしれない
現皇帝の血こそ受け継いではいないものの 新たな神代の血脈となるかもしれない……
劉焉 「……( なんなら皇族の血を混ぜてしまってもいい )」
劉焉 「……( 姪でも孫でも 嫁がせてしまえばよいのだ )」
劉焉「ひとまず 今のところは養子として……」
一刀 「……え?( 今何か不穏なことを言っていたような……)」
劉焉「とりあえず名を北郷一刀といったか?」
一刀「はい」
劉焉「姓が北 名が郷 字が一刀か……ホン・カズト ……あまり語呂はよろしくないな」
一刀「は?」
初めは何を言われているのかわからなかった
だけど ……そう ここは昔の中国だったんだ
…………少なくともそういう設定なんだろう …………設定だといいなぁ
だから名前を細かく区切るのも理解できた
それに対する答えも
一刀「違いますよ 劉さん」
兵士「貴様! 言葉に気をつけ……!」
劉焉「よい …………して? 何が違うのだ?」
なんで兵士さんが怒ろうとしたのか わからなかったけれど
…………あ 将軍様とか言わないとだめだったのかな…………
まぁ 劉さんがいいって言うんだから いいか
一刀「オレの名前は 北郷が姓で 名前が一刀なんです」
劉焉「ほうニ字姓に二字名なのか 珍しいな」
一刀「はい ……あと字はないんです」
劉焉「すると姓と名だけで 個人を分けるわけか なるほど二字で区切るというのも頷ける」
納得してくれたみたいだな
あれ? すると 劉さんは 姓が劉 名が君 字が郎なのかな……
そんなことを考えていたら 変なことを聞かれた
劉焉「すると お前は真名も持っていないのか?」
一刀「まな?」
劉焉「やはり知らないか……(やはり……天からの) 真名と言うのはな…………」
劉さんに真名ってやつの意味やその大事さを教えてもらった
首を切られても文句は言えないとか 物騒すぎるよな
ここで教えてもらって助かったかもしれない
劉焉「しかし……あれだな」
一刀「…………?」
劉焉「姓と名しかないということは その名が真名にあたるのかもしれんな……」
親から渡された唯一の名前
確かに そういうことになるのかもしれない
劉焉「真なる名前とは みだりに教えたりするものではないのだ」
劉焉「北郷のみを名乗るというのも やり方ではあるのだが…………」
そこまで言うと 劉さんはポンと手を叩き
さも良いことを思いついたと言う風に とんでもないことを言ってきた
劉焉「一刀よ お前をワシの養子としよう」
一刀「…………………………え?」
助けてくれたのは嬉しいし そう言ってくれるのもありがたいんだけど
見ず知らず 出所わからず それでいて山の中で倒れてるような男を 普通拾うだろうか?
劉焉「どのみち 行く所もないのであろう?」
一刀「ない」
劉焉「ならば帰るべき国が見つかるまで 養子としてワシの元にいるがよい」
オレだったら こんな胡乱なやつを拾ったりはしない ……しないんだけど
背に腹は変えられないってのも事実だし
なにか企んでそうだけど その申し込みを受けることにしたんだ
劉焉「うむ! なれば我が子も同然 ワシがお前に名前を送ってやろう」
上機嫌で頷いた後しばらく考え込み ……もう一度「うむ」と頷いて その名前を口にした
劉焉「姓を“劉” 名は“璋”と名乗るが良い “北郷”は字とし“一刀”をもって真名とするのが良いだろう」
劉焉「わかったか? 一刀 ……いや我が息子 劉璋よ」
一刀「……………………えええええ!?」
ちょっと待ってくれ 劉璋? 劉璋って言ったか?
益州の劉璋って たしか……
劉備に滅ぼされた益州の偉い人だよな ……オレが劉璋?……
……まてよ ……ということは このオッサン
一刀「あの……それじゃ劉さんの名前って……」
劉焉「ん? ああ ワシの名は……」
姓が劉 名が焉 字が君郎だ
劉焉 君郎 …………思いっきり君主様じゃねぇか
そして なんだ…………オレが後継者なのか?
( ゚Д゚)…………
( ゚ Д゚) 文が進まない
ようやっと最初のネタまできますた
…………ネタと言えるかどうかわかりませんけど
このペースでいくと まだまだ益州から抜け出せなさそうです Orz
さぁ〜て来週(?)のさz……お話は
『お兄さん初めまして』
『お手柔らかにね お姉様』
『天を貫く声』………………の3本です♪
誤字脱字 今後気をつけたほうがいい注意点など
ご指摘いただけると幸いです
では……また〜 (´ー`)/~~
説明 | ||
一刀と劉焉の邂逅と 今後の関係について です やっとこさ 今作の題名に関わる部分が出てきますた ……本文をちょこちょこ改正 推敲って大事なんですね^^; |
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コメント | ||
thuleさん 誉められると後が怖いです (((( ;゜Д゜))) (リアルG) ブックさん 重要だけど 劉璋なんで 気楽にやれたらと思ってます ^^(リアルG) 白旗〜 誤字も少なく、冗談も思いつかない、司馬先生にも負けない完璧な『小説』だ。。。 (thule) 一刀が重要人物にw(ブックマン) やっとです Orz(リアルG) うあぁ 抜かりはなかった……はずなのに Orz 訂正しておきます ^^;(リアルG) p4"本郷"は字とし→北郷> これからどうなるかwww(st205gt4) |
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