真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 28
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 全員が北郷の言葉に短く返事を返した直後から、軍師二人は小さな声で話し合いを始めた。つっても、隣の俺にはほとんど聞こえているんだが。

 

「朱里ちゃん、軍資金とか兵糧はどれくらい用意できそう……?」

「出撃する人数が決まってないから何とも言えないけど、あんまり多くは用意できないかも……」

「どうした?」

 

 俺が問いかけると、鳳統は少しおどおどしながらも答えてくれた。

 

「えっと、そのもしかしたら、お城にある軍資金と兵糧だけじゃ、足りないかもしれないんです」

「ええ!? 本当なの?!」

 

 こちらの話が聞こえたのだろう。その話に驚いた劉備に対し、孔明が説明をする。

 

「私たちがここに赴任してからまだそんなに日が経っていないので、税収を得るための組織が構成できていなかったので……」

「あ〜……」

 

 そういや、皆何だかんだでひいこら言ってたからな……。

 

「むぅ、どうしたものか……」

 

 関羽がそう言うと、皆が頭を傾げて悩みはじめる。

 

「……仕方ない、あの手を使おう」

 

 しばらくして、北郷が口を開いた。

 

「あの手? まさか……」

「あ〜、あの手かぁ……」

「にゃ〜……」

「あれは、カッコ悪いですもんね」

「そうですね……」

 

 ……まぁ、気持ちは分かるが。

 

「だが、この場合は、致し方ない、か」

「……玄輝殿、“あれ”とは、一体何なのです?」

「あー、そっか。趙雲は知らないか」

 

 アレを使ったのはこいつが入る前だからな。

 

「あれってのは、いわゆる、な?」

 

 そこで俺は北郷に投げた。北郷も若干気まずそうな表情をしたが、一度咳払いをして、あれの正体を明かした。

 

「名付けて、“寄らば大樹の陰方式”! まぁ、要は出来る限りの準備をして、後はよそ様のお世話になろうってこと」

「…………」

 

 一瞬、ハトが豆鉄砲を喰らったような顔をしたが、すぐにまじめな顔に戻って、

 

「なるほど、それは良い手ですな」

 

 予想とは反対の言葉がその口から出てきた。それに真っ先に反応したのは関羽だ。

 

「せ、星、お主、何も思わぬところはないのか?」

「ん? 何だ、愛紗にはあるのか?」

「そ、その、他人を当てにするのは、どうにも矜持に合わないというか、な?」

 

 若干気まずそうな表情をしながら彼女がそう言ったのに続き、張飛も似たような表情で言葉を口にする。

 

「ご飯をちゃんと持っていけないと、貧乏だなー、って思って、なんだか切なくなるのだ……」

 

 まぁ、二人の言い分も分かるが……。

 

「んなこと言っても、俺達が貧乏なのは事実だし、無い袖は振れん、どうしようもないだろ?」

「玄輝殿のいう通りだ。それに、我らは民草のために戦っているのだ。矜持よりも、守るべきものがあるだろう?」

「うっ、それは、重々承知だが……」

 

 俺と趙雲の言葉に関羽は苦虫を噛み潰したような表情をする。というか、そのことは本人が言っているように、承知はしているんだろうな、承知は。

 

「まぁ、関羽の言いたいことも分かるが、でも、今はどっちにしたって民のための行動って事にしておこうぜ」

「民のため、と言いますと?」

「董卓に苦しめられているかもしれない人々がいる、それが事実なら、その民を解放してやる、いなかったら汚名を着せられた董卓たちを助ける、ってことでさ」

「…………そう、ですね」

 

 一度目を閉じて、再び彼女が目を開いた時には、その瞳にはいつもの力強い光が宿っていた。

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「玄輝殿の言う通りです。今の我々がすべきことは力無き民を守ること、それが肝要ですね」

 

 そういった直後に今度は少し情けなさそうな表情をして、

 

「どうにも、私は面子というものにこだわってしまうきらいがあるようです……」

「別にいいだろ、そのぐらい。こだわりがないってのはそれはそれで問題あるだろうさ。それに、それを自覚しているなら自分で一歩踏みとどまることが出来るのだから、気にすることはないだろ」

「玄輝殿……」

「玄輝の言う通りだよ、愛紗。今回は状況が少し違っただけだよ」

 

 そういった北郷は皆の前に向き合ってから、皆の意見を聞くためにもう一度口を開いた。

 

「じゃあ、みんな。今回はこの方針でいい? 他に意見のある人はいる?」

 

 その言葉にここにいる全員が首を横に振って、自らの意思を示した。

 

「よし! じゃあみんなすぐに出陣の用意をしてくれ。愛紗、鈴々、星の三人は軍の編成をお願い。朱里は作戦計画の立案、雛里は輜重隊の手配とか、補給作戦の計画を。玄輝はその補佐をして」

 

北郷の指示にそれぞれが頷いていく。

 

「ご主人さま、私は?」

 

 と、先ほどの面々に入っていなかった劉備が自身を指しながら問いかける。

 

「そうだね……俺と桃香は、現状は待機、いや、ちょっと話し合いたいことがあるから後で話し合おう」

「う〜ん、それはいいんだけど、ほんとにそれでいいの? 朱里ちゃんを手伝うとか……」

 

 と、誰かを手伝おうとする劉備だが、それを制したのは関羽と張飛だった。

 

「桃香様は我らの御旗、ここはご主人さまと共にどっしりと構えていてくださいませ。今回のような些事は我らにお任せを」

「そうなのだ。二人がいるから鈴々たちは頑張って戦えるのだ!」

 

 そういった二人に続いて、趙雲が言葉をつなげる。

 

「人は御旗があるからこそ一つになれる。ですが、御旗となれる人物はそうはいませぬ。故に桃香様はその立派な乳房のように堂々としておられればよい」

 

 っておい!

 

「むぅ〜…どうせ無駄に大きいですよ〜だっ」

 

 で、言われた当人はむくれてしまう。

 

「おまえな……」

 

 軽く趙雲を注意しようと思って口を開けたのだが、それよりも早く北郷が言葉を紡ぐ。

 

「いや、そんなことはないよ。おっぱいに無駄なんてあるはずがない」

 

 ……この馬鹿ッ。

 

「……ご主人さま?」

 

 予想どおりというか、予感的中というべきか、わが軍の規律を守る軍神殿は半眼になり、

 

「おや、主もわかっておりますな」

 

 原因を作った当人はにやついて、

 

「雛里ちゃん、ペタンコの人の立場って、何なんだろうね……」

「……(クスン)」

「り、鈴々はこれからバインバインッになるもんね!」

 

 貧乳組は肩を落としたり、憤慨したりしていた。

 

「もぅ、ご主人さまってば……スケベェ」

「ゴ、ゴホン」

 

 咳払いでどうにかごまかそうとしたようだが、一度言った言葉は消せはしないし、雰囲気もそう簡単に戻せるものじゃない。

 

「え〜と、それはまぁ、冗談として置いといて」

「どこが冗談なのやら」

「……取り繕うことで、逆に被害を広げることもあると思います」

「ゴフッ!」

 

 どうやら、あまり話さない鳳統の一言は思った以上にダメージが大きかったようで、分かりやすいほど落ち込んで、

 

「和ませようと思っただけなのに……ぐすっ」

 

 若干涙声になっていた。

 

「まぁ、日ごろの行いのせいだろうさ」

「玄輝まで……俺、こんなに人徳がなかったのか……」

 

 なんて言葉をこぼした北郷に孔明がトドメと言わんばかりに一言。

 

「この場合は人徳がない、のではなくて、気遣いがないのだと思います」

 

 プイッという音が似あうようなそぶりでそっぽを向いた孔明と半眼で北郷を見ている鳳統に趙雲が“まぁ”といって話しかける。

 

「二人はおそらく将来有望、今は気にすることはなかろう」

 

 この言葉に鳳統と孔明は少しだけ表情を柔らかくするが、その二人に入ってなかった一名が今度はプンスカと両手を上げる。

 

「にゃぁ〜! 鈴々は将来に期待できないのかぁ〜!」

「いやいや。鈴々の場合は大きくならない方が良いと思うのだ。主はどう思われる」

 

 この言葉に北郷はほぼ即答というべき速さで答える。

 

「…いいね!」

 

 なんて言って、趙雲の手をガッチリと握ってしまった。

 

(バカだなぁ……)

 

 この雰囲気でよく二の轍を踏むようなことができるなぁ、と逆に感心してしまう。

 

「……ご主人さま?」

「あ」

 

 はい、案の定です。と、ここで北郷は苦し紛れの手を出してきた。

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「げ、玄輝もそう思わない?」

「はっ?」

 

 突然振られた話に一瞬対応が遅れてしまったために、視線が集まる前に答えを出すことができなかった。ただ、集まろうが集まるまいが、俺個人としては言うべき答えは決まっているようなものなのだが。

 

「いや、正直どうでもいいというか……」

「なんだって!?」

 

 いや、驚いたような、絶望したような表情浮かべんでも。

 

「生憎、そんなのとは無縁な世界で生きてきたようなもんでな。気にしたことがない」

「おや、では女子には興味がないので?」

 

 なんて趙雲が聞いてくるが、恐らく俺は、興味を持つべき時に持つ余裕がなかったんだろう。

 

「別にないなんて言ってないだろう」

「おや、では乳房に興味がないという事で?」

 

 この野郎……。楽しんでやがる。

 

「あ〜、なんだ。正直、そこを気にしたことがない。魅力、という面ではそこですべてが決まるわけではないだろう。いくら乳房が大きかったとしても、内面が腐っていれば台無しもいいところだし、乳房が小さくても内面がきれいならば魅力的な人間に見えるだろうさ」

 

 まぁ、内面が全てなんて言う気は殊更ないが、と付け足して自分の意見を言うと、趙雲は至極つまらなさそうな顔をして、

 

「むぅ、つまらん……至極まっとうな意見……」

 

 コイツ、絶対ろくな死に方しねぇだろ……。

 

「つまらなくて悪ぅござんしたね」

 

 と適当に返したところで俺は椅子から立ち上がる。

 

「さて、軍議はこれで終わりか? なら鳳統、準備に行こう。今は時間が惜しい、だろ?」

「あっ、はいっ」

 

 俺がそういうと、他の面々(劉備、北郷、趙雲を除く)はそれぞれが割り当てられた仕事をするために玉座から出ていった。

 

 ただ、玉座を出るときにちらりと北郷を見やったのだが、残った女性二人にからかわれたり、注意されたりしているような様子が見えた。

 

 そして、その軍議から幾何の日が流れ、俺たちは指定された場所へ向かうことになった。

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はい、作者の風猫です。

 

え〜、そろそろあの金髪が出てきます。

 

が、次回更新はいつなるかわかりませんので、気長にお待ちいただければと思います。

 

では、また次回。

 

 

説明
白髪の鬼子と黒の御使いの、守るために戦い抜いたお話

真・恋姫†無双の蜀√のお話です。

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。














大筋は同じですけど、オリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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オリジナルキャラクター 鬼子 蜀√ 真・恋姫†無双 

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